<第196回国会 2018年7月13日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇日ロの共同経済活動が合意に至っていない中、国際条約がないのに国内法に書き込んだ事例はあるのかと追及/日本の領土問題の解決につながる否か、懸念が払しょくされておらず、共同経済活動を法文から切り離すべきだと主張。

○北方領土問題等の解決の促進のための特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)
○北方地域旧漁業権者等に対する特別措置に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。法案について質問いたします。
 北方基金は、隣接地域の振興や世論啓発、元居住者の援護事業などに充てられてきましたが、一九九一年の五億九千百万円をピークに減り続けて、来年度は五千九百万円まで減ると。このままでは必要な事業ができないと。その実情をこれまでも訴えられ、私も何度も当委員会で取り上げてきました。ですから、いよいよ基金取崩しまでしなきゃいけないというこの事態というか、は理解できます。その場合、取り崩して原資がなくなればその後どうするのかと。財源の保障を含めた国の責任などについて疑問を持っていましたけれども、附則のところで検討というふうにあって、衆議院で我が党の赤嶺議員の質問で、交付金制度を検討するなどの答弁がありました。
 その上でなんですけれども、北海道の取崩しの規模が毎年五億円程度ということなんですけれども、その時々の事業内容あるいは効果などによって、必要な事業に対して不足する場合も出てくるのではないかと思うんです。例えば、ビザなし交流などで出発する団体を送迎するときに、雨が降っても屋根のあるターミナルもないところで、屋根のないところでみんなぬれながらやってきたと。屋根のあるターミナルぐらいあってしかるべきだということなんですけれども、やっぱりなかなかお金がないということでやれないできていたというか、そのほかにもいろいろあるんですけれども、ずっとそういう意味では我慢の連続だったと思うんです。
 こういう現場の要求に柔軟に対応することが求められているというふうに思うんですけれども、福井大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策)福井照君) この法案によりまして北方基金の原資が取り崩されるということになった場合には、限られた財源が有効に使われるように、北海道の自主性に配慮しつつも、一方で、事業の必要性とか緊急性とか効果とか効率性などについて、より一層の精査が求められるというのが必然であるというふうに考えてございます。
 他方で、今先生がおっしゃいましたように、いろいろな事業ニーズがございます。そして、その時々によりまして事業ニーズの変化がございます。そして、その事業に関しては集中的に投資とかをしないといけないという場合もあるとも存じております。いろんな場合に応じまして、機敏に機動的に、必要なものは必要に応じて事業をしなければならないというふうに存じているところでございます。
 そのような場合には、北海道において、隣接地域の自治体や元島民等関係者の意見もよく伺った上で、毎年度の支出計画の事前協議の段階で御相談いただければ、内閣府としても丁寧に、先生のおっしゃるように丁寧に対応してまいりたいと存じております。

○紙智子君 これまでも北方領土返還運動の拠点の地としての役割を担ってきた隣接地域の位置付けと、やはり今後の役割など国の考え方についても明らかにするのが必要だというふうに思います。加えて、北方地域旧漁業権に対する特別措置に関する法律の一部改正については、これ、融資者の対象枠を広げることについては賛成できるものです。
 さて、新しく、今回、第二条に特定共同経済活動の定義を書き込んだ趣旨はどのようなことか、また、第三条で特定共同経済活動の円滑な実施のための環境整備を含むと書き込んだ趣旨について法案提出者にお聞きしたいと思います。

○衆議院議員(沖縄及び北方問題に関する特別委員長代理 渡辺孝一君) 現在、日ロ間で交渉が行われております北方地域における共同経済活動に関し、隣接地域に住む元島民の中には、北方地域における共同経済活動だけが今後進展し、北方領土隣接地域の振興がこのまま置き去りにされるのではないかと懸念する声があります。本法案の提出者として、このような元島民の声は無視できず、今後、日ロ間で共同経済活動を進めるに際しても、それと同時並行に北方領土隣接地域の振興を図っていくことが必要であり、北特法の目的にも合致すると考えております。
 そこで、今後行われる共同経済活動が北方領土隣接地域に裨益する形で、あるいは北方領土隣接地域の振興策の新たな契機として実施されるよう、共同経済活動のうち主として隣接地域の経済の活性化に資するものとして主務大臣が定めるものを特定共同経済活動と定義し、その円滑な実施のため、その隣接地域の環境整備が同地域の振興に含まれるものと位置付けつつ、国、北海道及び北方領土隣接地域がその環境整備に努めるものといたしました。

