<第196回国会 2018年6月12日 農林水産委員会>


◇卸売市場の公的位置付けが後退することになりかねないと指摘/卸売市場法の枠組みに風穴を空ける重大な問題だと主張

○卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず初めに、この間の行政と国会の関係について言いたいと思います。
 私たち、農林水産委員会で、審議に当たっては、与党に三つのことを提案してまいりました。その一つは加計学園の疑惑を解明するために関係者を参考人として農水委員会に呼ぶということと、二つ目はTPPの集中審議をするべきであると、三つ目はTPPの連合審査を行うと。与党からは、このどれに対してもまだ回答されておりません。一方、会期末が近づいたら法案審査を行うということで、結局、都合の悪いことは審議を拒否するし、法案だけは審議すると。これはおかしいと思うんですね。
 TPPについては、今日、外交防衛委員会でTPP11協定案が採決されることが決まっているわけですよ。TPPは農林水産委員会が最も大きなこれ影響を受けるわけです。国会決議を守ったかどうかと、これが大きな焦点になるわけです。日豪EPA協定のときには、外交防衛委員会とこれ連合審査を、採決される前にやったんですよね。野村先生がそれをセットしてくれたと思うんですけれども、やったんですよ。
 政府は、国会決議を守ったかどうか、これ何度聞かれても、それは国会において判断いただくというふうに言われたんですね。で、決議を上げたのは、ほかのどこでもない、この農水委員会なんですよ、衆参で。ここで決議上げたんですよ、重要五品目守られるのかと。守られなかったら撤退若しくは再協議と言っていたんですよ。それがどうなのかということをやっぱり審議しなきゃいけないんですよ。そうしなければ回答が出てこないわけです。(発言する者あり)

○委員長(岩井茂樹君) 静粛に。

○紙智子君 で、与党は、TPPが外交防衛委員会で採択される前に審議することを何で拒否するのかというふうに思います。これでは、政府だって説明責任が果たせなくなるんじゃないでしょうか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 私どもとしては、このTPP11の協定、関連法案、あるいはその他の法案につきましては、慎重に御審議をしていただいた上で迅速に可決していただけるよう政府として努力をするということに尽きるわけでありまして、国会の運営について私の方からちょっとコメントすることは差し控えさせていただきたいなというふうに思っております。

○紙智子君 加計学園問題もそうですけれども、与党が政府の説明する機会を奪っているんじゃないかというふうに思いますし、この行政と国会の関係がどんどん崩れつつあるんじゃないかというふうに言わざるを得ません。本当にこれは国民も受け入れられないというふうに思います。
 法案に入ります。卸売市場法についてですけれども、この改正案は卸売市場法の目的を大きく変えるものだと思います。
 現行法で二つ柱があります。一つは、卸売市場の整備を計画的に促進するための措置、それから二つ目は、卸売市場の開設及び卸売市場における卸売その他の取引に関する規制等について定めると。この二つの柱を据えることによって生鮮食料品の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化を図るということが目的になっているんですけれども、なぜこの二つを柱に据えたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) まず、卸売市場の整備を計画ということでございますけれども、昭和五十九年以降、中央卸売市場の新設がないといったように、既に全国的に卸売市場が整備をされておりまして、国や都道府県が主導をして新たな卸売市場の計画的な整備を行っていくという状況はないことを踏まえまして、今回の改正におきましては、卸売市場の整備を計画的に推進するための措置については、その仕組みを廃止をすることとしたものでございます。
 また、現行の卸売市場法におきましては、卸売業者の売惜しみ、買占めによる価格のつり上げ等を防止する観点から、卸売市場の開設について、農林水産大臣等による許認可制とするとともに、卸売業者についても大臣が直接許可をするという仕組みを取ってきたわけでございますけれども、現在では、買手と売手の情報格差がなくなり、売惜しみ等による価格のつり上げがしにくい環境になっていること、また、市場外を含めて流通の多様化が進んでいると、こういった状況にありまして、こうした中で、今回の法案におきましては、卸売市場の開設や取引等について、国が一律に細々と規制を課すという仕組みから、公正な取引の場としての必要な要件を満たす卸売市場を認定をした上で、その他の取引ルールについては市場ごとに実態に応じて柔軟に設定できる仕組みにしたものでございまして、こうした改正内容に即して目的規定においてもその内容を見直したところでございます。

