<第193回国会 2017年6月15日 農林水産委員会>


◇加計学園/「日本獣医師会の要望を内閣府に伝えていない」と農水相答弁/獣医師の需給動向を協議した形跡なし/収入保険の保険財政が安定するか不明、無保険者が増える可能性も/農業共済制度の縮減とセットでなく、所得補償とセットで提案すべき

○農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 最初に、やっぱり昨日から今日にかけて、本当に、与党が突然委員会の質疑を拒否して、いきなり本会議で中間報告を押し付けてくると、そういう中で共謀罪を強行し採決したということに対して腹の底からの怒りを感じています。こんなひどいやり方は今までなかったと思いますよ。審議を尽くすという議会制民主主義に基づいてやらなきゃいけないのに、こういうことを踏みにじったということについては強く抗議をしておきたいと思います。
 加計学園について今日質問したいんですけれども、この問題というのは、農林水産委員会において、例えば参考人をお呼びして、ちゃんと深めていこう、集中審議やろうと、それから関係資料の提出を要求してきたわけですけれども、自民党の皆さんからは、党の方針として応じられないと、特に獣医師会を呼んで参考人やりたいということについては応じられないというふうに言われたわけですよ。それで、私たちとしては、やっぱり総理出席の予算委員会も開くようにということを要求してきたけれども、これも結局今日に至るまで実現をしていないわけですよ、ゼロ回答だったわけです。
 真相究明に背を向けたまま、これ政府提出の法案の審議だけお願いしたいと、そういうやり方に対しては、私は、法案の賛否はさておいて、疑惑隠しであって、国会軽視としか言いようないんですね。こういう姿勢に対しては強く抗議をいたします。
 先日、我が党の小池晃書記局長が明らかにした二〇一六年の九月二十六日付けの内閣府の審議官との打合せの概要について質問いたしました。今治市の構想について、獣医師会から文科省、農水省に、再興戦略を満たしていないと、この指摘する資料が届いているというふうに概要にありました。
 その資料を要求しましたら、農水省から資料が届いたわけですね。農水大臣は日本獣医師会から九月二十三日に要請を受けていると、受けながら、十月、内閣府がまとめた原案にコメントなしということで、これは文書で回答したと。
 なぜコメントしなかったのかなということも聞いたんですけれども、大臣は日本獣医師会からの要請を内閣府には伝えたんでしょうか。伝えたのであれば、どういう協議をしたんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 平成二十八年九月二十三日、私のところに日本獣医師会の蔵内会長が来られました。日本獣医師会からは、獣医学部の新設は農林水産省の所管ではないというようにお答えになられた上で、反対であるという表明をいただきました。こうした申出に対しまして私からは、獣医学部の設置につきまして当省の所管ではないということをあえてお伝え申し上げまして、それで獣医師の現状についての認識をいただいたというように思っております。
 受け取りました資料につきましては、内閣府に伝えたという事実はございません。

