<第193回国会2017年3月30日 農林水産委員会>


◇“TPPを標準”は危険/「日米対話の方針は決めていない」(山本農水相)/特殊土壌臨時措置法の役割大事

○農林水産に関する調査
○特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法の一部を改正する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 最初に、この後出されると思いますけれども、特殊土壌の、ちょっと長いので略して臨時措置法についてなんですが、昭和二十七年にこれ議員立法として策定されてから十三回延長され、六十五年間実施されてきました。対象地域が五県、一部指定県は九県ということで、国、地方公共団体が事業を続けていますけれども、この事業が果たしている役割、どのような効果があったのかということをまずお聞きしたいと思います。

○政府参考人(農林水産省農村振興局長 佐藤速水君) お答え申し上げます。
 特殊土壌地帯災害防除及び振興臨時措置法、いわゆる特土法でございますが、特殊土壌地帯の保全と農業生産力の向上を図ることを目的としてございます。特土計画に基づきまして、治山治水などの災害防除対策事業、かんがい排水や畑地の整備などの農地改良対策事業、これらを昭和二十七年から継続して実施してきているところでございます。
 この災害防除対策事業が実施された地域におきまして、例えば治山事業や砂防事業によって谷止め工ですとか砂防堰堤が整備されたことによりまして、流出の土砂が捕捉されまして被害が軽減されたといった効果が確認されております。
 また、農地改良対策事業が実施された地域について見ますと、例えば畑地かんがいの整備ですとか土壌改良などによりまして、作物の生産量ですとか品質の向上、品種の多様化が図られるなどの効果が確認をされております。
 しかしながら、依然として特殊土壌地帯におきまして大きな被害が発生しておりますし、高収益作物への転換による畑作の振興が求められておりますことから、今後とも対策事業を進めていくことが必要だというふうに考えてございます。

○紙智子君 関係県からも切実な要請が上がっていて、必要な法律として我が党も賛成してまいりました。前回、五年延長のときに、やっぱり法律に基づいてこの対策の結果の検証を行って、その上に立って必要な事業の内容を確認をしながら進める必要があるんじゃないかということも提起をさせていただいて、議員連盟の皆さんで検証の場を設けたこともありましたけれども、やっぱり今後もそれが重要だというふうに思いますので、是非、検証し、必要な法整備や、充実するところはするというふうにしていただきたいと思います。
 次に、TPP協定が発効の見通しがなくなった下で、通商交渉について議論をしたいと思います。
 安倍総理は施政方針演説で、自由貿易の旗手として、公正なルールに基づいた二十一世紀型の経済体制を構築する、TPP協定の合意は、そのスタンダードであり、今後の経済連携協定の礎となると言われました。
 そこで、山本農水大臣に伺いますけれども、スタンダードになればTPPで合意をした農林水産物の重要五品目などが出発点になるんではありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) TPPにつきましては、御指摘のとおり、一月三十日に米国通商代表部がTPPの締約国となる意図がない旨の通知を行ったというように承知しております。こうした中、我が国としては引き続き米国に対して、TPP協定の戦略的、経済的意義について腰を据えて理解を求めるという方針でございます。また、米国以外のTPP署名国に対しましては、我が国が持っている求心力を生かしながら、今後どのようなことができるかを議論していきたいというように思っております。農林水産省としましても、内閣官房や関係府省と連携して、しっかり対応してまいりたいと思っております。
 なお、先日の日米首脳会談における一連の会談を含め、米国政府から二国間FTAについての要請はまだありませんでした。TPPにつきましての水準とこの日米二国間、まだ我々としては方針を決めているわけではございません。

