<第196回国会 2018年3月22日 農林水産委員会>


◇財務省の決済文書改ざんに伴い、公文書管理について大臣の認識を問う/グラフを使い、生産基盤の弱体化による供給量の減少を示す/TPP11、アメリカとの再交渉に応じるなと要求/歯止めなき自由化やめよ

○農林水産に関する調査
(平成三十年度の農林水産行政の基本施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、質問時間について御配慮いただきましたことに感謝を申し上げたいと思います。
ようやく農林水産委員会の質疑が始まりました。財務省が学校法人森友学園の国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題で政府の信頼が失墜しているというふうに思います。まず、この問題についてお聞きしたいと思います。
 公文書管理法には、公文書というのは主権者である国民の知的共有財産であると位置付けております。公文書の改ざんは、法に照らして、主権者である国民を欺く行為だと。こんなことがまかり通れば、国民が政府の行為を検証し監視することができなくなる。国民主権を明確にしている憲法の土台を壊すことになるし、議会制民主主義をないがしろにする。そういう性格の問題だというふうに思うんですけれども、この点で、まず齋藤大臣の認識について伺います。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 今回の財務省におきます決裁文書の書換えは、総理も言及されておりますように、行政全体の信頼を揺るがしかねない出来事であるというふうに思っています。
 行政文書の適正な管理は、行政の適正かつ効率的な運営を実現するだけではなくて、国民の皆様への説明責任を全うする上で極めて重要であると考えておりまして、私の指示によりまして、三月十三日、行政文書の適正な管理について改めて省内に徹底をしたところでございます。

○紙智子君 政府は、改ざんされた文書でこの一年間にわたって答弁を繰り返してきたわけです。立法府である国会の調査権を言わばじゅうりんしたと言ってもいいことになるわけですね。その責任を全て官僚だけに押し付けていいのかと、これについては多くの国民が注目をしているわけです。
 これからまた証人喚問なども予定されているわけですけれども、閣僚の姿勢、政治家の姿勢として、官僚だけに責任を押し付けるような在り方について、これについての大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 今回の件は、先ほど申し上げましたように、行政全体の信頼を揺るがしかねない大変遺憾な出来事であると思っているわけでありますが、今財務省におきまして一体なぜこういうことが起こったのかということを調査をしているところでございます。まだその調査結果が出ていない状況でありますので、私の方から何ともコメントのしようがないというのが今の現状であります。
 いずれにいたしましても、この調査におきまして、一体なぜこういうことが起こったのかということが明らかになることを私どもとしては期待をしているところでございます。

○紙智子君 総理の御意向とかそんたくとか、こういうことが言われてきたわけですけれども、改ざんしてまで行政をゆがめたということになるわけですね。関係者はやっぱり政治的、道義的な責任を取るべきだということを申し上げておきたいと思います。
さて、農政について質問いたします。
 今年冬は、野菜の価格が高騰したことが消費生活にも影響を与えています。ところが、よく見ると、この冬だけではなくて、ここ近年、価格は上昇の傾向にあるわけですね。
 農林水産省のこの統計の農業総産出額及び生産農業所得から作成した資料をお配りしております。二枚ありますけれども、見ていただきたいんですが、まずこのカラフルな方ですけれども、野菜の卸売数量及び卸売価格の推移、黄色ですね、を見てください。
特に二〇一四年以降ということで見ると、数量は、二〇一四年一千十九万トン、二〇一五年九百七十三万トン、二〇一六年は九百四十八万トンというふうに減少しているわけです。卸売価格はということで見ると、キログラム当たりですけれども、二〇一四年は二百十七円、一五年は二百三十四円、一六年は二百四十六円というふうにずっと急激に上がってきています。
 それから隣の、果実の卸売数量とこの卸売価格の推移というので見てほしいんですけれども、一四年は二百十九万トン、一五年は百九十六万トン、一六年は百八十二万トンというふうに減少しています。キログラム当たりの価格でいうと、一四年が二百七十六円、一五年が三百七円、一六年は三百四十二円というふうに上昇しているわけですね。
 野菜と果実共に、二〇一四年から見ると数量は減少し価格が上がっている。これはなぜなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 野菜と果実について、一つずつお答えをしたいと思いますが。
 野菜の産出額で見ますと、長期的には、農家の高齢化等による作付面積等の減少に伴いまして減少傾向で推移をしてまいりましたけれども、平成八年の原産地表示の導入等を背景とした国産志向の高まりなどもありまして需要が堅調に推移して、近年は二兆円台前半で推移しているところであります。平成二十八年に限れば、前年に比べて千六百五十一億円増加しまして二兆五千五百六十七億円となっております。
 この要因ですけれども、近年の加工用や業務用への国産野菜を求める実需者ニーズに応じた生産が行われる中で、秋の天候不順で野菜及び根菜類等を中心に価格が上昇したことも寄与したものと考えています。
 また、果実の方ですが、果実の産出額、これも長期的には、先ほど申し上げたように農家の高齢化等による栽培面積等の減少に伴い減少傾向で推移してまいりましたけれども、高単価で取引される優良品種・品目への転換等により、需要に応じた高品質果実の生産、出荷ができるようになったことで、近年は七千億円台で推移をしてきたところであり、平成二十八年は、前年に比べ四百九十五億円増加して、八千億円を突破して八千三百三十三億円となっております。
 この要因としては、夏場の少ない雨、少雨等で生産量が減少する一方、高糖度となる等、品質への評価が高まったことを受けて、総じて価格が上昇したこと等が寄与したものと考えているところでございます。

