<第190回国会 2016年4月13日 東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会>


原発事故に伴う自主避難者への住宅の無償提供打ち切り方針の撤廃を/国の無策は重大

○東日本大震災復興の基本施策に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東日本大震災原発事故から五年が経過しました。東京電力福島第一原発の事故で避難を余儀なくされた方は、五年たった今も多くの悩みを抱えながら生活をされています。
 今日、原発事故に伴う自主避難者の住まいの問題について質問します。
 福島原発事故に伴う自主避難者は、例えば母親と子供を遠方に避難をさせて夫は福島に残るというような二重生活をされている世帯の方が多くいらっしゃいます。自主避難者の人数や現在の生活実態について把握されているでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 自主避難者の人数、生活実態ということでございます。
 福島県の推計によりますと、避難指示区域外から自主的に避難されている方は約一万八千人と承知をいたしております。
 また、避難されている方々の置かれている状況はそれぞれの方によって様々だと認識をいたしておりまして、これまで、県外自主避難者等への情報支援事業における説明会、交流会、あるいは支援団体が実施する意見交換会などに復興庁として計百六十回以上にわたって出席をいたしまして、現在の生活の状況や御意見、御要望を直接お聞きしてきたところでございますが、そのような機会を通じて、例えば家族全員で避難されている方、また、先ほど委員が御指摘いただきましたけれども、母子のみで避難されている方、あるいは避難先での定住を考えている方やいまだ今後の住まいについて決められていない方、あるいは避難先で仕事を見付けている方や就職先に悩まれている方、そうした様々な状況にあるという声をお聞きをいたしております。
 このような個別の事情をお聞きしながら丁寧に対応していくことが重要であると考えておりまして、今後とも様々な機会を捉えてお話をお伺いしてまいりたいと考えております。

○紙智子君 自主避難者、今一万八千人というふうにおっしゃられたんですけど、私どもの自治体で活動している議員などが、含めて三万人という話もあります。
 それで、子ども・被災者支援議員連盟で、この聞き取りですとか、あるいは札幌などで自主避難者からお話を聞いてきましたけれども、この避難世帯の支出、これが避難前に比べると月に約十万円増加したという話もあります。それからまた、仮設住宅の提供は一年単位で延長されてきたんだけれども、学校にしても今働いている職場にしても、一年単位というふうに言われても、生活は一年単位で考えることではないという声も出されるわけです。
 それで、子ども・被災者支援法では、「国の責務」として、「被災者生活支援等施策を総合的に策定し、及び実施する責務を有する。」というふうにしているわけです。実態を把握しなければ、やはり総合的な対策が打ち出せないんじゃないかというふうに思うわけですね。
 福島県は、仮設住宅の入居について、避難指示区域及び津波被災地の特定延長を除き二〇一七年の三月末で提供を打ち切るというふうに言っているわけです。自主避難者は仮設住宅の提供の打切りをどのように受け止めているでしょうか。自主避難している方がこの仮設住宅提供の打切りをどのように受け止めておられるかということですが。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 平成二十九年三月で仮設住宅の供与を終えて新たな支援策に移っていくという福島県の方針に対して、避難者それぞれの状況によって様々なお考えをお持ちの方がいらっしゃるというふうに認識をいたしております。
 例えば経済的負担に対して不安をお持ちの方もいらっしゃると思いますし、あるいはまた子供に転校を強いることになるのではないかとの不安をお持ちの方もいらっしゃる、あるいはまたこれを機に福島県への帰還や避難先での定住を決断される方などがいらっしゃるのではないかというふうに考えております。

○紙智子君 自主避難者で仮設住宅の無償提供の継続を求めている方というのはどれぐらいいらっしゃいますでしょうか。

○副大臣(復興副大臣 若松謙維君) 済みません、質問通告をしていただいたでしょうか。
 ちょっと今手元に具体的な情報ございませんので、また後日御報告させていただきたいと思います。

