<第190回国会 2016年5月12日 農林水産委員会>


森林法等改正案は、非営利の生産森林組合の株式会社化、燃料を確保するために伐採等、現場の意見を酌み尽くしていない/TPP・合板の関税撤廃/山村の荒廃につながる

○森林法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回の法改正は、森林・林業基本計画を踏まえて、国産材の安定供給体制の構築、森林資源の再造成の確保、森林の公益的機能の維持増進を一体的に図るためとして、関係する五つの法律を一括して改正するものとなっています。
 私は、森林・林業に関係する現場の方々に聞き取りをしてみたんですけれども、全くと言っていいほどこの改正の中身というのは知られていないと、知らないということだったんです。概要を示して、知れば知るほど懸念の声が上がると。慎重な議論がされるべきだという声が返ってきました。
 そこで、まず、森林組合法の一部改正に関わって質問します。
 第三章のところに、生産森林組合を株式会社、合同会社、認可地縁団体へ組織変更できる規定というのがあります。非営利の団体から性格が変わることにならないかという声が、懸念が出されました。
 そもそも、生産森林組合の設立の動機というのは一体何だったでしょうか、お聞きします。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 生産森林組合は、森林経営の協業化を望む組合員が自らの資本と労働と経営能力を提供することによって、法人形態で効率的な森林経営を行うための協同組織であります。
 生産森林組合の設立動機につきましては、林野庁が行った調査によりますと、集落有林の共同経営が五八%で大半を占め、次いで共有林の共同経営が一四%となっております。

○紙智子君 つまり、森林組合の事業の継続と従事者の就労の安定に資することを目的にしながら、集落の言わば共同の財産を管理しているということだと思うんですね。
 それで、生産森林組合を株式会社に移行することができるということなんですけれども、そもそも株式会社化というのを誰が望んでいるのか、実際に望んでいる生産森林組合の実例はあるんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 生産森林組合は、森林経営の協業化を望む組合員が自らの森林、労働力、経営能力を提供することによって法人形態で森林経営を行うための協同組織ですけれども、その制度の趣旨から、組合員自らが組合の事業に従事することが法律上求められているわけですけれども、それに対して、高齢化等により組合員自ら組合の事業に従事することが困難となっている場合もあります。また、生産森林組合の事業の内容につきましては法律でいろいろ縛られているところがありますけれども、例えば経営を多角化したいという意向を持つ場合でも森林組合法で規定されている事業以外の事業は行えないというような、近年においてはそういったことで不都合な面も生じてきている実態にございます。
 このため、今回の法改正におきましては、組合の活動状況や経営の意向の方向等も踏まえまして、保有する森林の管理を継続しながら生産森林組合から他の適切な法人形態へ移行できる措置を講じようと考えております。
 これまでの生産森林組合の事例におきましても、一旦生産森林組合を解散した後に合同会社を設立して外部の労働力を活用している例もございます。また、現在の生産森林組合の中にも、レストランや民宿経営などの経営にこれから取り組みたいと意向を有するものも数組合あることが林野庁としても確認をしております。こうした組合におきましては、多角的に事業を行いやすい形態として株式会社に移行するニーズが一定程度見込めるものと考えております。
 ただ、実際に生産森林組合から株式会社に移行した事例というのは現時点では承知しておりませんが、今回の法改正による法人形態への移行手続の簡素化の効果により株式会社になることを選択する組合も出てくるのではないかと考えているところでございます。

○紙智子君 事業を多角化するということも言われたんですけど、既に六次産業化を進めることは可能なわけですよね。それから、林業者と建設業者が連携して路網の整備ですとか間伐などの森林整備を実施する林建共働ということも進んでいるところもあるわけです。ですから、強い要望がないのにあえて株式会社にしなくてもいいのではないかなというふうに思うわけなんですね。
 協同組合から株式会社になるということは、会社法に基づく組織になるわけです。選択肢なんだという言い方もあるわけですけれども、そもそも協同組合に対する林野庁の支援が不十分だから選択肢を与えるということになるんじゃないでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 紙委員にお答えいたします。
 生産森林組合は、自らの森林や労働力などを提供して効率的な林業経営を行うための協同組合組織であります。その中には、積極的に森林経営事業を行うほか、事業の多角化などの事業展開を図ろうと考えている組合も想定をされるところであります。このような組合の中には、株式会社など新たな組織形態になることを望むことも十分考えられているところでもあります。
 今回措置いたします組織変更の規定は、一律に生産森林組合から他の組織形態に変更するということではなくて、あくまでも生産森林組合が新たな法人形態への移行を望む場合に手続が簡素化されるというものであります。生産森林組合の組合員の意向に基づいて、組織運営の自由度など、経営にプラスに作用することを期待をしているところであります。