○紙智子君 総合的にやると分かりにくいので、こうやってわざわざ分けてみたわけなんですね。それで、今ちょっと答弁聞いていると、やっぱり一つには天候不順という話も出されましたし、それからやっぱり生産量が減っているということを挙げていたと思うんですね。
 次に、下の欄ですけれども、肉用牛の屠畜数と、これは農水省の資料がそうなっているんだけれども、農業物価指数ということでの推移なんですけれども、二〇一二年二十八万頭だったものが、毎年これ一万頭ずつ減っていると。二〇一六年は二十四万頭。農産物の農業物価指数は、二〇一二年は七一・八だったんだけれども、毎年上がっていって、二〇一六年は一〇九・二と。なぜこれ屠畜数が下がって、指数が上がっているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) これも産出額ということで肉用牛を見てまいりますと、長期的には、平成三年の輸入自由化に伴う輸入牛肉の増加、あるいは平成十三年のBSEの発生等に起因する減少局面がありましたけど、それを脱して、近年は堅調な需要に支えられて価格が上昇して増加傾向で推移してきたと。平成二十八年は、前年に比べまして五百五億円増加して七千三百九十一億円となっています。
 その要因ですけれども、肉用牛の屠畜数が減少傾向でおっしゃるように推移をしてくる中で、引き続き牛肉の需要が堅調に推移をするとともに、和牛改良の進展ですとか飼養管理技術の向上等によりまして高品質な牛肉の割合が増加をしてきた、そういったことなどが寄与したものと考えているところであります。

○紙智子君 やっぱり屠畜数が、これ表で見たら分かるように減ってきているというのは、いろいろあるけれども大きな問題なんだと思うんです。
 それからもう一つの、今度、緑のですけれども、米の収穫量及び相対取引価格の推移ということで見ますけれども、ここでも二〇一四年を境にして数量は、一四年は八百四十四万トン、一五年七百九十九万トン、一六年八百四万トン。まあ一五年と一六年、ちょっと減って増えているということですけれども、これでもって相対取引価格は六十キロ当たりで、一四年は一万一千九百六十七円、一五年は一万三千百七十五円、一六年は一万四千三百五円というふうになっている。
 米でいえば、これ二〇一〇年が底値になっていて、二〇一一年、一二年というのは震災の影響があって上がったんですよね。それでも生産者米価というのは生産費を下回っているので赤字だったわけですけれども、交付金があるので飼料用米の生産が伸びているわけですね。米の直接支払交付金というのは、赤字の生産の下支えにこれまででいえばなってきたわけです。十アール当たりで七千五百円出てきたわけだけれども、これが廃止になるということは米価を八百円程度引き下げることになるわけです。だから、農業者は非常に不安を抱いているわけなんですけれども。
 今ずっと見てきたように、野菜、果実、肉用牛、そして米、供給量が減ったというのはやっぱり価格の上昇につながったんじゃないんでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 今、米のお話がありましたので、米のお話を少しだけしますと、米も産出額は長期的には、御案内のように食の多様化や少子高齢化の進展によって需要が減少して、そういった需給動向を反映して減少傾向で推移をしてきたと、残念ながらですね。
 ただ、平成二十八年は、このグラフにもありますけれども、前年に比べて千五百五十五億円増加して一兆六千五百四十九億円となっているということです。この要因には、需要に応じた生産の推進を多くの方々が努力をして、超過作付けが解消され需給が改善し価格が上昇したということや、生産量も増加をしたということが寄与をしているというふうに考えているところであります。
御案内のように、価格と供給というのは当然相関関係がございますから、委員御指摘のような要素もそれは当然あり得るだろうとは思っております。