○紙智子君 自主避難者に関わってのことは通告をしております。
 それで、具体的にやっぱりつかむべきだと。母子で避難している方は、子供は小学生だから義務教育が終わるまでは避難先で生活したい、住宅の無償提供を続けてほしい、こういうふうにおっしゃっているわけですし、ある方は、避難先のアパート代は約六万円だと、無償提供が打ち切られたらダブルワークをしなければいけなくなるというふうに言っていますし、子ども・被災者支援議連の会議のときに招いた被災者の方も、家計調査を行ったが、福島で暮らしていた当時よりも七万円から十万円も出費がかさむと、住宅の無償提供を打ち切られたら生活できなくなりますというふうに言われているわけです。それから、激変緩和策なども説明されているんだけれども、一番必要とされる低所得の母子世帯に届かないんじゃないかという不安も出されています。
 住宅の無償提供というのは最大の支援になるんじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) まず、先ほど若松副大臣の答弁に関して通告がないと、委員からは自主避難者については通告をしているということでございますけれども、先ほどのことのお答えに関しましては、その避難指示区域以外の地域からの避難者につきましては、それが地震又は津波による避難なのか、あるいは原発事故を契機とした避難か、個人の意思を網羅的に確認することが困難でありまして、全てを把握することは困難であるというふうに認識をいたしております。他方、これまでも様々な形で避難者の状況、御意見、要望をお聞きしているところでございまして、今後とも個別の事情をお聞きしながら丁寧に対応していくことが大事だというふうに思っております。
 また、先ほど、後の質問でございますけれども、経済的な負担等についてのお話でございますが、個々人の不安やあるいは困っていることは様々でございまして、具体的にお聞きしながら個別に対応していくことが重要だというふうに考えております。福島県において、住まいに関する意向調査やその後の個別訪問を通じて、避難者の個別具体の状況に応じて支援を行うものと考えております。
 復興庁といたしましても、福島県の総合的な支援策が円滑に進むよう、被災者総合交付金を活用して、県内外の避難者への相談支援や情報提供、あるいはコミュニティー形成支援などを後押ししていきたいと考えております。こうした取組を通じて、避難者の方々が安心して生活を営むことができるよう支援してまいりたいと考えております。

○紙智子君 今、最後に質問したのは、住宅の無償提供が最大の支援だと、やっぱりそれを切られたら困るという、こういうことになるんじゃないか、最大の支援じゃないかというふうに聞いたんです。その御認識についてお願いします。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 福島県が総合的な支援策をもって避難者の方々が安心して生活を営むようなことができるように支援してまいりたいと考えているところでございます。

○紙智子君 私は、福島県がやるのはもちろんやっていますけれども、国としてということを言いたいわけですよ。東京災害支援ネットが全国の広域避難者を対象にして二〇一四年の夏に実施した実態調査なんですけれども、それによりますと、避難世帯の七三%が生活費用にあえいでいる、負担が増えていることにあえいでいると、その平均増加額が月に七万九千四百七十円だというんですから約八万ぐらいだと。多くの支援団体はこういう調査をしているのに、政府としては全く把握しない、県がという話になるわけで、これでは本当に責任を果たしていると言えないんじゃないかと思うわけです。
 それで、もう一つなんですけれども、災害救助法で応急仮設住宅の供与は最長で二年三か月と。二年三か月もたてば一般的な恒久住宅の建設が可能だという理由からです。それからまた、特定災害特別措置法で一年を超えない期間ごとに延長が可能だということです。延長期間の定めは、しかしないと。このことを私はもっと自主避難者に情報として発信すべきではないかと思うわけですね。
 それから、みなし仮設住宅は建築基準法の基準を満たす通常の建物ですから、供与期間の二年三か月以上これは住み続けられる。仮設は無理ですけれども、みなし仮設について言えば二年三か月以上住み続けることは可能なわけです。
 自主避難者の要望に応えて、やっぱりこれ国がリーダーシップを発揮して特定災害特別措置法で応急仮設住宅の期限を延長すべきではありませんか。

○副大臣(内閣府副大臣 松本文明君) 先生御指摘のとおり、災害救助法における応急仮設住宅の提供については原則二年となっております。そして、一年を超えない範囲で延長が可能となっているところであります。
 この延長協議というのは、救助の実施主体であります都道府県知事から国が協議を受けて、国が同意を行うという制度となっておりまして、これまでの延長協議におきましても、福島県において避難者の意向調査、市町村を訪問しての意見聴取等が行われ、その上で検討されたものと承知をしているところであります。

○紙智子君 福島の判断なんだということだと思うんですけどね。
 そこで、ちょっと防災副大臣と復興大臣にもお聞きしたいんですけれども、福島原発事故による放射性物質による被害というのは二年三か月で収まるというふうにお考えでしょうか。

○副大臣(内閣府副大臣 松本文明君) 二年三か月で収まるかどうかということでありますが、到底収まることは難しい。したがって、五年間、今日まで延長を重ねてきた、そういうふうに承知をしているところでありますが、東日本大震災においては災害救助法に基づく応急仮設住宅の提供をしてきておりまして、福島県においては昨年六月に既に平成二十九年三月までの一律延長を決定をしているところであります。
 平成二十九年四月以降の応急仮設住宅の延長の可否につきましては、福島県において復興復旧状況等を見据えながら今後判断をされるものと、こう考えておりまして、国は、これまで同様、災害救助法に基づく救助の一環として福島県の意見をしっかりいただきながら適切に対応してまいります。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 先ほど来申し上げておりますけれども、避難指示区域外からの避難者に対する平成二十九年四月以降の支援策につきまして、昨年十二月末、福島県が帰還・生活再建に向けた総合的な支援策を公表して、住宅の確保も含めて帰還や生活再建に向けた支援に移行するものと承知をいたしております。それを受けて、国としては、このような県の判断を踏まえて県の総合的な支援策が円滑に進むように、被災者支援総合交付金を活用いたしまして県内外の避難者への相談支援や情報提供、コミュニティー形成支援などを後押ししていきたいと考えております。
 また、住宅確保に関してでございますけれども、雇用促進住宅での受入れを関係団体に協力要請し、住宅の一部提供が行われることとなっているほか、国土交通省とも連携しながら公営住宅への入居円滑化の支援を行っておりまして、選択肢の一つとして本措置も御活用いただきたいと考えております。
 こうした取組を通じて避難者の方々が安心して生活を営むことができるように支援してまいりたいと考えております。

