<第192回国会 2016年11月22日 環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会>


◇遺伝子組換え作物をはじめて貿易商品に扱うTPP協定/「透明性」「貿易の円滑化」の名で食品の表示基準の緩和を求め、安全性よりバイオ企業の利益を優先

○環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)
○環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 私、十五日の質問のときに遺伝子組換え作物について質問いたしましたけれども、途中になりましたので今日はその続きをさせていただきます。
 バイオテクノロジーが、食の安全を扱う衛生植物検疫、SPS措置の章ではなくて、なぜ物品の貿易の章、第二の二十七条に入っているかということをお聞きしました。それで、政府の答弁は、未承認の遺伝子組換え食品が微量に混入するのを防ぐため、情報交換や協力を促進する話合いの場として設けられたというふうに、条文に書いてあることを繰り返し言われたわけであります。人や動物や植物の生命や健康を保護する衛生植物検疫の分野から、貿易を推進する分野に移したと。つまり、そこのところを聞いたわけですね。何でそれを移したのかと聞いたわけなんだけれども、TPPで、遺伝子組換え作物は、安全よりもやっぱり貿易を優先させたということなんじゃないのかと。
 しかし、国民はどうかというと、遺伝子組換え作物の貿易を更に推進することを望んでいるのかといいますと、そうではなくて、不安があるわけで、やはり安全を優先させてほしいと願っていると思うんです。TPP協定は、その不安を解消、解決する協定になっているのでしょうか。まず、厚生労働省にお聞きします。

○国務大臣(厚生労働大臣 塩崎恭久君) このTPP協定第二章でございますけれども、第二・二十七条の二というところにおいて、食の安全に関する措置を定めた第七章の第七・四条と同様に、WTOの食の安全に関する協定、いわゆるSPS協定に基づく自国の権利と義務に基づいて措置を採用することを妨げるものではない旨規定をしていることに加えて、この第二・二十七条三におきまして、締約国に対して、遺伝子組換え食品等を規制するための自国の法令や政策を採用し、又は修正をすることを求めるものではない旨、これを明記しております。TPP協定によって、リスク評価を経ていない遺伝子組換え食品の輸入等を禁止する我が国の制度の変更を求められるものではないということがまず第一点でございます。
 さらに、TPP協定第二・二十七条では、各締約国に対して、承認された遺伝子組換え食品等の一覧表とかあるいは承認された遺伝子組換え食品等のリスク評価の概要などを公にすることを求めていまして、これによって他国における遺伝子組換え食品等に関する情報をいち早く入手をすることが可能になるわけでありますので、検出法の開発などに迅速に対応することが可能となっているというところもあるということでございます。

○紙智子君 なぜ遺伝子組換え作物に対して農家や消費者が不安に思うのかと。現状でも、これ、遺伝子組換え作物が管理できていないということがあるわけです。
 二〇一三年の五月には、アメリカ西部オレゴン州の農場で認可していない遺伝子組換え小麦が発見されたと。この小麦は、アメリカのバイオ企業の大手モンサント社が試験栽培を認められて、一九九八年から二〇〇五年までオレゴン州など十六州で試験栽培を行っていたわけです。商品取引されていないのに自生していたと。小麦は飼料用の銘柄と菓子向けの銘柄がありますけれども、このとき、日本政府はオレゴン州産小麦の輸入を停止したというふうに聞いています。今年七月も、今度はアメリカ西部のワシントン州の農地に遺伝子組換え小麦が自生しているということが確認をされたと。
 有機農業を行っている農家にとってみると、これ遺伝子組換えが含まれているということになったときは農作物は有機栽培と認定されなくなるということで、非常にこの事態というのは深刻だと思うんですけれども、農水大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 山本有二君) 現在、我が国におきまして、食用として使用することを目的とした遺伝子組換え農産物のうち、カルタヘナ法に基づき、生物多様性に対して影響がないものとして栽培の承認を受けたものは六作物でございます。実際に商業栽培されているものはございません。
 今後、遺伝子組換え農産物の商業栽培を行う際には、有機農家の方など不安に感じる方々も大勢いらっしゃると思われますので、栽培圃場の周辺の有機農家等の生産者の方々と話合いをしていただくなどして、理解を得た上で進めていく必要がございます。
 農林水産省としましては、さらに、遺伝子組換え作物の承認に際しまして、科学的評価に基づきまして適切に対応していくとともに、有機農家を含む国内の生産者の方々に安心して農業を続けていただけるように丁寧に説明してまいりたいというように思っております。

