<第190回国会 2016年5月12日 農林水産委員会>


森林法等一部改正案に対する反対討論/合法伐採法(議員立法)

○森林法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党を代表し、森林法等の一部を改正する法律案に反対の討論を行います。
 日本の森林は、戦後造成されてきた人工林の半数以上が主伐期を迎え、森林資源の有効活用と計画的な再造林を進めるべき時期を迎えています。一方で、木材価格が低迷し、人件費を始めとする経営コストが増加したことから、林業の採算性が低下し、森林所有者の経営意欲は衰退し、森林組合の組合員も減少しています。なぜこうした事態に陥ったのでしょうか。
 森林白書は、木材の輸入が自由化され、国産材の供給は減少し、山村の過疎化や高齢化なども相まって林業生産活動は低迷したと分析しています。自由化が林業生産に大きな影響を与えたのは明らかです。それなのに、環太平洋経済連携協定、いわゆるTPPは、関税を全面撤廃するものです。関税撤廃は、山村地域や林業の再生に逆行するものです。
 日本再興戦略改訂二〇一五年は、施業の集約化、木質バイオマスの推進、CLT、直交集成板で国産材の需要を創出し、林業の成長産業化を図るとしました。本改正案はその具体化ですが、進め方には多くの疑問や懸念が寄せられています。
 森林組合連合会の権限強化は、地域の森林組合と業務が競合する可能性があります。生産森林組合に選択肢という言い方で株式会社、合同会社に移行することを認めますが、組織変更に異論がある人への払戻金が手切れ金になれば、協同組合の放棄になります。選択肢という、いかにも自由な選択権を与えるように聞こえますが、これは規制緩和を進める手法で、要望もないのに法制化、法定化する必要はありません。非営利の協同組合に混乱が持ち込まれるとの懸念や批判が出ています。
 木材安定供給特措法で、事業計画の作成者に木質バイオマス利用事業者等が追加されます。燃料を確保するために伐採が優先され、木材資源の有効利用が損なわれる懸念や、大手の事業者に地域が囲い込まれる懸念があります。未利用木材の利用に限定した法律上の担保がなければ、林業の持続的かつ健全な発展に反することになります。
 森林総合研究所法の改正は、独立行政法人改革法で、森林法と一体に扱うものではありません。しかも、森林総研には、森林保険業務を押し付けた上、公共事業も押し付けることになります。水源林造成事業への国の責任が弱まるとの批判が出ています。
 本改正案は、森林法、森林組合法、分収林特措法など五つの法案の一括法です。知れば知るほど多くの懸念や意見が出されています。本来なら、調査や参考人質疑など十分な審議が必要です。現場の意見を酌み尽くさず、理解もないまま一括法という形で採択することには賛成できません。
 以上申し述べて、反対討論といたします。

○委員長(若林健太君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。これより採決に入ります。
 森林法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(若林健太君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、小川君から発言を求められておりますので、これを許します。小川勝也君。

○小川勝也君 私は、ただいま可決されました森林法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民進党・新緑風会、公明党及びおおさか維新の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    森林法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  森林は、国土の保全、水源涵養、生物多様性の保全、地球温暖化防止、木材等の物質生産など、多面的・公益的な機能を有している。しかしながら、我が国の林業は、木材価格の低迷、森林所有者の世代交代、山村地域の過疎化等により、依然として厳しい状況にあることから、林業の成長産業化を実現するため、適切な森林施業を通じて、国産材の安定供給体制の構築、森林資源の再造成の確保及び森林の公益的機能の維持増進を図る必要がある。
  よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 森林資源の循環利用の推進のため主伐後の確実な再造林が必要であるが、現状における木材の伐採収入では再造林に係る経費の確保が困難であることから、確実な再造林に向けて、公的補助の拡充等を図ること。
 施業の集約化を加速するため、林地台帳整備に当たる市町村等への支援の強化を図るとともに、森林経営計画作成の促進に向け、プランナー等の人材育成、国の職員による技術的な支援の更なる拡大や、集約化が困難な森林の地方公共団体等による公有林化に対する支援の強化等の施策の拡充を図ること。
 森林組合が森林経営事業実施の体制整備を図り、林業活性化に取り組みつつ、過度なリスクを取ることで森林組合の経営悪化を招くことのないよう、農林水産省は引き続き森林組合・森林組合連合会の財務を監督するとともに、森林組合・森林組合連合会の経営・財務管理を担い得る人材の育成に注力すること。
 二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会施設への国産材利用に積極的に取り組むとともに、公共建築物の木造化やCLT(直交集成板)の普及等による木材利用の拡大、森林認証・認証材の普及促進、木材の輸出促進などにより、国産材需要の拡大に全力を挙げること。また、木質バイオマスを含む地域材の安定供給体制の確立に向け、川上・川下における木材需要に対応した供給調整を担う組織や人材の育成など地域における必要な方策を検討すること。また、セルロースナノファイバー等の新たな技術の開発・実用化等に取り組むこと。
 地域林業の確立を図るためには、林業事業体の育成と林業労働力の確保は不可欠であり、山村振興の観点からも、地域の企業の受注機会の増大・所得向上に向けた支援等必要な方策を検討すること。
 国際社会にとり重要かつ喫緊の課題である地球温暖化防止を推進するため、京都議定書の第二約束期間における目標及び昨年末に合意されたパリ協定を踏まえ、間伐や植林等の森林吸収源対策を着実に推進するための安定財源の確保に向けた検討を加速化すること。さらに、安定財源が確保されるまでの間においても、必要な予算の確保を図ること。
 自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的かつ健全な発展を図るため、事業者が合法伐採木材の利用を確保するため適正なリスク評価その他の措置を講ずることを促すとともに、事業者による合法伐採木材の利用を確保するための取組の実施状況に関する情報の把握に努め、違法伐採木材の取扱いが懸念される場合には、その是正に努めること。
 近年の山地災害の頻発やその被害の増加を踏まえ、国民の安全で安心な暮らしを守るため、予防治山対策を含めた治山事業の確実な実施に努めるとともに、必要な予算の確保を図ること。
 東日本大震災からの復興について、海岸防災林の再生や福島の森林・林業の再生を始めとする復興対策に全力で取り組むこと。また、平成二十八年熊本地震による災害について、治山事業による崩壊地の早期復旧や二次災害の防止、被害を受けた森林・林業の再生に全力で取り組むこと。