○紙智子君 防災副大臣は、今私が聞いた二年三か月で放射性物質の影響というのは収まると思いますかといったら、収まると思っていなかった、だから五年延長したという話があったんですけど、今、高木大臣はお答えになっていなかったんですけど、二年三か月でこれは収まるというふうに思っていたわけですか。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) ですから、いろんな形で自主避難者に対しても住宅等、あるいはほかの政策に関してもいろいろと対策を県も講じるし、あるいはまた、それに対しても国としても支援をしていくというふうにお答えをいたしております。

○紙智子君 ですからということは、収まらないんじゃないかという認識があったということですかね、そう捉えてよろしいんでしょうか。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 繰り返しになりますが、しっかりとこれからも自主避難者、様々な形で生活をなさっていくわけでありますけれども、そうした方に県としてもあるいは国としても支援をしていくということでございます。

○紙智子君 聞いていることに直接答えられないんですけど。
 要するに、福島原発事故の直後、セシウム134の半減期は二年だと、137の半減期は三十年という、これは常識だったわけですよ。みんなそのことを分かっていたわけですよ。二年三か月で放射性物質による被害が収まるというふうに考えていたのかどうかということの、こういうことでいえば、大体みんなそういうことを分かっているわけですよ。
 災害救助法で仮設住宅を提供するのは必要なわけですよね、これはもちろん、延長も大事なわけだけれども。しかし、放射性物質による被害というのは二年三か月で収まらないというのが常識だったわけで、それなのに住宅の問題をこの災害救助法で対応し続けてきたというところに私、無理があったんじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。──防災担当にしてください。

○副大臣(内閣府副大臣 松本文明君) 先生、無理があったかどうかということでありますけれども、一年間延長できるという制度を使いまして今日まで延長を続けてきている。そういう意味では、住宅を提供するという一義的な使命は果たされている。そこに暮らす人たちの生活支援をいかにしていくかということについてはまた別の課題と、こう受け止めております。

○紙智子君 災害救助法で仮設住宅提供していくというのは、これは必要なことですよ。
 この応急仮設住宅の提供期限がなぜ二年三か月なのかと。これ、平成二十六年版の災害救助の運用と実務というところに、大規模な災害を除けば二年三か月の間に一般的な恒久住宅の建設が可能であることが、考慮の上で定めたというふうに解説しているわけですね。福島原発事故に伴う放射性物質による被害はまさに大規模な災害ですから、そこを除けばというところに入るわけですよ。
 こういう状況が分かっていたのに、集中復興期間の総括をまともに行わなかったんじゃないですか。子ども・被災者支援議連の要望もまともに聞かず、福島県に対応を任せてしまっていると。そういう意味では国の責任は大きいんじゃありませんか、復興大臣。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 先ほど来放射能の話が出ておりますけれども、影響のあるところはいわゆる避難指示が出ている、そして、そうでないところは解除をしていくということでもありますし、自主避難という考え方もそれぞれあるわけで尊重しなきゃならないと思いますけれども、国としては避難指示区域等で区分けをしているというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 私は、政府の責任は大きいと思うんですよね。
 政府の原子力災害対策本部は、昨年六月十二日に、避難指示解除準備区域、居住制限区域については、二〇一七年の三月までに避難指示を解除する方針を、方向を出したわけです。これに合わせるかのように、福島県は六月十五日に、二〇一七年四月以降、災害救助法に基づく応急救助から新たな支援策に移行するというふうに発表したわけですね。避難指示が解除されれば、これ災害救助法の対象にならないのは明らかなわけですよ。自主避難者を置き去りにした決定だと思います。
 放射能による被害というのは応急仮設住宅の供与期間内に収まらないことが分かっていながら、まともに総括も対策も打ち出さなかった国の責任は私は重大だと思います。復興を加速することは被災者を置き去りにすることでは決してないと。今からでも遅くはないと思いますので、直ちに自主避難者の意見を聞いて、よく聞き取って、引き続いて安心して住宅が確保できるように対策を打つべきではありませんか。

○国務大臣(復興大臣 高木毅君) 私ども、先ほど来、自主避難者に対してもいろいろな意向調査などをお聞きする、あるいは個別訪問などもさせていただいて丁寧に対応させていただく予定であるということは申し上げているところでございます。

○紙智子君 時間になりました。
 福島原発事故の責任は国と東電に、これは責任は国と東電にあるわけです。避難指示を解除するというのであれば、国は自主避難者と災害救助法の後の対策についても協議すべきだし、それもやらずに一方的な仮設住宅の無償提供の打切り方針は撤回することを求めて、質問を終わります。