<第193回国会 2017年6月13日 農林水産委員会>


◇商業捕鯨等鯨類科学調査実施法案について/農業共済制度を拡充するのでなく、当然加入を任意加入に変え、一筆方式を廃止すれば、生産力の維持発展が図れない/農産物の輸入が価格に与える影響の分析なし/新たに創設する収入保険制度は、所得の下支えにならない

○商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律案(徳永エリ君外六名発議)

○農業災害補償法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○委員長(渡辺猛之君) 商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律案を議題といたします。
 まず、発議者徳永エリ君から趣旨説明を聴取いたします。徳永エリ君。

○徳永エリ君 皆さん、お疲れさまでございます。
 ただいま議題となりました商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律案につきまして、その趣旨及び主な内容について御説明申し上げます。
 我が国の伝統と文化である捕鯨に関しては、国際捕鯨委員会における商業捕鯨の一時停止の決定以降、商業捕鯨の再開のために必要な科学的知見を収集するため、国際捕鯨取締条約に基づく鯨類捕獲調査が実施されてきました。
 しかしながら、近年、反捕鯨団体による過激な妨害活動により調査の実施に支障が生じ、また、国際司法裁判所の南極における捕鯨訴訟において我が国にとって厳しい判決が出されました。
 現在、新たな計画に基づく調査が開始されておりますが、平成二十六年四月の衆議院農林水産委員会及び本委員会の調査捕鯨実施等に関する決議を踏まえ、鯨類に関する科学的調査を国の責務として位置付け、安定的かつ継続的に実施するための法律の制定が必要とされています。
 本法律案は、このような状況を踏まえ、商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査を安定的かつ継続的に実施するために必要な事項について定めることにより、商業捕鯨の実施による水産業等の発展を図るとともに、海洋生物資源の持続的な利用に寄与しようとするものであります。
 以下、本法律案の主な内容を御説明申し上げます。
 第一に、鯨類科学調査の基本原則として、主として商業捕鯨の実施のための科学的知見を得ること、条約及び科学的知見に基づくこと等の基準を全て満たし、かつ、原則として捕獲を伴うことを定めております。
 第二に、鯨類科学調査を国の責務として位置付ける観点から、基本方針及び鯨類科学調査計画の策定を政府に義務付け、指定鯨類科学調査法人等により調査を実施することとしております。
 第三に、鯨類科学調査の費用の補助について定めるとともに、調査研究を行う人材の養成、調査用船舶の確保等の実施体制の整備に必要な措置を講ずることとしております。
 第四に、妨害行為の防止及び妨害行為への対応のための施策として、調査実施主体に対する支援、調査実施海域への政府職員及び船舶の派遣、関係行政機関による情報共有等について規定しております。
 第五に、科学的知見の国内外における普及活用、鯨類文化等についての広報活動の充実、捕獲した鯨類の調査終了後における有効かつ合理的な利用及び学校給食における利用の促進等について必要な措置を講ずることとするほか、財政上の措置等について規定しております。
 第六に、鯨類科学調査以外に地域で取り組まれている鯨類の科学的な調査についても、必要な措置を講ずることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から施行することとしております。
 以上が、この法律案の趣旨及び主な内容であります。
 本法案の今国会での成立を目指し、何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同をお願いを申し上げます。
 鯨類科学調査の実施、商業捕鯨の再開について様々な御意見があることは承知いたしております。平成二十六年四月の衆参農林水産委員会で、国の責務として調査捕鯨を位置付けることという国会決議を行っております。国会の意思によって南極海と北西太平洋において調査捕鯨は実施されています。また、反捕鯨団体が新型船を建造し、調査捕鯨船への妨害活動もますます激しくなることも予想され、今年十一月にも予定されている南極海における鯨類科学調査、NEWREPへの実施に向けて、御家族も大変に心配されております。乗組員の安全を確保するための対策が急がれます。 

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○委員長(渡辺猛之君) これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 商業捕鯨の実施等のための鯨類科学調査の実施に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。

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○委員長(渡辺猛之君) 農業災害補償法の一部を改正する法律案を議題といたします。

