<第197回国会 2018年12月7日 本会議>


◇堂故農水委員長が森ゆうこ議員の質問権を奪い、提出できる資料を出す努力を尽くさずに審議を軽視してきたと指摘/沿岸漁業者の苦しみなどを紹介しながら、漁業関係者を始め、国民の声を聴き、漁業法改正案の充実した質疑を進めるのが委員長の役割だと強調。

○農林水産委員長堂故茂君解任決議案(小川勝也君外一名発議)(委員会審査省略要求)

○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、ただいま議題となりました堂故茂農林水産委員長解任の決議に賛成の討論を行います。
 賛成する最大の理由は、与野党の合意の下に進めるべき委員会運営を、採決を急ぐ政府・与党の求めに応じて一方的に委員会を再開し、森ゆうこ議員の質問権を奪ったからです。
 第二の理由は、提出できる資料であったのに、委員長としてその努力を尽くさず、政府に肩入れして、国会審議を軽視したからです。
 中立公平に運営しなければならない委員長の職責を放棄したと言わざるを得ません。
 国会議員は、本会議や委員会で質問し、法律の改正案や国政一般について、内閣に事実の説明を求めたり見解をただすことができます。内閣は、質問に対して意見を述べる、見解を述べる。この国民の代表である議員の大切な質問権を封じることは、国会の役割を否定する行為で容認できません。
 堂故委員長、あなたは森ゆうこ議員の質問が終わっていないのに質問権を奪いました。なぜ奪ったのでしょうか。与党が漁業法改正案の採決を求めているから、質疑を急ぎたかったのでしょうか。
 そもそも、漁業法改正案の質疑は、質疑終局を与野党の理事会協議で合意しておりません。それなのに、一方的に質問権を奪う行為は、公平中立に委員会運営を行うべき委員長としてふさわしくありません。
 昨日の農林水産委員会は、午後の質疑予定時間が近づくまで正常に運営されていました。事態が急変したのは、長谷成人水産庁長官の答弁からです。
 昨日の昼の理事会で、森ゆうこ議員は、漁業法改正案に関わる国家戦略特区ワーキンググループの議事録を公開するように求めていました。与党理事は、企業に関わることなので非公開になっている、出せないと答えていたのに、委員会質疑で森議員が提出するよう求めると、長谷水産庁長官は公開しても差し支えないと答弁したわけです。昼に言っていたことと違うじゃありませんか、出せるなら、その資料の提出を受けて質疑を続けるのは当然ではないかと、こういう声が飛び交い、委員会室が騒然となりました。
 理事メンバーで場内協議したところ、与党理事は、少しそごがあった、提出できるようだが、手続に時間が掛かるので質疑は続けてほしいと言いました。提出できる資料も出さずに審議を続行しろというのでしょうか。内閣に事実の説明を求め、見解をただすという国会議員の責務が果たせないではありませんか。
 しかも、重大なのは、一旦休憩して行われた理事会で、すぐに資料を提出できないなら散会するように野党が求めているのに、委員長が開会を急ぐ与党議員の求めに応じて、共産党、国民民主党、立憲民主党、自由党の理事、委員を理事室に残したまま、一方的に委員会を再開したんです。これでは、与党議員、政府に肩入れしたと言われても仕方がないのではありませんか。政府を監視する立法府の役割を投げ捨て、審議を軽視したことになるではありませんか。
 私は、当選以来、長年農林水産委員会に所属していますが、こんな事態は初めてです。私が初めて当選したときの委員長は太田豊秋さんでした。初当選して臨時国会が始まる前に、国内で初めてBSEが発生しました。緊急事態に直面し、当時、当選した直後で右も左も分からない中、委員長に閉会中審査を求めたらすぐに受け止めていただき、各党の筆頭と調整し、閉会中審査をすることができたんです。こうした役割を果たすのが委員長ではないでしょうか。
 なぜ委員会運営が乱暴になったのでしょう。それは、安倍首相が、企業が一番活躍しやすい国を目指し、私がドリルになって岩盤を打ち破ると言って、次々とこれまで積み上げてきた法律の改悪を急ぐからではないですか。臨時国会では、七十年ぶりの大改正という漁業法改悪案を、十一月六日に閣議決定したばかりなのに、十二月十日までの会期内の成立を急ぐからではないですか。
