<第193回国会 2017年6月2日 沖縄及び北方問題に関する特別委員会>


◇沖縄県辺野古への大量の土砂搬入の中止を/「北方領土」の共同経済活動、エリツィン政権時代に中止になって理由は言えないと岸田外相答弁/領土交渉への立場を明確にして協議を、日本の主権を守るよう要求

○沖縄及び北方問題に関しての対策樹立に関する調査(沖縄及び北方問題に関しての施策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 沖縄県は、五月十五日で本土復帰から四十五年ということになりました。それで、沖縄県によりますと、米軍機の関連の事故は本土復帰から二〇一六年末まで七百九件発生しています。そして、昨年十二月にはオスプレイが墜落をしました。米軍人や軍属等による刑法犯罪というのが今年三月末までに五千九百二十九件発生しています。昨年四月には、うるま市で元海兵隊員の軍属による女性暴行殺害事件が発生しました。沖縄では、本土復帰四十五年たっても、いまだにこうした事件が続いていると。
 鶴保大臣に伺いますけれども、なぜこのような事件や事故がなくならないんでしょうか。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 鶴保庸介君) これらの事故に対して我々として何ができるかという質問であろうというふうに思います。
 米軍の綱紀に我々の側でどれだけ把握をし、また協力をできるところに協力をし、そして申すべきところはしっかりと申し上げていく、このことに尽きるのではないかというふうに思いますが、振興を担当する私どもとしては、まずは、こうした事故の再発防止が着実に実施されるよう、エビデンスの手続をしっかりとつくっていくという意味におきましても、防犯灯や防犯カメラを作らせていただき、県民の皆様の理解を得ながら進めていくということをさせてはいただいております。
 ただ、こうしたことは事後的な予防措置でございます。何といっても、その事件が起こる前に、こうした状況の防止のために協議を続けていかなければならないのではないか。
 そういった意味で、現状では、現地米軍との会議が、日米危機管理会議として年に一回程度、現地米軍と接触をする機会があるというふうに聞いておりますので、こうしたチャネル、またあるいは全体としての米軍への日本政府の関連協議の機会、ありとあらゆる機会を捉まえて、今沖縄の基地の現状、そしてまた沖縄県の思い等々を紡いでいくというのが我々としてでき得ることではないかというふうに考えております。

○紙智子君 やはり、事後対策ではやっぱり駄目だという認識示されたと思うんですよ。
 本当に、これ復帰後も全国の米軍基地の七割が集中していると、基地がある。それがゆえにこういうことが続いているというように思いますし、幾度となく同じように取り上げられて、そしてそのたびに本当につらい思いをされる方々が、県民の皆さんの命が奪われたり、人権や尊厳が踏みにじられてきたと思うんです。子供の貧困も深刻な状況が続いているというように思うので、大臣は沖縄の振興というところが担当だけれども、しかし逆行する事態だというふうに思うんですね。
 もう一つ、それに関連してお聞きしたいのは、名護市の辺野古の新基地建設についてなんですけれども、沖縄防衛局が四月二十五日、県知事の岩礁破砕許可を得ずに違法な作業の着手を強行したわけです。まず、これ、私本当に許せないと思います。抗議をしたいと思います。
 そこで、辺野古では護岸工事に必要な石材などが連日搬入されているわけです。奄美大島や瀬戸内、天草などからも土砂を調達する計画が出されていると。辺野古の土砂搬出反対の全国連絡協議会というのがつくられているんですよ。それで、この人たちは、大量の土砂の搬入ということが辺野古と大浦湾の海を回復不可能なまでに破壊する、外来種の混入のおそれがあるということで、先ほども藤田さんの質問ありましたけれども、非常に、ほかにないようなすばらしい環境がある、そういうところが壊されていくということです。
 さらに、戦争のための基地建設にふるさとの土砂は使わせたくないということで、そういう運動を広げて、要請をして、これまでに九万五千筆以上の署名を安倍首相宛てに提出をしているんですね。
 それで、沖縄振興に責任を持つ大臣として、このことについてはどのように受け止めているか、伺いたいと思います。