○紙智子君 TPP協定は、未承認の遺伝子組換え作物・生産品を貿易するときに、混入があった場合にどうするかということを定めているわけですよね。輸出国、例えばアメリカは、輸入国である日本から要請があり、可能なときには日本に情報を提供すると。可能なときと書いてあるんですけれども、必ずしもだから情報を提供しなくてもいいということですよね、可能な限りと。輸入国日本は情報などを伝えるということになっているわけです。
 そこで、第二・二十七条の七の(c)についてお聞きをするんですけれども、輸入国は、混入の発生に対処するためにとられる措置には罰則を含まないというふうにありますけれども、これはどういう意味でしょうか、石原大臣。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 紙委員御指摘のTPP協定第二章二十七条の七項におきましてどういうことが書かれているかと申しますと、いわゆるLLP、すなわち未承認の遺伝子組換え作物の微量混入が発生した場合に輸入国がとるべき措置を規定しているものでございます。
 御指摘の同項の(c)は、LLPが発生した場合、輸入国が行う対応措置について、自国の法令及び政策に合致する適当なものであることを確保することを求める規定でございます。また、その対応措置に罰則を含まないことが注釈で規定されております。これは条文の解釈でございますが、我が国では、この問題に対処するため、もう御承知のとおり、食品衛生法に罰則を科しているわけでございます。
 一方、それ以外の他の法令に基づいて罰則を科しても構わないということを明確化するためにこの注釈規定が置かれております。例えば、関税法の中で罰則を規定しても構わないといったことでございます。
 したがいまして、LLPに対処するためにとられる措置に罰則を含むか否かは、TPP協定第二章、委員御指摘の二十七条では規律されておらず、各国の判断で行えるようになっております。すなわち、我が国に照らして言うならば、食品の安全を確保するために食品衛生法で罰則を規定しておりますが、それは何ら変更することはない、そのままでいいということでございます。

○紙智子君 何ら変更がないと言うんだけれども、わざわざ注のところにこの罰則を含まないと、この措置に対して罰則を含まないとわざわざ書き込んでいるということは、なぜそういうふうにわざわざ書き込んでいるんですか。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 先ほど条文の解釈の問題であるというふうに御説明をさせていただいたのでございますが、もう委員御承知のとおり、我が国は、食の安全を確保していくために、食品衛生法の中で問題処理するために罰則を科しております。
 一方、それ以外の他の法令に基づいて罰則を科しても構わないということを明記するために、この注意書きの中で、この罰則を含まないことが注釈で規定されている。すなわち、国によりましては、我が国と同じような食品衛生法ではない法律によって罰則を科している。それでも問題がないということを明確化していくために、LLPに対処するためにとられる措置に罰則を含むか否かはTPP協定第二章二十七条では規律されていない、各国の判断で行えるというふうに条文を解釈させていただいているところでございます。

○紙智子君 そうしますと、その罰則を持っているところと持っていないところとかってあると思うんですけど、それはそれぞれの各国に任されるということになるんじゃないんですかというふうに私は読めるんですけれども。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) これは多分各国とも同じだと思うんですけれども、国民の皆様方の食に対する安全性、安心、こういうものに対する関心が非常に高いわけですから、そういう自国の規制に反するようなことがあったら、様々な法律でこの罰則を含む規定を設けている。それは、委員御指摘のとおり、各国の判断で罰則を設けているというふうに御理解いただきたいと思います。

