<第193回国会 2017年5月25日 農林水産委員会>


◇加計学園集中審議を要求/政府の農業構造改革に従うことを条件に企業誘致/全国で工業跡地が増えているのに「農地を転用してまで企業誘致を進める必要はない」/農業を軸に据えた支援が必要

○農村地域工業等導入促進法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、今日も議論になっていますけれども、やはり加計学園をめぐって、私も先日質問して、それで、獣医師の需要を所管する農林水産省及び厚生労働省において、今後の獣医師の需要の動向を明らかにした上でということになっているんですけれども、これが実際にどう議論されたのかというプロセスが結局前回質問したときも分からなかったということもありまして、是非、獣医師の問題をめぐっては、その需給動向ということで、集中審議を農水委員会において参考人もちゃんと呼んでやれるようにしていただきたいということをまず要請しておきたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 では、法案ですけれども、農業競争力強化プログラムでは、農業及び関連産業の所得を増大させるとともに、地域社会としての農村を維持発展させるために、農村地域工業導入促進法を改正するというふうになっています。農村を維持発展させると言っていますけれども、農業の将来像についてお聞きしたいと思うんです。
 政府は、日本再興戦略において、今後十年間で全農地面積の八割が担い手によって利用され、米の生産コストを現状から全国平均比四割削減することを目標にしました。
 それで、二〇一三年の米の生産費は六十キロ当たりで一万五千二百二十九円ですから、約九千円にするということですね。二〇一五年の生産費は一万五千三百九十円ですから、生産費は下がるどころか、百六十一円増えてしまいました。ただ、日本再興戦略で掲げた目標は変えていないと。
 そこで、その戦略を進める上で、土地利用型作物の農業構造がどうなっているかについて聞きたいと思うんですけれども、現在の担い手が生産する面積、基幹的農業従事者数及び雇用者数について説明をしてください。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) お答えいたします。
 平成二十七年三月に、農業構造の展望というのを農林水産省として公表いたしてございますけれども、その際には、いろいろな仮定を置きまして土地利用型作物についていろいろな試算をしております。
 それによりますと、構造改革が進んで担い手が耕地面積全体の八割を担うというふうに仮定した場合には、平成三十七年時点で、基幹的農業従事者に常雇いを加えた農業就業者が約三十万人以上必要だということを試算しております。そのときに担い手の経営面積合計は、土地利用型農業ですけれども三百万ヘクタールになると、そういうような展望を公表したことがございます。

○紙智子君 現在の担い手ですよ。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 現在の担い手が農地をどれだけ集積しているかということでよろしゅうございますか。申し訳ございません。

○紙智子君 だから、現在の担い手が生産する面積、基幹的農業従事者数及び雇用者数について説明してくださいと。

○政府参考人(農林水産省経営局長 大澤誠君) 申し訳ございませんけれども、その構造展望を示したものに相当する現在の面積というのは、そういう形での統計の集計というのは行っておりません。
 先生の御質問に少しでもお答えするという観点からいきますと、今週公表した資料がございますけれども、農地の中で担い手農家、これは認定農業者でありますとか認定農業者の基準に既に達した方でありますとか、そういう農家の方々が農地をどれだけ集積しているかということでありますと、全体の約五四%がその農家の方に集積しているところでございます。
 ただし、これはまた基幹的農業従事者とは少し違っておりますので、先生へのお答えに、完璧に答えるものは今お持ちしておりません。

○紙智子君 ちょっと前もってレクでいろいろやり取りしていたら、土地利用型という形での統計はないというふうに言っていたんですよね。それで、平成二十二年当時の農業就業者数が二百十九万人、六十代以下は百二十四万人と。耕地面積は平成二十二年で約四百五十万ヘクタールで、平成二十八年でいうと四百四十七万ヘクタールだというふうに答えていたんですよ。
 それで、その次に、日本再興戦略で示した目標が実現できたときの姿、土地利用型作物において担い手が生産する面積、基幹的農業従事者及び雇用者の必要数はどのように見込んでいるかといったら、さっき答弁あったように、面積で三百万ヘクタール、農業従事者で三十万人というふうになると思うんですね。ちょっとそれでもうやり取りいいんですけれども。
 それで、現在の土地利用作物の農業従事者の数というのは、これ統計上ははっきりしないわけですけれども、三十万人になると。農水省の見通しでは、農業就業者数というのは、二〇一〇年の二百十九万人から二〇二五年には百七十万人、五十万人減少するということになるわけですよ、漠とした中身で見てもね。相当な離農者が出るという推計になるわけです。こういう離農者に仕事をどう確保するか、離農者対策がこれ実は農工法に求められている役割なんじゃないんだろうかと思うわけですね。
 そこで、昭和四十六年、一九七一年に本法が立法化されたわけですけれども、その理由について説明をお願いします。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) 昭和四十六年当時でございますが、国土の均衡ある発展の観点から、太平洋ベルト地帯以外への地域へ工業再配置の政策が講じられておりました。農業、農村サイドでは農業の構造改善といったものが課題となっておりました。
 そうした時代背景の下で、農工法ですが、労働集約的であって、現に農業から転職する方の割合が最も高い、農業従事者の雇用の確保に資する産業であります工業を農村地域に導入するといったことを目的として制定されたものでございます。