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○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、加計学園の問題ですけれども、これ、獣医学部、獣医師自身が、獣医師は全体としては足りていると、一部偏在があるということは言われていて、そのことが今治に新たにつくることによって解決するわけではないと、したがって必要ないということをずっと再三言われていたわけですけれども、これが結局、戦略特区という中で決まった、その背景に総理の意向が働いているんじゃないかと。この疑惑というのは、今本当に国民の中では大変な大きな疑惑になって広がっております。
 したがって、いろいろ様々議論ありましたけれども、やっぱり、この国会、閉会前にして、早くその求められている再調査についても結果を出していただきたいということを私の方からも改めて強く申し上げておきたいと思います。
 さて、今回の改正案の大きな目玉ですけれども、これ、収入保険制度を創設するものです。その理由として、農業共済制度は価格低下を対象にしていない、収量が確認できるものに限定されている、そして農業経営全体を一括してカバーできていないからだというふうに言っているわけですね。農業共済制度は自然災害による収穫量の減少を対象にしていますから、これ当然のことなんですけれども、当然のことを何か問題あるかのように何で強調するんだろうかというふうに思うわけです。今の農業共済で不十分なことがあれば、これは拡充すべきだと思うんですけれども、改正案は、拡充するのではなくて、当然加入制の廃止など農業共済制度を縮小させるものになっています。そして、農業共済の縮小とセットで収入保険制度を創設するというふうに言っているわけですね。
 基幹産業である米麦は、これは当然加入があったからこそ米の再生産を確保をして農業生産力の維持発展を図ることができたというふうに言えると思うんです。来年度から基幹作物である米の生産調整や減反政策は廃止をされるわけです。米の直接支払交付金もなくなるわけです。
 そう考えますと、今回の改正というのは、自然災害への対応よりも需給変動による価格低下を重視する方向を向いている改正ではないのかと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 御指摘の観点も含まれますけれども、今後農業が成長産業化を図るということになりますと経営判断に基づく農業経営が必要でございますので、そうした意味での選択肢が増えるという考え方に立っているわけでございます。
 現行の農業災害補償制度というのは、御指摘のとおりでございまして、自然災害による収量減少が対象でございます。また、対象品目が限定的でございます。このため、品目の枠にとらわれず新しい農業経営に取り組もうとする人には、こうした今までの制度はこれは使い勝手が悪いということになるわけでございまして、今回の収入保険制度は、個々の農家の収入それ自体に着目するわけでございますので、農業におけるチャレンジを促進することにつながっていくのではないかというように期待をしているところでございます。

○紙智子君 農業共済制度は、自然災害で被害を受けた農業者の損失を補填して再び農業生産力を高めるということが目的なわけですけれども、なぜこの共済制度そのものを拡充しないんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 共済制度についてはその品目について一定の制約がございますが、これは共済の仕組みからくるものでございまして、やはり目で見て、あるいは、何というんですか、一定の品目の重要性とかそういうふうなデータがあるもの、こういうものが共済の対象になっておりまして、実際上は、例えば葉物の野菜なり土の中に埋まっているようなもの、こういうものについてはやはり技術的にもなかなか対象にできないわけでございます。
 それからあと、じゃ、価格低下については万全なのか、それを同じ方向で拡充すべきなのかという点も検討の対象にはなりましたけれども、今のナラシ対策、それから野菜供給安定基金、それにつきましてはやはり地域の統計データを基に使うということでありますので、地域にデータがないものについてはそもそも対象のしようがありません。
 そうなりますと、これからいろいろな、農業者の方が苦労されて新しい作物を導入しようというときに、それが新しければ新しいほどその政策の手は伸びないということになります。そうなりますと、やはりこれは、どちらかというとむしろ発想を逆転させて、個々人の収入を一体として捉えた方が、どんな作物をやっても原則的に対象になるというところがこの新しい収入保険制度の独自のメリットとして考えて御提案を申し上げているところでございます。