○紙智子君 スタンダードになるということは、標準になるという話なわけですよ。そうすると、日米関係だけでなく、いろんな分野で非常に心配なことが出てくるわけです。
 今ちょっと触れられました日米の経済対話がこれから始まるんだけれども、お聞きしたいと思いますが、米国のUSTRの代表であるロバート・ライトハイザー氏は、三月十四日に議会上院指名公聴会に臨んで、農業分野の通商交渉で日本は第一の標的になると強調したことが報じられました。日本など環太平洋経済連携協定、TPPの参加国と二国間交渉を推進するんだと言っていると、TPPを上回る合意を目指すというふうに言っているわけですね。ライトハイザー氏は、日本に対して、農産物の開放の要求はとても優先度が高いんだと、農産物の貿易に関して多くの障壁を残したままでいるのは理解できないというふうに述べているわけです。
 政府は、このTPP交渉で例外を確保したと言って胸を張りました。その例外措置も白紙に戻されることになるんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 米国の閣僚人事の議会承認の手続でございます公聴会、これにおきまして、ライトハイザー次期USTR候補の発言については承知をしております。しかし、この発言がUSTRの代表になってからの発言ではないという認識でございまして、先日の日米首脳会談における一連の会談を含めまして、米国政府から二国間交渉についていまだ正式に具体的な要請はなかったというように承知しております。
 いずれにいたしましても、日米間の経済関係につきましては、今後の日米経済対話において議論されていくことになると、こう考えておりますので、外務省と連携しつつ、しっかり対応していきたいというように思っております。

○紙智子君 これからなんだという話をされるんだろうなと思いましたけれども、やっぱり非常に懸念がたくさんあるわけです。
 TPP交渉で、牛肉については米国とは関税を九%まで下げる、豚肉については低価格品の従量税は五十円まで下げると、こういうふうに合意しているわけですよ。TPP交渉において政府は、国会決議があると、国会決議を盾にして、これがあるからのめないんだというふうに交渉できたんだと言ってきたわけです。しかしながら、今度日米対話では、国会決議があるわけじゃないと、あるのはTPP合意だけなんですよ。
 アメリカの要求を拒否する理屈立てというのは、大臣、持っているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 繰り返しになりますけれども、日米経済対話はまさにこれからでございまして、特に分野申し上げますと、経済政策、そしてインフラ投資、エネルギー分野の協力、さらに貿易・投資ルール、この三つの分野について議論をするということになっております。具体的な構成、内容につきましては、引き続き両国間で調整をしているものでございます。
 また、今月上旬に外務省の次官級が訪米し米国と行った日米経済対話の事務レベル会談におきましては、農林水産省の関係する分野については議論がなかったというように聞いておりますので、まさしくこれからの展開によるものだというように考えております。