   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。

○委員長(若林健太君) ただいま小川君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(若林健太君) 全会一致と認めます。よって、小川君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。
 ただいまの決議に対し、森山農林水産大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。森山農林水産大臣。

○国務大臣(森山裕君) ただいまは法案を可決いただき、ありがとうございました。
 附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、対処してまいりたいと存じます。

○委員長(若林健太君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(若林健太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。

    ─────────────

○委員長(若林健太君) 次に、合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律案を議題といたします。
 提出者衆議院農林水産委員長小里泰弘君から趣旨説明を聴取いたします。小里衆議院農林水産委員長。

○衆議院議員(小里泰弘君) ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
 本案は、我が国又は外国における違法な森林の伐採及び違法伐採に係る木材の流通が地球温暖化の防止、自然環境の保全、林産物の供給等の森林の有する多面にわたる機能に影響を及ぼすおそれがあり、また、木材市場における公正な取引を害するおそれがあるものであることに鑑み、自然環境の保全に配慮した木材産業の持続的かつ健全な発展を図り、もって地域及び地球の環境の保全に資することを目的とするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、基本方針についてであります。主務大臣は、合法伐採木材等の流通及び利用を総合的かつ計画的に推進するため、合法伐採木材等の流通及び利用の促進の基本的方向に関する事項等を定めた基本方針を定めることとしております。
 第二に、国の責務についてであります。国は、合法伐採木材等の流通及び利用を促進するために必要な資金の確保、情報の収集及び提供、木材関連事業者の登録に係る制度の周知その他の必要な措置を講ずることとしております。
 第三に、木材関連事業者の判断の基準となるべき事項についてであります。主務大臣は、合法伐採木材等の流通及び利用を促進するため、木材関連事業者が合法伐採木材等の利用を確保するために取り組むべき措置に関し、木材関連事業者の判断の基準となるべき事項を定めることとしております。具体的には、木材関連事業者が取り扱う木材等が我が国又は原産国の法令に適合して伐採されていることの確認に関する事項、その確認ができない場合において合法伐採木材等の利用を確保するために木材関連事業者が追加的に実施することが必要な措置に関する事項等であります。
 第四に、木材関連事業者の登録についてであります。木材関連事業者であってその取り扱う木材等について合法伐採木材等の利用を確保するための措置を適切かつ確実に講ずるものは、登録実施機関が行う登録を受けることができることとしております。
 第五に、国際協力の推進についてであります。国は、外国における違法伐採の抑止のための国際的な連携の確保その他の合法伐採木材等の流通及び利用に関する国際協力を推進するために必要な措置を講ずることとしております。
 第六に、報告及び立入検査についてであります。主務大臣は、この法律の施行に必要な限度において、木材関連事業者に対し、合法伐採木材等の利用の確保の状況に関し報告をさせ、又はその職員に立入検査をさせることができることとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行することとしております。
 以上が、本案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

○委員長(若林健太君) 以上で本案の趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。──別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 合法伐採木材等の流通及び利用の促進に関する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(若林健太君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○委員長(若林健太君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。