<第196回国会 2018年6月19日 内閣委員会、農林水産委員会連合審査会>


◇TPP11参加国の理解は得られているというセーフガード措置の見直しについて、確証できる根拠の提供を求めた/TPP11へ突き進む日本政府の対応は、国民置き去りの姿勢が際立っていると批判/TPP11に関する質疑の場を、再度設けるよう強く要求

○環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、昨日の大阪北部地区の地震で亡くなられた方々に哀悼の意を申し上げますと同時に、被害に遭われた皆様に心からのお見舞いを申し上げたいと思います。
 質問に入ります。ちょっと十五分という短い時間ですので、答弁はできるだけ簡潔にお願いいたします。
 マレーシアの首相に復帰をしたマハティール首相が来日をされ、講演をいたしました。日経新聞に要旨が掲載されていますけれども、環太平洋連携協定、TPPは再交渉が望ましい、一方、以前から議論にある東アジア経済協議体の実現を真剣に考えるべきであるというふうに言っておられるようです。この発言は事実なのか、そしてTPPは再交渉が望ましいと言われたようですけれども、なぜこういう発言をしたのか、茂木大臣にお聞きします。

○国務大臣(茂木敏充君) 報道については承知をいたしておりますが、マハティール首相がなぜ発言をされたかについては、是非御本人に御確認いただきたいと思います。

○紙智子君 当然、そういうことにも気を配られて、関心を持たれるべきだと思います。
 マハティール氏は、産業には一定の保護を与えることが公平な競争にとって必要だというふうにも言われたことが報道されています。TPPに懸念を表明し、自国の産業を守る発言だというふうに思うんです。日本はTPP11の交渉に当たって、この農林漁業、そして食の安全、安心、地域経済に大きな影響が出るということで、国民や自治体や農家から懸念する声が出ても、見直しも再交渉も求めなかったという点では大きな違いがあるというふうに感じます。
 日本がはっきりと見直しを求めないから、カナダは対日輸出でも八・六%増加する、その大半が農林水産物だというふうに言っているわけです。ニュージーランドも対日輸出は乳製品で八四・九%から一一九%増えるとしているわけですね。対日輸出が増えるという影響試算が出されると、国会決議が守られたということになるのかというふうに思いますし、TPPで合意したラインが守られるのかどうかも分からない、こういう不安が出るというのは当然ではないんでしょうか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 例えば、カナダの豚肉、牛肉の試算等、委員も御覧いただいているかと思いますが、価格がどう変化するかと、こういったことに対する前提全く置かずに数字だけが出てくるというものでありまして、その数字につきまして、それが正しい、間違っている、特に他国の試算でありますから、そのことについてはコメントは控えたいと思います。先生もこれが、カナダの試算が正しいという根拠をお持ちでしたら、是非御質問ください、そのように。

