<第193回国会 2017年5月16日 農林水産委員会>


◇サケ・マス流し網漁禁止/地域経済への影響深刻に/農水相、地元からの要請、必要な対策を取る

○農林水産に関する調査(ロシアによるさけ・ます流し網漁禁止への対応策に関する件)

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。
 ロシアの二百海里内のサケ・マス流し網漁が昨年から禁止になりました。二年目を迎えています。そこで、根室市を始め、北方領土の隣接地域の経済にとって重要な基幹産業である水産業について質問いたします。
 根室市に本店を置く大地みらい信用金庫がビジネスレポートというのを出しています。昨年十一月に公表したレポートを紹介したいと思います。
 二〇一六年四月から六月期の根室管内の動向ですが、景況は依然低調としています。特に、ロシア二百海里内サケ・マス流し網漁禁止に伴う代替漁業は、サケ・マス引き網漁、公海サンマ棒受け網漁、サバ・イワシ棒受け網漁共に厳しい結果になった、先行きが不透明な結果になったと分析しています。同時に、水産加工業についてですが、収益DI、これは前年の同期から見た収益の傾向なんですけれども、四―六月期でいうとマイナス一二・五ということです。
 大臣にお聞きしますけれども、このロシア二百海里内のサケ・マス流し網漁が禁止になった影響についてどのように認識をされているでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 日本漁船によりますロシア水域におけるサケ・マス流し網漁業につきましては、平成二十六年に三十三億円を水揚げしておりました。北海道の道東地域を中心に地域経済の中核を担う重要な漁業の一つでございます。この漁業が禁止されることによって地元関連産業への大きな影響があるというように認識しております。
 この影響を最小限に抑えるために、平成二十七年度補正予算において、新たな魚種を漁獲対象とする代替漁業への転換の取組を支援する等の緊急対策を講じたところでございます。

○紙智子君 本当に大きく減っているわけですけれども、ロシア二百海里内におけるサケ・マス流し網漁から代替漁法へ転換した結果、漁獲割当ての量が六十八・八八トンに対して水揚げ量は四・四二トン、金額は約百八十五万円だったと。サンマの漁獲量は約四千六百トンで目標の四割、金額では約二億七千万円でした。サバは、漁獲量は九十一トン、目標の一%です、金額では三百六十五万円。マイワシは、漁獲量が三千九百十一トンで目標の六一%、金額は約三億六千万円でした。
 サケ・マス漁獲量の減少でどういう影響が出たのかということで、根室市が、これは分析というか、書いているんですけれども、ロシア二百海里内のサケ・マス流し網漁業からサンマなどの代替漁業に変えたことが業界にどういう影響を与えたのかということを調査をして影響を公表したと。関係業界の売上高の比較ですけれども、水産加工業でマイナス八八・八%、運輸業でマイナス八一・八%、それから製函業、缶詰ですね、製函業でマイナス六七・六%など、全業種全体で売上減少率がマイナス七八・九%となっているわけです。
 漁ができなくなって船を減らすということになれば、これらの漁師、そして乗組員は地域を離れなきゃいけなくなると。関連産業が維持できなくなれば人口が減少するということが心配されるわけです。
 今年二月、新しく、先ほど紹介した大地みらいの信用金庫のビジネスレポートが出されているんですけれども、根室管内の昨年の一月から九月の水揚げ量は数量で前年比一・九%減、これ前年比較ですから、前年も減っていますからね、更に一・九%減。水揚げ金額で四・四%減。過去五か年で見ると、数量は大幅に減少し、最も低い数量になっているというふうに分析しています。もちろん、昨年の七月から九月期は台風とか天候不良ということがあったので、その影響もあるんですけれども。
 そこで、水産庁は、ロシア二百海里水域におけるサケ・マス流し網漁の禁止に係る緊急整備ということで、先ほど御紹介いただいたと思うんですけれども、二〇一五年度に補正予算を組んだと。それで、予算規模と全体の概要について簡潔にお示しいただきたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 紙先生の御質問にお答えいたします。
 今先生の方から御指摘ございました平成二十七年度補正予算の規模と取組内容でございますが、幾つかあるわけでございますが、まずはロシア二百海里水域におけます代替漁法への転換支援ということで三億円を計上したところでございます。また、我が国の二百海里水域、公海における代替漁業への転換支援ということで、サンマでありますとかサバへの転換支援ということで、これについては五十億円を計上したところでございます。また、ホタテ等の養殖試験に対する支援ということで一億円を計上いたしまして、漁港、漁場の整備ということで十二億円、種苗生産施設等の整備ということで二十九億円、サケ・マスの加工原料緊急対策ということで六億円を計上いたしまして、合計百億円を計上したところでございまして、これにつきましては事業主体等に全て交付済みのところでございます。

