<第196回国会 2018年6月7日 農林水産委員会>


◇農薬取締法改正案 農薬の再評価について、グリホサートやネオニコチノイド系農薬など、人体への影響が強く疑われるものを優先的に行うよう求める/EUで規制対象のネオニコチノイド系農薬は、日本でも機敏に対処すべきではないかと指摘

○農薬取締法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。農薬取締法の一部改正案について質問をします。
 今回の法案は、農薬の再登録制度を廃止し、再評価制度を導入するものです。これまでの再登録制度では、その有効期間を三年としてきました。なぜ三年だったのでしょうか。簡潔にお願いします。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) お答えします。
 現行法におきまして、農薬の登録の有効期間三年と規定されていることから、一度登録された農薬でございましても、有効期間経過後も引き続き製造、加工、輸入を行う場合は改めて登録を受ける必要がございます。この登録の有効期間ですが、昭和二十三年の農薬取締法制定時に規定されたものでございまして、当時、時世の変化により、より優良な農薬が出現し、効能などの低い農薬は淘汰されることを想定して、その期間として三年と定められたものでございます。

○紙智子君 今回、この再評価制度で審査をするに当たっては、農薬を登録した日から十五年程度と先ほどもありましたけれども、想定をしていると言います。大体こう聞くと、三年だったものが十五年になるというふうに聞くと、それはちょっと規制が緩和されたんじゃないかと感じる人も多いと思うんですけれども、この十五年という期間について、安全性確保の観点から農業者や消費者から不安の声も上がっていますので、この声に大臣、どういうふうに応えますでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 確かに三年と十五年だけ比較すると、どうなんだという声があるのは分かるんですけど、農薬の新規登録には、メーカーが数年以上掛けてまず創薬をした上で、七年から八年を掛けてデータを作成をして、さらに国が二年から三年を掛けて審査をして効果と安全性を確認をしているというのが一般的な流れになっておりまして、さらに、再評価は農薬の安全性を向上させるため最新の基準に基づき評価し直すというものでありますので、その実施間隔につきましては、まず農薬の安全性に関する試験方法が更新される機会、これ大体十五年程度ですので、これにまず合わせる必要があるだろうということと、それから、再評価を短期間で実施した場合には、先ほど申し上げたような流れを踏まえますと、国の評価やメーカーの開発に影響して新規農薬の登録が遅れるおそれがある一方で、再評価の効果というものはそう大きくないということを踏まえますと、十五年ということが適切であろうというふうに考えております。

○紙智子君 毎年、これ農薬製造者からは安全性についての報告を求めるということですよね。ちょっと確認します。ですよね。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 先ほど申し上げたことに加えまして、今後は毎年の農薬メーカーからの報告等による継続的なモニタリングを行いまして、安全性に関する知見が明らかになった場合には再評価を待たずにいつでも評価を行うことによりまして農薬の安全性を確保していくというふうにしていきたいと思っています。

○紙智子君 農薬の登録申請に必要な試験成績は、科学技術の進歩や安全性に対する関心の高まりなどから年々増加をし、この検査項目も増加をしていると。追加する検査項目は、農薬の生態系への影響では水産動植物から生活環境動植物へと拡大するほか、農薬使用者への毒性及び使用した際の皮膚や吸入を通じて摂取する暴露量を考慮するというふうにしているわけです。
 環境省に伺いますけれども、今回の改正でなぜ検査項目を追加することになったのか、その背景を端的にお答えください。

○政府参考人(環境省水・大気環境局長 早水輝好君) お答えいたします。
 我が国では、戦後、水稲を中心とした農薬の開発、普及が進む中で、水田から河川に流出した農薬による水産動植物への被害が発生したことから昭和三十八年に農薬取締法の改正がありまして、そのときに農薬登録審査において水産動植物に対する影響評価を行うことが盛り込まれました。しかしながら、評価対象が限定されているということで環境保全の観点から十分ではないということで、第四次環境基本計画におきまして、水産動植物以外の生物等を対象とした新たなリスク評価が可能となるように、科学的知見の集積を図りつつ検討を進めることとされたところでございます。
 他方、EU、米国等では既に水産動植物以外の動植物を含む生態影響評価を行っているところであり、また、昨年制定されました農業競争力強化支援法におきまして、国は、農薬の登録に係る規制について、安全性確保、国際標準との調和、最新の科学的知見により見直しを行うとされたところでございます。
 このようなことを踏まえまして、本改正案では、農薬登録の際に動植物に対する影響評価の対象を水産動植物から陸域の動植物を含む生活環境動植物に拡大をすることとしたところでございます。