○紙智子君 ちょっと今の、今回の改正と、それからこれまでのやつとごちゃごちゃにして言っているのですごく分かりづらい回答だったんですけど、要は、昭和四十年代以来、価格がつり上げられるような状況があったということがあって、その消費市場の整備と、卸と仲卸の取引規制を作るということで価格形成を行うためにこの二つの柱を据えたんだと思うんですよ。
 ところが、今回、改正案では、目的の中から卸売市場の計画性と規制という言葉がなくなっているんですね。なくなるわけです。それで、卸売市場を公の管理に移したのは、まあ言わば、問屋による米の買占めとか価格のつり上げに反発をした大正時代の米騒動がきっかけだったということですよね。その後、幾つか改正を経た上で、計画性ということと取引規制と、この二つを柱に据えて現在の卸売市場法ができたんだと思うんです。
 一方、実情に応じてあるいは規制緩和措置として、市場外流通が増加をしたり、あるいは開設区域外への搬出量が増えているなど、新しい課題もあると。今回の改正案は、じゃ、それに応えるのかというと、市場関係者は何と言っているかというと、市場法が抱える課題を解決する目的での改正ではないというふうに言っているんですね。
 何で、じゃ、改正するのということになると、今回の改正案の出発というのが、TPP関連政策の一つの中に入っていて、農業者の所得向上を図るという農業競争力強化プログラム、この中に入っていて、これがきっかけなわけですよね。そういうふうになっているのに、農業者の所得向上というのは目的に入っていないんですけれども、これは何でなんですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 今回の改正の目的といたしましては生産者の所得向上ということがあるわけでございますが、委員御指摘のとおり、今回の改正案の中で生産者の所得向上という語句は直接出てまいりませんけれども、改正卸売市場法の一条で、生産者が適正な価格で円滑に出荷することができるようにすることを意味する生鮮食料品等の取引の適正化とその生産及び流通の円滑化ということを規定しておりますことと、また、改正食品流通構造改善促進法におきましては、第一条に農林漁業の成長発展ということを規定しております。
 また、目的規定以外の食品流通構造改善促進の改正の中では、新たな需要の開拓等に対する支援措置等を盛り込んでおりますし、また、卸売市場法におきましても、その他の取引ルールとして、生産者等のニーズにも合ったような取引というのが卸売市場で柔軟にできるようにするといったように、内容としては生産者の所得向上につながることを盛り込んでいるところでございます。

○紙智子君 内容としてはと言うんですけど、全然よく分からないんですよ。
 それは全体として、じゃ、物流コストはどのぐらい下がるのかと、これ答えられますか。どのぐらい物流コスト、それで下がるんですか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 具体的に幾らというのは、これから認定をしていく物流効率化等についての計画の内容によりますので、申し上げることはできませんけれども、物流の効率化あるいは情報通信技術の活用等による効率化によってコストの削減が一定程度期待できるものと考えております。

○紙智子君 農家の所得って一体どれだけ増えるのかと全く分からないんですよね。それで、物流コストは下がると言うけれども、具体的にその資料もないわけですよね。だから、全然、漠然としていて、全体としてはそういうふうにはなるんだと言うんだけれども、中身が分からないわけですよ。ですから、自治体や市場関係者からもこれ不安の声が出ているわけですよね。意見がいっぱい出されているわけです。
 政府は、これまで卸売市場を基幹的インフラというふうに位置付けてきたと思うんです。基幹的インフラといったら、産業や生活の土台を支える基盤というようなことだと思うんですけれども、今回、卸売市場を基幹的インフラという位置付けをやめて、単なる公正な取引の場に変えるということになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) これは昨年十二月の活力創造プランの中でも明記をしておりますように、卸売市場は今後とも食品流通の核として堅持する、そうした考え方の下に、今回この目的規定におきましても、この卸売市場が果たしている役割を新たに規定いたしますとともに、こうしたインフラとして今後とも機能するように必要な規制は残しますとともに、柔軟なルール設定等により活性化を図るということにしているものでございます。

○紙智子君 やっぱり、基幹的インフラ残すと言うけれども実際上は消えて、公正な取引の場を言うけれどもそこのところは具体的にどういうふうな形で担保されるのかとよく分からないわけですよ。やっぱり、卸売市場の位置付けを大きく変えるものだと、今回の法案、公的位置付けが後退することになりかねないというふうに思います。
 次に、この改正案は認可制を認定制に変えるものになっているわけです。認定制に移行することで認定を受けない卸売市場をつくることが可能になるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 認定を受けない卸売市場、すなわち認定要件になっておりますような差別的取扱いの禁止、受託拒否の禁止、代金決済方法の策定、公表、売買取引条件や結果の公表といったルールが義務付けられない市場というのは出てき得るということでございますが、国といたしましては、こうしたルールを遵守する卸売市場を振興するために、名称の使用制限、あるいはこうした認定を行った市場にのみ施設整備への国の助成を行うということでその振興を図るということにしてございます。

○紙智子君 つまり、可能になるということですよね。もう一回。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) さようでございます。

○紙智子君 可能だということですよね。現行法では国や都道府県の許認可がなければ卸売と名のることができないと、一方、認定制に移行すると許認可がなくても卸売と名のることができる。
 例えば、北海道で今、札幌市中央卸売市場があるわけですけれども、札幌、例えばですよ、大通卸売市場という名称の卸売市場をつくるということは可能なんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 認定を受けずに、また中央卸売市場又は地方卸売市場、あるいはこれに紛らわしい名称を使わないものを設けることは可能ではございます。