○紙智子君 どういう効果が出ているかということについても説明いただきたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) まさに、先ほど申し上げました、できれば、ロシアの二百海里水域における代替漁法への転換支援ということで、これについてチャレンジしていただいているわけでございますが、まだまだ、なかなか流し網に比べて四割程度の漁獲しか上がらないといったようなものではございますが、さはさりながら、まだ今まさに進行中でございますので、よくこれにつきましてはフォローアップしていきたいと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 ホタテの対策についても聞くんですけど、四千六百ヘクタールを造成したと。それで、種苗購入とか、それから漁船の建造、それから保管冷蔵庫の整備など、いろいろ計画をされています。その中で、例えば稚貝の購入費への支援とか新造船の建設支援、この辺はどうなっているでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) まず、サケ・マス流し網漁業緊急対策におけますホタテガイ栽培漁業への支援でございますが、現在、底質改善ということで、いわゆる海底の耕うんといったもので新規のホタテガイ漁場の造成に取り組んでおるところでございます。この補助率につきましては三分の二で、国費で約二・一億円を計上しているところでございます。
 また、先生の方から今御指摘ございましたが、このホタテ稚貝の放流への支援でございますが、これについては漁業近代化資金の活用が考えられるというふうに思っております。
 また、ホタテガイの貝桁網漁船の建造が必要となるわけでございますが、これについては漁船リース事業の活用が考えられるということから、私どもといたしましては、地元の根室市や北海道庁などと十分意見交換を行いながら地元関係者の理解を得ていきたいと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 今お話あったように、海底耕うんについては補助しているということなんだけど、実際に船の建造とかというのはリースで、これ、全国平均の同じやつに基づいてやっているし、稚貝の購入費というのは、これはやられていないですよね。なぜこれ、稚貝なんかも相当お金掛かると思うんだけど、やられていないんでしょうか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 御指摘の稚貝の購入費の関係でございますが、こうした稚貝の購入等種苗放流事業への直接的支援に要する経費につきましては、平成十八年の三位一体改革の際に都道府県に税源を移譲したところでございます。先ほども申し上げましたが、この稚貝の購入等種苗放流に対する支援については、これは収益が見込まれますことから、やはり融資によって措置すべきものというふうに考えているところでございます。
 さはさりながら、このサケ・マス流し網漁の禁止緊急対策の重要性に鑑みまして、先ほど私申し上げましたが、通常の補助率二分の一より高い三分の二の補助率をもって底質改善による新規ホタテガイ漁場の造成に取り組んでいるところでございますが、さらに、この対策の場合には地方負担分について特別交付税を措置したところでございまして、国が実質八五%を負担しているといったような状況に相なっているところでございますが、いずれにせよ、地元の根室市や北海道庁などと十分な意見交換を行っていきたいと、このように考えているところでございます。

○紙智子君 もちろん、地元や北海道とよく相談してほしいんですけれども、このホタテガイの稚貝の購入経費ってどのぐらいかというのは押さえていますか。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 当初は二年で六億円程度といったようなことをお聞きしておりますが、現在はどのぐらいかはちょっと調べてみないと分からない、こういう状況でございます。