○紙智子君 その答弁は本当にもう、本当にがっかりしますよね。私が言っているんじゃなくて、多くの国民の皆さんの疑問だから質問をしているわけでありまして、そういう皆さんに今のような答弁されるんですか。全く失礼だというふうに思いますよ。
 TPPの見直しや再交渉を求めることもなく、このTPP11に突き進んだと、これは国民を置き去りの姿勢だと、本当に際立った姿勢だというふうに言わざるを得ません。その点では、TPP11の見直し条項にも表れていると思うんですね。
 私は本会議の質問の際に、総理に対して、牛肉や酪農製品を含む関税割当て数量及びセーフガード措置の発効数量などについてお聞きをしました。安倍総理は、協定の第六条では、米国を含めたTPPが発効する見込みがなくなった場合等には、締約国の要請に基づき協定の見直しを行うと規定している。米国からの輸入量も念頭にTPP12協定で合意された個別の関税割当てについて、我が国として第六条に規定する将来の見直しの対象と考えていると。で、各国に明確に伝え、明確に伝えと、十分理解を得ていると考えていますという答弁をされたんですよ。
 そこで、六月十四日の農林水産委員会で、各国に対して明確に伝え、十分理解を得ていると言われるのであれば、合意文書はあるのかというふうに聞きました。そうしたら、光吉内閣府の審議官は、合意文書も記録もないというふうに答弁されたわけですよ。そうなんですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 委員の方からできるだけ簡潔にというお話がありましたんで、できるだけ簡潔な答弁に努めてまいりましたが、できる限り説明が十分足りるように御質問にお答えをさせていただきたいと思います。
 我が国としては、各国に対して第六条を発動する必要が生じた場合、TPP全ての締約国を対象とした関税割当て数量及びセーフガード措置の発動基準数量を見直すと何度も明確に説明し、そのような修正を行うことについて理解が得られていると認識をいたしております。
 この問題につきましては、昨年三月、チリでの首席交渉官会合以降、首席交渉官及び澁谷統括官から会合のたびに、あるいは関係国の首席交渉官が来日をするたびに説明をし、各国の理解を一つ一つ得てきたところであります。こうした累次の会合での説明を経て、昨年十一月のダナンでの閣僚会合での直前、舞浜での首席交渉官会合までの間に主要国から事務レベルでの理解を取り付けたものと承知をいたしております。
 その上で、最終的にダナンでの閣僚会合では、これまでの事務レベルでの理解を得ていること、これを踏まえ、確認の意味で、先ほど申し上げた趣旨を私から閣僚会合で出席閣僚に説明をいたしました。当時私はアイン商工大臣、ベトナムの商工大臣とともに共同議長を務めておりましたが、共同議長であるが、一旦ここでは共同議長の立場を離れて日本の担当閣僚として発言したいということでその旨の発言をいたしておりまして、各国の出席閣僚からは一切反対がなかったものであります。
 TPPでの国際約束、これは協定や条約等の合意文書でありまして、TPP11の合意内容、今後どのように見直していくかは第六条の見直し規定と各国の信頼関係に基づき協議をする中で決まっていくものでありまして、信頼関係につきましては先ほど詳しく答弁をさせていただいた次第であります。

○紙智子君 全く分からないんですよね。
 何回も繰り返し説明したという話はされるんだけれども、そういうふうに言われるのであれば、今、茂木大臣言われました、閣僚会議の中で私からも明確に申し上げたと、しっかりと担保しているんだと、記者会見のときには自信を持っているというところまで言われたわけですけれども、担保していると言うんだったら、この確認できるものを出してくださいよ。担保しているんでしょう、自信持っているわけですから、出してくださいよ。

○国務大臣(茂木敏充君) 十一月のダナンでの閣僚会合一回だけでなくて、先ほどから申し上げておりますように、昨年の三月以来、我が国としてどのような見直しを考えているかということにつきましては、首席交渉官さらには澁谷統括官の方からも、累次の首席交渉官会合若しくは首席交渉官が日本に来日等するたびにお話をしておりまして、それを踏まえた上で、最終的に確認の意味も含めて全閣僚がそろう場で私の方から閣僚会議で説明をさせていただいたということは間違いございません。

○紙智子君 時間ばかり食っているんですけど、出すものを出していただければ分かる話じゃないですか。反論はなかったと言われるんだけれども、そんな反論がなかったからといって相手の国がみんな理解したかって分からないじゃないですか。(発言する者あり)そうですよ。自信持っていると言うんだけれども、これ独り善がりじゃないんですか。
 ましてや、今の安倍政権で大臣の発言を信じろと言われても誰が信じますか。森友学園、加計問題、文書の改ざん、そして防衛省の日報問題でも情報は隠す、労働のデータは捏造する、国民の信頼関係の回復が大事だと言うのであれば、そしてまた今度のTPPの国内手続を完了したいと言うのであれば、担保が確証できるものを出すのが国内手続を終える前提じゃないんですか。いかがですか。

○国務大臣(茂木敏充君) 閣僚会合におきましては明確にその旨の発言をさせていただいております。そして、それは真剣な閣僚会合でありましたから、各国の閣僚の皆さんもその声はきちんと聞いていたと、間違いなく聞いていたわけであります。そして、それは信頼関係に基づくものでありまして……(発言する者あり)

○委員長(柘植芳文君) 質疑者以外の方は御静粛に願います。

○国務大臣(茂木敏充君) 外交上の交渉、こういったものは全て、全て記録に残すというよりもですね……(発言する者あり)ちょっと静かにしてもらえます。答弁しているので静かにしてください。真面目に答弁しているんですから。

○委員長(柘植芳文君) 質疑者以外の方は静粛に願います。

○国務大臣(茂木敏充君) きちんと発言をさせていただき、そして、各国の閣僚との間では、累次申し上げているような信頼関係があるということでございます。(発言する者あり)