○紙智子君 木材の価格の低迷で経営が逼迫している組織、組合も多いわけです。
 二〇一三年の森林組合統計では、生産森林組合三千七十九のうち二千九十二組合が平均で六十四万円の赤字となっているわけですね。株式会社になったとして、この赤字が解消できるのかどうかと、それからまた、経営が破綻した場合には誰が責任を持つんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答え申し上げます。
 法人の経営形態を変えただけでその経営内容が赤字から黒字に転換するというようなことにはならないと思いますけれども、先ほども申し上げましたように、生産森林組合の中には、事業の意向として、今、森林組合法の規定に基づいていろいろ制約があるメニューの中から事業を選ぶのではなくて、もう少し自由な経営展開をやることによって経営を改善していきたいというふうに考えている生産森林組合もありますので、そういった生産森林組合にとっては選択肢が広がって経営の改善に資する、そういうことに役立つのではないかと考えております。

○紙智子君 うまくいっているところもあるからそういうことなんだと思うんだけど、そうじゃないところもたくさんあるわけですよね。それで、もし破綻したときに誰が責任を取るのかといったら、これは結局自己責任の世界になるんだと思うんですよ。
 組織変更をめぐって例えば異論がある人が出た場合は、法案の中に書いてありましたけれども、払戻金というのがあると。それで、言わばこれ手切れ金にもしなるとすれば、そもそも非営利の協同組合なのに、協同組合の放棄になるんじゃないかというふうにも思うんですけど、いかがでしょう。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) その点につきましては、生産森林組合が、まさに設立の趣旨が、冒頭先生から指摘を受けましたけれども、これはみんなで、一人一人の経営の規模は小さいけれども、森林経営を協業化しようと思ってみんなでつくった組織ですので、今後の経営の在り方等につきましても、なるべく合意ずくでどういう道を行くのかというのが選択できるように、監督官庁としてもそういった線に沿って指導の徹底に努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 選択肢というのは常に規制緩和を進める手法でもあるわけです。この手法を協同組合に当てはめていいのかどうかというのは、関係者の意見をよく酌み尽くす必要があるんじゃないかというふうに思います。
 それから、次に木材安定供給特措法についてお聞きします。
 都道府県域を超える取引を木材安定供給確保事業計画の認定対象に追加をし、計画の策定主体に木質バイオマス利用事業者を加えることによって、大型製材工場や木質バイオマス利用事業者等が広域から木材を集荷しやすくし、木材の安定供給体制の構築を促進することとしています。
 バイオマス事業者の側からはこれはやりやすくなるというふうに思うんですけれども、大手のバイオマス発電事業者が燃やす原料として、本来は木材として利用できるものまで燃やす方に回ってしまわないかという懸念の声もあるんですね。この点にどう答えますか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 今回の木材安定供給特別措置法の改正は、近年、国内の各地で大量の木材を消費する大規模製材工場等の整備が進んでいる中で、地域によっては同一県内だけでなく県外からの木材を調達して安定供給することが求められている、そういうような状況になっている中で、同一県内の木材流通に対して特例措置を講じている現行の支援措置に加えまして、県外からの木材流通が増加している状況を踏まえ、新たに複数の都道府県にまたがる計画についての認定制度を創設し、それに応じた支援措置の拡充を行うことにより、木材の広域流通、安定供給を進めようというのが趣旨でございます。
 この特例措置に木質バイオマス発電用の燃料確保が除外されるわけではありませんけれども、午前中の審議の際にも御答弁させていただきましたけれども、木材の利用に当たりましては、製材、合板、集成材など、まず製品の原材料として利用され、最終的にエネルギー源として利用される多段階化利用、いわゆるカスケード利用とも呼ばれておりますけれども、そうした利用が森林資源を最大限に有効利用する基本であり、また木質バイオマスの原料はコスト的、値段的にも低いのが実態でありますので、輸送コストを抑える点でも製材工場等から可能な限り近い地域で確保することが望ましいと考えております。
 そのような考え方に基づき制度の運用を行うことによりまして、今先生から御懸念がありました、木材として十分に利用ができる丸太がまとまってバイオマス燃料として使われるような、そういう懸念が生じることのないように努めていきたいと考えております。

