<第193回国会 2017年4月27日 農林水産委員会>


◇参考人質疑/農業者に「努力義務」を強いる法案は、農業者への過剰な国家の介入法であり、TPPの事後処理法など批判続々

○農業競争力強化支援法案(内閣提出、衆議院送付)
☆参考人
 鈴盛農園代表 鈴木啓之君
 横浜国立大学名誉教授、大妻女子大学名誉教授 田代洋一君
 宮城県農民運動連合会事務局長 鈴木弥弘君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の皆さん、本当にありがとうございます。
 やっぱり改めてこうやって現場で本当に御苦労をされている方の話を直接聞く、あるいはずっと農業に関わってこられた先生の話を聞くということ自身が本当に大事だなということを改めて思いますし、お話聞きながら本当に胸が熱くなる気がするんですね。やっぱり鈴木啓之参考人のように、若い人が一番なりたい職業は農業というふうに言えるようにしていきたいという思いですとか、これは本当にうれしく思いますよね。やっぱり応援したいなという気もしますし、それから、鈴木弥弘参考人がこの間営々と地域に根差して、地域をつくるというか、そういう農業をやりつつ、本当に地域をつくっていくという支えになってやってこられたというお話なんかも、やっぱりこういう農業の持っている意味ということを改めて深く感じさせられましたし、田代参考人のお話聞いて、物すごく、今度の出されている法案の本質というか、頭が整理されて、やっぱりそうだなというふうに思ってお聞きしました。
 それで、私、やっぱりこういう場を本来もっとちゃんと設けて慎重にしっかり議論していかなきゃいけないし、我々自身がやっぱり共通の認識に立って、本当にこの法案いいのかということを検討しなくちゃいけないんだというふうに思うんです。
 ところが、既にこの国会に入って、施政方針演説で総理大臣の話の中では、農業関連法案が八本出されていて、それで改革を一気に加速するという話をしていまして、既に三本がもう可決をしたと。今回やっているのは四本目なんですけれども、一気に加速するということになると、結局、法案の一つ一つの持っている意味や中身が国民の中に十分知られないまま通っていかざるを得ないんじゃないのかなと。そうしたいのかなと、早く処理してしまいたいということなのかなというふうに思わざるを得ないんですけれども。
 それで、先日、種子法の廃止法案が決まって、参考人の皆さんからも、そのとき、もう慎重に審議してほしいということも出されました。今議論している農業競争力強化支援法、これ実は新しい法案なんですね。新しくできるもので、条文でいうと三十八条ある、それから附則でいうと五条あると。衆議院の審議はそれでも七時間でずっと通過してきたということなんですけど、私はもっとちゃんとじっくり時間掛けてやるべきだと思っているんですけれども、こういう本当にどんどんやっていくというやり方、審議の在り方について、まず三人の方から一言ずつ御意見を伺いたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) それでは、鈴木啓之参考人から順番にお願いします。

○参考人(鈴木啓之君) やっぱり農業者の声がたくさん聞けてよかったというふうに今おっしゃっていただいて、それは私ども農業者からしたらすごくうれしいことであります。なかなか農業者もこういった場所にお呼びいただいて意見を述べる機会というのは少ないかと思うんですけれども、今おっしゃったとおり、是非もっともっと、僕たちもこういうふうに思っているんです、こう思うんですという意見は実はたくさん持っています。中には声にできない青年農業者などもいるかと思うんですが、私も青年農業者組織をやっているということもあって、みんなの声を聞いて出てきているといった、そういったつもりもあります。なので、いろんなことをする際にはどんどん農業者の声を聞くということで、お招きいただけるというのは非常にうれしいことです。
 以上です。

○委員長(渡辺猛之君) 続いて、田代参考人、お願いします。

○参考人(田代洋一君) おっしゃられるように、前の農協法等改正についても、農業委員会から農地法から全部一緒にひっくるめてやる、最近やっぱりそういう傾向は非常に強まってきていると思うんですね。やはり一つ一つ、これはかけがえのない法律ですから、一つ一つやっぱり時間を掛けて吟味をしていただきたいというのは非常に思うんですね。だけど、安倍さんの立場になってみれば、これは言ってみれば極めて整合的であって、規制改革推進会議がおっしゃったこと、それに官邸がオーケーをしたこと、これ全部まとめて八本だよと、こういう話になっている。この二つの、やっぱり規制改革推進会議が源だということと、それから、そういう意味で統一されたものを全部まとめてやっちゃうということは、非常にやっぱり国会の軽視につながっているし、じっくりした議論ができないなというふうに思うんですね。
 ちょっとオーバーしますけれども、先ほどの皆様方の、非常に農業はやっぱり地域にとって大切だというふうにおっしゃったんですけれども、地域にとって農業が大切ならば、なぜあの農協法の改正を許して、全くやっぱり農業所得の増大と、もう農業だけをやればいいんだ、地域はまあどうでもいい、准組合はどうでもいいと、ああいう法律を通しちゃった後で、議員の先生方が地域は大切だというふうにおっしゃってもちょっと後の祭りだねという感じもしないでもないんですけれども、そういう形でやっぱり慎重な吟味をお願いしたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) では最後に、鈴木弥弘参考人、お願いいたします。