○紙智子君 結局、内閣府に伝えていないわけですね。二回受け取っていると思うんですよ。結局、内閣府には日本獣医師会から要請があったのかということもこの間聞いたんですけれども、これはまだ回答がありません。日本獣医師会が内閣府に要請していないのであれば、日本獣医師会の要請を大臣が握り潰したことになるわけですよ、聞いておきながらですね。そうだとすると、私はやっぱり責任重大だと思うんですよ。
 昨年十一月九日の特区諮問会議後のことについてもお聞きしますけれども、農林水産省は、日本獣医師会の要請書を九月二十三日に続いて今度十一月の二十九日にも受け取ったわけですよね。二回にわたって獣医師会から要望を受け取ったことになるわけです。日本再興戦略の改訂二〇一五年、ここには、近年の獣医師の需要の動向を考慮しつつ、全国的見地から検討するというふうに書いてあるわけですね。
 日本獣医師会の要望を受けて、需給動向について、どこで誰がどういうデータを基にして協議をしたんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 日本獣医師会からの要請書に記載されております獣医師の需給動向についての認識は、農林水産省の認識とほぼ同様でございました。
 具体的には、獣医師の需給につきましては、近年、家畜やペットである犬猫の飼養頭数はいずれも減少傾向にある一方、ペット一頭当たりの診療回数は増加していると考えられること等から、一概には申し上げられませんけれども、獣医師の数自体が全体的に不足しているという状況にはないというように考えております。このような中で、産業動物獣医師につきましては、都道府県単位の畜産協会が地元に就職することを条件に獣医学生等に対して修学資金を貸与する事業を実施している状況に鑑みますと、地域によってその確保が困難なところがあるという状況と認識しております。
 農林水産省としましては、内閣府や文科省も出席している国家戦略特区ワーキンググループヒアリング等において、求めに応じてこうした獣医師の現状等に関する説明を行ってきたわけでございます。
 なお、九月二十三日以降ということであれば、私が、十一月九日の国家戦略特区区域諮問会議で、獣医師の新たな需要に対応した獣医学部新設がなされるのであればとの前提で、当省としての課題の解決、すなわち、家畜やペットの数は減少しているけれども、産業動物獣医師の確保が困難な地域が現実にあり、こうした地域的課題の解決につながる仕組みとなることを期待するという旨の発言をしたところでございます。

○紙智子君 需給動向をどこで誰がどういうデータを基に協議したんですかというふうに聞いたんですけど、そのデータというのはどういうものに基づいてやっているんですか、協議したんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 需給動向につきましては、獣医学部に従事する獣医師さんの就業先、こうしたデータがしっかりございます。そしてまた、基本的に国が計画するものと都道府県が計画するものというもののすり合わせも行っているわけでございまして、その意味では、産業動物獣医師と公務員家畜衛生獣医師、このことについては、獣医療法に基づきまして農水省がしっかりとした資料を文科省等に提出をしてきたわけでございます。

○紙智子君 受け取ってそれで見たときに、獣医師を養成する大学の定員というのは約九百名ですよね。いきなり定員百六十名の大学ができたら、これ需要を超えて就職できなくなる人もいるかもしれないと。だから、需要は足りていると言ってきたんじゃないんですか。
 政治が私物化されたんじゃないかという疑惑は今もって晴れていないわけですよ。本来であれば、農水省としてはもっとちゃんと積極的に意見を述べなければならなかったと思うんですよ。大臣が関わったのは、十一月九日の日に言ったというんだけれども、これは、それができたら是非こっちに回してほしいと言うぐらいのもので、本来もっと積極的に関わるべきだったと思いますよ。そういう点では極めて無責任というふうに思います。この問題については、引き続きちゃんとした調整だとか、それで本当にどうなるのかということはやらなきゃいけないことだと思います。
 今日、ちょっとこの後、法案の問題もありますので、次の質問に移りたいと思います。
 収入保険の保険財政の見通しについて聞きます。
 保険の資格者というのは青色申告者に限定しますけれども、販売農家百三十三万戸のうち、現在の青色申告者は何人でしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) お答えいたします。
 青色申告を実施している農業者数、平成二十七年時点で約四十四万人となっております。

