<第190回国会 2016年3月29日 財政金融委員会>


所得税法等一部改正案に対する反対討論

○所得税法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党を代表して、所得税法等改正案に対し、反対の討論を行います。
 反対理由の第一は、消費税の軽減税率の導入とともに、その前提である消費税一〇%の増税に反対だからです。消費税は逆進性を持った最悪の大衆課税です。応能負担の原則を壊し、格差拡大を進める消費税一〇%への増税には断固反対の立場です。
 政府は、八%への増税により家計消費が予想以上に落ち込み、景気を冷やしていることを認めました。失政の責任を認めるとともに、来年四月の消費税率引上げはきっぱり中止すべきです。軽減税率は導入によっても逆進性が緩和されることはなく、低所得者対策とはなっていません。
 さらに、インボイスの導入は、零細な中小企業や農林漁業者に膨大な実務負担を課すとともに、インボイスを発行できない免税事業者を取引からの排除へと追い込むものです。
 さらに、与党幹部の発言からも、軽減税率導入が税率一〇%から更に大幅に引き上げていくための条件づくりだということも明らかになりました。
 反対理由の第二は、安倍政権の進める法人税改革が、経団連の要求を丸のみし、大企業優遇を一層拡大するものだからです。
 本案は、法人実効税率を二〇%台に引き下げる一方、財源確保のため課税ベースを拡大するとしています。しかし、最大の租税特別措置である研究開発税制に対しては、大幅縮減を求める政府税調の意見さえ無視し、減税の恩恵が大企業に集中する状況には手が付けられていません。
 その一方、地方税の法人事業税の外形標準課税を拡大し、赤字や業績悪化で苦しむ多数の中堅企業に増税を押し付けました。課税の応能負担原則に反するだけでなく、賃金の引下げ、地域経済への大きなダメージとなるものです。
 法人実効税率の引下げは、アジア並みの二五%を目指す経団連の意向に沿ったものです。安倍総理は、他国への影響はないと言いました。しかし、韓国では、安倍政権の法人税率引下げが競争上の圧力となって影響を与えている事実も明らかになりました。
 日本は、実効税率引下げをきっぱりと止め、減税競争を防ぐアジアとの協力、協調の道に進むべきです。
 改正法案には東日本大震災復興支援関連の税制など賛成する内容もありますが、総合的に判断し、反対とします。
 以上、反対討論といたします。

○委員長(大家敏志君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。これより採決に入ります。
 所得税法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(大家敏志君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、大久保君から発言を求められておりますので、これを許します。大久保勉君。

○大久保勉君 私は、ただいま可決されました所得税法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本のこころを大切にする党及び新党改革・無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    所得税法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。
  よって、政府は、本法の施行に当たり、次の事項の実現に万全を期すべきである。

 税制の公平性等を確保するため、租税特別措置の適用実態調査の結果に関する報告書を踏まえ、適用実績の把握と効果の検証を十分に行うとともに、効果が不明確なもの等は縮減・廃止するなど、租税特別措置の徹底した見直しを推進すること。
 法人税に関する議論を活発化させる観点から、今回の法人税改革も踏まえた実質的な法人税負担率の状況を明らかにするなど、大企業の納税実態の透明性の向上に努めること。
 車体課税については、車が地方での生活に欠かせないものとなっていることやユーザー負担の状況も踏まえ、税制抜本改革法第七条の趣旨等に沿って、安定的な財源を確保した上で、地方財政にも配慮しつつ、簡素化、負担の軽減及びグリーン化の観点から見直しを推進すること。
 本邦企業の活発なM&Aや企業再編などの事業活動に対して税制の一層の透明性を確保するため、米国型プライベートレタールーリング(事前照会制度)なども参考としつつ、実務に即した事前相談の充実に努めること。
 海外における日系企業の移転価格税制等の税制上のトラブルに対処するため、大使館等における支援体制の充実を図るとともに、相互協議の円滑な処理に資するよう、体制強化を行うこと。
 高水準で推移する申告件数及び滞納税額、経済取引の国際化・広域化・高度情報化による調査・徴収事務等の複雑・困難化に加え、税制改正による税制の複雑化、社会保障・税一体改革に伴う税制改正への対応などによる事務量の増大に鑑み、適正かつ公平な課税及び徴収の実現を図り、国の財政基盤である税の歳入を確保するため、国税職員の定員確保、職務の困難性・特殊性を適正に評価した給与水準の確保など処遇の改善、機構の充実及び職場環境の整備に特段の努力を払うこと。

   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(大家敏志君) ただいま大久保君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(大家敏志君) 多数と認めます。よって、大久保君提出の附帯決議案は多数をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。