○国務大臣(内閣府特命担当大臣(沖縄及び北方対策) 鶴保庸介君) 御指摘の事実につきましては、振興を担当する私どもとして、普天間飛行場の辺野古移設に伴う環境保全措置に関してはその所掌にはございません。
 ただ、その上であえて申し上げるとするならば、当該移設に当たり、防衛省においては、引き続き関係法令に基づき自然環境や住民の生活環境にも最大限配慮をしつつ、部外専門家から構成される環境監視等委員会などの指導、助言を踏まえた上で所要の工事を適切に進めていくというふうに聞いております。
 私としては、引き続き、同省において工事に伴う土砂採取に関する対応を含め、移設に伴う環境保全措置をしっかり講じていただきたい、これを注視してまいるということに尽きると思います。

○紙智子君 適切になんて進められていませんからね。それで、所管ではないというんだけれども、大いに関係ある問題だと思いますよ、切り離せない問題だと思いますよ。
 辺野古のこの新基地建設というのは、沖縄の負担軽減どころか、オール沖縄の声、県民の総意を踏みにじる暴挙だと、断じて許せないということを申し上げておきたいと思います。
 次に、日ロの交渉について、今度は岸田外務大臣に伺います。
 外務大臣は、日ロ共同経済活動について、三月にラブロフ外相と会談をして、協議の進展を図っていくということで確認をされています。外務大臣が座長となって、この関係省庁の参加を得て共同経済活動関連協議会を設置をしたと。で、検討を進めているんだと思いますけれども、この共同経済活動をめぐっては、以前、一九九八年、エリツィン政権時代にもやっぱりそういう話が出て検討されたことがあったんですけれども、立ち消えになりました。それはなぜだったんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 御指摘のように、一九九八年十一月の日ロ首脳会談では、平和条約を二〇〇〇年までに締結するよう全力を尽くすとの決意が再確認されるとともに、国境画定委員会と共同経済委員会が設置されました。しかしながら、当時の交渉においては二〇〇〇年までの平和条約の締結は実現せず、共同経済活動も実現しなかった、こうした経緯がございました。
 なぜこれできなかったのかという御質問ですが、今まさにこの共同経済活動について再び議論を行っておりますので、その要因ですとかそのときのやり取りを今ここで明らかにするのは、この交渉にも影響が出かねませんので、控えなければならないと思いますが、当時の経験も十分踏まえて今議論を行っているところであります。
 そして、今回の共同経済活動、昨年十二月の日ロ首脳会談の際のプレス向け声明にあるとおり、我が国の法的立場を害さないことが大前提であるとされております。そして、日ロ双方は国際約束の締結を含む法的基盤の問題を検討する、要はこの国際約束、条約等の締結等も検討するというようなことも両首脳間で一致をしています。
 その辺も踏まえて、是非、今回、この共同経済活動を実現するべくしっかりと取り組んでいきたい、このように考えます。

○紙智子君 その交渉の中身についてはいろいろ教訓なども分析もしたりしておられるんだろうと思いますけれども、なかなか余り今はそれは語れない部分もあるということなんですけれども、恐らく、やっぱり日本とロシアのどちらの法律でやっていくのかということをめぐっては、まとまらなかったんじゃないのかなというふうに思うんですけれども。それで、このことってやっぱり主権に関わる問題だと思うんです。非常に、何というか、そういう意味では重要な、中身に関わる問題だというふうに思うんですけれども。
 六月後半に官民合同調査団ということで共同経済活動のために四島の訪問をするというふうに新聞報道などもされているわけです。報道によると、日ロ双方の法的立場を害さないとして、医療や漁業やインフラや観光などの事業などを含めた候補がいろいろ六十件ぐらい上っているというのが新聞報道でありました。
 それで、そういうことの一つ一つについてやっていくんだとしたら、例えばこの場合はどうなのかなということで、いろいろやっぱり気になること、たくさんあるわけですけれども、例えば日本の企業が会社を立ち上げると、合弁という形もあるのかと思うんですけれども、立ち上げる場合に、労働者の権利とか税金の納め方だとか、これが例えば日本側の法律が適用されるのかとか、こういったことについてはどうなんでしょうか、そんなこともあるんでしょうか、議論の中には。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 四島における共同経済活動については、三月に次官級協議、そして外相会談を開かせていただき、そして両国の関心事項を交換し合うということで、具体的な中身を今詰めているという状況であります。
 よって、具体的な事例について何か申し上げることは今の段階では難しいし、逆に控えなければならないと思いますが、いずれにせよ、先ほど申し上げたように、両国の法的立場を害さない、これが大前提になっています。日ロ間の国際約束の締結も含めて、今後、検討をしていくことになります。その中で、具体的な案件についてしっかり整理をし、結論を出したいと思います。法的立場を害さない結論をしっかり出していきたい、このように思っています。