○紙智子君 もちろん、そういうことも状況あったと思うんですけれども、しかし直接の契機としては、米の過剰問題や米の生産調整、いわゆる減反政策の開始の時期なんですね。米価の据置きに対応するための施策だったんじゃありませんか。
 これ、大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) でも実際、この四十六年当時にはまだ農村に人口吸収能力がございましたし、都会で失敗したときには、やっぱり両親は農家をやっているということで、田舎に帰れば何とか食費は賄えるというような時代がございました。しかし、機械化が進み、また人口が減り、多くの人たちが都会へ進出したわけでございまして、工業のみならず、農村はその意味におきまして人口減少が、もうこれ最小限になってきたわけでございまして、農村維持というような観点から、遠くへ出ていくよりは、四十六年当時は近くの工業再配置を求めたわけでございますが、もはや工業再配置すらできない。
 また、六十三年に、工業にプラスして他四業種も求めましたけれども、それでもこれは、人口の歩留りはないということになりましたので、もはや何が何でも人口を維持するためには、こうした農工法の改正をし、様々なサービス業や新しい産業に来ていただいたことによって人口が歩留まる。
 その意味において、農業が人口で支えられる以上は人を確保できるのではないかというような考え方の下にこの農工法改正というのを踏み切ったわけでございまして、実際にアンケートをいたしますと、バイオマス発電所、介護施設あるいは道の駅、様々なニーズも他方であるわけでございますので、その意味においては、私ども、この農工法を改正するというのは、農村の在り方、人口の移動の姿でございまして、必ずしもほかの要因ではないというように思っております。

○紙智子君 ちょっと、農水大臣、ちゃんと質問を聞いていてくださいよ。私、四十六年当時の最初立法したときの話をしたわけですよ。
 もちろん、そういう、工場が乱立している、地方に回さないといけないし、地方も人を採りたい、雇用の場も設けたいという状況はあったかもしれないけれども、当時、実は米の過剰があったりとか米の生産調整があったり、減反政策が始まっているときで、そういうときに対応するための策だったんじゃないかということをお聞きしたわけですよ。大臣、先の先まで、今の改正まで言っちゃったんだけど。それで、減反が求められて、小規模経営では生活できない状況が生まれたんだと思うんですよ。
 昭和六十三年、今度、一九八八年ですね、本法は改正をされたと。改正された理由について、簡潔にちょっと政府の方、説明してください。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) 昭和六十三年の農工法の改正でございますけれども、工業に関連する産業のうち、産業立地政策上、農村地域に誘導することがその業種の発展のために適切であること、また農業政策上、工業と同様又はそれ以上に労働集約的であって農業従事者の雇用の確保に資するものであるといった観点から、道路貨物運送業等の四業種を追加したものでございます。

○紙智子君 今、ちょっと中では答えなかったんだけど、我が国の経済社会を取り巻く環境がこのときも大きく変化していて、新前川レポートも出されていて、経済構造調整において、産業として自立し得る農業の確立が必要だということが言われていたわけですよ。
 それで、当時、生産者米価が三十一年ぶりに引き下げられていますね。農業で生活できない状況が生まれたということも要因としてはあるんじゃないかと思うんですけど、大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 社会的背景にはそうした問題もございます。また、高度経済成長の過程において徐々に醸成されてきたわけでございますけれども、そうした米の過剰問題についての解消の一因になればというような点もこの立法事実の中に含まれているということでございました。

