<第197回国会 2018年12月6日 農林水産委員会>


◇参考人質疑/公選制廃止に伴う弊害について/適切かつ有効と知事が判断すれば企業に独占されかねないのではないか

○漁業法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

☆参考人
全国漁業協同組合連合会代表理事会長 岸 宏君
公選 宮城海区漁業調整委員   赤間 廣志君
香川海区漁業調整委員会会長   濱本 俊策君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。やっぱり、現場の実情に立って責任ある発言をされているということを感じますし、本当に胸に響く、そういう貴重な発言をいただいたなというふうに思っています。
 それで、先ほども三人の方、発言の中にもありましたけれども、今回の漁業法の改正というのは、五月に政府が水産政策の改革案ということで唐突に出してきて、現場の漁業関係者に丁寧な説明、納得、理解というのが得られないまま今回の国会に出して、七十年ぶりの大改正というふうに言いながら、実際には、本当に、今までやってきたような地方公聴会ですとか現地調査ですとか、現場に行って声を聞くとかということもやらずに、参考人を含めると極めて短い時間でこの国会でやろうということなんですけれども、そういう中で、私たちの下にもいろんな漁業者の関係の皆さんから意見が出てきていて、拙速に決めるなということでの意見が寄せられています。
 それで、本当に聞けば聞くほど、この臨時国会、あと会期末まで僅かという中でやっぱり決めてはいけないというふうに思うんですけれども、こういうやっぱりこの取扱い、法案をめぐる扱い、国会運営の在り方について、まず、漁業調整委員会の濱本参考人と赤間参考人からそれぞれ聞かせていただきたいと思います。

○参考人(香川海区漁業調整委員会会長 濱本俊策君) 紙委員の御質問にお答えします。
 今回、水産庁の進め方、とにかく七十年来の法律改正をたった六か月、六か月足らずかもしれません、それでやってしまう。この現状、ここまで話が来ている。もう後がない状況まで来ているのに、大半の漁業者、十五万人のうちの大半が知らないという。法律の所管は水産庁ですから、勝手にやるんだというのはそれはいいですけれども、現在この法律に基づいて毎日沖に出て生活をしておる漁業者がいるわけです。それに対する事前の説明、これがこうなるという。
 水産庁も法文出しましたけれども、新旧対照表を見られたと思いますが、全く対照になっていない、線が入っておるだけで。よくもまあこんなものをホームページにアップしたなと思います。直ちにこれは変えるべきです。誰が見ても分かりません。私も長いこと法律を基にして仕事しましたけど、これはどうしようもない。そういうことを平気でやって、知らぬ顔をしておるんですね。これはまさしくもう本当に漁業者をばかにしている。我々は別に構わぬにしても、やはりこの法律に基づいて生活しておる人のことを本当にどこまで考えているのかと言いたい。
 これはやり方としてはもう非常にまずいです。必ず法案が通った後、施行が二年先かどうか知りませんけれども、二年を待たずして、そして完全施行は五年先の免許更新ですけど、あちこちで訴訟問題になります、既にクロマグロがなっていますから。漁業権は、御承知のように、妨害排除請求権、いろいろ法的なあれがあります。だから、これはこのままでいくとあちこちで問題になると、そういうふうに思っています。
 以上です。

○参考人(公選 宮城海区漁業調整委員 赤間廣志君) 赤間です。
 私、議論は逃げるべきではないなと。実は私、漁協の組合員になった当時、総会があって、組合長から、赤間君、議長になってくれと。組合長、私、いつも意見を言うから、うるさいから議長にしたんですかと。実際そうだったんでしょうけど、私は組合長に言ったんですよ。組合長、私が議長になったら総会での議論いっぱい上げさせますよと。ここには立派な議長さん、委員長さんがおりますけど、私は言いました。とにかく議論をいっぱい出して、その交通整理をするのがトップの役割ではないかと。したがって、むしろ議論煥発して万機公論に決すべし。だから、私は、もっと議論を出させればもっとすばらしい漁業法になるんじゃないかと、いろんな人たちの意見ね。
 まして、私、先ほど申し上げましたけど、国民の方たちは一切分からない、ゴーンさんのニュースにかき消されて。ですから、やっぱりもっと国会としても、国民の皆さんに、こういう問題がありますよということで、もっと多くの人たちの意見が出るように、そうすれば、この水産庁の掲げた案よりも、もっと全漁連が仕事しやすいような法案が私は出ると思うんですよ。ですから、やっぱり議論は逃げたら駄目だと思います。