○紙智子君 やはり農薬の暴露量を減らすべきだというふうに思うんですね。今回新たにその意味では農薬使用者への健康や生活環境動植物に対する影響が追加されたということは、これは人体や環境への配慮をすることにつながるもので、評価をしたいというふうに思います。
 次に、評価体制について伺いますが、現在の農薬の登録件数は四千三百十七件だということです。有効成分数で五百八十三種類ということですね。再評価に関する審査は独立行政法人農林水産消費安全技術センターが行うとしているわけですけれども、人員とか施設整備なども含めてこの審査体制の強化についてはどのようにお考えか、お答えください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) お答えします。
 再評価制度の導入によりまして既存の農薬の安全性を向上させるということが重要でございますが、一方、現場が求める新規農薬の登録審査につきましても遅滞なく進めることが必要と考えてございます。
 そのため、今般の法改正に伴う農薬の審査の業務の増加に対応いたしまして、まず農林水産省における審査体制の拡充、これは今年度審査官を五名増員してございますが、あるいは独立行政法人農林水産消費安全技術センターとのシステム連携などによる業務の効率化、あるいは審査中にデータ不足が判明する、こういったことによって審査の手戻りがあるようなことがないように、登録申請に先立ちます事前相談などの段階から申請の内容を早期に関係府省で共有すること、こういったことにより評価能力の強化を検討しているというところでございます。

○紙智子君 今、農水省の関係、五名新たにみたいな話はあったんですけれども、やっぱり、再評価制度の導入ですとか、それから検査項目の追加などから、審査機関の業務が増大するというのはこれ予想されているわけですよね。
 ですから、審査体制の強化は農薬の安全性を確保する観点からも重要だと思いますので、この審査体制の強化がやっぱり大事なんじゃないかと思うんですよ。その辺、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) おっしゃるとおり審査体制の強化でございまして、この審査体制におきましては、人員を強化すること、そしてその能力を強化すること、この両方が重要だと考えてございます。
 先ほど申し上げましたような審査体制の拡充、あるいはシステム連携による業務の効率化、こういったことを通じてしっかりとした体制を構築していきたいと考えてございます。

○紙智子君 農薬の安全性の確保を求める観点から、やっぱり予算の確保も含めて体制強化を強く求めておきたいと思います。
 それから、農薬の再評価をするに当たっての優先順位について伺います。
 農業資材審議会農薬分科会において提案した内容を見ますと、優先度Aとして、我が国で多く使われているもの、次いで毒性の懸念があるものというふうになっているわけですよね。
 蜜蜂などへの影響が指摘をされているネオニコチノイド系の農薬や、小麦や大豆やソバ、菜種などへの収穫直前の散布によって、小麦アレルギーやセリアック病、グルテンに対する抗体、それからがんですとか、その関連性が指摘されているジェネリック農薬のトップを占めるグリホサートなど、人体への影響が強く疑われる農薬こそ優先的に再評価すべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 現在登録のある農薬は、まず登録時に効果及び安全性を厳正に審査し、問題がないことを確認したもののみを登録をしているわけでありますが、再評価では、科学の発展に対応するために、過去に登録された農薬について最新の科学に照らして継続的に安全性を向上させていくと、こういう性格のものであるわけであります。
 再評価では、今御指摘のように、国民の健康や環境に対する影響の大きさを考慮いたしまして、二〇二一年度以降、国内での使用量が多い農薬から優先的に進めていくということでありますけれども、欧州で使用規制の対象となっておりますネオニコチノイド系の三農薬、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアメトキサム及びグリホサートにつきましては、使用量が比較的多いことから優先的に評価を行いたいと思っています。