○紙智子君 それで、木質バイオマス発電の現状についてもお聞きしたいんですけれども、現在認定しているバイオマス発電の数、それに木材がどれだけ必要になるのかということについてお答えください。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) 木質バイオマス発電施設の整備の状況についてのお尋ねですけれども、まず、設備認定がなされているもの、特に未利用木材を使った木質バイオマス発電として設備認定しているものが五十八件ございまして、うち稼働しているものが二十五件でございます。
 それで、どのくらいのチップを使うのかというお尋ねですけれども、これなかなか、一つ一つの規模も違いますし、必ずしも未利用木材だけを燃料にしているということでもないので、算出の仕方が難しいんですけれども、例えば全てが出力五千キロワット級のものだということで仮定しまして考えますと、大体一つのバイオマス発電所に年間六万トン、一定の含水率で計算しますと約十万立方の材が必要になろうかと思います。それを五十八の、まだ設備認定をしているということで全てが稼働しているわけではありませんけれども、五十八の発電施設で全て五千キロワット級に必要となると仮定しますと、全体で約六百万立方の材が必要になるというような試算ができるかと思います。

○紙智子君 何度かこれ聞いていて、なかなか分かりづらくて、林野庁としてはそういうことなんですけれども、現在の国内生産量がどれぐらいで、そのうち未利用木材というのはどのぐらいかというのは、ちょっと端的に数字だけお答え願えますか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) 平成二十六年におきます国産材の供給量は約二千四百万立方でございます。このほかに、林内に未利用のものとして残置されているようなものが年間約二千万立方あると推計されております。

○紙智子君 それで、木質バイオマス発電、発電に必要な木材というのは四千万立方に上ると。現在の日本の生産量の二千四百万立方、先ほど言われましたけれども、と比べても二倍近くになっていると。そうすると、従来製紙用に使われていたものの一部がバイオマス発電の燃料に転用されるなどの問題も生じているという指摘があるんです。
 大臣にお聞きしますけれども、林野庁は発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインというのを出していますよね。間伐材等で未利用のものが大量に発生している一方で、既に相当部分が製材や合板や木質ボード、製紙用に供されていることから、既存利用に影響を及ぼさないように適切に配慮していく必要があるというふうに出しているんですけれども、こうしたガイドラインを出したのはなぜですか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 固定価格買取り制度、平成二十四年にスタートしておりますけれども、そのスタートに当たりまして、木質バイオマスにつきましては、同じ木材であっても未利用間伐材や製材の端材など、木材の由来によって電気の買取り価格が異なる、さらに、木質資源につきましては、バイオマス利用だけではなくて、製材、合板を始めとする既存の用途と競合するという面もあります。
 そのような特性を踏まえた上で、林野庁といたしましては、木材の供給者側に向けまして、発電利用に供する木質バイオマスの証明のためのガイドラインを策定し、一つは、木材の由来証明や分別管理の方法を定めるとともに、製材、合板、木質ボード、製紙用等の既存利用に影響を及ぼさないように適切に配慮することということを定めたところでございます。