○紙智子君 つまり、各国の判断ということで、未承認の遺伝子組換え作物が混入しても罰則は科さない、混入が見付かっても罪に問われないというところも出てくると。
 これは、やっぱり輸入国、輸出国で違うと思うんですけれども、輸出国に有利にする中身じゃないかと。なぜ輸出国に有利にするような必要があるのかということなんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 一点、誤解があっては問題ですのでお話をさせていただきますと、各国とも食の安全に対する関心というのは高くて、我が国の場合は食品衛生法で委員が御指摘のような事案が検出した場合に罰則を科すという法律体系になって、これを抑止しているわけでございます。国によっては、この我が国の食品衛生法と同じような法律があるないがございますので、各国の法律の中において各国の独自の判断において罰則等々を設けましてそういうものを抑制する、規制するという形が取られていると御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 そこのところがなかなか読み取れないですよね。要するに、これ、罰則があるかないかということではそれぞれのところに任せられるということになると、非常に罰則がないということになると輸出国の責任を曖昧にしていくんじゃないのかというふうに思うんです。
 農家も消費者も遺伝子組換え作物の安全性に不安を持っています。政府は、TPP協定でもWTOのSPS協定と同じように各国に科学的根拠に基づく適切な措置をとることを認めているんだと、だから国内の制度に影響しないというふうに言うわけですけれども、しかし先日の参考人質疑で、WTOのSPS協定では予防原則を条件付であっても認めていたけれども、TPPではこれを排除しているということでは深刻な問題を有するという指摘があったわけです。ちょっとさっきやり取りありましたけれどもね。
 この点について、指摘されていることについては、ちょっと簡潔に述べていただきたいんですけれども。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 先ほど御同僚の浜田委員と政府委員との間で御議論がありましたので、簡潔に結論だけ申しますと、WTO・SPS協定で認められている権利がTPP協定で排除されていることではない、上乗りさせられているということでございます。

○紙智子君 そうであれば、しっかりと同じように書くべきだと思うんですね。
 それで、なかなかやっぱり不安が消えないと。なぜかというと、根本的にはやっぱりこのTPP協定については秘密交渉でやられてきて、どういうやり取りがあったかということが隠されてきたということがあって、なかなか深く理解を進めることができないという問題があったと思いますよ。
 それで、輸出国の責任が非常に曖昧になるんじゃないかということでは、モンサント社やバイオメジャーの企業が集まってバイオテクノロジー産業機構をつくっているんですけれども、アメリカの通商代表部、USTRに書簡を出しているわけです、これ二〇〇九年ですけれども。そこでは、各国が独自に行う規制をやめさせる、あるいはバイオ企業が認める最低限の基準を国際基準にするべき、それからTPP締結国で共通のルールを確立すること、貿易を中断するときにはその前にアメリカ政府に相談するなどの要求を出しているわけですね。TPP協定にはこれらをほぼ丸のみしたんじゃないかという指摘もあるわけです。
 遺伝子組換えの種子が食料や農業生産に与える問題もあると。TPPは、農家や消費者の不安よりも、言わばこういうバイオテクノロジーの企業の利益を優先するものになっているんじゃないかというふうに非常に不安を持つわけです。
 それで、次に、遺伝子組換え食品の表示について伺いたいと思います。
 日本に輸入されている遺伝子組換え作物は大豆、トウモロコシ、菜種、綿などで、そのほとんどがアメリカ、カナダ、オーストラリアの遺伝子組換え作物の生産大国からの輸入と。先ほどまた話がありましたけれども、日本は遺伝子組換え作物を世界で最も輸入し、最も食べている国民というふうに言われているわけです。
 そこで、表示制度についてお聞きするんですけれども、日本の表示制度というのは消費者の知る権利、選ぶ権利というところから見てどうなのかということで、資料を配らせていただきました。
 それで、ここに、輸入大豆製品の遺伝子組換え分析結果ということで、豆腐AとかBとかCとかということで書かれておりますけれども、日常私たちが食べているものなわけです。それで、遺伝子組換えでないという表示がされているものなんですね、これ。遺伝子組換えでない表示がされているものを農民連の分析センターが分析をしたと。そうしたら、これは農水省の検査マニュアルに沿って検査をしているわけですけれども、遺伝子組換えの原料が混入されているという結果が、ここに出ているように、混入率ずっと出てくるわけですね。誤解のないように言わなければならないんですが、これは輸入大豆が使われている商品で、国産ということではありません。
 これについて、消費者庁の松本大臣に、どのように思われるか、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(消費者・食品安全相 松本純君) 我が国の遺伝子組換え食品の表示制度は、実効性を担保するため、当該食品を分析し、遺伝子組換え農作物を含んでいるかどうか、科学的に検証できるものを表示義務の対象としております。また、我が国の食品表示基準においては、適正に分別生産流通管理を行ったとしても、産地や輸出港等の各段階において遺伝子組換え農作物の意図せざる混入が生じる可能性があることから、流通実態を考慮し、意図せざる混入率が五%以上のものを表示義務の対象としているところでございます。
 なお、先生御指摘の調査の結果につきましては、遺伝子が検出されたという事実でございまして、即全てが食品表示基準違反であるとは言えないと考えております。