○紙智子君 共済制度をどうして拡充しないのかということについては余り答えられていないんですけれども、米の場合でいうと一筆方式、これは事務的なコスト掛かるというふうに言われていまして、人手も掛かるし、そのための人件費も掛かるということなんだけれども、こういうものを言わば効率化するための改正なのかもしれないというふうにも思うわけですよ。
 それで、日本は台風や大雪や冷害など年間を通じて自然災害に見舞われることが多いわけで、農業は大きな影響を受けやすいわけですね。だから共済制度は拡充されてきたんだと、これまで、思います。今回の改正は共済制度の縮小とセットで収入保険制度を導入すると、言わばこれ制度発足以来の最大の改正ということなんですけれども、農政の大きな転換になるというふうに思うんですね。
 農産物の価格というのは、これ需給動向が影響するわけです。自然災害などで農産物の供給量が減れば、これは販売価格は上がるわけです。米のように、過剰になれば価格は低下すると。一方で、国内生産だけではなくて、農産物の輸入が需給動向に影響を与えることもあるわけですよね。需給動向による価格低下に対応するための収入保険だというのであれば、農産物の自由化の需給にどう影響を与えているのか、価格にどういう影響を与えているのか、こういうことを分析するべきだと思うんですけれども、これは分析されたんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 農産物の価格は、おっしゃるように基本的に品質と需給で決まるわけでございます。需要に応じた生産を推進していくということが農産物の需給及び価格の安定を図る上で重要な要素であるというように思います。
 需要に応じた生産の推進のために、需要の内容、すなわち消費者が求める量、価格、品質を的確に把握をしなければなりません。生産者がそれに見合った生産、供給を行う。その際、特に品質の面で需要に見合った生産となるように、新商品の開発などによる高付加価値化や作物の転換を進めることなんかが重要であるというように考えておるところでございます。
 品目の枠にとらわれず、農業経営者ごとに収入全体を見て総合的に対応し得る制度、これを収入保険制度と考えておりまして、このような高付加価値な作物への転換等、需要に応じた生産に向けた農業者の前向きなチャレンジを促進するために、セーフティーネットとしても有効と考えております。
 お尋ねの調査というものの精緻な需給バランスについて品目ごとにやっているわけではありません。

○紙智子君 農産物の自由化が需給にどういう影響を与えているのかということを聞いているんですけど、それについては調査していないという今の答弁ですよね。ちょっともう一度。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 例えば、TPPの大筋合意等々につきましては、それぞれについてその影響がどうかと、こういうことを個々にはやっておりますけれども、この収入保険制度は、そういういろいろな、国際的な関係でありますとか、あるいは品目ごとの需給でありますとか、それに対応した政策が行われていることを前提として導入しておりますので、この収入保険の導入を契機として改めてそういう需給の調査をやっているということではございません。

○紙智子君 全然その調査していないと。だから、需給の、需要と供給のバランスと言いながら、入ってくるものの影響というのは分析していないということだと思うんですよ。
 それで、お米でいえばミニマムアクセス米が国内市場に与える影響が懸念されていますし、去年はSBS米、これが、輸入米が国産の業務用米の価格を押し下げているんじゃないかという問題も問題になったわけですよね。政府の政策が農産物の需給に影響を与える、そして価格が低下するということがあるわけで、こういう農業者の経営努力で避けられないような収入減少も収入保険で対応するんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 収入保険制度は、繰り返しになりますけれども、ある意味では単純な制度でございまして、農業者の収入が、過去五年間の基準収入、あるいはそれを一定程度当年の営農形態で補正したその基準収入、これに比べて当年の収入が下がった場合に補填する制度でございますので、その原因については、何というんでしょうか、今までの個別の政策よりも幅広く、単に収入減少があればモラルハザードが起きない範囲で補填はしていくというのが基本的な考え方でございます。

○紙智子君 為替相場とか自由化という中で、政策判断で農作物の価格が低下することがあると思うんですよ。輸入自由化を進めるための対応なんじゃないかというふうな懸念も拭えないわけですね。主要農作物というのは保護することが重要だというふうに思っているわけです。
 収入保険の保障内容についてなんですけれども、収入保険の基準収入、これは農業者ごとの過去五年間の平均収入で算定するというふうに言われているわけですよね。価格が毎年下落した場合に、この基準収入も減額していくわけです。それで、収入減少というのが結局歯止めなく続くということになるんじゃありませんか。大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 前向きな六次産業化に取り組む方や、担い手の農地の集積、高付加価値化というような、そうしたチャレンジ精神のある方々にとっては、この収入保険というのは非常に的確に対応できるわけでございます。収入保険制度はこうした中で実施されるものでございまして、価格の恒常的な低下局面を想定して導入しているわけではございません。
 なお、収入保険は価格が上がれば上がる局面で基準収入が伸びていくわけでございまして、単純に個々の生産者の収入に着目する、そして減少すれば補填するという制度でございますので、また、その減少局面において、様々な営農における支援措置を講ずることによってその収入が回復できるというような制度、仕組み、トータルで行っていきたいというように思っております。