○紙智子君 そこでなんですけど、今回の改正はどういう状況での改正なのかと。直接のきっかけは、やっぱりTPP大筋合意に伴って出されたTPP政策大綱。さらに、来年から減反政策が廃止になるわけですね。十アール当たりで七千五百円交付していた米の直接支払交付金は廃止されると。立法化のときも八八年に改正したときも、米政策の大きな変更が背景にあったと思うんですよ。
 それで、今回の改正では、米政策の更に大きな変更をする来年度から離農者が発生することを見通した改正なんじゃないかと思うんですけれども、大臣、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 今回の農村地域工業導入促進法の改正につきましてでございますが、昭和四十六年当時の事情と違いまして、ここまで大きな過剰感あるいは生産調整の必要性というものではありません。その意味におきましては、米政策と直ちにリンクするものではないというように思っております。
 そして、TPPに対応するための改正かと言われれば、農村の活力が失われるわけでございまして、その意味に関しましては、農村に更なる活力を何らかの形で注入するというような施策の一つと考えておりまして、またTPP以上に強い農業、また強い豊かな農村、そういうような観点から改正に至ったわけでございます。
 その意味では、農家も変化はしておりますものの、その四十六年当時の減反政策への踏み出しというようなほどのものではないというように思っております。

○紙智子君 今、農村に活力を与えるという話もされたんですけれども、今回、国の構造改革というのは結局義務付けになるわけですよね。改正案は、目的の中に農地の集団化その他というのを加えていて、任意であった農業構造改善に関する目標というのを義務規定に変えましたよね。なぜこれ任意を義務に変えたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) この農業構造の改善の目標でございますが、立法時点におきましては義務的記載事項とされておりました。これが平成二十二年の義務付け、枠付けの見直しに伴いまして任意記載事項に変更されたという経緯がございます。
 今回の改正に当たりましては、この記載事項といたしまして、第一条の目的の規定の中にあります農業とその導入される産業との均衡ある発展という文言ですとか、雇用構造の高度化に資するといった文言に着目いたしまして、この農工法の目的達成の手段として規定された措置に直接関わる目標については義務的記載事項とする、その目標を達成するために行う措置については任意的記載事項とすると、こういう整理を行いまして、農業構造の改善に関する目標を義務的記載事項に言わば戻したということでございます。

○紙智子君 結局、農地の流動化を進めて担い手に農地を集めていくと同時に離農者の仕事をつくっていく、こういう構造改革をするかどうか。これは現行制度では任意だと思うんですよ。改正案は、義務規定に変えることによって都道府県の基本計画並びに市町村の実施計画に言ってみれば縛りを掛けるものになっている。農業の構造改革に従う条件に企業誘致を進めることになります。
 そこでなんですけれども、この法律の立法時、一九七一年というのは出稼ぎや離農対策もあったと思います。当時の農業者は今よりももっと若かったと思うんですね。統計を見ますと、農業就業人口のうち六十歳以上というのが三割を当時切っていたと。農業の構造改善を進めて担い手に農地を集めると、農地を手放した若い農業者の仕事を確保する必要があるわけです。なぜなら、収入がなければ生活できない、まだ子供も小さいから子供の教育費も払えなくなると。だから、当時から状況は今大きく変わっていると思うんですね。
 現在は、基幹的農業従事者の平均年齢は何歳でしょうか。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 仕事として主に自営農業に従事している販売農家の世帯員を基幹的農業従事者と申しておりますけれども、その平均年齢は直近の平成二十八年で六十六・八歳となっているところでございます。

○紙智子君 約六十七歳ということだと思うんですけれども、少し調べてみたら、前回の改正当時、一九八五年なんですけど、平均年齢で五十三・七歳です。それから、一九七〇年当時でいうと、これ資料が見当たらなかったんですけれども、統計上でいうと六十歳以上が三割以下ですから、多分四十代だったと。私、うちが農家だったので、父親の年齢幾つぐらいだったかなと思ったら、やっぱり四十九ですから、大体四十代が当時多かったんだろうなと思います。しかし、今の平均年齢は六十七歳と。こういう方が現実には農業の現場を支えているというわけですよね。
 本来、こういう人たちが継続して営農できるように支援することが必要なんだと思うんですよ。営農の継続ではなくて、法律を改正してまでこの就業機会を確保する、農水省はそういうふうにするんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) 今回の農工法の趣旨でございますが、高齢化、人口減少が進展している中で、地域コミュニティー機能の維持に影響が出てきております。農村を振興するといった見地からは、地域の様々な農業者や地域住民、いろんな世代の方々がいらっしゃいますが、そういった方々が地域で住み続けられるようにすると。そのためには、農業を魅力ある産業にすることも重要でございますが、同時に、農業以外の選択肢を用意するということで、就業機会の創出ですとか所得の確保を図るといったことが課題になっているという、そういう認識に基づきまして、今般、農工法の改正法案を提出させていただいているところでございます。