○紙智子君 遺伝子組換えでないというふうに表示されても、私たち見て買って食べるわけだけど、実は微量だけど入っているという事態ですよね。こういう事態に対して、やっぱり知って、皆さん驚くと思うんですよ。私びっくりしました、この結果を見て。それで、日本は遺伝子組換え農作物は作っていませんから、これ、輸入大豆に含まれていたというふうに思われるわけです。
 この資料の下の図を見ていただきたいんですけれども、日本の表示義務は、今大臣がおっしゃったように、混入率が五%以上というふうになっていますから、遺伝子組換え作物が少量混じってしまった場合でも遺伝子組換えでないというふうに表示できるということなわけですね。表示義務は、ここにあるように、日本、オーストラリア、ニュージーランドにはありますけれども、アメリカにはありません。
 表示の基準となる混入率では、TPP参加国の中ではオーストラリアやニュージーランド一%以下、それからEUは〇・九%ということですね。日本は五%というふうに言われたんですけれども、なぜ五%にしているのか、その根拠について教えてください。

○政府参考人(消費者庁次長 川口康裕君) お答え申し上げます。
 現在の遺伝子組換え表示制度、一般でございますが、平成九年に農林水産省に設置された食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会における検討に基づき制定されております。
 検討におきましては、表示の信頼性、実行可能性の観点から科学的検証及び社会的検証を行う小委員会での検討結果、これは平成十一年に出ております、これを踏まえて議論が行われたところでございます。この小委員会における検討におきましては、生産、収穫が行われる産地、あるいは乾燥、調製が行われるカントリーエレベーター、船積みが行われる輸出港あるいは輸入港、それぞれにつきまして各段階で混入が生ずる可能性があるという実態があるということでございまして、これらの段階での混入率を積み上げると流通全体では最大で五%程度の混入の可能性があるということを判断されたところでございまして、この検討結果に基づきまして、現在の制度である、意図せざる混入率を五%とすることが取りまとめられたということでございます。

○紙智子君 ちょっと何回も事前にレクチャーでも聞いていたんですけど、なかなかその根拠というか、科学的な根拠というふうには、なかなかよく分からないなということなんですよね。だから、輸入港だとか港だとか乾燥のところだとか産地だとか、それぞれで積み上げていくというわけだから、具体的には何でそのパーセントになるのかというのがよく分からない回答だったんですけれども。
 それで、オーストラリアやニュージーランドは一%、EUは〇・九%なのに、日本が五%というとちょっと高いんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(消費者庁次長 川口康裕君) 私からは事実のみ申し上げますが、オーストラリアとニュージーランドは一つの制度で、共通の制度でございまして、遺伝子技術を用いて製造された食品基準という共通の制度に基づきまして、意図せざる混入率を一%と規定されております。また、EUにおいては遺伝子組換え食品及び飼料規則というところで決まっておりまして、意図せざる混入率は〇・九%と規定されております。
 このように各国それぞれ数字があるわけでございますが、各国の流通の事情に基づいてそれぞれ設定されているというふうに承知しておりますが、具体的な数値の根拠については承知していないというところでございます。

○紙智子君 日本が、だから、ほかの国の低くしているところに合わせていくということは、やっぱり国民の多くの皆さんはもっと低くしてほしいと言っているわけですよ。これにやっぱり合わせていくということは検討されないんですかね。

○国務大臣(消費者・食品安全相 松本純君) ただいま御説明がありましたように、流通過程において遺伝子組換えのものとの分別管理が適切に行われた場合であっても意図せざる混入が生じる可能性があるという御説明でございますが、先生の御指摘のとおり、オーストラリア、ニュージーランド及びEUに比べると我が国の意図せざる混入率が高いことは事実でございまして、この意図せざる混入率については、現在、遺伝子組換え農作物の主な輸出国である米国及びカナダの分別管理の状況について調査を実施しているところでございます。調査終了後、有識者等による検討の場において検討を是非させていただきたいと存じます。