○参考人(鈴木弥弘君) 私自身、参考人に内定して本決まりになって今日に至るわけですが、初めて条文の内容を目にしているわけですね。
 言語明瞭、意味不明な部分が多々あって、素朴な私の疑問、冒頭申し上げましたけれども、そういうふうにしか読めないんですね。そこに別な何か本来の意味、目的があるんじゃないかというふうに思いますし、そういう意味では、まだまだ地域にとっては全然この法案何なのということで知られていないと。
 来る前に、地元の農協の組合長、専務、あるいは宮城中央会の事務局、そういったところとも聞きましたし、地元の業者である米肥関係の、米肥組合の傘下の組合員なんかにも聞いてみました。そうすると、ほとんど内容が知られていない、知らされてもいないと、毎日毎日テレビで参議院の農林水産委員会とか何かを聞いているわけじゃありませんし。
 ですから、現場のそれぞれ頑張っている生産に関わる事業者、あるいは生産物を扱う事業者、そして我々生産者、農家、あるいは農業関連団体の方々がほとんどこの内容が何なのかということの、条文の中身すら分かっていないと。もちろん、農協の関係者は、全農をターゲットにした生産資材の価格引下げということが前々から言われていましたので、そういうことではけしからぬというようなことで口々に申していましたし、そこがでは本音なのかなというふうに感じるぐらい我々農業者にとっては、この法案にとっては、望んでもいないし、こういうことをやってくれという要請を出したわけでもないし、そういう内容が短時間のうちに国会を通ってしまうということ自体、やっぱり国権の最高機関というのがちょっと疑問符が付くんじゃないかという印象を持っております。

○紙智子君 いや、我々も、こういうふうにすっすすっすと通されていくということになると、やっぱり国会軽視、国会の役割、国会議員の役割ということにも関わる問題だなということを改めて今のお話も聞きながら痛感したところです。そういう意味では、やっぱり慎重にしっかりと時間を取って質疑をこの後もしていきたいというふうに改めて思いました。
 それで、次に田代参考人にお聞きしたいんですけれども、安倍総理はかねてから、戦後レジームから脱却する、あるいは岩盤規制は打破すると、岩盤規制を自分がドリルになって破壊するというふうに言って、農業改革や農政改革を言ってきました。同時に、TPP、環太平洋連携協定に合意をして、アベノミクス、成長戦略の柱ということで推進してきたわけです。言わばグローバリズムというんですか、と言われる国際化の流れに日本の農政を転換していく仕掛けが法律という形で進められようとしているんじゃないのかなと思うわけです。
 そこでお聞きしたいのは、先ほどもお話の中に出てきているんですけれども、やっぱりこの法律の第五条の中で農業者の努力義務というのがずっと議論にはなっているわけです。資材を購入するときに有利な業者から買いなさいと、踏み込んだ法律って今までなかったんじゃないのかなと。農業者の皆さんは自分の技術力を高めて創意を生かして工夫を凝らして地域と共同しながら活動してきたと思うんですけれども、こういうふうに資材を買うときに枠にはめていく、こういう規定というのはどうなのかと、ちょっとむしろ害になるんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○参考人(田代洋一君) 国がいろいろ選択肢が少ない中でもってこの選択肢を広げる、そういう意味で企業の一定の支援をするということ自体は、やるということはあり得ると思うんですね。だけど、やっぱりそれは選択肢を広げることであって、その選択を、どの選択をするかは、これは農業経営を行っている農業者の方々のやっぱり自主的な判断で行うべきだというふうに思います。
 こういう形、具体的に政府がお金を出して奨励をしているというものについて、これを活用してくださいというんだったら分かるんですけれども、今回の法律は、別に農業者、農業団体に融資をするだとか債務保証をするだとかということでは全くないわけですね。にもかかわらず、何か非常に恩着せがましく、パターナリスティックに、こうやって支援をするんだからあなた方も努力し、これを買いなさいというのはやっぱりちょっと、国がそういうことをやるということは非常にやっぱり法律として問題というか、法律として違反であるというか、そういうふうに感じております。