○紙智子君 ありがとうございます。
 先ほど、最初に漁業法ができたときに、みんなが本当に沸き上がって喜んで、希望を持ったという話があって、そういうものにすべきだということが心に残っていますけれども、やっぱり本来そうあるべきだというふうに思います。
 それで、もう一つ、これも先ほど出ていたことでもあるんですけれども、公選制を今回廃止するということになっていて、濱本参考人にお聞きしたいんですけれども、実際に今まで海区調整委員会の仕事をされてきて、私たち、具体的にどういうふうに仕事しているのかってよく分からないんですけれども、どういうふうな、やっぱり調整するって大変なことなんだと思うんですけれども、努力があるのか、そして、そういう中で公選制が果たしている役割というか、それがなくなったらどういう弊害なのかという辺りをちょっと話していただければと思います。まず濱本さん。

○参考人(香川海区漁業調整委員会会長 濱本俊策君) 紙委員の御質問にお答えします。
 この公選制につきましてですが、海区の委員十五人のうち九人が公選制ですね。その方たちは、香川の場合は五つのブロックに分けてそれぞれ出てきますから、やはり漁業者代表ですから、地域の要望を持って委員会に来ます。後ろに漁業者がおりますからね、出てきます。それを、やはり委員会でいろいろ意見は出ますけれども、最終的には、全県一区、やはり委員会としての公平な立場での答えを出してくれるようにしています。それで、それをまたやはり自分の浜へ持って帰って、その答えを出し、それからまた必要な調整をする、それが公選制で選ばれた人の自負です、漁業者のみんなに選ばれた。だから、選んだ人はいろんなことを頼みますけれども、それでできること、できぬことありますが、やはり持って帰ってその調整もする、できることはするし、できないことはやっぱりいかぬと、それが公選制の値打ちなんですね。
 これが全て知事になりますと、知事に選ばれた人は、やはり委員会には出てきます。知事が聞いてきたことをそのまま答えて終わりですね。これは普通です、悪いことではないんですが、やはり諮問機関ですから、通常は県から出てきたものに答えるだけの仕事なんです。だけど、それ以上の仕事を今ずっと委員会はしていますから、もうそれができなくなる、それがやはり各浜の活性化にも何もつながらない、要するにいい話が全部出てこなくなります。それから、それが出てきても、地元での調整なり、そういうこともできなくなるおそれが強い、ゼロとは言いません。そういうことなんです。
 以上です。

○紙智子君 赤間参考人にもお聞きします。
 先ほども、塩釜でずっとノリの養殖から始めて、そしてシーフーズあかまを設立をし、ずっと調整委員としてもやってこられているということなんですけれども。
 いただいた資料の中で、先ほども発言ありましたけれども、やっぱり漁業者と漁協の関係って大事なんだと、漁協にはしっかりやってもらわなきゃいけないんだという話と、それから、その中でも宮城の水産特区の話が先ほどもあって、あのとき、私も実は、砂防会館で全国の漁業組合長さん集まって、それこそ全漁連の皆さんも、やっぱりこういうやり方は良くないということで決起集会やっていたときに参加していましたから、そういう現場の声を無視した形でやるということに対しては非常におかしいというふうに思いましたけれども、その特区の結果どうなったかという話もありましたけど、私は、これ、国費も投入して支援をしているということもありますから、やっぱりきちんと検証する、国としてもやる必要があるということも考えているんですけれども、こういうことにめぐっても、どんなふうなお考えをお持ちかということをお聞きしたいと思います。

