<第193回国会 2017年4月11日 農林水産委員会>


◇種子法、基本データも出さずに審議を進める政府の姿勢を批判

○農業機械化促進法を廃止する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)
○主要農作物種子法を廃止する法律案(内閣提出、衆議院送付

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 主要農作物種子法を廃止する法律案について質問いたします。
 今回、主要農作物種子法を廃止する理由について、最近における農業をめぐる状況の変化に鑑み、主要農作物種子法を廃止する必要がある、これがこの法律案を提出する理由であるとしているんですけれども、この文章の意味が分からないですよ。なぜ廃止する必要があるのか全く分からない。
 一体、背景にどういうことがあるのかというふうに思っていたら、昨年の九月二十日の第二回規制改革推進会議農業ワーキング・グループにおける枝元生産局長の説明で、民間の種子産業への参入をしにくくしている部分があるのではないかというふうに言っているわけですけれども、枝元生産局長にこの事実確認をいたします。

○政府参考人(農林水産省生産局長 枝元真徹君) 御指摘いただきました昨年九月の二十日でございますけど、規制改革推進会議で生産資材に関わります状況ですとか課題についての説明を求められました。私の方から、肥料、飼料、農薬、農業機械、段ボール、種子、まとめて御説明いたしまして、今御指摘がございました種子、稲、麦、大豆の種子につきましては、民間の種子産業への参入をしにくくしている部分があるのではないか、こういう制度的な課題があるのではないかと思っているというふうに説明させていただきました。

○紙智子君 これは農水省の意向ということですよね。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) そのとおりでございます。

○紙智子君 現行法のどこに参入しにくい部分があるんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 午前中の質疑でも御答弁申し上げましたが、種子法の基本的な構造は、都道府県に対しまして、原種、原原種の生産や奨励品種を指定するための試験等を義務付ける法律でございます。こういった法制度となっていることによりまして、都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種に指定されるということが過去の事例から見て明らかでございます。こういった現行の仕組みを前提とする限り民間事業者が開発した品種の奨励につながりにくいということ、それから、都道府県中心の仕組みでございますので、各都道府県内の利益にとどまらない、言わば都道府県の枠を超えた広域的、戦略的な種子生産、例えば輸出用あるいは業務用というような品種につきましては、仮にニーズがあったとしても奨励品種に指定されにくいというような問題があるものと認識しているところでございます。

○紙智子君 民間が参入しにくい構造になっているということなんだけれども、山本大臣は、種子法廃止の理由を衆議院の議論で問われて、都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種に指定されるという、一種自ら頑張ったことへの褒美という意味での奨励品種に指定されるという現行法そのものに構造的問題があるというようにおっしゃっていますよね。つまり、奨励品種が問題なんだというふうに言っているんだと思うんですけれども。
 私、先日、北海道の農業試験場に行ってお話を伺ってきました。生産者がこの種で作ったときにいいものが取れるかどうかということ、誰が作ったかというよりも品種の能力が大事なんだと職員の方は話されていました。地域に合ったものを奨励品種にするということの努力をしていると。生産者の立場に立って、いい作物が作れるようにということで努力をされているわけですから、自ら作ったことに褒美のために奨励品種を作って普及すると、こういうことでは全くないわけですよ。
 そして、地方の自治体がやっぱり税金を使って我が町、我が県の種子を作って普及すると。これ、言わば地産地消という考え方でもあるわけで、農水省というのは元々地産地消を推進してきたんじゃないかと思うんですけれども、その一体何が問題だというんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 試験を行い、普及すべき優良な品種、いわゆる奨励品種に指定されるということになりますと、その種子の増産や審査に公費を投入しやすくするわけでございまして、都道府県が開発した品種は優先的に奨励品種になるという仕組みがございます。例えば、稲の面におきましては、民間において、全農が開発した品種が一品種この奨励品種になっておるものの、純粋な民間企業が開発した品種で奨励品種に指定されているものはございません。
 これまで主要農作物種子法の枠組みを前提としまして、奨励品種を指定する都道府県に対し、民間事業者の開発した品種も積極的に奨励品種に採用するように今まで農林省としましては通知を発出するなどしてこの参入を促進、民間企業者の参入を促進してきているわけでございますが、この奨励品種という流れが言わばそれを阻止しているというように理解せざるを得ない段階にまいりました。その意味で、都道府県が開発した品種が優先的に奨励品種に指定されるという現行法制度そのものを構造的な問題というように表現させていただいたところでございます。
 したがいまして、こうした意味から、この種子法の改正そして廃止というようなことが一番我々としましては急務、種子における農業者の選択の幅を広げる意味で急務ではないかというように考えているところでございます。