○紙智子君 制度の説明されたんですけれども、聞いたことは、価格が毎年下落した場合に基準収入も減額していくと、収入減少は歯止めなく続くんじゃないかと聞いたんですよ。上がることもあると言うんですけれども、大体、余り上がることって想定されていなくて、下がっていくことになったら歯止めなくこれ下がるんじゃないですかと聞いたんです。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 補足してお答えいたしますけれども、何も収入保険だけが唯一の農政ではないわけでございます。ですから、先ほどの例えば国際的な自由化ということであれば、例えばTPPであればその影響を予測して必要な対策を打つ、それによって需給のバランスを取っていくと、こういうことが別途行われているわけでございます。価格の恒常的な低下、これについても、米を始めとして様々な需給を安定化させるための対策を打っているわけです。
 収入保険制度というのは、そのようないろいろな政策が行われていることを前提として導入していると。そういう意味で、価格低下の補償でありますとか価格の恒常的な低下局面を想定して導入したとか、そういうことではないということを申し上げている次第でございます。

○紙智子君 農林水産省が米の相対取引価格の公表を始めたのが平成十八年、二〇〇六年からだと思うんですけれども、主食用一等米の六十キロ当たりの相対取引価格とそれから六十キロ当たりの米の生産費を調べてみたんですね。そうしたら、二〇一二年を除いては生産費が相対取引価格を上回っているんですよ。この二〇一二年というのは震災の翌年で、そのときだけは逆転していたんですけれども、つまり採算割れというのが慢性的になっているということなんです。例えば、二〇一〇年の米の生産に掛かった費用というのは一万六千五百九十四円なんですね。売った価格というのは一万二千七百十一円ですから、三千八百八十三円の赤字になっているわけですよ。これ毎年のように米の生産というのは赤字なんです。
 収入保険の導入で経営が改善されるんでしょうか、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 繰り返しになりますけれども、恐縮ですが、米の米価の問題、米の需給をどうやってバランスさせていくかと、こういう問題につきましては、様々な情報提供でありますとか、それから麦、大豆、飼料作物、飼料米、そういうものを水田で新しく作付けしていくとか、そういうような政策におきまして近年成果も上がっているというふうに認識してございます。ですので、まずそういう政策が一つあるということでございます。
 収入保険は、加えまして、どんな品目でも原則として対象にする制度でございますので、意欲ある農業者の方々が前向きにチャレンジをしていくと、で、成功すればそれは新しい高付加価値な作物の生産につながるんだと思いますけれども、万が一そこが初めの年なりしばらくうまくいかなかったときでも、それは一定の補償があるということで、また新しいチャレンジをしていこうと、こういうような前向きな努力を促すということによって所得の向上にもつながっていく効果があるのではないかというふうに考えてございます。

○紙智子君 これは調査室の資料に書いてあったんですけど、当年の収入が過去平均よりも低くなる場合の基準収入について、営農計画で収入減少が見込まれ得る要素があれば過去の平均よりも下方修正されると言われているんですね。これでは所得の下支えにもならないんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) これは、やっぱりそういうような仕組みになってございまして、収入保険制度における基準収入は過去の平均収入を基本としながら当年の営農計画を考慮して設定するということでございます。例えば、この経営規模を半分にするというときに、これは自発的に決められたことでございます。そういうときに、半分に自発的に決めても今までの経営規模に即した収入が得られる、こういうことになりますとなかなか国民理解を得る点でも非常に問題があると思いますし、これは保険の世界でいえば損失以上の補填を行うといったモラルハザードが生じるということになるのではないかと思いまして、この下方修正ということで経営の実態に合った基準収入が設定されるような仕組みとしている次第でございます。

