<第196回国会 2018年6月15日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇沖縄経済の基地依存度の低下について/沖縄振興一括交付金の4年連続の削減について/辺野古新基地建設が沖縄高専の学習環境に与える影響について

○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査(沖縄振興等に関する件)

☆参考人
  沖縄国際大学経済学部教授 前泊 博盛君
  沖縄工業高等専門学校長 安藤 安則君
  一般社団法人沖縄県子ども総合研究所所長 堀川  愛君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。とてもいい話を聞かせていただいて、うれしく思いながら。
 それで、六月二十三日というと慰霊の日ということで間もなくということなんですけど、県民の休日になっているということなんですけれども、我々自身もそこのことはしっかり自覚をしなきゃいけないんだろうというふうに思います。
 それで、最初に前泊参考人にお聞きしたいんですけれども、先ほどの浜口議員とのやり取りにも関わるんですけれども、やっぱり沖縄の経済の発展ということを言うときに、基地問題というのは切り離して考えられないというふうに思うんですね。
 それで、やっぱり基地の返還されてくると、これに対しての、効果的な基地の跡地利用によって経済が何倍にも発展するという話も証明されているということがさっき紹介がありました。それで、それだけにということで、また先ほどの前泊参考人の発言になるんだけれども、県自身はもっとこの依存度が、基地の経済への依存度が下がっていくということを分析しているわけなんですけれども、やっぱりまだまだ中には、そうはいっても基地に依存して成り立っているんじゃないかというふうに思っている人も多くて、その辺をやっぱり克服していかなきゃいけないということを思うし、その辺は私たち国会議員自身もしっかり自覚してちゃんと国民に広げていかなきゃいけないと思うんですけれども、その辺りのところをどうやってアピールしていくのかというところをお話しいただきたいということが一点。それから、あっ、後でまたもう一回。
 じゃ、まずそのことについてお答え願います。

○参考人(沖縄国際大学経済学部教授 前泊博盛君) 基地問題については、この基地が何のためにあるかという議論がまず欠落をしていると思います。
 沖縄は、占領されて、いわゆる講和条約が結ばれた後、沖縄は日本から切り離されて、そして基地がどんどん造られていきました。そして、ほとんどの、在日米軍の専用施設の七〇%が沖縄に集中をしている状況の中で、本当にこれが経済の上ではプラスなのかどうか、その検証もありますけれども、そもそもがその沖縄にある基地は何の役に立っているのかという検証が必要だと思っています。
 沖縄にとっては、侵略をされ、あるいはその抑止力になると言われている米軍基地が、もうこれまで、復帰後四十六年間だけでも六千件ですね、の犯罪の起こしている場所になっていると。その上、もう一割近い七百五十件ぐらいが凶悪犯罪です。一人でも二人でも、何人もの人間が殺され犠牲になっているにもかかわらず、この基地が沖縄を守ってくれているとは県民のほとんどが思わないと思います。これだけ犠牲になっている問題に対して、あるいは爆音被害に対して、救済を求めても聞く耳を持たないこの国って何だろうというふうに思ってしまいます。
 そして、もうかるというのであれば、これは翁長知事が言っていますけれども、そこまで言うのであれば、じゃ引き取ってくれというふうに全国の皆さんに訴えていますけれども、誰も引き取ろうとはしないと。安全保障はこの国の問題だといいながら、沖縄以外のところはなぜ手を挙げてそれを引き取ろうとしないのかという議論の問題ですね。そして、もうかるというのであれば本当にそれを引き取ってほしいというような話になっています。
 それから、基地経済についてはもう何度も、返還されてきた跡地を見れば、残念ながら失敗しているところがないんです。全て成功しています。そういう意味では、もう基地は返還された方がいいというムードが沖縄の中にも出てきています。
 これに対して、基地がなければやっていけないでしょうということで、むしろ基地に関連するような予算を増やしてきていると、これはどういうことなのかと。今日のレジュメの中で、ちょっと小さい字で消えてしまっていますけれども、グラフの中で青とオレンジの線、このオレンジの線が沖縄防衛局の予算です。そして、青い線が内閣府の予算。振興予算の中で、これは実際に受けている沖縄県の建設業協会のデータですけれども、なぜ脱基地を図ると基地経済の方がぐんと膨らんでくるのかと。こういうことが、やはりこの国の品格を問われるようなことが沖縄で行われているような気がします。せめて、基地から抜けたいというのであればそれをサポートするような、そういう政策をしてほしいなというふうに思っています。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございます。
 やっぱりこの提起を受けて、本当に真剣に我々自身が深めていくというか、何でこういうことになっているのかということは真剣に議論しなきゃいけないということを改めて痛感します。
 そしてもう一つ、今、予算の使い方についてもお話があったわけですけれども、私はやっぱり、今年の沖北、この委員会でも質問の中でやりましたけれども、やっぱり沖縄の経済の振興に対して必要な予算ということでつくられているはずなんだけれども、例えば一括交付金というのは、使い勝手がいいということで言われて、先ほども話があったように、離島対策で必要なところに使いたいとか、子供たちの教育にもっと使いたいとか、そういうやっぱり県民にとって本当に必要だと思うところに県自身が使いたいということで使い勝手がいいというのはすごくいいと思うんだけれども、ところが、そこのところがこの四年連続で削られているという問題があって、何とも自分の中でも納得いかないという思いなんですけど、今、民主主義の在り方、政治の在り方にも関わるというふうにおっしゃったと思うんですけれども、これについても一言、要望があればお聞きしたいと思います。