○委員長(柘植芳文君) 速記を止めてください。

   〔速記中止〕

○委員長(柘植芳文君) 速記を起こしてください。

○国務大臣(茂木敏充君) ダナンにおけます閣僚会合、これ閣僚会合に入ります前に、各国の間で正式な議事録を作るという合意もいたしておりません。そして、閣僚会合が終わった上で、各国が確認した議事録というものもございません。ただ、それぞれの各国は、そこの中でどういう発言があったかと、そこについてはしっかり確認をしていると思っております。
 その上で申し上げているのは、最終的な合意というものはこの協定であったりとか合意文書ということになるわけでありまして、それに沿って見直しは信頼関係に基づいて行われるものだと思っております。

○紙智子君 全く納得できません。
 委員長、これ担保が確証できる文書を提出されるように求めておきたいと思います。よろしくお手続ください。

○委員長(柘植芳文君) ただいまの件につきましては、後刻理事会で協議をいたします。

○紙智子君 時間もったいないので、次に行きます。
 牛肉のセーフガードについてお聞きします。
 TPPとTPP11の発動基準について、これが一つです。もう一つ併せて聞きますけれども、牛肉の二〇一三年以降の日本の生産量と、TPP11とアメリカからの輸入量について、ちょっと簡潔に説明いただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) お答え申し上げます。
 TPP12協定におけます牛肉セーフガードでございますけれども、TPP国からの合計輸入量が発動基準数量を超えた場合に、基本的には年度末までにセーフガード発動時の税率を適用するというものでございまして、基準数量は発効初年度が五十九万トン、その後二%増又は一%の増で拡大し、関税削減の最終年度である十六年目においては七十三・八万トンに設定、セーフガード発動時の税率は発効初年度から三年目までが三八・五%、その後十五年目には一八%と、その間段階的に設定されてございます。TPP11協定におきましても、TPP12協定と同様のセーフガード措置が措置されてございます。
 また、国内の牛肉の生産量、輸入量でございますけれども、まず国内の生産量、二〇一三年度の三十五万四千トンから毎年減少してまいりましたが、二〇一七年度は三十三万トンと、前年度を僅かに増加してございます。輸入量でございますけれども、二〇一三年度以降、年により増減してございますが、TPP11の参加国からは三十一万七千トンから三十四万トンの範囲、また、アメリカからは、年によって振れておりますけれども、十六万四千トンから二十三万一千トンの範囲で推移してございます。

○紙智子君 TPP11が発効すると、セーフガードの発動数量は発効時で五十九万トンということですね。二〇一六年のオーストラリアの輸入は二十七万八千トン、輸入量が二倍になったとしてもセーフガードは発動されないことになるわけです。一方、アメリカの輸入量は二〇一六年二十万八千トン、オーストラリアを含むTPP11の輸入量は三十一万七千トンですから、合計すると五十二万五千トン、あと六万トン増えるとTPPでセーフガードの発動基準ということになるんです。ところが、TPPからアメリカが抜けたために発動数量にアメリカはカウントされないと。TPPの最初の年度の発動数は五十九万トンですが、TPP11の輸入量とアメリカの輸入量を合計すると六十万トンに達してもセーフガードは発動されないと。これはもうセーフガードの意味がなくなるんじゃないですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) セーフガードは、関税削減に伴う輸入急増への歯止めということで措置をするものです。
 御指摘のように、今回のTPP11におきましては、牛肉の輸入量の約四割を米国が占めておりますので、TPP11のセーフガードの発動基準数量に、米国が抜ければ到達をすると、そして輸入急増が生じるということはしにくくなるだろうと考えておりますけれども、TPP11の発効による国内生産に与える影響は、米国には引き続き現行の高い関税率三八・五%が適用されるということを考えれば、全ての主要輸出国の関税率が削減されるTPP12の範囲内に当然とどまるものだと考えております。

○紙智子君 カナダ政府は、セーフガードの発動基準量がかなり大きいから、牛肉のセーフガードを発動されることにならないというふうに断言しているんですよ。一方、アメリカの畜産団体は対日輸出を強く求めていると。セーフガードがあるからといっても全く安心できない。
 今日、茂木大臣が出席した連合審査を行いましたけれども、明確な答弁がありませんでした。総理は丁寧に説明すると言ってきたわけで、これもう極めて不十分だということでは、引き続き、こういった質疑の場を是非つくっていただきたいということを強く求めまして、質問を終わります。