○紙智子君 是非つかんでいただきたいと思うんです。今多分、実際にこの間試験でやってきているけれども、到達点を見て、この後更に必要なことについて検討されている最中だと思いますから、是非つかんでいただきたいと思うんです。
 それで、先ほどの中で、補正予算についてはサケ・マス流し網の禁止に伴う地域経済対策ということで、その目的というところが書いてありますけれども、その目的というのは、漁業を核にした地域経済の回復、発展につなげるというふうに書いてあるわけですよ。だから、やっぱり全体を、冷え込まないというか、落ち込まないように全体を回復していくということが目的に書いてあるわけで、ところが、先ほど、なぜ稚貝に対して支援が直接ないのかというふうに言ったら、これは三位一体改革があって税源移譲したからだという話がされたんですけど、私はこれちょっと理屈が変だと思うんですよ。
 実際にはもう状況変わったわけですよ。三位一体改革はずっと前から言われていることではあるけれども、しかし今回、この日ロの関係が変わったわけじゃないですか。要するに禁止されたという事態が出た中で、それで大きなダメージを受けているわけですから、そういう中で政治的な問題としてしっかり捉えて対応しないといけないんだと思うんですよ。そうしなかったら、だってこれ、こんなふうに落ち込んでいるのは漁業者の責任なんですか、自治体の責任なんですか、違うじゃないですか。これ、日ロの関係でうまくいっていない、そういう中で起こっている話ですから、これ、国がちゃんと政治的な問題として取り上げて対策すべきなんだと思うんですよ。そうじゃなかったら、とても救われないし、納得できないと思いますけれども、いかがですか、大臣。これ、大臣にもう一度お聞きします。そういう問題だと思いませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) サケ・マス流し網、これの禁止の影響は甚大なものでございます。また、そのために補正予算でかなりの措置をいたしました。しかし、稚貝の購入という基本的な漁業の操業に関するベーシックな費用については、三位一体というような形で整理をされてしまいました。
 なお、その三位一体の趣旨は、地方に権限を移譲し、財源も移譲するということなのでございますので、地元根室あるいは北海道庁と検討しながら、この負担について適切な方法を探していきたいというように思っております。

○紙智子君 三位一体のところにとらわれたら駄目ですよ。事態が変わっているわけですから、そこに対しての政府としてのちゃんとした対応策を取るべきだというふうに思いますよ。
 それと、種苗生産施設についても聞くんですけれども、根室市の栽培漁業センターの整備を進めているんですけれども、ハナサキガニとかホッカイシマエビなどの放流を目指して、根室市は基本調査を実施するというふうに聞いています。
 根室市はサケ・マス流し網漁が禁止されたことに伴う対策にいろいろと知恵を出して新しい事業なども検討しておられるわけですけれども、国としても現状を把握して支援策を検討すべきではありませんか、大臣。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 先生の方から今御質問があったわけでございますが、今後具体的な御要望があれば地元の根室市や北海道庁とよく相談していきたいと、このように考えておるところでございます。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) サケ・マス流し網に代わる代替漁法について様々研究をしておるわけでございますが、調査船による引き網での試験操業を実施し、経済性等の検討を行い、漁業者に結果をお示ししたところでございまして、今年におきましても、漁業者の要望を踏まえまして、よりベニザケの漁獲が期待できる六月、来月ですが、漁船による引き網での試験操業を予定をしております。
 国としましても、漁業者による試験操業について一緒に考え、また適切な措置を講じていきたいというように思っています。

○紙智子君 代替の漁法でやっているところでは十分じゃないわけですよ。だから、減るということが分かっている中でいろいろ広げて、栽培も含めてやろうとしているということなのであります。それで、先ほど、ちゃんと北海道と、現場ともよく相談してという話もあったので、是非、この後出されてくると思うので、それをちゃんと踏まえてやってほしいと思うんです。
 そこで、今年の代替漁業、サンマ、サバ、イワシの現状についても、ちょっとこれ端的に、時間がなくなるので、端的に現状について報告をお願いしたいと思います。