○紙智子君 供給量が減れば価格は上がると、これは当たり前といえば当たり前なんですけれども、そういうことだと思います。
それで、安倍総理は、これ二〇一六年の農業総産出額が九兆円台に回復したということを自慢されたわけですけれども、農業産出額が増えて農家所得が増えるというのは、これはいいことだと思うんですよ。しかし、供給量が減っていること、農産物価格の上昇にそれがつながったんだというふうになれば、これは手放しで喜べないと思うんですね。
 そこで、なぜこの供給量が減ったんでしょうか。これ天候の責任というのはいろいろ言われるんだけれども、天候だけが要因なんでしょうか。二〇一六年度の食料自給率でいうと三七・五八%で、これ前年度と比べても一・九%、約二%下がったわけです。
それで、ちょっと次の配付資料を見てほしいんですけれども、棒グラフと線グラフが書いてあります。それで、棒グラフは耕地面積です。二〇一〇年は約四百五十九万三千ヘクタールだったわけですけれども、二〇一七年になりますと四百四十四万四千ヘクタール、減っているわけです。毎年減っているんですね。
 それから、折れ線グラフは販売農家と基幹的農業従事者なんですけれども、販売農家は約百六十三万一千戸だったのが、二〇一七年には約百二十万戸に、それから基幹的農業従事者は二〇一〇年は二百五万一千人だったのが、二〇一七年には百五十万七千人に減っていると。
 これ、生産基盤が弱体化しているから供給量が落ちたんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 御指摘のように、平成二十九年の耕地面積だけ見ましても、四百四十四万四千ヘクタールで、前年に比べて二万七千ヘクタール、〇・六%減少しておりますが、この主たる要因は、耕地の荒廃ですとか、それから宅地や工場用地等への転用によるものと考えているわけであります。
 また、平成二十九年の基幹的農業従事者数は百五十一万人で、これも前年に比べ八万人、これは五・〇%に相当しますけれども、減少しています。これは、農家世帯の高齢化により離農が進んだことなどが要因であろうというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 こうやって表にすると一目瞭然で、全体として縮小していっているということになっていて、この生産基盤の弱体化が供給量が減少している要因になっているという指摘、論調が多々あるんですね。
 日経新聞で言うと、瀬戸際の日本食というのが今年の二月の新聞で書いてあったんだけど、農産物価格は、急に上がったというよりも年を追って上がっていると。野菜不足のときに余剰分をすぐ売れるようなベテラン農家が減ってしまったということを書いています。それから、天候の影響をはね返す余力を失ったと書いてありますね。今までも天候の影響はあったけども、はね返す余力を持っていたと、それがもうなくなっているということを書いているわけです。
 これ少し驚いたんですけれども、農機具メーカーのクボタの社長さんも言っていて、これも日経新聞ですけれども、日本の食料生産基盤は既にかなり厳しい状況にあり、それがどんどん進行していると。生産基盤の弱体化で食料問題になってくる可能性があり、国民にとって人ごとではなくなるというふうに言われているんですね。
 こういう指摘については、大臣、どのように受け止められますか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) まず、農業産出額あるいは農家の所得が増えているということについては、私はそのこと自体は素直に受け止めたいと思っているんですね。その理由は、もちろん政策的対応もさることながら、やはり農家や農業関係団体の皆さんも相当努力をされてきているのは事実だと思いますので、これはそのこと自体は、そういうものも含めて私は良かったなと思っているわけでありますが。
 一方で、生産基盤がこれ崩れていくということにつきましては対応していかなくてはいけないというふうに、それはそれで思っているわけでありまして、そのことにつきましては、直接的には、例えば土地改良制度の見直しですとか中間管理機構の活用ですとか、あるいはセーフティーネットの構築というものも間接的にはその基盤の強化に役立つんだろうと思いますが、そういった様々な政策を積み重ねて努力をしていくということだろうというふうに思っております。