○参考人(沖縄国際大学経済学部教授 前泊博盛君) 一括交付金については、不要な予算を減らして必要なところにちゃんと使えるように、地元が一番そのニーズを知っているわけですから、そのニーズに合わせた使い方ができるように自由度を増やすというのが一括交付金のはずだったんですが、その一括交付金でやりたいという要望に対して、本来自由度があるはずなのに、なぜか内閣府が口出しをして使えなくしてしまうとか、そういうこともあるというふうに市町村から聞いています。
 であれば、例えば今回、再編交付金では給食費が無償にできたりあるいは保育料が無償にできたりするのに、なぜ、じゃ、一括交付金はそういう使い方ができないのかという問題になるのかもしれません。国の予算の在り方として、自由度をむしろ高める形で再編交付金、防衛予算が下りてくるのに、なぜ一般財源の方はそういう使い方ができないのかという、こういう意図的な方向性を持ったような予算をなぜ認めているんだろうという疑問もありますね。その辺りの税金の使われ方についても、再度検証してほしいというふうに思っています。

○紙智子君 ありがとうございました。この後、生かしていきたいと思います。
 それから、安藤参考人にお聞きします。
 すごく興味、関心の湧く資料がありまして、先ほどもお話にありましたけれども、高専でいろいろなことを試みていて、私は農林水産委員でもあるものですから、沖縄の高専で、製粉とか食品会社とかこういうところ四者の連携で、桑の沖縄在来種の島桑を使っておそばとか作っているとか、食品開発なんかもやっていると。それで血糖値を下げるとか糖尿病の予防が期待されるということで、商品普及を続けていけばこれは養蚕の活性化にもつながるというふうなことで、そういうふうに広がって、製造業が非常に育っていないという話もある中で、こういうことを是非広めていくというか発展させる必要があるんだろうなと思いながら見たんですけれども、それをめぐっての学生の取組でちょっと紹介していただければと思います。学生さんがどんなふうに取り組んでいるのかということで紹介いただけたらと思います。

○参考人(沖縄工業高等専門学校長 安藤安則君) 御質問ありがとうございます。
 今御指摘のいわゆるバイオとか生物資源関係の分野に関しましては、全国五十一国立高専ございますけれども、バイオを前面に出した学科を持っているのは実は沖縄高専しかなくて、特に今御指摘のように、島桑とかあるいは月桃とか、沖縄の植物をより高機能化図る、そういう機能性食品の開発、これに関しては教職員も非常に、どういいますか、前のめりなんですが、学生たちも非常にその辺は興味を持っているというのは、例えば、先ほど申し上げたように、一年生からPBL教育といういわゆる問題解決型演習といいますか、それをやっておりますので、一年から例えば月桃を使ったら何ができるんだろうか一緒に考えていこうという教育をやっていますと、五年たちますと、じゃ、私はそっちの方に行きたいというふうな学生も結構増えてきます。
 それと、もうちょっとプリミティブなことを申し上げると、生物関係ですと白衣を着るんですね、一年生ぐらいから。そうしますと、やっぱりその白衣も非常に、何というんですかね、機械だと白衣は着なくて、汚れてもいいんですが、そこのところは微妙に女子学生が多くて、学生の半分が女子学生です。そういうこともあって、この生物関係の分野に関してはこれからどんどん伸びていくんじゃないかと。
 それとともに、例えばオリオンビールさん辺りも新しいいろんな仕掛けなり、あるいは私どもの学生がオリオンビールさんに就職させていただくとか、あるいは沖ハムさんとか、そういうところに入ることによって、今まではトライされなかった新しい開発をやろうよという意見、お話も聞きますので、徐々にそういうのが広がっていくんじゃないかというふうに期待しております。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございます。
 もう一つ聞きたかったんだけど、ちょっと時間がなくなってきちゃったので、堀川参考人にお聞きします。
 子供の貧困問題について、一五年の十月に沖縄県として独自のアンケート調査をやって、一六年の一月に子供の貧困実態調査の中間報告ということで発表されて、最初に見たとき私、本当に、はっと思ったんですね、あっ、こういうことを県でやれるんだというか。全国に先駆けて沖縄県がやられて、そのやっぱり中身を見たときに、本当に子供の育ちに待ったなしという覚悟を決めてやったということで、すごくリアルな県内の貧困状況がそこに出されていて、そういうことがやっぱり深く認識されて初めてやらなきゃいけないというふうにもなると思うし、この沖縄の取組が、例えば私、北海道なんですけど、北海道でもちゃんとやろうという話が出されてきていたりとか、影響を与えているというふうに思うんですね。
 それで、そのことも踏まえた対策、その後のこともあるんですけれども、さらに、昨年三月に今度高校生の調査もされているということで、その高校生の取組なんかもちょっと児童とまた違う側面もあると思うんですけれども、その辺のところで、やっぱり貧困の連鎖を断ち切るというところでの問題、そして対策ということでは国に対しての要請も含めてお聞かせいただけたらと思います。