○紙智子君 それで、収入保険の対象となる方は、今四十四万人というふうに言って、これ全体の三分の一ということですね。
 二〇一五年の農林業センサスから、消費税の免税事業者がどれぐらいいるのかということを確認したところ、農業者数で、百三十八万人のうち、農産物販売金額が一千万以下の免税事業者というのは百二十五万人、課税事業者は十三万人というふうに聞きました。
 それで、農業を支えている方の販売価格一千万円以下、家族経営が圧倒的だと思うんですよ。こうした方々が実務処理が膨大になる青色申告に移るのでしょうか。
 続けて質問します。
 そのことが一つ疑問としてあるんですけれども、収入保険は独自の換算、勘定を作るというふうに言っていると思うんですね。そこで、保険財政の見通しについて聞きたいと思うんですけれども、青色申告者は先ほど四十四万人という話もありました。一方、農産物の販売金額は一千万以下の方が全体の九〇%ということですよね。
 それから、参考人質疑で意見を述べられた農業者の方は、この収入保険よりもナラシ対策の方がメリットがあるというふうに言われていました。保険ですから、母集団を安定的に確保しないとこの保険財政がうまく機能しないと思いますが、保険財政がうまくこれ機能していくんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) まず、青色申告の加入が増えていくのかどうか、非常に事務が膨大ではないかということを消費税の課税事業者、免税事業者を例に御質問されたというのが第一の質問だというふうに理解してございますけれども、まず、課税事業者、免税事業者とは、少なくともこの青色申告は違う制度でございまして、青色申告につきましては、各地元の農協なり農業委員会自体も青色申告が大事だということで、その普及宣伝に、この収入保険の前から、ずっと前から努めております。相当程度の農協におきましては、青色申告の代行までやっておるわけでございます。ですので、一人一人が全部をやらなければいけないということではなくて、そういうような農業団体の努力というものもあるわけでございますので、今回の収入保険ではそういうような農業団体にも協力、連携をいたしまして、青色申告の加入促進に努めてまいりたいと思っておりますし、二十九年度でも予算を措置しているところでございます。
 それから、保険……(発言する者あり)なるべく簡潔にいたします。

○委員長(渡辺猛之君) 簡潔にお願いします。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 二つ目の質問でございますけれども、保険財政上の問題でございますが、これにつきましては、検討していく際に、農業者の集団でございます日本農業法人協会から加入促進のための要望ということで、一%程度の保険料率にしてほしいということであります。今回、我々が試算したところでは、ちょうどその保険の国庫負担等を前提にいたしますと大体一%ぐらいになるというふうに考えておりますので、農業者にも魅力のある制度になっておると思います。
 それから、参考人質疑の際に、ほかの制度との関係、これは選択制にしておりますので、我々としては、農業者の方が従来の制度にメリットを持っていただくのであればそれはそれで入っていただければと、そういう形、選択制の中でセーフティーネットを広げていきたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 やり取りの中で、先日も三年後に見直しするという話があったんですけれども、加入者がもし増えなければ、これは保険料率を引き上げることになるかもしれないということもあると思うんですね。
 掛金だけで保険金を払い切れないために再保険制度というのもあるというのも資料にありました。再保険制度は不測の事態に備える仕組みなわけですよね。自然災害の場合の不測の事態というのは分かりますけれども、需給変動によって価格の低下をするケースで不測というのはどういうケースが考えられるんでしょうか。できるだけ端的にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 収入保険制度で不測時に農業者に確実に保険金が支払われるようにするために、政府再保険を措置しております。この不測時というのは、自然災害か市場環境の変化による価格低下にかかわらず、平年的に発生が見込まれる保険金支払額を超える場合、これを想定しております。
 したがいまして、政府再保険によって更にこの制度が揺るぎないものにするように措置をしているところでございます。