○紙智子君 ロシアの側はロシアの法律に基づいて行われるんだということを、主張を譲る気配がないという報道もありまして、そこのところが曖昧になったまま進めば、これは領土問題棚上げになりかねないという心配もあるわけです。
 それからもう一つ、さらに、財産問題もあるんですけれども、根室市には残置財産の登記簿が置かれています。見てきました。元島民の不動産がどうなっていくのかというのが分かりません。既にロシアによる実効支配で開発が進んでいて、例えばロシア政府が土地無償貸与制度というのをつくって、国民に一人当たり最大一ヘクタールの土地を無償で貸与するということが言われている。まさに、日本の主権が、これ、侵害される問題だと。それに対して、抗議か何かされているんでしょうか。どのように対処されたんでしょうか。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) 御指摘の無償分与に関する法律ですが、このロシアの法律は、極東地域への移住促進を目的としたものであり、特に北方領土のみを対象としたものではない、このように承知をしております。その上で、我が国政府としては、北方四島をめぐるロシア側の動向について注視をしており、この制度の実施状況について情報収集を行っている、こうした取組を続けているところです。
 いずれにしましても、こうした問題の根本的な解決のためには、北方領土問題それ自体の解決が重要だと認識をしています。政府としても、平和条約問題についてロシア側と議論する中で、四島におけるロシア側の個別の動向にも言及し、四島に関する日本の立場、これについては明確に主張をしているということであります。
 引き続き、我が国の法的立場を害さないという立場を堅持しながら議論を続けていきたい、このように考えます。

○紙智子君 今のお話だと特に抗議した様子もないんですけれども、このほかにもいろいろあるわけですよね。
 例えば、軍事増強問題もあると。外務大臣は、ロシア軍の地対艦ミサイルについて、三月二十日の日ロの外務・防衛担当閣僚会議、2プラス2ですね、これで、日本が主権を有する北方四島での軍事強化に当たるとして懸念を表明したというんですけれども、こういうことというのはやっぱり厳しく抗議をすることだというように思うんですよ。
 それと併せてもう一つ言うならば、五月にビザなし渡航があったばかりですけれども、ロシアが立入りを認めなかったというふうに言われているわけですね。つまり、安倍首相とプーチン大統領の間で、昨年十二月の首脳会談で、プーチン大統領はこれまで閉じられていた地域への最大限自由なアクセスを保障すると述べたというふうに聞いているんですけれども、閉じられた地域がどういうところなのかというのはあるんですけれども、実際ビザなしで訪問した人たちが、今回、瀬石というところと東沸、オホーツク海側のニキシロという三か所全てでロシア側からの立入りが認められなかったと。
 アクセスを保障すると言ったのになぜ入れなかったのかというふうに言っているわけですけれども、ちょっと時間がないから最後にまとめてお答えいただきたいんですけれども、やっぱり元島民の皆さんから見ると、この間、こういう交渉の中で期待を持った、しかしながら、実際に現場では、実態としてはそういうことが起こっているわけですよ。がっかりした、非常に残念だと。日ロ交渉以降、目に見える変化があるのかというと、これから先の話はあるんだけれども、現実にはこういうことが次々と起こっていて、結局、ロシアは自分たちの主権の下で行われるということを繰り返している中で、本当に根本的な解決に至るのかということが大きなやっぱり思いとしては高まっている状態なんですね。
 そこのところで、最後にちょっと、こうした事態もまとめて、大臣の考えといいますか、それに対してどう思っているのかということをお聞きして、終わりたいと思います。

○委員長(藤井基之君) 時間が過ぎておりますので、答弁は簡潔にお願いします。

○国務大臣(外務大臣 岸田文雄君) まず、四島の共同経済活動については、もし実現をしたならば、戦後七十年以上たって初めて日本人が四島において経済活動を行うことができる、こういったことにつながります。このことは、四島の未来を考える上で大変重要な取組であり、重大な進展の一歩であると認識をしています。
 そして、墓参等につきましては、これは元島民の皆様方の要望、しっかり踏まえながら、より柔軟性を発揮して改善を行っていかなければならない、こうした認識であります。御指摘のように、三か所ほど墓参が認められなかった例、五月にあったわけですが、これは大変残念なことであり、是非改善を引き続き求めていきたい、このように思っています。