○紙智子君 だから、分からないんですよね。一生懸命努力して、奨励品種を登録できるようにしているということでやっていることがどうしていけないのかと。民間よりも都道府県で作っている方が多くなっているのが何でいけないのかというふうに思うんですよ。
 それで、民間との連携ということでいえば、既に昭和六十一年、一九八六年の法改正で民間企業も参入できるようにしているわけですけれども、そのとき農水省は、奨励品種制度は主要農作物種子法の要ともいうべきものでありと、引き続き維持する必要があるというふうに言ってきたわけですよ。なぜ当時から言ってきたことが突然変わったんでしょうか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 十年ほど前、御指摘のように、その当時の私どもの考え方としましては、主要農作物種子法の枠組みを前提としまして、その奨励品種を指定する都道府県に対しまして、民間事業者の開発した品種も積極的に奨励品種に採用するように促すと、通知を出して促してまいりました。ですので、その時点では、あくまで主要農作物種子法の枠組みの中で民間事業者の参入が進めば、それは民間事業者の参入の妨げには必ずしもならないというふうに考えておったわけでございます。
 しかし、その後十年程度たっております今日において、依然民間事業者の開発した品種はほとんど奨励品種になっていないというのは現実でございます。その根本的な要因を考えた場合に、いろいろな形で法制度として県に義務付けを行っているということが根本的にございますので、その現行制度にやはり構造的な問題があるというふうに判断をせざるを得ない状況に至ったわけでございます。そういった中で、様々な政府・与党内の議論を経まして、今般、この種子法を廃止する法律案を提出するに至ったというのが経緯でございます。

○紙智子君 その辺の分析、中身というのも本当分からないんですよね。
 それで、奨励品種の開発には本当に相当の時間が掛かりますよね、まあ十年は掛かるというように言われているわけですけれども。それから、人材も必要だし、予算も必要になるわけです。言わば先行投資ですとか設備投資、こういうことがやっぱり必要になっていると。
 ところが、農水省に求めて出されてきた資料を見ますと、この資料を出されてきました、これ、規制改革会議にも出している資料だと思うんですけれども、これを見ますと、七番目のところの、種子とあって、稲、麦、大豆ということが入口のところは書いてあるわけです。その中身を見ると、これ、先ほども資料で配られていましたけれども、その中身を見ると、この中に農水省が出した水稲の種子の販売価格の資料はあると。都道府県と民間企業の販売価格の違いが出されているわけですよね。
 ちょっと見てもらうと分かるんですけれども、主食用に用いられる品種、これは都道府県で、コシヒカリ、石川のは七千九百二十円、ヒノヒカリ、熊本のは七千六百七十円。民間企業、とねのめぐみというんですか、これは一万七千二百八十円だと。なぜ販売価格だけをこれ問題にして書いているのかなと思うわけですよ。そこに至る先行投資とか設備投資にどれだけ掛かっているのかという資料もないわけですね。これでは分からないんです、この価格が高いのか安いのかと。
 それで、この資料の中で書いてある四角の文章があるんだけれども、これ読むと、都道府県はその種子の増産や審査に公費を投入しやすくなるために、公費を投入して自ら開発した品種を優先的に奨励品種に指定。一方、民間企業が開発した品種は都道府県が開発した品種と比べて、特に優れた形質などがないと奨励品種には指定されずと、これは当たり前だと思うんですけど、例えば稲では、民間企業が開発した品種で、奨励品種に指定されている品種はない状況と。その結果、都道府県が開発した品種は、民間企業が開発した品種よりも安く提供することが可能。このように、都道府県と民間企業では競争条件が同等となっていないため、民間企業が稲・麦・大豆種子産業に参入しにくい状況となっていると。これ当たり前じゃないかというように思うわけですよ。それで、何でこれがいけないのかなというふうに思うんですね。
 要するに、今の米の品種というのは税金で支えられていて安くなっているから民間業者は競争できないということなんでしょうけれども、設備投資の資料も出さないで、なぜこの価格になっているのかというのは分からないわけですね。だから、資料を出すべきじゃないのかというふうに思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 今委員から御指摘ございましたように、昨年九月二十日の規制改革推進会議農業ワーキング・グループにおきまして、今御指摘いただきました資料を提出し、その中に、水稲種子の販売価格の例としまして、都道府県と民間企業が開発した種子の価格を比較しておることは事実でございます。
 この資料の次の、その当時の提出資料の次のページでは、一方、民間の種代は高い種子が三十八都府県におきまして栽培されているような例も併せてお示ししているわけでございます。
 この趣旨、趣旨というか、意味を申し上げますと……(発言する者あり)はい。都道府県が開発した種子の価格が民間と比べて安いので、民間企業のものが、その参入が、その価格によって入ることができないという意味ではございませんで、むしろ、民間の開発の種は県の種よりも高いけれども、高い収益性による高い所得が得られるということで、そういうことで多くの、比較的多くの県で使われているということを説明しているわけでございます。すなわち、価格の水準そのものでその参入障壁というような意味ではない資料でございます。

