<第196回国会 2018年6月12日 農林水産委員会>


◇参考人質疑/今回の改定で、認定卸売市場では実態が無くなる可能性があるのではないか/認定外の卸売市場が民間委託された場合、利益効率型を優先し地域の慣習が崩壊してしまうのではないか

○卸売市場法及び食品流通構造改善促進法の一部を改正する法律案

☆参考人
 市場流通ビジョンを考える会代表幹事 磯村 信夫君
 東北地区水産物卸組合連合会事務局長 菅原 邦昭君
 広島大学名誉教授 三國 英實君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、三人の参考人の皆さん、本当にそれぞれ貴重な、そして非常に深い話をしていただいて、ありがとうございます。
 それで、卸売市場が生鮮食料品の需要調整と価格形成で大きな役割を果たしているというのは言うまでもないわけなんですけれども、そのために公的な関与があったということは非常に大事なことだと思います。
 今回の卸売市場法の改正は、認可制から認定制ということで変わるところが大きなポイントなんですけれども、この許認可を受けない卸売市場をつくることが可能になるという説明を受けたわけですね。ということは、認定卸売市場とそれから認定を受けていない認定外の卸売市場が共存するということが生まれるんじゃないかと。
 それがどういう影響があるのか、実は午前中の政府質疑の中でもお聞きしたんです。そしたら、答弁は、認定を受けない卸売市場を国は指導監督はするのかといったら、これはすることになっていないわけですよね。認定を受けた卸売市場にじゃ影響が出るんじゃないのかというふうに聞いたら、調査はしていないということだったんですね。
 やっぱり認定を受けた卸売市場と受けていない卸売市場が共存する状態についてどのようにお考えになるかということを、三國参考人、磯村参考人、菅原参考人、三人それぞれからお聞きしたいと思います。

○参考人(三國英實君) なかなか難しい問題ですけれども、要するに今の認定を受ける卸売市場は、少なくとも今度の改正案に示しているような国の基本方針を守り、幾つかの取引条件も守らなきゃいけないというのがありますよね。ですから、それ自体を、さっきもお話ししたように、裏付ける状況が全部ないわけですから、実際やれなくなった場合は認定されない卸売市場と競争せざるを得なくなる可能性も出てくるわけですね。そうしますと、ますます、認定卸売市場として細かく決めてあるけれども、それが実態として意味なくなるという可能性が私はあるんじゃないかと思いますけど。
 だから、要するに、今度の改定案でも、中央卸売市場あるいは地方卸売市場は認定にするんだと、だからそのほかの市場は、まあその言葉は使っちゃいかぬということは書いていますよね、中央卸売市場とか地方卸売市場。だけど、卸売市場という表現はもう自由に使えるということなんですから、そこがやっぱり非常に大きな問題じゃないかというふうに思います。

○参考人(磯村信夫君) まず、卸売市場は、差別的取扱いの禁止、受託拒否で、そして価格の出し方というのは、売るに天候、作るに天候ですから、価値プラスそのときの時価、需給バランス、これが中心になります。よって、足りないものは、必要としていて足りないものは、この値段で買参人にどうでしょうか、また、余っているものは、というのは大体が要らないものですけれども、これはこの値段でどうでしょうか、こちらの方は量を多く、こういうふうにやります。
 しかし、認定されていないところはほとんど問屋と同じ商いなので、この実勢、時価がどうしようとも、この人はどうしても五十円じゃなくて三十円でというふうに言ったら、じゃ、腹切って三十円で抑えます、その代わり、この人が余り気にしていないものだとか分からないものでもっていただく、こういうような形でこの買手に気に入ってもらうようにしていきます。
 なので、当初はこの人は確かに良いかも分かりません。ただ、集荷をするときにお金を使わないといけないでしょうね。品ぞろえというのも、多分長い間掛けてくると、まあ長い間ってそんな長い間じゃないですが、農家が安心して出荷できる、あるいは言われなくても出荷できる、これが卸売市場です。片っ方の方は問屋がしていますから、悪いけれどもいっぱい取れちゃったんで出していい、あるいは、こんな珍しいものがあるんだけれども出していい、こういうような調子で一声掛けないと出荷するというのは問屋ですから難しくなりますよね。
 その意味で、品ぞろえができなくなっていく可能性があるので、長期的には戦えると思います。短期的にはなかなか戦うのが、やっぱり買手は都合のいい方に言うでしょうから、なかなか難しくて、その局面ではやっぱり卸売市場は競争に、取引に負けてしまう。
 だから、どうしてもこの産地側の理解というのが卸売市場にとってとても必要になりますよね。多分そこをどう、宣伝と言ったら語弊がありますけど、産地に御理解いただいて、きちっと産地の味方のためのところだということを言うかということだろうと思います。