○紙智子君 そのモラルハザードというのは物すごく気になるんですけれども、あくまで農業収入の変動を緩和するための制度であって、これ農業収入の水準を保証するための制度ではないと。結局は生産費が考慮されない底なしの調整に、制度になりかねないというふうに思います。
 ナラシ対策などの類似制度についてもお聞きします。
 百七十六条において、農業共済の加入者その他省令で定める農業収入の減少補填を行う事業の加入者は収入保険に加入できないというふうになっていますね。農業共済、収入減少影響緩和対策、いわゆるナラシ対策と、それから野菜価格安定制度、それから加工原料乳生産者経営安定対策などがそれに入ると思います。
 なぜこれらを対象にしないのか。衆議院で我が党の斉藤和子議員が聞いたところ、ナラシ対策などは国費が投入される類似の制度だと、税金の二重取りになるんだというふうに答えられているわけです。
 そこで、ナラシ対策と収入保険とを比較した場合にどちらが農業者にメリットがあるのか、農水省が行った有識者会議に資料が出されております。ナラシ対策が有利なケースを紹介していただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) いろんな違いが収入保険といわゆるナラシ対策についてはございますが、ナラシ対策の場合には収入が、地域のデータを使うということは前提ですけれども、その地域の価格水準よりも少しでも下がればその九割が補填されるという仕組みでございます。収入保険につきましては、それこそ全部、収入が全然出なかったときも補填はされますけれども、一割の足切りがございます。ですから、その点だけでいえば、少ない収入減の場合にはナラシの方が補填が出るというようなことになるかと思います。
 ただ、これは非常に複雑でございまして、先ほどもお話ししましたけれども、いわゆるナラシ対策は地域の統計データを使って地域平均の収入減少を補填することになりますので、地域全体としてはむしろ価格は上がっていたり同じであったりしても、その方の農家がいろいろな理由で収入減になった場合には、それは収入保険の方が出るということになりまして……(発言する者あり)
 初めにお話ししたようなケースが一般的にいいますと有利なケースでございますが、ケース・バイ・ケースでありまして、必ずしも全てにわたってナラシが有利だとまでは言えないというふうにお話をしております。

○紙智子君 農水省の資料を見ますと、米の複合経営では、収入保険の補償額百九十五万円に対して、ナラシ対策は二百五万円になっているんですよね。それから、米の単作経営でいうと、収入保険の補償額は三百二十九万円で、ナラシ対策は四百八十七万円ということで、ナラシの方がメリットがあることが分かるんですね。米の比重が大きい農業経営者はナラシの方がメリットがある、畑作はほぼ同程度というふうに試算していますけれども、この経営形態によって変わってくると思うんです。
 それで、ナラシ対策の方がメリットがあるということになれば、これ、収入保険に移行しようとする農業者のインセンティブは働かないんじゃないでしょうか、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) そういう米単独の農家と比較すればそうであるわけでございますけれども、最近の傾向といたしましては、新しい品目に挑戦しようという意欲が若者の間にあるわけでございまして、そんな意味で複合経営の方向に農家があると、こういうように認識しておりますので、その点においては収入保険が適切ではないかというように思っております。
 いずれにいたしましても、既存制度と並行加入が可能でございますので、並行的に制度、仕組みが存置されるというように考えているところでございます。

○紙智子君 衆議院の参考人の質疑の中で、収入保険制度への十分な加入者を確保するために米の大幅な下落が必要になると。逆の言い方をすれば、米価の大幅な下落を見越しているからこそ、青色申告者を救うために収入保険制度を生産調整廃止に合わせて導入するという指摘がありました。そういうことなんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) まず、先生御指摘のこの農林省資料というものにつきましては、その資料に明記してございますけれども、事業化調査の事例からみた作物類型別の試算ということで、実際にその経営類型はその事業化調査に参加していただいた農家の経営内容をそのまま書いてございます。ですので、ここで米単作でありますとか米の複合経営という方は、あくまでこの特定の地域にいらっしゃって、この特定の制度を使えるとしたらどうだということですので、なかなか一般化するのは難しいところがございます。我々は、別途ホームページ上に収入保険制度と既存の類似制度の比較のポイントというのを出しておりまして、そのときにはもう少し一般的な説明をしております。
 なお、米価の下落を想定してこの制度を導入したということは、前にもお答えしておりますけれども、そういうことではありませんで、個別の需給安定のためのいろいろな品目別の施策を前提としてこの収入保険制度を導入したわけでございます。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が参りましたので、おまとめください。

○紙智子君 はい。
 まだいろいろあるんですけれども、まだ残りは次回やらせていただきますけれども、保険者の資格などを含めて疑問がたくさんありますので、次回に質問を回したいと思います。
 ありがとうございます。