○紙智子君 今、優先的にという話もありました。ネオニコチノイド系の農薬とグリホサートについては優先度Aの使用量が多いというところに該当するというふうに聞いていますし、今の大臣の答弁ですけれども、是非早急に再評価すると同時に、新規登録とか再登録は保留することを強く求めておきたいと思います。
 それから、ネオニコチノイド系の農薬をめぐっては、この間、川田委員や小川委員からも質問がありました。私も、医学博士の黒田洋一郎先生やNPO法人の民間稲作研究所の稲葉理事長さんからもお話を伺いました。
 それで、長野県の松本市の話、先ほど川田さんもされていましたけれども、そこで、松枯れ対策ということで行われているネオニコチノイド系の農薬の空中散布の中止を求めて、住民から訴訟が提起をされたわけです。
 なぜこういう訴訟が起こされたのかということについて、端的にお答えください。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) お答えいたします。
 長野県松本市が昨年度に計画いたしました松くい虫被害対策に係るネオニコチノイド系農薬の薬剤散布につきましては、昨年六月に、一部の住民の方が散布中止を求めて長野地方裁判所松本支部へ提訴、訴訟を提起したと聞いております。
 しかしながら、原告側が請求を放棄いたしまして、本年二月にはその裁判は終結したというふうに聞いております。

○紙智子君 この訴訟は空中散布で使用するネオニコチノイド系の農薬のアセタミプリド、これが子供などに対して健康被害を与えるおそれがあるためというふうにしているわけですけれども、農水省としてはどういうふうに認識をされているのですか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 池田一樹君) ネオニコチノイド系農薬を含めまして、農薬の登録時には人の健康あるいは環境への安全性を評価してございます。登録された使用方法に基づいて使用すれば人の健康上の問題はないということが確認をされてございます。
 住宅地などにおける農薬の使用でございますが、これは農薬の飛散などによります周辺の住民の方々への健康への悪影響を及ぼさないようにすることは、これは重要と考えてございまして、事前に周辺の住民の方々あるいは学校などの施設に農薬散布について周知をする、あるいは無風又は風が弱いときに行うなど、近隣に影響が少ない天候、時間帯を選定をし、風向きや散布機具の方向や位置に注意する、こういった遵守すべき事項を通知いたしまして、適切に使用するよう指導させていただているところです。
 また、無人航空機でございますが、農薬の飛散、ドリフトですが、この防止対策などの安全対策を適切に講じた上で利用されるということが重要と考えてございます。このため、空中散布に当たりましては、風向きを考慮いたしました飛行経路の設定、散布区域内の人の立入りの防止、適切な飛行高度あるいは散布高度の維持、強風時の散布の中止、こういった対策を講じるように技術の指導指針を定めてございまして、都道府県協議会、地区別協議会を通じまして空中散布を行う者に必要な指導及び助言を行うなど、オペレーターを含む関係者への周知の徹底を図ってございます。
 農林水産省といたしましては、住宅地などでの農薬使用が適切に実施されますよう、通知の一層の周知徹底、そして指導に取り組んでまいりたいと考えてございます。

○紙智子君 仕様どおりに使えば問題ないとか、やっぱり適切な使い方ということでやれるように徹底すると言うんですけど、それをちゃんと確保できるかどうかというのはそう簡単じゃないと思うんですよ。
 それで、やっぱりネオニコチノイド系の農薬の使用については、この間も質問の中で出されていましたけれども、医師や専門家などからやっぱり胎児や子供の脳への影響というのは指摘されているわけで、小川委員からは一覧表も出されているわけですから、非常にそういう影響ということをちゃんと見なければならないと思いますし、日弁連からも昨年十二月にネオニコチノイド系の農薬の使用禁止を求める意見書も出されているわけですよ。
 松くい虫の防除の空中散布をめぐっては、市民が自治体相手に裁判で争うというのは全国でも例がないというふうに報道されました。ネオニコチノイド系の農薬の散布によって自治体と住民が対立するようなことを生む前に、農水省として規制すべきだったんじゃないんですか。