○参考人(菅原邦昭君) 認定市場、認可市場、それがどういう関係をこれから生み出してくるのかという御質問だと思います。私は、個別のケースを挙げると切りがないし、それなりにそれは議論はできるんですけれども、原則的にはそれはこの改正卸売市場法の懐の中に入ってしまう議論になっていると思います。
 それで、私が言いたいのは、認定も何も受けない卸売市場が逆に、今までの習慣の中で売買の仕方が公正なやり方をやっているところを、民間に委託した卸売市場が逆に、簡単に言うと地域の慣習を無視した多国籍資本、利益効率型の運営を先ほどする危険性があると言いました。それをやることによって、そっち側が今までの習慣を崩壊させられてしまうという危険の方に私は焦点を当てて、この本体をそうさせてはいけないという議論に絞るべきだと、大変僣越ながら自分ではそう思います。
 各論は別です。今大道の部分が間違ったやり方をされているので、ここの部分をやっぱり本格的に問いただしていくべきだというふうに思いますし、築地さんの移転の問題も、実は卸市場制度全体のトップランナーですよ。そこを、全体を今回のTPP型に切り替えるためには、石原元都知事の時代からもうたくらんでいたんじゃないかと言われたら反論是非聞きたいぐらいなんですが、そういう問題なので、是非やっぱり築地の問題も頑張っていただきたいなと私は思っているところです。

○紙智子君 今築地が言ってみれば流れのトップランナーじゃないかという話があったんですけれども、この築地市場の豊洲移転というのは、市場関係者だけじゃなくて、汚染された地域に市場を移すということは、これ食の安全という意味でも非常に大きい国民的な関心になっているというふうに思うんです。
 ですから、市場法の質疑をするに際して、やっぱり築地市場の豊洲移転問題を横に置いていいのかというふうに思うわけですけれども、今回のこの市場法の改正と築地の問題をどういうふうに整理して考えればいいかというところもちょっと、少し三國先生の方にお聞きしたいと思うんですけれども。

○参考人(三國英實君) その辺は今日話できなかったところで、触れようと思っていたんですけれども、先ほども官邸主導型の農政というのがありましたよね。やっぱり今度、衆議院の参考人の意見聞いても、なぜこの今度の改定案が必要なのかというその必要性についても、四人の参考人の方も余りそれは分からぬというか、必要ないというような御意見だったと思うんです、送られた議事録を読みますとね。
 やっぱり今まで慎重だったと思うんです、農林水産省自体が。だから、第十次卸売市場整備方針で、第九次で中央拠点市場構想というのを立てたんですね。第十次は、このいただいた資料にも入っていますけど、検討委員会というのを半年くらい掛けて議論して、その中央拠点市場というのは現実性がないということで削除したんですよね。だから、そのくらいやっぱり農水省はこの検討会、研究会をやることによって、この市場改正については慎重な対応をしていると思うんです。
 それで、なぜこのことを言うかというと、その第九次卸売市場整備方針で中央拠点市場ができたものですから、当時の石原知事は、あのときは民主党の力も大きかったので、現在地再整備か移転かということで議論して、そのための委員会をやっていたんです、私も参考人招致でそこに呼ばれていたんですけれども。それをもうストップしちゃって、第九次で中央拠点市場が出たということで、もうそれが移転が決められてきたということはあるわけですね。
 だから、その辺は、質問とちょっとずれたかもしれませんけれども、要するに、築地市場を豊洲に移転するという問題は、築地市場の価値というのを考えたら、一旦更地にしちゃったら、元は築地を生かすという意見だったけど、今、最近は小池知事も築地は生かすなんて全然言わなくなっていますよね。豊洲移転しか言わないけど。一旦もう更地にして、オリンピックのための駐車場にするという、一旦潰しちゃったらもう全然復活の可能性ありません、四年後なんといったってね。
 だから、やっぱり、一つは安全性の問題、あと、単なる物流センターになるという二点で、私はやっぱり移転すべきでないという意見を持っているんです。そういうことで。