○紙智子君 要するに、既存の利用に影響を及ぼさないようにするんですよということを促すために出したんだと思うんですよね。しかし、ガイドラインというのは、やっぱりあくまでもラインを示してここを守ってくださいというふうに自覚を促す程度のものなので、歯止めにはならないんじゃないでしょうか。
 それで、現場では、例えば大手のバイオマス事業者が山を丸ごと買いたいと言ってきている、大手の業者に囲い込まれて木を切られてしまわないのかという心配の声もそういう中で出ているわけですよ。やっぱり健全な山をつくるのが森林基本法の精神だと。健全な山をつくるんじゃなくて、木を切ることが先行してしまって逆に山を荒らすことになるんじゃないかと。この未利用材に限定した法律上の担保が必要だということを強く要求をしたいと思います。
 それから次に、国立研究開発法人森林総合研究所法についてお聞きします。
 水源地域や渓流域、急傾斜地などの地理的に条件が悪くて採算性が低い森林は、森林所有者等による手入れが進みにくく、公益的な機能の低下が懸念されているため、こうした資源を涵養するための森林の造成には公的な関与が必要です。
 今回、水源を涵養するための森林造成を附則から本則に位置付けるというふうに言いますけれども、こうした公共事業をなぜ独立行政法人がやらなければいけないんでしょうか。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 今御指摘のありました水源林造成事業ですけれども、これは、昭和三十一年から始まっておりまして、昭和三十一年から平成十一年までは森林開発公団が、平成十一年から平成十五年までは緑資源公団が、平成十五年から平成二十年までは緑資源機構が、そして平成二十年以降は森林総合研究所が実施を担ってきたところでございます。これは、水源林造成事業が民有林を対象とするものでありまして、行政機関である国が一切の森林経営を行うのは不経済であるというふうに考えられますのと、もう一つは、造林地の所有者等と共同で能率よく事業実行上の問題を解決しながら経営をしていく必要があるというような理由から、国ではなく、これらの公的な法人が実施主体となってきたところでございます。

○紙智子君 本来、水源林の涵養などの公共事業は、やっぱり国の責任を果たす、国の責任においてやるべきじゃないかと。ある県の担当者が今回見て、緑資源機構の事業を法的に明確にしただけだと思うという感想を言っているんですけれども、廃止した機構の看板を付け替えて復活するようなものになってもまずいんじゃないかと。独法の研究機関に公共事業もやらせるし、森林保険も独法ということになっているんですけれども、やらせているのでは林野庁そのもののやっぱり存在否定になるんじゃないのかというふうにも思うわけです。
 一括法についていろいろ出ている問題に即して聞いてきたわけですけれども、改正案で山の整備が促進をされて森林経営が安定するのかどうか、国産材の需要拡大が前進するのかどうか、森林の多面的な機能や吸収源対策に役立つのかどうかという点では、今言ったような疑念というのはなかなか解消されないというように思います。
 次になんですけれども、林業の持続的かつ健全な発展並びに林産物の供給及び利用を図る上で、TPPなど自由化の問題というのは避けて通ることはできません。
 そこで、林業の動向なんですけれども、日本の林業産出額は一九八〇年の約一兆二千億円がピークになっていて、このうち、木材生産の産出額は、一九八〇年の約一兆円から近年は約二千億円まで減少しています。価格なんですけれども、杉の素材価格、これは一九八〇年は一立方メートル当たり三万九千六百円だったのが二〇一三年には一万一千五百円に下がっています。杉の山元立木価格というのは、一九八〇年のときには二万二千七百七円だったのが二〇一三年には二千四百六十五円と激減しているわけです。
 この素材価格とか山元の立木価格がなぜ減少したのかということについてお答え願います。

○政府参考人(林野庁長官 今井敏君) お答えいたします。
 我が国におけます杉、ヒノキの山元立木価格と素材価格についてですけれども、高度経済成長期以降上昇傾向で推移してきたものの、昭和五十五年をピークに長期的に下落傾向で推移しております。
 こうした価格の動向につきましては、高度経済成長期の時点におきましては、国内の森林資源の多くは保育段階にあり、我が国で施工される木造軸組み住宅の柱や、はりに用いられる役物の需要に十分応えられる状況になかったこと、あるいは、昭和五十年代後半から、ツーバイフォー工法の普及など住宅建築様式の変化によりまして役物の需要が減少し、より安価な木材の需要が増加したこと、さらには、プラザ合意を契機とした円高の進展等によりまして、我が国の消費者、実需者が輸入製品を利用することが多くなったこと、こういったことが価格の長期下落の背景にあるものと認識しております。