○紙智子君 非常にのんびりした答えなんですよね。それで、私は、非常に懸念がある中で説得できる、拒否できる理屈立てというのがあるんですかと聞いたんだけど、それにはお答えになっていない、これからだということで答えておられないわけですよ。もう拒否するかどうか分からないという話もあるんですけれども。
 それで、米国の牛肉、豚肉協会は既にトランプ大統領に書簡を送っていますね。それから、お米についても、米国のライス協会は、日本が別枠で五万トンから七万トンで受入れを決めたTPPが発効しなかったことを歓迎していると。新たな大量の米輸入の枠を日本に受け入れさせるように求めているわけですよ。まさにTPP水準以上のこれは開放が求められる危機があるというふうに踏んで掛からなきゃいけないわけですよね。非常に私はこれ危険だと思っています。
 それから、TPP水準の通商交渉というのは日米の二国間だけじゃないです。ほかの国々との通商交渉についても、これ懸念が大きいんですね。日本とEUの通商交渉について、安倍総理は、三月二十一日に行われた日EUの首脳会談で、早期に大枠合意をするように働きかけをしています。日本とEUのEPA交渉分野というのは、これ農産品を扱う物品市場アクセスを含めると二十七分野もあるわけですよね。TPP協定の対象分野というのは二十九分野あったわけですけれども、ほぼ同じぐらいのこれ交渉分野になると、重なっているところとそうじゃないところもありますけれども。
 しかし、これ自体も実は国民にはほとんど知られていないわけですよ。知られていない状況について、大臣はどのように思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 何事においても情報開示というのは適切に行っていかなければならないというように思っております。また、EUとEPA交渉につきましてできる限り早期の大枠合意を目指して交渉を進めているところでございます。政府といたしましては、交渉状況について公開できるものは、交渉の進展に応じて可能な限り開示していく方針でございます。
 他方、外交交渉の経緯を開示するということにおきましては、累次の交渉において我が国の手のうちをさらしてしまう、あるいは相手方との信頼関係を損なってしまうというような危険がございますので、制約があることは致し方ないところでございます。
 農林水産分野が関係する主な交渉分野といたしましては、まず第一に、鉱工業製品や農林水産品の物品貿易に関し関税撤廃、削減等を議論する物品市場アクセス分野、そして第二に、食品の安全、動植物の検疫衛生に係る措置等のルールを議論する衛生植物検疫措置、SPS分野、第三に、農産品及び酒類に係る地理的表示の保護等を議論する地理的表示、GI分野等がございます。
 その意味で、これは緊張感を持って対処していくところでございますが、日EU・EPA交渉に当たりまして、我が国の農産水産業をしっかり守っていくということが何より大事だと考えておりまして、農林水産品につきましては、今後ともしっかりと交渉に取り組む覚悟で準備をさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 なかなか聞いたことにかみ合っていないんですけれども、私は国民に知られていないことをどう思うのかというふうに聞いたわけです。そういうふうに今おっしゃるけれども、ほとんど分からないですよ。国民の皆さんに知られていないと。非常に重大だと思うんです。TPP交渉を経験をして、国民、市民の意識というのは大きく変わりました。
 EUはチーズなどの乳製品や豚肉や木材やワインなどの重要品目でTPP以上の市場開放を要求してくるというふうに言われているわけですけど、ほとんどこれも説明されていないと。自動車の輸出を進めることと引換えに農業分野を差し出すことになれば、これチーズやヨーグルトなど乳製品の輸入が増えるわけです。TPP水準を通商交渉にすれば、これ日本とEUでもTPPプラスを認める、そういう可能性があるというふうに思うんですね。
 それから、RCEP、東アジア地域包括的経済連携についてもお聞きしますけれども、ASEAN十か国、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムとプラス六か国、日本、中国、韓国、オーストラリア、ニュージーランド、インド、この十六か国が参加国なわけですけれども、RCEPの原則の中に、参加国の異なる発展段階を考慮に入れて、特別のかつ異なる待遇及びASEAN加盟国の後発開発途上国に対する追加的な柔軟性についての規定を含め適切な形の柔軟性を有すると。各国に配慮して交渉を進めるという立場が書かれていて、これ注目をしているわけですけれども、ここに今、TPP水準を取り込もうとする動きに対しての懸念が広がっているわけです。
 日本は既に、この十六か国中、ASEANの十か国とインド、オーストラリアとは二国間EPAを結んでいます。そこで聞きたいのは、日本がEPAを結んでいる国々との間に除外規定があるわけですよ。米、麦、牛肉、豚肉、砂糖、でん粉、除外して今まではいたわけだけれども、日本がRCEPをTPP水準に高めるとなれば、この除外規定を外すのか、それとも維持するのか、どちらなんでしょうか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) お答えいたします。
 委員御指摘のように、RCEPでは今交渉中でございまして、いずれにしましても、各分野、包括的で質の高い、バランスの取れた協定の早期妥結を目指しているところでございます。
 我が国の関税のオファーについては、交渉中の内容であり、詳細に述べることは差し控えたいと思っておりますけれども、委員御指摘の農林水産品でございますけれども、これは大変重要な分野だと思っておりまして、貿易、生産、流通実態を一つ一つ勘案しながら、そのセンシティビティーに十分配慮しながらしっかりと交渉してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 除外するのか、これをこれからも維持するのか、それともやめていく方向になるんですかと聞いたんですよ。はっきり言ってください。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) いずれにしましても、交渉の過程でありますオファーでありますとか、その取扱いについてちょっと詳細に述べることは差し控えたいと思いますけれども、農林水産品については、そのセンシティビティーを十分に勘案して、農林水産省とも連携をしてしっかり対応してまいりたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 全然答えになっていない、全く不満ですけれども。ニュージーランドとはEPAがありませんけれども、これTPPでは合意しているわけですよ。TPPで合意した国は、ほかにオーストラリアもあります。RCEPがTPP化される危険性があると思うんですね。
 もう一つ、情報公開について外務省に聞きたいんですけれども、日EU・EPAで、このRCEP交渉の協議内容や交渉日程も含めて、情報公開や国民への説明が極めて遅れていると思うんです。事実上秘密裏に進められていると言われても仕方がない状況だと。
 二月二十七日にRCEPの事務レベル会合が神戸で行われました。今回で十七回目だと。早い段階で日本が開催国だということが決まっていたと思いますけれども、その開催日の公表というのは五日前ですよ。神戸市は昨年の十一月に開催されることを公表していたのに、何で国は公表しなかったのかというふうに思うわけですよ。これ、どうですか。簡単に一言で答えてください、なぜなのか。