○紙智子君 ありがとうございます。
 鈴木弥弘参考人が先ほどいろいろお述べになった中で、私、改めてやっぱり今回の法案を見ても思うんですけれども、一番の、機械にしても何にしても本となるところ、造っているところの部分で独占価格という話がありました。一方で、その間いろんなところに、流通の途中でいろんなところが入るんですけれども、言ってみれば今回は、一番手を付けなきゃいけないところというのは余り手を付けないで、その中間に位置している業界を再編したりリストラをしたりというような形になっているのかなというふうに感じるんですけれども。
 先ほどの鈴木さんの話の中で、やっぱり地域で自分たちが日常顔の見える、実際に顔を突き合わせて資材を買ったり機械を扱ってもらったり、農産物を出すところを相談しながらやって、言わばその人たちも含めて地域を構成している大事な構成員だという話だったと思うんですね。そういうことで考えるときに、やっぱりその部分が逆に何かなくなってしまったりすると地域にとってはむしろ疲弊につながる危険性もあるというお話だったのかなと思います。
 改めて、やっぱりそういう今までの顔の見える関係ということで培われてきたことの大切さというところを、先ほどもちょっとお話しされていたと思うんですけれども、もう一度ちょっとその辺のところをお話しいただければなと思います。

○参考人(鈴木弥弘君) 地域では顔の見える農家は全て先祖伝来、長いこと付き合っている関係で、どこの誰がどこに、学校に入ってどこに就職したから始まって、そういう人間関係が地域農村社会の人間関係ですね。その中には、今度どこどこの農機具メーカーに就職したとかそういう形で、じゃ、その義理もあるからそこのメーカーから農機具今度は買おうかとか、そうすると、現金で大金ですから一気に払えないので、まず第一回目は秋の米が取れたときにと、あとはファイナンスのところを組むとか、そういったいろんな生活に関わって、農機具を買うにしてもそういう人間関係を通じて、支払についてもそういう関係。
 当然、機械ですから壊れることもありますよね。そのメンテナンスもないと駄目なんですね。機械って、どういうわけか日曜日とか休みの日とか忙しいときに壊れるんですよね。すぐ電話一本で修理に駆け付けてこないとなかなか困るわけなんですよ。それもやっぱりそういう人間関係、自分が売ったという手前もあるから、アフターメンテナンス、アフターケアですね、それもやっぱり人間関係がなせる業なんだというふうに思うんです。売れば後は終わり、これだけもうけたから終わりというんではない関係ですね。
 こういうのは、一々全部、地域にはそういう人間関係があって、それで全体として地域農村社会、そして生産の現場は、何よりも地方公共団体が生産の現場ですから、当然、自治体という公共的な施設も含めて、そこに関係のある人たちが共に支え合っていると。これをやはり壊すのではなくて、困難な中維持しているから更に継続できるように様々な支援をやっぱりしていくのが基本ではないかというふうに思います。

○紙智子君 ありがとうございました。
 じゃ、最後になりますけれども、ちょっと時間が余りないので端的にお聞きしますけれども、私たち、政策としては、私のところの党は、農業を基幹産業部門に位置付けると、そして食料自給率の向上を農政の柱に据えて、その上でやっぱり大事な価格政策というのがあると。生産コストをカバーできる、再生産可能になる価格保障と、それから、環境や中山間地などの不利な条件のところを耕作しているところの直接支払と組み合わせてやっていく必要があるというふうに思っているんです。あと、新規就農者の対策と。
 二人の農業の鈴木さん、二人の鈴木さんにお聞きしたいんですけれども、今やっぱり一番必要で即効性のある施策を挙げるとしたら何かということを端的に一言ずつお願いします。

○委員長(渡辺猛之君) 時間が来ておりますので、簡潔にお答えを願いたいと思います。
 今度は、鈴木弥弘参考人からお願いいたします。

○参考人(鈴木弥弘君) 農家の戸別所得補償制度の復活を求める請願を二月、三月、地方議会に出しました。当然、国に対しても要請したいと思います。何もないんではなくて、国が、地域で農業生産をするためにこれだけはベースとして支援しますので是非頑張ってくださいということは是非必要だというふうに思います。

○委員長(渡辺猛之君) 鈴木啓之参考人、お願いします。

○参考人(鈴木啓之君) 即効性のあるものというと、やっぱり直接的な支援ということが一番早いというふうには思うんですけれども、ただ、それもいろんな方法があると思います。機械を買うためだったりとか人材育成、いろんな方向性はあると思うんですけれども、そういう、特別な支援は要らないとは思うんですけれども、ちゃんと理由のある支援というのをいただけると助かると思います。

○紙智子君 ありがとうございました。終わります。