○紙智子君 林業産出額全体で見ると、栽培キノコというのは増えているんですよね。
 それで、林業経営の状況なんですけれども、杉人工林において、五十年生までの造林及び保育に掛かる経費というのは、二〇〇八年、平成二十年度でいいますと、一ヘクタール当たり約二百三十一万円だと、経費は二百三十一万円と。一方、五十年生で主伐を行った場合の木材の販売収入は、二〇一二年の丸太価格に基づいて試算しますと、一ヘクタール当たりで約百三十一万円です、これ白書に書いてありますけれども。つまり、木材を育てる育林経費は二百三十一万円掛かるのに百三十一万円でしか売れない、だから林家の大半が林業以外で生計立てなきゃいけないという状況になっているんだと思うんです。
 そこで、TPPについてなんですけれども、昨年TPPの大筋合意を受けて、和歌山県に実は林業調査に行ってきました。ある森林組合は、今の木材価格は再び苗を植えて再生産することはできないんだと。和歌山県の統計によりますと、杉の山元立木の価格は十年間で半分以下、一九七五年の十分の一に落ち込んでいる、全国平均を下回る水準だというふうに言われました。林業で生活が成り立たないのは、一九六〇年代に木材を全面的に輸入自由化して外材に依存するようになったからだと、日本の木材輸入量は依然として木材総需要量の七割以上を占めていて、その九割は製品になっているというふうに言われました。
 木材を自由化して外材に依存したということが林業経営を困難にしたんではないですか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) お答え申し上げます。
 戦後の経済復興に伴い木材需要が急増する中で、木材の輸入自由化と関税引下げが段階的に進められてきた結果、現在の木材の関税率は、製材で〇%から六%、合板で六%から一〇%となったところであります。
 国内森林資源は、輸入自由化を行った高度経済成長期においてはその多くはまだ利用期に達しておらず、外材により国内の木材需要を満たしてきたところであります。その後、我が国の森林経営は概して厳しい状況に置かれてきていると認識をしております。
 その背景としては、安い外材製品による大壁法やツーバイフォー工法の住宅の普及等により安価な並材の需要が増加し、国産木材の価格が低下したことが指摘される一方で、経済成長に伴いまして人件費や資材費等の経営コストが上昇して林業の採算性が悪化したこと、経済構造等の変化により山林における過疎化や高齢化が進行し、林業の担い手が減少したといった諸情勢の変化があったものと考えております。