○紙智子君 ちょっと確認しますけど、大臣の認識としては、やっぱり生産基盤が弱体化しつつあるということはお認めになるんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) それは、離農も進んでおりますし、それはそういう状況だろうと思います。

○紙智子君 やっぱり生産基盤は大丈夫なのかと。生産者が意欲を持つ政策になっているのかということがすごく大事で、食料の価格はもう国民経済にも影響を与えていくわけですよね。そういう意味では、そういう国民生活全体にも影響を与える問題が問われているんだと思います。安倍総理は、農業総生産額が増えたと、新規就農者が増えたと、攻めの農業でうまくいっているんだということを自慢するんですけれども、農業の土台が問われているんだというふうに思うんですね。
 農林水産省として、これやっぱり生産基盤が弱体しているのか、今いると認められたんで、そうであればしっかりと分析をしていく必要があるんじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 今回の産出額が増えているとか所得が増えているということについては、私は、先ほど言ったように様々な要因があるというふうに思っています。そして、その中で、生産基盤が弱体している部分がどういうふうに具体的に寄与しているのかということになりますと、なかなかそれを数字で表したりすることは難しいかなと思っておりますが、繰り返しになりますけれども、生産基盤を強化をしていかなくちゃいけないということで、土地改良の見直しですとか、それから中間管理機構の活用とか様々な政策をこれまでも講じてきているところでありますし、これからもしっかり取り組んでいかなくちゃいけないというふうに思っております。(発言する者あり)

○紙智子君 今、横の席からそれが違うんだよという声が上がっているんですけれども、やっぱり方向性についてもしっかり分析して出さなきゃいけないと思うんです。
 日本の農業というのは、規模の大小を問わず家族経営が支えているんですよね。やっぱり、いろいろ言ったって、圧倒的に家族経営が支えているんだと。政府は、規模拡大、競争力強化、輸出力を強化ということを強調してその支援をやるんだけれども、その路線で日本の農業の基盤が維持拡大できるのか。やっぱり国民に対してしっかり説明をしていただきたいというふうに思うんですね。そのことをちょっと改めて強く要求しておきたいと思います。
 それから次に、この通商交渉なんですけれども、歯止めなき自由化交渉がどんどん進められようとしていると。これが今議論してきたような生産基盤の弱体化に拍車を掛けるんじゃないかというふうに懸念するわけです。
 そこで、TPPをめぐるアメリカの動向についてお聞きしますけれども、トランプ大統領は今年のダボスの会議で、TPPが米国にとって有利な条件になる場合は再交渉を前提として復帰を検討する考えを示しました。
 それで、大臣、アメリカがTPPの再交渉を求めてきたら応じるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) このTPPは、御案内のように、あの参加国の様々なあの利害関係を綿密に調整して作り上げたガラス細工のような協定になっておりまして、TPPの再交渉と言われても、どの国にとっても一部のみ取り出して変えるというようなことは極めて困難であると私は思っています。
我が国としては、TPP11の方の早期発効に取り組みつつ、米国に対してはTPPの経済的、戦略的意義を訴えていくということにしておりまして、私にとりましては、やはりTPPの再交渉というのは今の時点では非現実的であるなと思っております。

○紙智子君 今の時点では非現実的というふうに言われたんですが、要するに、多分アメリカは、大統領は再交渉を求めてくると思うんですよ。そのときに応じるか応じないか、これはっきりしておかなきゃいけないんですけれども、ちょっともう一回聞きたいと思います。
実際言っていることは、戻ってもいいよと、ただし今のままじゃ駄目だと、アメリカにとって有利じゃなきゃいけないんだということはもう再交渉が前提にあるわけですから、必ず言ってくるんだと思うんですよ。そのときに応じるのか応じないのか、もう一回、ちょっとはっきりと答えていただきたい。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) トランプ大統領が再交渉を日本に言ってくるかどうかというのは仮定の質問ではありますけれども、今私どものスタンスとしては、日米のこの経済関係については、既に日米経済対話の中で、どのような枠組みが日米経済及びアジア太平洋地域にとって最善であるかを含め、建設的に議論しようということで進んでいるわけでありますので、私の頭は、その枠組みの中でアメリカとは議論をしていくということに尽きるわけであります。