○政府参考人(水産庁長官 佐藤一雄君) 御指摘のサケ・マス流し網の代替漁法でございますが、昨年の試験操業の開始が七月といったことから遅れましたことから、本年は漁業者が漁船を使用して昨年より一か月前倒しの六月十日から開始されることによりまして、この実操業に沿った試験操業結果が得られるものと、このように期待しているところでございます。
 代替漁業のうち、公海サンマ漁業については、昨年は漁場選択に関する知見不足、あるいは洋上で転載するロシア加工母船との連携不足などによりまして実績が上がらなかったわけでございますが、今年は、こういうことを踏まえまして、五月一日に探索船二隻が先行して漁場探索を行った上で、全船で試験操業を実施することとしておるところでございます。
 また、サバ・イワシ漁業につきましては、昨年の漁獲実態を踏まえまして、棒受け網をサバ・イワシ船用に改良するなどして、五月十日に一部で試験操業が開始されているところでございます。

○紙智子君 サケ・マスの代替漁法ということで、サンマなどの代替漁法が今年も本格的に始まってくると思うんです。その状況を見ながら、やっぱりサケ・マスに代わる足下の対策というのが必要だと思うんですね。
 現地から要請があれば、水産業が地域の基幹産業として成り立つような対策を、だから、この部分についてということではなくて、やっぱり全体として成り立つような必要な対策を求めたいというふうに思うんですけれども、大臣の見解を求めたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 常に、そうした地元からの要請がございましたら必要な対策を取る用意でございまして、しっかりと漁業者、また地元の皆さんと連携を重ねていきたいと思っておるところでございます。

○紙智子君 冒頭にも言いましたけれども、既に地域経済に影響が出ているということを見据えた対策を求めたいと思います。
 最後になりますけれども、日ロの首脳会談についても聞きたいと思います。
 三月四日の毎日新聞の報道によると、北方領土の沿岸に位置する根室市などの五市町は、三月三日、昨年十二月に合意した北方領土の共同経済活動の案をまとめたというふうに報じているわけです。政府は、地元の案を参考にロシアへの提案をまとめて、三月十八日に東京で開かれるロシアとの交渉に臨むというふうに当時報じています。一方、日経新聞では三月十九日に、公式協議を受けて、主権の問題に触れないまま議論を進めても、最後にロシアに足をすくわれかねないというふうに報道しているわけです。共同漁業活動というのはこれからの話ですから、まだ先が見えていない状況だと思うんです。
 そこで、今日議論してきた二百海里内の流し網漁の禁止に伴う対策という問題と日ロ合意に伴う共同経済活動の議論の状況、これ、それぞれ地元にしっかり説明する必要があるんだと思うんですけれども、それについての現状をまず外務省の方からお願いします。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 相木俊宏君) お答え申し上げます。
 まず、代替漁法をめぐる状況につきましては、外務省といたしましても、機会を捉えて地元の関係者の方へも説明をしてきておりまして、今後とも、水産庁とも連携をし、適切に対応してまいりたいというふうに思っております。
 北方四島における共同経済活動につきましては、昨年の十二月のプーチン大統領の訪日以降、漁業、海面養殖、観光、医療、環境その他の分野で進めていくべく、地元の御要望も踏まえつつロシア側と協議を行っているところでございます。
 北海道の地元に対しては、外務省の方といたしましても、四月に岸田外務大臣が札幌市を訪問いたしまして、道民の皆様に対し共同経済活動の意義などについて御説明をしたほか、外務省のしかるべき者が随時根室市、道東など北海道を訪問して、関係者の方々に共同経済活動に関する現状を御説明し、御要望を承っているところでございます。
 共同経済活動を進めるに当たっては、一市四町などの北方四島隣接地域のニーズや元島民の方々の御意見を踏まえながら進めていきたいと考えておりまして、今後とも情報提供には取り組んでまいりたいというふうに考えております。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が参りましたので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 農水大臣としても一言決意を言ってください。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 外務省のお話にもございましたが、ロシア水域におけるサケ・マス流し網禁止対策について、各事業ごとの担当者が北海道や関係団体と協力して数次にわたり説明会を現在開催してきたところでございますが、更に地元関係者との意見交換に努めてまいりたいというように思います。

○紙智子君 根室を始め北方領土隣接地域は北方領土返還運動の拠点と、その重要な役割を果たしているわけですけれども、基幹産業である水産業、漁業というのは本当に欠かすことのできないところですから、是非そういう意味でもしっかりと取り組んでいただきたいということを申し上げて、質問といたします。