○政府参考人(林野庁長官 沖修司君) お答えいたします。
 農林水産省は、松くい虫被害対策に係る薬剤散布につきましては、地域の実態に応じまして、地区説明会の開催などによりまして地域住民など関係者の理解、それから協力を得つつ、円滑かつ適正に実施するよう都道府県を通じて指導をしているところでございます。
 今後の薬剤散布を計画しております、今回松本市の事案でございますけれども、こうしたものに対しましては、地域の住民の理解を得るための説明を継続して対応していただくよう県を通じて指導してまいる考えでございます。

○紙智子君 やっぱり地域住民と行政との間でそういう摩擦が起きないようにちゃんとしっかりやっていく必要があるんだと思うんですよ。
 それで、齋藤大臣に伺いますけれども、現行の農薬取締法の六条の三に、農水大臣の職権による登録の取消し規定があるわけですけれども、これ、職権によってこれまで取り消された事例というのはあるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 例えばDDTなど安全上の問題が明らかになったケースにおいては、登録を取り消す前に農薬メーカーによる自主的な登録の取下げというものがなされてきていますので、そういう意味では農薬取締法第六条の三に基づく職権での登録取消しというものに至ったものはありません。
 ただ、登録の問題だけではなくて、こういった農薬につきましては販売をどうするかということが次に浮かび上がってくる問題でありますので、この点につきましては、農林水産大臣として販売を禁止をすることで農薬の安全性の確保を進めてきたケース、これは、例えばDDTほか、二十七成分の農薬についてはこれまで販売、使用を禁止をした、そういうことは行ってきているわけであります。

○紙智子君 今大臣の答弁の中で、過去になくて、それはどうしてかというと、登録の取消しの前にメーカーの側から自主的な取下げとか販売禁止農薬を指定するということで対処してきたからだという話があったんですけれども、やっぱりしっかりとそこで職権による登録の取消しについては、農薬の使用に際しては危険防止方法を講じた場合においてもなお人畜に危険を及ぼすことが明らかになるという場合もあるわけで、その事態の発生を防止するためにやむを得ない必要があるときは、その必要の範囲内において取消しができるというふうにされているわけですよね。それで、農薬による被害が明らかとなるまで待つということではなくて、被害が出てくるまで待つということではなくて、やっぱり速やかに対策を講じるべきだと。
 それで、齋藤大臣にもう一つ伺いますけれども、EUでも、四月の二十七日にネオニコチノイド系農薬のイミダクロプリド、クロチアニジン及びチアメトキサムのこの屋外使用を全面的に禁止したわけですよ。それで、改正案の四十一条のところでは、農水大臣及び環境大臣は農薬の安全性その他の品質の確保に関する国際的動向に十分配慮するという規定を設けているわけです。EUなどの世界の動きに対しても機敏に反応して対処すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 農薬の登録審査に当たりましては、国際的な動向にも配慮しながら、最新の科学的知見を的確に反映させ、農薬の安全性を一層向上できる制度にすることが極めて重要であると考えていまして、今回の農薬取締法の改正におきましても、繰り返しになりますが、最新の科学的知見に照らして農薬を再評価する制度を導入するとともに、農薬使用者や動植物に対する影響評価の充実等の措置を講ずることとしているものであります。
 また、OECD加盟国が議論して、安全性等に関する試験のガイドラインの作成や評価法の調和、これを進めているところでありまして、我が国の試験のガイドラインをOECDのガイドラインに調和させるという取組も進めていますので、これも国際的動向に配慮するということに含まれるのではないかと考えています。
 加えて、海外での登録の見直し状況なども含めて毎年国が農薬メーカーに安全性に関する情報の報告を求めることにしておりますし、そのほか、自らも情報収集を進め、農薬の安全性を継続的にモニタリングし、安全性に関する重要な知見が明らかになった場合には再評価を待たずに随時評価を行い、登録の変更、取消しを行いたいと思っております。

○紙智子君 時間になりますので、農薬の使用を減らす取組を推進しつつ、新たな科学的な知見の収集を行うことによって実効性のある農薬の規制を求めて、質問を終わります。