○紙智子君 つまり、応じないとははっきり言わないわけですか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) 私の気持ちはいろいろありますけれども、本件は私の権限だけで答弁できる話ではありませんので、ちょっと留保させていただきたいなと思います。

○紙智子君 ちょっと残念だな。もうはっきり言ってほしいんですよね。応じないと言うと、多くの人たちは、あっ、そうかというふうに思うわけだけれども、これ留保ですから、本当に困ったものだなと思います。
 アメリカは、農産物市場の開放を求めてくるんですよね。再交渉に応じれば、TPP以上に開放を求めてくるんだと思います、元の十二か国のね。日本の農林水産業への影響は更に深刻になると。政府が守ったと言った国会決議の態度も問われることになると思います。
 TPPの11、CPTPPについても聞きますけれども、アメリカを除いているこのTPPの11は八日にチリのサンティアゴで署名が行われたわけですが、TPP11でもこれアメリカから農産物の開放を求める圧力は強まるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) これはアメリカがどうなるかという推測の話になりますので、お答え控えたいと思うんですけれども、両面あるんじゃないでしょうかねと私は思っています。いずれにいたしましても、繰り返しになりますが、アメリカとの関係は、今ある日米のスキームがありますので、この中で粛々と議論していきたいと思っております。

○紙智子君 昨年、TPP11交渉が始まった頃の話ですけれども、当時の山本農水大臣がこう言っているんです。TPPの乳製品の七万トンの枠を十一か国で使ってしまうと、二国間、日米の二国間協議でアメリカから同様にやれって言われると。そうしたら十四万トンなんていうとんでもない数字になる。牛肉の問題もあると。TPP11がアメリカとの関係で影響が出ないわけがないというふうに言われたんですね。
 TPP11は三月に署名して動き出すということなんだけれども、山本前農水大臣が言われたように、アメリカとの関係でいうと影響が出てくるんじゃないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) このTPP11そのもので、何というんですかね、TPP、本来の12、上回るような影響があるということはないわけであります。
 それから、アメリカが今後どうするかということについては、私はこうなるああなるということを仮定をもってお答えすることは差し控えたいと思いますけれども、とにかく今、日米でやるということになっているわけでもありませんし、この対話の枠組みが既にあるわけでありますので、この中で、さっき言った切り口での議論を進めていくということではないかなと思っております。

○紙智子君 アメリカは必ず言ってくるんですよ。仮定だって言うけど、必ずそうなってくる。そのときにどうするかというのは本当に大事な問題だし、既に日本政府は日米経済対話の中で、アイダホ産のジャガイモの輸入制限を解禁したんですよね。いつの間にやったのかという、知らないうちにこのアイダホのポテトの輸入を認めていると。
 北海道でいうと、十勝はジャガイモ産地なわけだけれども、現地では生産者の努力に水を差すものだという怒りの声が出ていますよ。ポテトチップス、すごいしゃりしゃりとおいしいわけだけれども、ああいう本当にからっと揚がるようなチップスを作るのに、加工用のジャガイモにどれだけ苦労してきたかと。研究者含めて、やっているんですよ。そういう苦労が水の泡になるということを言っているわけです。
 全く私たち知らないところで、もう勝手にこういう自由化を進めていると。既にアメリカは日本の農産物をターゲットにして、いろんな形で圧力を掛けてきているわけです。TPPにアメリカが戻ってくる場合も、これ条件を付けると。TPP11が動き出しても、自由化を要求してくると。いずれにしても、アメリカの圧力は強まるということだけははっきりしていると思うんです。農産物の市場開放が更に進みかねないと。こういうような歯止めなき自由化というのはやっぱりやめるべきだということを要求しておきたいと思います。
 最後に、ちょっと、あと一分だけ、一言。やめるべきだと。

○国務大臣(農林水産大臣 齋藤健君) その歯止めなき自由化を我々はやるつもりは全くありませんし、それからアメリカも今どういう態度で私たちにこれから出てくるかというのも見通せない状況でありますので、余計なことをしゃべるつもりはありませんが、いずれにしても、アメリカとの関係は、今あるフレームの中で国内に影響が出ないように粛々とこなしていくというのが基本的なスタンスでありまして、歯止めなき自由化ということは絶対にないということは申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 一つ開けるとどんどん広がっていくということがありますので、やっぱり本当に農水大臣として日本の農業を守るという立場であれば、もう断固とした対応をしていただきたいということを申し上げまして、質問を終わります。