○紙智子君 そうなんですよね。だから、第十八条で紛らわしい名称は使えないことになっているんだけれども、認定を受けた卸売市場と紛らわしくないものが可能となったら、卸売市場と認定を受けていない卸売市場がこれ共存することになるんですよね。その場合、認定を受けない卸売市場は誰が指導監督することになるんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) これは卸売市場には該当しませんけれども、現在、食品流通については様々な多様な流通がございます。特定の出荷者だけから仕入れて幅広く売るような場合であったり、あるいは広く集荷をしつつ特定の事業者に売るようなもの等がございます。これらについては取引規制というのはございませんで、こうしたものと同様の扱いに今お話のありました認定を受けていない卸売市場はなるわけでございますけれども、今回の流通構造改善促進法の改正案におきまして、卸売市場の外の食品流通も含めて不公正な取引が行われないように、調査の規定、また問題がある場合には公正取引委員会に通知するといったこの対象にはいずれの食品の取引もなってくるということでございます。

○紙智子君 認定を受けない卸売市場というのは取引規制はないわけですよね。
 例えば高速道路のインターの周辺につくったとすると、これ、物流拠点としても荷を効率的に運ぶことができるようになると。そうなると、認定を受けた卸売市場が影響を受けるんじゃないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 認定を受けない卸売市場につきましては、社会的な信用が一定程度あると考えられます中央卸売市場あるいは地方卸売市場という名称を名のれないということがありますとともに、その施設整備について助成が得られないということはございます。こういったことも含めまして、出荷者においてそれぞれの市場の取引条件も見ながら有利な出荷ルートを選んでいかれるということになろうかと思います。

○紙智子君 今お聞きしたのは、認定を受けた卸売市場にこういうところができてきたら影響を受けるんじゃないかと聞いたんですけれども、どういう影響を受けるかというのは検討されたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 卸売市場という形態を取っていないものも含めて、大規模な物流センターを設けて販売をするようなケースであったり、また民間の実需者向けの卸を行っているような店舗というものも出てきております。ある意味、卸売市場はそうしたところと既に競争しているという中で、卸売市場については、取引について国が一律の様々な規制をしている。こういったものを今回柔軟化することによって、卸売市場においても、生産者や消費者のニーズにより合った形での業務運営ができる環境を整備するということでございます。

○紙智子君 答えられていないんですよね。どういう影響を受けるのか調べたんですか、検討したんですかって聞いたわけですよ。
 それで、認定を受けない卸売市場はできるのに、その与える影響も検討していないで、それでやるというのはもう不安をあおるだけなんですね。卸売市場法の枠組みに風穴を空ける重大な問題だというふうに思いますよ。
 それから、中央卸売市場の卸売業者への規制についてなんですけれども、中央卸売市場における卸業者への規制というのは現在どうなっているのか、また改正後どう変わるのか、お答えください。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 現行の卸売市場法におきましては、卸売業者の売惜しみ、買占めによる価格のつり上げ等を防ぐ観点から、農林水産大臣等の許認可を受けなければ卸売市場の開設が認められず、農林水産大臣等の許可を受けなければ卸売業者の営業も認められないということになっておりますけれども、今回の改正案におきましては、流通が多様化をする中で、また、売惜しみ等による価格のつり上げがしにくい環境になっている中で、卸売市場のみ許認可あるいは業者の許可を受けなければ行えないという理由もなくなっているというふうに考えられますので、農林水産大臣等の許認可を受けずとも卸売市場の開設はできることとしながら、公正な取引の場としての要件を満たす卸売市場を認定をして、それを振興する。
 また、卸売業者につきましても、農林水産大臣等の許可を受けずとも営業できることといたしますけれども、卸売業者も含めて開設者がまずは監督をし、また国としてもこの開設者が市場の健全な運営を確保できているかということを監督をする仕組みにしているものでございます。

○紙智子君 最後に一問聞きます。
 現在、卸売業者への指導件数に対する業務改善命令は七件で、うち一件は卸売業務の一時停止命令です。
 今はこれ、国が卸売業者を直接監督をして処罰できるんですけれども、認定制になったら国は直接指導監督できなくなるんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省食料産業局長 井上宏司君) 改正後におきましても、開設者が業者を監督をいたしますとともに、卸売市場において健全、公平な運営がなされていなければ、国から開設者に対して監督命令の発出等を行うものでございます。

○紙智子君 もう時間になりましたけれども、開設者が監督するってそもそもおかしい話で、ちょっとやっぱりこれは本当におかしいと思うんですけれども、あと残りは次回に回したいと思います。
 終わります。