 昨年、主要農作物種子法廃止法の質疑は、衆議院の質疑が短かったため、多くの批判が沸き起こりました。参議院では参考人質疑を行うことができたものの、採決をされました。それでも、種子法の復活を求める世論と運動は広がっています。種子法の審議を反省するなら、充実した質疑をするのが私たちの役割です。政府・与党の姿勢は、現場の苦しみなどそっちのけで、採決先にありきということではないでしょうか。数の力で押し切れるという政府・与党のおごりがあるからではないんですか。怒りを込めて抗議するものです。
 委員長、あなたは沿岸漁業者の苦しみを理解していますか。イカの不漁で苦しむ漁師、クロマグロの漁獲規制を一方的に押し付けられて生活に困窮する漁師、サメが増え過ぎてスケソウダラが捕れないと嘆く漁師、トド被害に苦しむ漁師、東日本大震災から復興する姿、原発事故から必死に立ち直ろうという姿が目に入りませんか。同時に、漁業には地域経済を支える役割があります。岩手県の水産加工業者は、魚の不漁で原材料が手に入らず、苦悩しています。
 委員長、こうした姿に心を寄せるなら、漁業関係者を始め、国民の声を聴き、漁業法改正案の充実した質疑を進めるのが委員長の役割ではありませんか。
 漁業法は、こうした漁師のなりわいを支える法律です。昨日の参考人質疑で赤間参考人は、戦後、漁業法ができたとき、浜は喜びで沸き上がったと言われました。浜の皆さんが喜びに沸き立つ審議をしようではありませんか。
 良識の府と言われる参議院で、現場を置き去りにしないのが私たちの役割です。委員長、漁業法改正案を余りに軽く考えているんじゃありませんか。漁師、漁業関係者から置き去りと批判する声が出ていることを御存じですか。
 私は、夏以降、漁協に行って説明会の様子を聞きましたが、説明会は一方的だった、現状と変わらないと言われたが、内容は分からなかったという感想です。九州の説明会では、紛糾して帰る人が出たと聞いています。国会では、全国沿岸漁民連絡協議会等の諸団体が漁業フォーラムを開きました。私も参加をしました。内容を知らない漁民、漁協も多く、自分たちの意見を述べる機会もない、こういう現場の声が出されていました。これが現場からの訴えです。理解が進んでいるとは言えません。
 目的を変えたことに不安視する声も出ています。
 昨日、参考人からは、水産庁は目的の第一条を変えないと明言していた、それなのに変えた、憤りを感じると述べられました。
 漁業権の優先順位の廃止を不安に思う声も出ています。
 香川県議会が、十月十二日に、水産政策の改革における慎重な検討を求める意見書を出しています。そこでは、漁協が第一順位になっている特定区画漁業権が廃止されれば、漁協は個別に漁業権を付与された漁業権者との調整に関与できなくなると言っています。この意見書は国会にも出されています。
 委員長、議会の意見書の重みを受け止めていますか。こうした声に応え、審議を尽くすのが国会の役割です。現実の漁業法の質疑は全く不十分と言わざるを得ません。私は、臨時国会で廃案にするよう求めますが、少なくとも継続審議にすべきです。
 このことを心を込めて訴えて、堂故茂農林水産委員長解任の決議案に賛成の討論といたします。(拍手)

○議長(伊達忠一君) これにて討論は終局いたしました。

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○議長(伊達忠一君) これより本決議案の採決をいたします。
 相原久美子君外六十八名より、表決は記名投票をもって行われたいとの要求が提出されております。
 現在の出席議員の五分の一以上に達しているものと認めます。
 よって、表決は記名投票をもって行います。本決議案に賛成の諸君は白色票を、反対の諸君は青色票を、御登壇の上、投票を願います。

○議長(伊達忠一君) これより開票いたします。投票を参事に計算させます。議場の開鎖を命じます。

○議長(伊達忠一君) 投票の結果を報告いたします。
  投票総数        二百三十七票  
  白色票           七十二票  
  青色票          百六十五票  
 よって、本決議案は否決されました。(拍手)