○参考人(一般社団法人沖縄県子ども総合研究所所長 堀川愛君) 高校生調査についてで特徴として見られたものは、先ほどから何度か出ておりますが、沖縄県内、公共交通機関が本当に未発達というか、だんだん当然バス利用も減っていく中で、バスの本数が南部地方であっても一時間に一本だったり二本だったりという中で通学しなければならない実態というのは、本当に本島、日本の内地の皆さんからすると想像できない話かと思うんですね。なので、本当に家の近隣、歩いて行ける、自転車で行ける範囲の高校しか選択できない。
 その中で、先ほどからも産業の話も出ておりましたが、例えば内地であっても、例えばいわゆる学力的に厳しいお子さんたちがおられたとしても、それは工業、商業高校でしっかり手に職を付けるような学びを三年間しまして、その地域に近接する商業、工業地帯へのきちんとした就職という人生ラインが引かれていたりするんですね。沖縄県の中で、先ほどからも、やっぱり産業未開発であることが、高校に行く交通手段の厳しさに、更に将来選択の狭さというところで、もう高校に行ったって就職がないじゃないかということで、中退してもいいんじゃないかと考えている子供たちというのはやはり多く見られる傾向にあります。希望がないんですね。イメージでいうと、今日は関東圏なので関東でいうと、例えば川崎、工業、商業さんの生徒さんは川崎の工業ラインのところの企業なんかを目指していたりとかできるんですけど、県内、そういった企業ございません、ほぼ。
 なので、自分たちが何のためにここで学んでいるかが分からなくなってきたみたいな声も出てきているのかなというのはあります。これは、沖縄、特徴的なのかなと思っております。

○紙智子君 本当に、そういう意味では、この問題もしっかり私たちも捉まえてやっていかなきゃいけないと思います。
 ちょっと気になっていて、どうしても安藤先生にもう一問だけ聞きたいのは、高専の裏の方に、基地の建設をめぐって、そのもし基地ができた場合には安全基準とか基地周辺の建物の高さ制限というのが掛かってくるということで、オスプレイなんかも飛んでいるということなんで、学生の学ぶ環境にとっては本当に心配だなと思うんですけれども、一言、それ最後、お聞きしたいと思います。

○参考人(沖縄工業高等専門学校長 安藤安則君) 御質問ありがとうございます。
 高さに関しましては、新聞報道等でいろいろ報道されていると思うんですが、私どもとしては、この沖縄防衛局からも説明を受けているとともに、小野寺防衛大臣も国会で、私どもの沖縄高専の建物の高さ制限は、対象にならないと答弁されているというふうに聞いております。
 私どもとしては、こういう学生の静穏な環境で勉強と研究に専念できる体制を確保するのが第一でございまして、今後も沖縄高専の敷地及び周辺の上空において米軍機のできるだけ飛ばないように、これは大学コンソーシアム沖縄という一つのコンソーシアムでも毎年記者会見でお話ししていますけれども、そういう流れの中で各機関等にお願いしていきたいと考えております。

○紙智子君 ありがとうございました。終わります。