○政府参考人(外務大臣官房審議官 飯田圭哉君) 協議の日程につきましては、相手国との調整とかいろいろありますし、具体的な期間等はいろいろな調整の過程もございます。通常、大体それぐらいの範囲で公開をしてホームページ等に掲載するという慣習を持っておりまして、それに従ってRCEPについても取扱いをさせていただいたということで、特段RCEPについて遅らせようとか情報開示をしようとしないとか、そういうことでこういうことになったわけではございません。

○紙智子君 神戸市は、だって去年の十一月に開催することを公表しているんですから、何で政府はこんなに遅くやるのかということですよ。
 通商交渉は、グローバリゼーションが進む中で、我が国の産業や国民の命や暮らしに大きな影響があるわけです。今回、初めて市民団体との意見交換会が市民団体の要求で、強い要求で実現したと。私もそこに行きました。市民団体が要求して実現やっとできたということだったんだけれども、ビジネス界の利害関係者は会合に招かれているという話もありました。しかし、余りにも国民には説明されていないというふうに思うんですね。
 私、外交というのは決定事項だけが重要なんじゃなくて、どのような過程を経てその結果に至ったのかということを知ることが必要だと思うんですよ。それを含めて、やっぱり交渉の在り方としては後世に引き継ぐべきだと思うんです。今後の交渉の在り方をそういう点では見直すべきだと。そして、関係者に、交渉の途上であっても、政府は必要に応じて、また求めに応じて適切な説明の機会を持つべきじゃないかと思うんです。これ、関係閣僚でもある農水大臣、やっぱり適切に、その時々、ちゃんと説明の機会を持つべきだと思いますけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 外務省もお答えしたとおり、交渉状況について公開できるものは交渉の進展に応じて可能な限り開示していくというきちっとした方針を立て、他方で、外交交渉の経緯を開示するときには、相手方との信頼関係を損なわない、我が国の手のうちをさらしてしまうことにならない、累次の交渉に悪影響を与えないというような、そういう危険性も含めながらこの開示の姿勢は守っていかなきゃならぬというように思っております。

○紙智子君 そう言いながら、全然開示されていないと思うんですよ。いろいろな通商交渉がありますけど、保秘義務もないのに交渉開示されていないと。
 欧州委員会と米国の自由貿易協定であるTTIPは、市民や各国の議員の秘密主義の批判が高まる中で、二〇一五年の一月七日には、欧州側が提案している内容を初めて公表したわけですね。欧州委員会の通商政策の担当者の方は……

○委員長(渡辺猛之君) 時間が参りましたので、質疑をおまとめください。

○紙智子君 重要なことは、我々がTTIPの中で何を提案しているのか、全ての人が読んで理解できることが大事だといって、公表文書の中に法的な条文とともに難しい言葉を使わない説明を加えているわけですね。
 やっぱり各国の経済主権や食料主権や国民の暮らしを相互に尊重する平等互恵の貿易と投資のルールを作るということが非常に大事だし、そういう方向に是非交渉の立場というか転換を求めて、質問を終わりたいと思います。