○紙智子君 ありがとうございます。
 ちょっと時間が足りなくなってきたので、もう一つお聞きしたいんですけれども、取引規制について、第三者販売の禁止、直荷引き禁止、商物一致、これが自由化されると。政府は、受託拒否などは残しているからこの三つを自由化しても問題ないというふうに言うわけですよね。私、現状でも仲卸さんの経営というのは非常に大変になっているというふうに聞いていて、まずは経営が困難になっている原因を明らかにすることが第一であって、その分析の上に立って市場法の改正になるんじゃないかというふうに思うんです。
 そこで、仲卸の皆さんの経営の現状、そして、市場法の改正が現在抱えている課題を解決することになるのかということを二点、菅原参考人に、ちょっと時間があれなので、お聞きしたいと思います。

○参考人(菅原邦昭君) 分かりました。
 まず、仲卸の経営状況というのは、先ほどからほかの委員の方からも出ているように、それほど良い状況ではありません。ただ、それは各社ごとに見れば、それなりに成績を出している、かなり厳しい、三年間、ちょっと落ち込んでいるよというところなんかもあります。
 それの根本的な問題は何かというと、仲卸は今もまだ現行卸売市場法でやっていまして、競りで、高いやりを出すというんですがね、高い価格を出して、そして商品を手に入れる競争なんですよ。よく、荷受けさんがいて、仲卸がいて、お互いが対峙して価格が決まるという。いや、卸さんは並べるんです。そして、仲卸と買参人という方々が競い合って高値を付けるのが価格形成ですよね。それが価格形成なんですよ。大概の卸売市場の開設者が作った市場の御案内だと、物流センターのようにパンフレットができていますけど、ここが全く決定的に間違っているんですね。
 そして、もう一つは、その価格形成をきちっとやっぱりしていくということ。これが何で大事なのか。これ、国民の価格つり上げをされるような被害を防ぐということが一つ大事ですが、先ほどもちょっと言いましたけど、生産体制の安全を確保するのに、卸売市場が日々、これは数量が多過ぎて需要が小さかったから価格下がったよという、これは需要の方に追い付いていないから価格上がったよという情報を毎日なぜ発表しているのでしょうか。これは、生産者が生産にコストを掛けます。もちろん銀行からお金を借りたりしてやりますが。これが、日々の価格が伝わるから、あっ、これはそろそろこっちは手を引いてこっちの方の栽培に変えた方がいいだろうという判断の情報を流しているんですよ。
 これは、食料安全保障で流通だけやったって、生産する人の方が、生産体が破壊されてしまえば、皆さんよく御存じのように、でき過ぎのときにみんな顔を真っ青にしてサンマにガソリン掛けてわざわざ焼いたり、土の中にわざわざブルドーザー呼んで野菜埋めたりしている姿見るでしょう。需要に追い付かないときは、こんな失礼なこと言っちゃあれなんですが、誰がやっても農林水産経営は、生産者の経営は成り立ちます。ところが、危機、生産体制の危機というのは、需要を上回ってしまったと。  ですから、毎日出しているというのは、早めに手を打たないと間に合わなくなるでしょう。植え替えるにしたって、すぐ今日やってぱっと変わるわけじゃないですよ。だから、時間が掛かるから、日々価格を出して、それで赤信号を出したり黄色信号を出したり青信号を出しているのが公正な価格形成のもう一つの一面なんです。
 だから、消費者のためだけじゃないんです。だから、何度も言いますけれども、地域住民、つまり全国の地域住民の食料安全保障体制、その中に、国連の条約の中に入っている食料生産の安全保障、もっと言えば、これ国連では人間の安全保障と言っていますよね。こういうレベルでの捉え方というのが本当に必要だなと、静かにまとめて終わります。
 以上です。

○紙智子君 ありがとうございました。
 本当に貴重な意見を基にしてこの後の質疑に生かしたいと思います。ありがとうございました。