○紙智子君 先ほど全国農民連の分析センターの結果を紹介したんですけれども、検査を厳格にする技術というのが日本にはあるわけですよね。それなのに基準が緩いと。消費者の選択権を保障する仕組みにすべきだというふうに思います。
 TPPについてそこでお聞きするんですけれども、TPPは、WTO・TBT協定の権利義務を再確認し、更に強化、発展したというふうに言われます。それで、何を強化、発展させたのかということが一つと、それから、TPP協定の第八章に透明性の確保、貿易の円滑化という言葉が使われているんですけれども、WTO・TBT協定にはこういう規定があるのかどうかということを、二つお聞きします。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) いわゆるWTOに乗っかっているもの、そして透明性のところについて何かという御質問だと思ったのでございますが、新規措置の導入や規制強化に当たりまして透明性を強化することがWTOの、委員も御承知のことだと思いますが、貿易の技術的障害に関する協定、いわゆるTBTのところに規定されております。
 TPP協定では、ではどうなっているかということでございますけれども、TPP協定の技術的障害、いわゆるTBT章においては、その透明性強化がより明確に規定をされております。
 具体的に申しますと、国際規格に適合的な措置であっても貿易に著しい影響を与える場合はWTOに通報すること、WTO通報と同時に各締約国に当該通報及び提案を電子メールで送信すること、他の締約国の利害関係者が意見を提出する期間を通常六十日間とすること、これは日付を明示したということでございます。最終的な措置の公表と実施の間に設ける適当な期間を通常六か月以上とすることなどなどを規定しております。これらは、国際規格に適合する措置であっても通報し、各締約国に電子的に送付する以外は、実は過去にWTOのTBT委員会が決定したものを確認している、上書きしている、あるいは既に我が国として実施済みであると御理解をいただきたいと思います。
 したがいまして、これらの義務の履行のために現在よりもTBT措置の新規導入や規制強化が、よく御議論になるんですけれども、できなくなるんじゃないかという御指摘があるんですけれども、難しくなるということは考えられておりません。
 以上でございます。

○紙智子君 WTOのTBT協定には、この透明性の確保とか貿易の円滑化というのはなかったんですよね。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 前段でお話をさせていただきましたけれども、透明性を強化することがWTOの貿易の技術的障害に関する協定と言われるWTO・TBT協定にも規定をされているんです。ただ、委員の御指摘はTPP協定の貿易の技術的障害章においてはどうかという御質問であると思いましたので、その透明性強化がより明確に期待されている。そして、先ほど具体例をもってお示しさせていただいたことでございます。
 ですから、新しい、更に更にきつく書いてあるというふうに御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 規定はなかったというふうに聞いておりました。ちょっと今答弁が違うんですけれども。元は規定はなかったんだと。だけど、今回TPPではある。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 今、そのWTOとTPPのTBT章の作りについて御説明をさせていただいたんですけれども……(発言する者あり)よろしいでしょうか。規定が、先ほど御説明させていただきましたように規定が実は強化されております。
 もう一つの貿易円滑化についてのWTO・TBT協定では前文において掲げております。国際貿易を容易なものとすると規定されております。TPPでは、第八章の第九条、その場所は全然違うわけですけれども、独立した条文が設けられ、適合性評価手続の結果を相互に受け入れることを促進するための仕組みなどが具体的に規定される。そういう意味では、前文にはありましたけれども、今回のは独立章で書かれている。すなわち、委員の御指摘の解釈によってはそういう解釈もなり得るのではないかと思っております。