○参考人(公選 宮城海区漁業調整委員 赤間廣志君) 特区施行後に、日本学術会議で、私もコメンテーター、今水産庁長官をやっている長谷さんもコメンテーター、私と二人出て、各大学の研究者の震災復興に関する研究とかいろいろ発表会がありました。それで、学術会議の指針は、当初、民間の資本を活用してやるべき水産特区が膨大な公費が注ぎ込まれている、これは検証しなければならないという日本学術会議の意見も出ているんですよ。
 それで、私は、本当にこのままいったら投入した五億もったいないなと、だから潰しては駄目だと。この現状を潰さないためには、やっぱり、この新聞にも書きましたけど、要するに、養殖部門を切り離して、それを県漁協傘下に入って漁場を委託と、行使権を。そして販売は、やっぱり販売だけでは、大卸が入っていますから、そういう点では、原料がなければもうそれから譲ってもらうと。
 そして、私、二回フライングを起こしたと言うけど、一つのこの解禁日破りというのは、通常、カキ、むきが始まって新しいカキが出るのは大体九月三十日から十月一日、夏に産卵を終わって、カキの身が回復してむいてもいいというふうになるんだけど、ところが、スーパーとの商談では、我々も経験していますけど、一か月あるいは一か月半前にもう販売計画を立てるんですよ、量販店は。したがって、そういう状況になっても、もう欠品するわけにはいかないと。解禁にはならないけど進もうということでやったと思うんですよ。
 それと、もう一つの他産地品流用、たまたま桃浦の隣接している浜から入札物を買ったのを、大卸系のグループ会社がそれを買って桃浦に販売したと。これも、やっぱり過剰な注文を受けちゃって、いわゆる身に余る注文を受け取っちゃって供給できないという問題からして、そういうフライングを起こしたんですよ。
 ただ、特区認定されたときには、隣接する漁民との協調性を乱してはならないと、いわゆる復興特区法の要件があるんですけど、それにも掛かっているんですよ。村井知事が一生懸命熱心にそれを引っ張った会社が、いや、法は破っていないと。法を破っていなければ何をしてもいいのかと言えると思うんですよね。
 この間も知事記者会見で、漁業法は水産特区を先鞭を着けたということを言ったんですよ。その二、三日後の海区調整委員会で、何だ知事の発言はと、なぜ言うんだと、県議会からも出ました。だから、やっぱりそういう知事がなった場合はかなり私は恣意的に怖いなというのが実感です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 ちょっと時間が。
 それで、今の御発言もあるんですけれども、最後に岸参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどもちょっと出ていましたけれども、適切、有効に活用しているということの意味がやっぱりもろ刃のやいばにならないかなという心配があるわけですよね。
 つまり、今の話のように、知事がちゃんとしっかりして、漁業者のことをしっかりよく分かって、その立場で采配を振るう人だったらいいのかもしれませんけれども、そうじゃない立場だったりすると、もし、それでもって、知事の判断でこれは適切、有効だというふうに判断したら、企業なんかが入ってそのまま、いや、それはちゃんと機能を果たしているということで独占されてしまうということになりかねないかなという心配もあるんですけど、この辺のところはどんなふうにお考えでしょうか。

○委員長(堂故茂君) 岸参考人、簡潔に、恐縮ですが、おまとめください。

○参考人(全国漁業協同組合連合会代表理事会長 岸宏君) 今回の適切かつ有効の解釈、知事が、先ほども同じ質問を受けたんですが、これは既存漁業に対する一つの免許の在り方でありますから、しっかり適切かつ有効に管理しておる漁業者については引き続きやっぱり漁場が利用できるということであります。ただ、その部分の解釈の問題が知事さんがどう恣意的に解釈をするかということでありますけど、私は、そういうことも含めて適切にやっておればまさに継続するわけでありますから、知事さんたるもの、私はそういう例は余り考えられない。ただ、宮城の場合は、たまたま漁協が管理しておったところを特区によって分断したことによってこういう問題が出たと私は認識しています。だから、今後ああいう例はあり得ない、出てこないというふうに私は考えています。
 したがって、有効、適切にきちっとやれば、従来の漁業者がしっかり漁業を継続できるということで私は理解しております。

○紙智子君 じゃ、時間ですので終わります。