○紙智子君 六十七歳というと、今まだ元気ですよね。だから、まだ働けるという人たちもたくさんいると。もちろんその選択というのはいろいろあると思うんですけれども。
 それで、農家レストランについていえば、この法律を改正しなくても六次化でできるんだと思うんですよ。それから、都市から農村に来る人のためという話もあるんだけれども、そこまでして農地を転用する必要があるんだろうかというふうに思います。
 一般財団法人の日本立地センターというところが地域経済産業活性化対策調査というのをやっています。そこでは、経済のグローバル化等による国内需要、生産の縮小により工業跡地等は全国各地で増加傾向にある、少子化や過疎化、市町村合併等による学校の統廃合が進み、各地で廃校が増加傾向にあるというふうに現状を報告しているわけですね。企業を誘致するのであれば、この工業跡地をもっとちゃんと使うべきなんじゃないか、農水省が農地を転用してまで企業誘致を進める必要性はないんじゃないかと思うんですね。
 農工法においても、造成済みの農工団地において企業が立地していない遊休工業農地、これが全国に千四百ヘクタールあるというふうにいいます。なぜ遊休工業用地がこんなに出ているんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) 自治体への聞き取りによりますと、千四百ヘクタール余りの遊休工場用地の発生要因でございますが、企業の立地動向を基に規模を推計したけれども、それで先行的に工場用地を造成しましたけれども見込みどおりに企業が立地しなかったといったような事情ですとか、あるいは予定していた企業が経済情勢の変化に伴って立地を取りやめたといったような事情から遊休工場用地が発生しているというようなことであると承知をいたしております。

○紙智子君 ですから、千四百ヘクタールというのは元々は農地だったわけですよね。農地の転用の目的が達成されなかったと。全国で工業跡地などが増えているわけです。
 今回、この農工法を改正して、企業を誘致するために農地の転用が進むわけですよね。これ、安易な農地転用が進むんじゃないかという懸念があるわけです。そうならないのかということを一つ聞きたいのと、もう一つ併せて、もうちょっと具体的に聞きますけれども、進出企業、スーパーでも大型商業施設でもいいんですけれども、この進出企業が要求する面積が、例えば五ヘクタールとか十ヘクタールとか大規模な用地を求めてきたとする、一方、出せる農地は五ヘクタールも集まらなかったと。進出企業が求める用地面積と出せる農地面積が合わない、マッチングできない場合はどうするんでしょうか。これ、二点お答えをください。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) まず、安易な農地転用を防ぐための手だてでございますが、これは、先ほど来お答えしておりますとおり、今回の改正法案ではしっかりとした土地利用調整の仕組みを設けてございます。
 国が策定する基本方針におきまして、農用地区域外での開発を優先するですとか、造成済みの遊休地がある場合にはその遊休工業用地を活用する、それを優先させると。また、農業上の効率的な利用に支障が生じないようにするですとか、産業の面積規模が最小限度であること。さらに、立地ニーズや事業の実現の見通しを踏まえたものとすることといったようなことを基本方針に書き込んだ上で、主務大臣が都道府県の基本計画を確認をし、都道府県が市町村の実施計画を確認をするというような、これまで以上に土地利用調整をしっかりと行う仕組みを設けまして、安易な農地転用が起こらないようにしてまいりたいというふうに考えてございます。
 また、二点目の産業と地域の土地事情とのマッチングのお話でございます。これにつきましては、国の基本方針ですとか都道府県の基本計画を受けまして、市町村が、産業導入地区の区域、導入すべき産業の業種や規模、産業の導入に伴う施設用地と農用地等との利用の調整に関する事項を定めることとしております。その際、市町村は、導入、立地を望む企業の意向を踏まえまして、既存の遊休地がある場合にはその活用を優先させるとか農用地区域外での活用を優先させるとした上で、やむを得ず農地を利用する場合におきましては、農業者等の意向を確認しつつ、農業上の効率的な利用に支障が生じないことですとか、導入産業の面積規模が最小限度であることを確認して、調整を行いながらマッチングといいますか、調整をする中で実施計画をまとめ上げていくものというふうに考えてございます。