○紙智子君 ちょっと今、どういう事態なのかははっきりしないんですよね。それで、再保険制度がどういうケースに発動されるのかというところがはっきりしないと、これ、農業者の安心につながらないと思います。
 どういう形の収入保険がいいのかという議論は必要だと思うんですね。しかし、所得の下支えにならない仕組みだけでは農業者の安心にはつながらないということあります。しかも、所得の下支えにする所得補償とセットで出すのではなくて、共済制度の縮小、削減とセットで今回提出をされていると。ここが問題だと思います。
 農業共済制度について聞きますけれども、参考人質疑の中でも、当然加入、それから一筆方式、無事戻し等を廃止することに異論を唱える意見が出ました。当然加入を廃止して任意にするけれども危険段階別の共済掛金率を導入すると、で、継続的に加入してもらえると楽観的な見方をされているんですけれども、しかし当然加入から任意になればどういうことになるのかということがあるわけです。
 今年、山陰地方を襲った大雪で農業用ハウスに大きな被害が出ました。それで、農水省は二〇一三年に関東地方を襲った大雪被害を踏まえて、園芸施設の共済を拡充し、加入するように働きかけてきたと思うんですね。しかし、任意加入であるために、鳥取県とか兵庫県、京都府などもこの加入率が増えることはなかったわけですよ。危険段階別の共済掛金率を導入するということで大丈夫だというのは根拠にならないというふうに思うんです。
 米は基幹作物、国民の主食と。当然加入を廃止することで無保険者が増える可能性があると思うんですね。自然災害が発生しても、この支援制度がなければ新たに離農者が出るかもしれないと。これではやっぱり地域の営農計画、国民への食料供給に影響が出るんじゃないかと思うんです。甚大な影響が出たら、これからは保険ではなくて国費で支援するということになるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 今回の改正で、米麦を取り巻く状況の変化等で任意加入制度に移行をさせていただきました。
 当然加入制度を廃止するということへの考え方でございますが、まず、現在の農作物共済の加入者百四十四万人のうち、その二七%に当たる三十九万人が当然加入要件を下回る小規模の農業者でございます。自らの意思で農作物共済にその方々も加入を現在もしていただいております。当然加入がなくなれば小規模の農業者が脱退するというようには考えられない現象でございます。
 加えて、共済金を受け取らない農業者ほど掛金が安くなる仕組み、危険段階を導入しておりまして、低被害の人でも継続加入がしやすくなることとなっております。また、坪刈り等を要さずに目視する評価で一筆ごとの損害を補償する制度も導入をさせていただきました。さらに、国としましても、融資及び補助事業の採択に当たって農業共済等への加入の働きかけを行うというようにもしております。
 以上のことから、当然加入を廃止しましても、加入者が大幅に減り、制度として維持できないという事態にはならないというように予測しております。

○紙智子君 ちょっと時間が詰まってきましたので一つ飛ばしていきますけれども、日本の農業をどう再生するかということについてお聞きします。
 収入保険は、収入変動を緩和するだけで、農業経営の安定、所得の確保は図れません。必要なのは諸外国もやっている所得補償と組み合わせた制度なんじゃないかと思うんですね。アメリカでも収入保険だけで農業の経営安定を実現しているわけじゃありません。収入保障、それから不足払い、それから収入保険と、この三層構造になっていて、農業経営の安定化を行っているわけです。収入保険のみではこれは農業所得を確保できないというのが現実だと思うんですね。
 今年の所信表明で安倍総理は生産農業所得が増えているということを自慢されたんですけれども、それは民主党政権時代に始めた戸別所得補償政策による効果の現れによるところが大きいと思うんですよ。農業共済制度の縮減とセットではなくて、やっぱり所得補償とセットで収入保険制度を提案すべきなんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 農業の成長産業化を図って農業所得を向上させていくという、そういう目的のため、担い手への農地の集積、六次産業化による高付加価値化、そういう政策を取っております。また、積極的に講ずることによりまして、こうしたことを、農業者のチャレンジを促進するということが重要であろうというように認識しております。
 そういう中で、経営規模を拡大しましたり、新たな品目の生産などにチャレンジする意欲的な農業者のセーフティーネットが必要と考えております。その仕組みの上に、農業者の収入が増加傾向にある場合はこれらの収入の増加を補填の基準となる金額に反映できることとしておりますし、所得の向上に向けました農業者の努力を促すということになっております。
 御指摘の戸別所得補償制度における米の直接支払交付金につきましては、全ての販売農家を対象とするということでございまして、農地の流動化を遅らせる面があるということから二十九年度までの時限措置としたところでございまして、これと直接はこの考え方を連動させてはおりませんが、これは今後ますますトレンドとして、米の消費が減っていく中で、こうした個別の家計補助というものが、我々にとりましては更に農家の積極的な勇気につながっていくだろうというように思っておる次第でございます。

○委員長(渡辺猛之君) 時間ですので。

○紙智子君 時間になりましたけれども、参考人質疑にも出されたんですけれど、所得補償の復活を求める動きが広がっているわけですよ。それで、新潟県では知事自身が県独自の施策として公的サポートモデル事業で所得を補償する制度を打ち出しているという動きが今出てきているわけで、是非、やっぱり所得補償とセットで考えていただきたいということを最後に申し上げまして、質問を終わります。