○紙智子君 意味が分からないんですけど。要するに、どれだけそれを仕上げるために掛かっているのかという経費なんかも含めて見てみないと比較ができないわけですよ。だけど、出されていないわけですよね。
 それから、原原種、原種の生産というのは、一般種子の生産以上に高度な技術や知識に基づいた厳格な管理とこれに伴うコストを要するんだというふうに聞いているわけですけれども、衆議院の質疑の中で、農水省は民間企業が入って県のコスト削減が進めば安くなるというふうに答弁されたんですね。これ本当にそうなんでしょうか。大臣、その根拠について出していただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 三月二十三日の衆議院の農林水産委員会における私の発言でございます。
 まず、農林水産省が各都道府県に聞き取ったというところで、大半の都道府県から、主要農作物種子法の廃止、これによって引き続き種子の生産、普及に関与するかどうかという問いに対して、今後とも同様の体制で種子生産が行われることを予測しているということでございますので、この種子法が廃止されましても、これまで同様に、都道府県の生産、普及する種子の価格自体が高くなることはないだろうというように、まず都道府県の供給する種子についての価格変動はないと、こう考えております。
 そして、種子法の廃止と農業競争力強化支援法の新規参入支援措置、また都道府県と民間事業者との連携、こういったものを通じまして、民間事業者の種子生産への新規参入と大規模な種子生産体制の導入、また都道府県が行う種子生産の民間事業者への業務委託、さらには都道府県の施設の民間の事業者との共用、こういったものが進められると、こう想定されますので、種子生産に係るコスト削減が図られるというように思っておりまして、そうなれば種子価格の引下げにつながる可能性があるというように申し上げたところでございます。

○紙智子君 もうあくまでも予測の範囲、可能性という話ばかりされるんですけれども、コストを削減しても品質が保証できるのかというのは非常に私、気になるわけですよ。種子法を廃止したことで自治体の義務付けがなくなるわけですよね。自治体が種子生産をやめた場合に品質が保証できるのかというのも全く分からないと。それから、価格が高くなる可能性があるんじゃないかと思うんですよ。それは、資材価格の低減、コスト削減を行うという、まあ安倍政権が言ってきた競争力強化ということに照らしても逆行することになるんじゃありませんか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 先ほど大臣から御答弁申し上げましたとおり、今般の法律の廃止に加えまして、新たに御提案申し上げております競争力強化支援法案の新規参入措置も講じていくわけでございます。
 そういった中で、今、県がハード面の施設を持っているということがございますが、そういうものを例えば民間事業者と共用する、あるいは逆に民間事業者の実需者のノウハウをいろいろと共有する、また場合によりまして県のやっているいろいろな事務事業の一部を民間の事業者に業務委託をすると、いろんな形が考えられるわけでございますが、そういった中で総体としてのコスト削減を是非とも図ってまいりたいという趣旨でございます。

○紙智子君 全くその保証はないわけですよ。むしろ、私は高くなるんじゃないかというふうに思いますよ。
 それで、これ、水稲の資料は出てくるんですけれども、そもそも、麦、大豆の資料が出ていないんですよ。
 農水省は規制改革推進会議に自ら進んで資料を出しました。国会質疑に当たって必要な資料を出すべきなわけですけれども、これ、麦と大豆の資料というのはあるんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 私ども、内部でできる限り調べている一定のデータはございます。

○紙智子君 一定のデータはあると。なぜ出さないんですか。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 麦、大豆の状況について申し上げますと、例えば産地品種銘柄に登録されている民間事業者の開発した品種を見てみますと、大豆については実はございません。それから、麦についても極めて限られた数品種になっておるという状況でございます。
 そういった中で、なかなかお示しして議論する材料、そもそも民間の品種自体がほとんどない、限られた状況にあるということでございます。

○紙智子君 これ、基本的なことですよ。主要農作物の種子法ですよね。米と麦と大豆と。何で大豆と麦を出さないで審議するんですか。これ、審議することの基本に関わる大問題だと思いますよ。これ自体、やっぱりこれ以上本当に審議できないような話だと思いますよ。
 これ、資料はいつ出すんですか。出してください。

○政府参考人(農林水産省政策統括官 柄澤彰君) 委員長の御指示に従って、可能な限りの対応はさせていただきたいと思います。

○紙智子君 これ、必ず出してください。あさってもまた審議ありますから、あしたまでに出していただきたいと。委員長にも後で計らっていただきたいと思います。

○委員長(渡辺猛之君) 後刻理事会で協議いたします。

○紙智子君 昨年の十月六日の第四回規制改革推進会議の農業ワーキング・グループで本間正義専門委員が、法案のどこが具合が悪いのかということについてもう少し詳しい説明をされた方がいいのかなと思うという発言、意見を言っているわけですよ。本間さんは、これ廃止には賛成の立場だと思いますけれども、その方がどこが悪いのかもう少し詳しい……

○委員長(渡辺猛之君) 時間が参りましたので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 説明をしなきゃいけないと言っているのに、それに対するやり取りもなく、結論は廃止と。こんなひどい、生煮えのものをよく出してくるなというように思うんですよ。余りにもいいかげんで、無責任じゃありませんか。
 この問題は、もう時間が来ましたけれども、まともな議論も説明もない中で、資料もないと、それなのに結論だけは決めるというやり方は絶対許されないし、むしろ本当に衆議院に差し戻して議論すべきだということを申し上げて、質問を終わります。