○紙智子君 ちゃんとやるんだというふうに言うんですけど、幾ら聞いても本当にそうならないという、懸念が拭い去れないわけですよ。
 それで、結局、市町村が最終的には調整しなきゃいけなくなるんじゃないのかと。地域に任せるということになるんじゃないのかと。既に企業誘致が破綻した事例というのは全国各地にあるわけです。企業誘致が優先されて、結局、今までもそうだったんですけど、また同じようなことを進めることになるんじゃないのかというふうに思うんですよ。
 そこで、先日、農業競争力強化支援法の質疑をしたんですけれども、今後の農村地域の姿がどうなるのかということを考えるわけです。それで、お聞きしたいんですけれども、農業競争力強化支援法というのは、この地域で営農を支えてきた中小の肥料や農薬メーカーを再編する、中小メーカーで働く労働者の雇用を前提にして政府は就職をあっせんするという仕組みなわけです。それで、農業に関連する企業を再編、リストラする一方で、農工法を改正して農業と直接関係のない一般企業も誘致していくと。農業を基幹産業と位置付ける地域で、本当に今まで積み上げてきた企業とのつながり、人のつながり、こういうものを断ち切ることになっていくわけで、これって農水省がやることなんでしょうかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 我々としましては、それぞれうまいマッチングをして、農業競争力強化支援法における関連産業が再編することにおいて、機械メーカーなどが力強い、新しい収益を上げ、そしてしっかりとした雇用吸収能力を得るというように期待をしております。
 他方、農工法の改正法案では、これはむやみな農地の転用は許さないけれども、もしそうした新しい立地があれば、工業にかかわらず、サービス業でも、あらゆる産業を受け込んでいく、もちろん計画の下でございますけれども、それで農村人口が歩留りをし、遠くまで働きに行かなくても家族が仲よく暮らしていけるということでございますので、必ずしも相反するテーマになるというようには思っておりません。できるだけ、そうした意味で、関連産業もこの農村地域に更に再編して展開できるように、そうした計画を進められるように努力をしていきたいというように思っております。

○紙智子君 前回の参考人質疑をやったときにも、やっぱり現場では、いろいろな農薬だとか肥料だとか、そういう中小企業、顔の見えるところでいろいろ相談しながら、機械もいろいろ相談したりとかしながらやってきたと。そういうつながりがすごく大事で、困ったときには相談できると。そういうつながりを言ってみれば切ってしまって、何か新しいものを入れて、本当にそれで成り立つのかという問題提起もあったと思うんですよ。
 私、農業を基幹産業として位置付けている自治体というのは、やっぱり農業を中心に据えた地域政策を進めていくということが必要だと思うんですね。例えば、私のいる北海道の十勝の基幹産業というのは農業なわけですよ。農業を中心に据えた町づくりをしてきていると。地域経済の活性化を図ろうということで、中小企業の振興基本条例を作ったというふうに聞いているんです。それで、基幹産業である農業の産出額が二〇一六年で三千二百三十三億円だったんですけれども、食品製造額で、二〇一〇年は一千百二十九億円から二〇一四年には一千三百七十九億円に伸びていると。それで、小麦の生産量が全国の四分の一ということで、小麦の製粉工場を造っていこうということで造ってもいると。
 やっぱり、企業を誘致して雇用も増やしてきているんだけれども、こういう取組を支援するというのが本来農水省の役割なんじゃないかと。やっぱり、地域に根差して循環型でちゃんと結び付いて地域の構成員としてやっていくと、そういうところにこそ支援するのが農水省の役割なんじゃないのかというふうに思うんですけれども、大臣、こういう在り方、それこそが地域を強くして農業を強くするということになると思いませんか。いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 地域政策も必要、そして産業政策も必要ですが、両方が相まって、紙委員が御指摘のように、農業関連産業が農村にあることによって農村の皆さんのニーズをまた把握して、新しい機械をあるいは新しい肥料を作成いただけるような、そんな循環があることはまさに農村地域の理想だろうというように思っております。

○紙智子君 私は、そういうことでいうと、わざわざ農工法をやらなくてもいいんじゃないかなというふうに思うわけですよ。
 地域のやっぱり自主性、創意性を生かした農業振興を支援するということが大事だと思うんですね。地方自治体を政府の政策で縛りを掛けてかえって不自由にする、農地を集約して企業を誘致するということではないということを申し上げて、質問を終わります。