<第193回国会 2017年5月11日 農林水産委員会>


◇農業競争力強化支援法案に対する反対討論

○農業競争力強化支援法案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 日本共産党を代表して、農業競争力強化支援法案に対する反対討論を行います。
 反対する第一の理由は、自主的な農業団体の活動に介入するものだからです。
 本法案は、第四条で農業団体に努力義務を課し、第十六条で政府は五年ごとに施策の在り方を検討、チェックし、追加的な措置を講ずるとしています。また、第十三条は農業者に協同組合の共同販売よりも直接販売を促進し、誘導しようとしています。本法は、規制改革推進会議が全農をターゲットにして、意にそぐわなければ第二全農を求めた農協改革に関する意見に沿って提出されたものであり、農協改革と一体のものです。自主自立の協同組合への過剰な介入は容認できません。
 第二の理由は、農業者の営農事業に介入するものだからです。
 本法案第五条で農業者に努力義務を課しています。農業者の自由な営農事業に経営改善と称して努力義務を課す必要はありません。参考人からは、農業者の努力で解決できない問題があると言いながら法案に農業者の努力を書くのはおかしいという指摘がありました。
 第三の理由は、農産物輸入の更なる自由化や規制改革推進会議の意見を前提に、政府の介入によって農業生産関連事業者を再編、リストラするものだからです。
 政府が策定する事業再編指針は、規制や貿易ルールに合わせて変更することが明らかになりました。規制改革推進会議の意見やEPA、FTA等の貿易ルールに合わせて変更すれば、農業を基幹産業と位置付ける地方自治体の地域振興計画や地域経済、雇用に重大な影響を与えることになります。参考人から指摘されたTPPアフターケア法そのものです。我が党は、資材価格の引下げ、農産物の買いたたき防止は農業者の所得確保にとって不可欠であり、一貫して是正を求めてきました。しかし、質疑を通じて、業界再編が農業機械等の独占価格や農産物価格の買いたたきを防止する効果がないことが明らかになりました。
 第四の理由は、国民の共有財産であり戦略物資である種子、種苗の知見が国外に流出する可能性があり、日本の食料主権が脅かされるからです。
 質疑において政府は、種子、種苗の知見が外国に流出した場合に損害賠償を求めると答えましたが、事後対策であり流出防止策にはなりません。
 最後に、農業競争力強化支援法は、食料自給率の向上や地域における農業振興の拡充とは相入れず、日本の農業の発展につながらないことを指摘し、反対討論とします。

○委員長(渡辺猛之君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。
 これより採決に入ります。
 農業競争力強化支援法案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、徳永君から発言を求められておりますので、これを許します。徳永エリ君。

○徳永エリ君 私は、ただいま可決されました農業競争力強化支援法案に対し、自由民主党・こころ、民進党・新緑風会、公明党及び日本維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

農業競争力強化支援法案に対する附帯決議(案)

  我が国の農業が将来にわたって維持され、持続的に発展するためには、「地域の特性に応じて農業資源と農業の担い手が効率的に組み合わされた農業構造を確立し、農業者の所得向上につなげていくこと」及び「良質かつ低廉な農業資材の供給及び農産物流通等の合理化の実現を図ること」の両方が重要である。
  よって政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。
一 農業の維持・発展は食料の安定供給と農村の持続的発展に欠かせないものであることから、良質かつ低廉な農業資材の供給及び農産物流通等の合理化を実現するための具体的な施策の実施に当たっては、多様な担い手の農業所得の増大に向けた取組が支援されるよう配慮すること。
二 農業者や農業生産関連事業を行う農協に対する本法第五条の適用に当たっては、農業者や農協による自主的な取組を基本とすること。
三 農協が担う協同組合の本来的機能である共同購入や共同販売の機能の強化に資するよう配慮して、農業資材の調達・農産物の出荷等に必要な情報の入手の円滑化のための措置を講ずること。
四 国及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見の民間事業者への提供に当たっては、種苗が国家戦略物資であることに鑑み、優れた品種が国外に流出することのないよう知的財産の保護を図るとともに、種苗が適正な価格で供給されるようにすること。
五 農業生産関連事業に係る事業再編及び事業参入の実施に当たっては、民間事業者の自発的な取組を尊重するとともに、特定の事業者の寡占により、良質で低廉な農業資材の確保が困難となるような弊害が生じることのないようにすること。
六 事業再編計画について、事業者がその雇用する労働者の理解と協力を得るとともに、労働者の雇用の安定に最大限の考慮を払いつつ当該計画が実施されるよう、適切な運用を行うこと。また、政府においても、事業者の雇用する労働者について、労働者本人の意向に十分配慮しつつ、雇用の安定等を図るために必要な措置を講ずるよう努めること。
   右決議する。

 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をよろしくお願い申し上げます。

○委員長(渡辺猛之君) ただいま徳永君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。

〔賛成者挙手〕

○委員長(渡辺猛之君) 全会一致と認めます。よって、徳永君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。