○紙智子君 ちょっと、単純に聞いているのに、ぴしっと答えてほしいんですよね。全然ちゃんと、あらかじめ聞いていたわけですから、なかったんだという答えだったわけですよ。
 透明性について、そのTPPの八・七条ですか、そこで、各締約国が他の締約国に対して自国の者に与える条件よりも不利でない条件で規格や評価手続の作成に参加することを認めるという、不利な扱いはしないという書き方をしていて、利害関係者に意見を提出するための合理的な機会を与え、当該意見を考慮すると、そのことによって義務を履行するというふうに、今度TPPのところでは書いてあるわけですけれども、これについての意味を聞きたいと思った。ちょっと短くお願いします。いろいろなことを言わないで端的に答えてください。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 先ほどの浜田委員との御議論の中でも、そのパーツだけを見ますと、そこに書いていないからなかったという話になるんですが、書いてある場所がWTOと違いますので、丁寧に御説明をさせていただいたというふうに御理解をいただきたいと思います。
 次は、TPPの八章の七条一項の注意書きについての趣旨でございますか、御質問の内容はと伺わせていただいたので、それでよろしいですか。(発言する者あり)はい。それを説明すればいいんですよね。よろしいですか、それを説明で。ちょっと長くなるけど、よろしいでしょうか。分かりました。
 じゃ、もうはしょって、条項とか項目をはしょって言いますと、透明性強化の観点から、強制規格等の新規導入や強制強化に際して、他の締約国の者に対して、自国の者に与える条件よりも不利でない条件で措置の作成に参加することを認めるということがその内容でございまして、いわゆる注意書きでは、締約国は、例えば、利害関係者に対して自国が作成することを提案する措置について意見を提出するための合理的な機会を与えて、当該措置の作成において当該意見を考慮することにより、この義務を履行するというふうに書いております。それが、それでいいのかということですけれども、これはそのまま我が国で行っているいわゆる既存のパブリックコメント手続を踏むことでなるというふうに理解をさせていただいているところでございます。

○紙智子君 全然答えていないです。意味聞いたんですよ。合理的な機会を与えとはどういうことか、考慮するとはどういうことかと、意味について聞いているのに全然答えになっていないですよ。時間だけ過ぎちゃうわけですから、ちょっとひどいですよね、これは。
 合理的な機会、それから考慮するということの意味について聞いたんです。

○国務大臣(TPP担当相 石原伸晃君) 合理的な機会というのは合理的な機会でございまして、それを誰が判断するかといえば、各国が判断すると。その前段があるわけでございますから、説明をさせていただいているわけでございます。もし何か、イエス・オア・ノーでございましたら、何項の何は何なんだというような形でお聞きいただければ、お答えさせていただきたいと思っております。

○紙智子君 要するに、これ利害関係者に意見を提出するための機会を与えなきゃならないということですよね。そして、その意見を考慮するということが書かれているわけですよ。これは単にパブコメをやればいいという話じゃなくて、実際には利害関係者の方が直接参加して意見も述べたいということだってあるんじゃないかと。
 それで、ちょっと資料をもう一回見てほしいんですけれども、現在、アメリカには遺伝子組換え食品表示制度はありません。アメリカの食品医薬局は、従来、食品と実質的に同等とみなせる場合には、遺伝子組換えに対して新たな規制もその旨の表示も必要ないと言っている。
 なぜこうなったかについて、アメリカのNPO法人の食品安全センターのペイジ・トマセリ弁護士は、遺伝子組換え食品の表示義務を見送ったことについて、多くの科学者はそこまで安全性を断定できる根拠がないと言ったわけですが、政治的判断で決まっちゃったと。その背景には想像を絶する遺伝子組換え開発企業のロビー活動があったということが二〇一三年の六月に言われているわけです。ですから、オーストラリアとニュージーランドは意図しない混入許容率は一%ですけれども、アメリカはその廃止を求めたということなんですね。
 ところが、その後、二〇一三年の六月の半ばに、アメリカはTPP交渉の進展を重視して遺伝子組換え食品の表示制度を策定することを決めたと言われています。ただし、表示の仕方はQRコードとかバーコードなんですね、ぱっと見て分かるのかなというふうに思うんですけれども。
 TPPの協定八章というのは、不必要な貿易の技術的障害の撤廃、そして透明性を高めて貿易を円滑にする、円滑化というふうに書いていると。これが目的なわけですよ。貿易を円滑化するというのが目的だと。日本の表示制度を変えるような、アメリカ政府からもバイオ企業などの利害関係者からもこれ圧力が掛かってくるのは明らかじゃないかというふうに思います。
 ちょっと時間なくなってしまいましたけれども、極めてそういう意味では危険性をはらんだ中身があるということを申し上げて、質問を終わります。