○紙智子君 北方領土隣接地域の自治体が、共同経済活動が始まったら地元を置き去りにされることがないようにというふうに言うのは、私は当然の意見だというふうに思うんですね。
 ただ、しかしながら、第二条のところで共同経済活動そのものの定義を書かなかったのはなぜなんだろうかと。共同経済活動はまだ合意に至っておりませんし、署名も終わっていないと。まだ両国が合意に至っていない、それなのに、どうしてこの共同経済活動という言葉を使って書き込んだのかということについて伺います。

○衆議院議員(沖縄及び北方問題に関する特別委員長代理 渡辺孝一君) 共同経済活動の内容につきましては、両国間で早期に取り組むプロジェクトとして五件の候補が特定されているものの、現在も日ロ政府間で協議中であると承知しております。このような日ロ両政府は緊密な交渉を重ねており、共同経済活動の実現に向けた検討が継続されている事実を改正法の立法事実として捉まえることは可能と考えております。
 そして、今後正式に合意され、近い将来行われる共同経済活動が北方領土隣接地域に裨益する形で実施されるべきことを明確にするため、あえて共同経済活動について規定することとした次第でございます。

○紙智子君 交渉が継続していることをもってあえてという話があったんですけれども、今まで国際条約がないのに国内法に書き込んだ例があるのかなと。例えばTPPなんかは、大筋合意があって署名がなされて初めて国内法に書き込まれるわけです。
 具体的な内容が決まらないまま国内の法律に書き込むというやり方は、これまで事例としてあるんでしょうか。

○衆議院議員(沖縄及び北方問題に関する特別委員長代理 渡辺孝一君) 調べた限りでは、委員御指摘のような立法例は見当たらなかったと承知しております。

○紙智子君 そうなんですよね。
 日ロの交渉というのは、領土問題という主権が懸かったことの交渉なわけであります。主権が懸かるような交渉で合意されていないことを法文に書き込む例はないわけです。交渉で合意された時点で本来書くべきであって、やっぱりどうしてそれを今回書き込んだのかというのは非常に私は疑問でありまして、これ、かなり無理をしたんじゃないのかなという思いがあります。
 それで、二〇一六年の十二月の首脳会談では、特別の制度の下での共同経済活動について交渉を開始するということで合意をしたと。その際、日ロ双方の法的立場を害さないことが大前提というふうに言われているわけです。
 ロシア側が、しかしながら、これはロシアの主権の下で行われるんだと繰り返し表明しています。ラブロフ外相は、我が国には経済特区がある、ロシアの法制度に基づいて優遇措置を与える、規模が大きくなって現行制度で対応できない場合は追加措置で日本と特別な政府間合意を結ぶ用意がある、これ報道ですけども、こういうふうにも言っている中で、本当にこれ主権を侵さないような共同経済活動ができるんでしょうか。

○衆議院議員(沖縄及び北方問題に関する特別委員長代理 渡辺孝一君) 平成二十八年十二月十六日の日ロ首脳会談の際発表されましたプレス向け表明におきましては、日ロ双方は、この声明及びこの声明に基づき達成される共同経済活動の調整に関するいかなる合意も、また共同経済活動の実施も、平和条約問題に関する日本国及びロシア連邦の立場を害するものではないと記されており、日ロ双方の法的立場を害することのない形で四島における共同経済活動が実施されるものと承知しております。提出者としては、このような政府の立場を前提として本法案の施行をするものと考えております。
 また、衆議院沖縄北方特別委員会における本法案の起草に際し、北方四島における共同経済活動については、平和条約問題に関する日ロ双方の法的立場を害さない形で行われることを必ず確保することとの委員会決議が行われており、これは提出者の決意を端的に表しているものであると思います。

○紙智子君 お互いの法的立場を害さないことを必ず守るという立場ということを答弁されました。これは大変重いというふうに思います。
 それで、法案は、現在行われている交渉がどうなるのかということについて、この法案が日本の領土の問題の解決のためにつながるのか、あるいはロシアの実効支配に道を開くことになるのかならないのかというのは懸念が払拭されていない中で、私自身は、やっぱり切り離すべきだったなと思いますけれども、しかし、今後のこの交渉経過にも十分注視していく必要があるんだということを改めて指摘をいたしまして、質問を終わります。