○紙智子君 今指摘した点、そしてお答えになった点というのは白書の中でも認めているところだと思うんですよ。
 それで、TPPの合意内容ですけれども、マレーシア産の熱帯木材合板、それから広葉樹の合板は、現在の関税が六%から一〇%あるわけです、残っているわけですけれども、発効時は三%から五%に下がり、十六年目には完全に撤廃ということですよね。それから、合板は製造された国が原産国になるので、マレーシアがTPPに参加していない国から原材料の丸太を輸入して合板を製造した場合はマレーシア産ということになるということでもあります。それから、カナダ産のSPFの製材は、針葉樹の合板などなんですけれども、現行は四・八から六%なんですけれども、これが二・四%から三%に削減されて、十六年目には撤廃されると、ゼロになるということです。今注目されていますCLT、直交集成板ですけれども、これはその他の建築用木工品に含まれるようですけれども、九年目には完全撤廃だと。
 和歌山において、TPPで外国産の木製品が更に大量に入ってきたら国内の原木価格に影響をもたらすことは必至だというふうに言っていました。TPPは林業経営の意欲をそいで、山村地域の荒廃が広がることになるんじゃないかというふうに思うんですけど、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 林産物につきましては現在の関税率が一〇%以下となっている中で、今回のTPP交渉の結果、合板、製材等については長期の関税撤廃期間の設定やセーフガードを確保することができたところであります。したがいまして、TPP合意による国内林産物への影響は限定的と見込まれ、その原料となる丸太生産への影響も限定的であると見込まれるところであります。
 他方、林産物については、長期的には国産材価格の下落も懸念をされることから、政策大綱に基づきまして、合板、製材の生産コストの低減等により国際競争力を強化をしていくために、大規模、効率化の加工施設の整備、原料供給のための間伐、路網整備など、川上から川下に至る体質強化対策を講じていくこととしております。
 このように交渉で獲得した措置に加えまして、体質強化対策による生産コストの低減により採算性が確保され、合板等、国内生産量が維持されると見込んでいるところでございます。
 今後とも、政策大綱に基づく施策を着実に推進することで地域材の競争力強化を通じた林業の成長産業化を実現をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 現在の森林・林業基本計画は平成三十二年における木材自給率を五〇%以上としています。TPPが発効しますと、この目標の達成が困難になるんじゃないでしょうか、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 戦後造成をされました人工林が本格的な利用期を迎える中、近年の国産材の供給量は増加傾向で推移しておりまして、平成十四年に一八%だった木材自給率は平成二十六年には三〇%台に回復したところであります。農林水産省としては、このような明るい兆しを捉え、林業の成長産業化を早期に実現をしていく考えであります。
 先般、林政審議会から答申のあった森林・林業基本計画案では、十年後、平成三十七年の木材総需要量を七千九百万立方メートルと見通す中で、国産材の供給量の目標を四千万立方メートルとすることとしており、この目標が達成された場合には木材の自給率は五〇%を超えることとなります。
 引き続き、CLT等新たな木材需要の創出や国産材の安定供給体制の構築など、川上から川下までの施策を総合的に推進をし、次期森林・林業基本計画に掲げる目標を達成できるように最大限努力をしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 今大臣は計画どおりやったら五〇%になるんだという話をされたんですが、しかし今検討している計画案、これは自給率目標を見直して四〇%に引き下げることを検討しているんですけど、いや、本当にそれでいいのかというふうに思うんですよ。
 自由化で影響があったわけですから、やっぱり自由化そのものを見直すべきだというふうに思うんです。私は、自由化が日本の森林に与えた影響というのは、非常に重大な影響があったということで検証済みだというふうに思うんですよ。大体、森林関係の方々に会うとみんな、今回、農業でも二の舞を踏むなと、我々は既に経験しているという話はされるわけであります。
 林業白書は、輸入が自由化されて国産材の供給は減少し、山村の過疎化や高齢化なども相まって林業生産活動は低迷したと書いているわけですね。それから、木材産業の体制整備及び国産材の利用拡大に向けた基本方針、これは、昭和三十年代の木材輸入の段階的な自由化を経て、国産材需要の大宗を占める製材用材について国産材のシェアが徐々に低下したと。要因としては、外材の輸入と、それから昭和六十年のプラザ合意以降の円高を背景とした輸入量の拡大ということを挙げているわけです。
 キーワードは、だから自由化ということです。自由化したことが今回の林業経営を困難にしたということではないかと思うんですけれども、一言で、大臣。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) いろんな考え方があると思いますけれども、紙委員の考え方は一つの考え方であろうと思いますが、ただ、戦後の非常に需要期のときに木材がなくて住宅をどうするかという大きな課題もあり、そういうことをどう克服していくかということでの政策の選択であったんだろうなというふうに思っております。
 今現在考えてみますと、そのときそのときの政策の判断というのは、やはりいろんなことを考えての政策判断であったろうと思いますので、我々としては、今回はTPPに参加をさせていただくということの判断をさせていただくことが日本の将来のために、また林業の発展のためにもいい結果を招くのではないかと、そう思っているところであります。

○委員長(若林健太君) 紙君、時間が来ましたので。

○紙智子君 ちょっともう時間になりましたので、僅かに残った関税まで撤廃する必要はないじゃないかというふうに思います。国会決議は、国内の温暖化対策や木材自給率向上のために、森林整備に不可欠な合板、製材の関税に最大限配慮するというふうにあります。即時撤廃される品目の影響を含めて説明がされていないということでは、この後しっかりまた追及していきたいと思います。
 以上で終わります。