<第190回国会 2016年3月29日 財政金融委員会>


学校給食用の脱脂粉乳は輸入から国産への置き換えを/インボイス(適格請求書)は農家に不安と混乱を招いている。消費税の増税中止を

○関税定率法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 関税定率法等の一部改正案について質問いたします。
 法改正では、給食に使用される脱脂粉乳に対する関税減税措置の対象に義務教育学校を追加することになっています。つまり、義務教育学校でも無税の脱脂粉乳の使用が認められるということになります。バランスの良い食事や栄養素を取ることは子供の発達にとっては欠かせませんから、地元で取れた新鮮な野菜や御飯やパンなどを食べさせたいということで、学校給食に地産地消をという動きが活発になっております。
 二〇一四年の脱脂粉乳の国内生産は約十二万トンということです。給食用輸入脱脂粉乳の無税枠が七千トンありますけれども、実際の需要は七百九十二トンと僅かです。それで、もっと国産の脱脂粉乳を使いたいと希望したときに、この供給体制あるいは供給量というのは整っているのでしょうか、まず農水省にお聞きいたします。

○政府参考人(農林水産省生産局畜産部長 大野高志君) お答え申し上げます。
 脱脂粉乳につきましては、学校給食においてパンの原料等に使用されているところでございますが、学校給食用の輸入脱脂粉乳につきましては、ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づきまして無税の関税割当てを行っているところでございます。
 今先生がおっしゃられましたように、学校給食において国産脱脂粉乳を利用するためには輸入品との価格差を考慮する必要がございますが、平成二十六年度におきまして、学校給食用の輸入量が千八百トンであるのに対しまして、我が国におきます生産量が十二万一千トンとなっております。このため、仮に学校給食において国産の脱脂粉乳の量が増加しても十分な対応が可能だと、こういうふうに考えているところでございます。

○紙智子君 第二次食育推進基本計画、文科省の、ありますけれども、この中で、学校給食における国産の食材を使用する割合を平成二十七年度までに八〇%以上とすることを目的に掲げているわけです。ですから、脱脂粉乳についても輸入は極力抑えて国産に置き換えるということが必要だと。
 今、あるんだというふうに言われたんですけれども、実際上はバター、脱脂粉乳の供給量は不足して、追加輸入ということもやられているわけです。ですから、やっぱり国産の脱脂粉乳を増産するという必要があるんだろうと思います。
 それで、国産の脱脂粉乳が不足するというのは、これは根本的に言えば、生産する家族農業が減っているという問題があると思うんですね。私の地元は北海道なんですけれども、北海道で見ますと、酪農家が毎年二百戸も離農する事態になっているわけです。ですから、生産基盤そのものが縮小しているということがあると。国民の皆さんは、安全な食料は是非日本の大地からというふうに期待しているわけです。
 食料を支えているのは家族農業ということですけれども、いつも私も生産現場に行きますと言われることは、規模拡大路線や大規模な法人には支援があるけれども、我々のような家族農業を応援する施策は一つもないんだということが言われるわけですね。家族経営が実感できるような財政的な支援あるいは制度の拡充など、是非財務省としても考えていただきたいなと思うんですけれども、これについて、麻生大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(財務大臣 麻生太郎君) 酪農について、国内の生産基盤そのものを強化していくのは極めて大事でありまして、家族農業、俺の妹もそういうところでやっていますからよく知っております。それが離農せざるを得ないという状態になるぐらいのことも、私も妹が嫁いでおりましたのでよく分かるところなんですが。
 いずれにいたしましても、二十七年度の補正予算と二十八年度の予算、この二年の予算において、いわゆる畜産のクラスター事業というので、あれ六百億ぐらい付いたと思いますが、搾乳ロボットなどの導入によって労働負担の軽減とかコスト削減の取組を支援ということにさせていただいております。また、経営安定支援のため加工原料乳の生産者への補給金というのを交付するといった政策を家族経営の酪農家も含めて広く手当てをさせていただいているところだと存じます。
 いずれにいたしましても、今後は生産基盤の強化というものにつきましては、これは家族経営も含めてしっかりと取り組んでいかねばならぬところだと思っております。

○紙智子君 今、大臣の認識として、やっぱり家族経営が大事だということで、そこも含めてしっかりやらなきゃいけないということを言われたので、是非予算的にもそこのところを御配慮いただきたいなというふうに思います。
 次になんですけれども、先ほど所得税法は採決をされ採択をされましたけれども、農家にとって重大な影響を与える軽減税率とインボイスについてお聞きしたいと思います。
 実は私、先日、農林水産委員会で、消費税率一〇%増税に伴う軽減税率と二〇二一年度から導入しようとしているインボイス制度に対して、これ農家に恩恵があるんでしょうかという質問をしたんです。そうしたら、農林水産省の答弁で、農業の観点では議論しておりませんというふうに答えが返ってきました。大臣、そういうことなんでしょうか。

○国務大臣(財務大臣 麻生太郎君) インボイス制度の導入後ということで、いわゆる農業の場合、免税事業者の方が多いと思われますから、免税事業者の仕入れに対しましては仕入れ税額控除ができないということになりますので、いわゆる免税事業者との取引で、免税事業者が排除されるのではないか、取引から、いわゆる課税事業者と免税事業者とを分けて、排除される、インボイスが出せないからということなんだという、そういう懸念の声があるということはよく承知しておりますが。
 農家の場合は、これは大体、通常ですと、小さな農家ですと農協を通じて生産物を販売するというのが一般的だと思いますが、農協はどの農家が生産したものかというのは全く区別することはなくて、農産物をまとめて販売しておられますので、そういうことを踏まえますと、農協が発行いたしますいわゆる請求書等、いわゆるインボイスですけれども、これの保存があれば、いわゆる買手、それを買う人の側から見ますと、これは仕入れ税額控除ができるということにいたしておるところであります。
 さらに、申し上げさせていただければ、免税事業者への影響はこれは様々だと思いますが、納入先の事業者がいわゆる簡易課税を適用している場合には、この納入先業者にはインボイスなしでいわゆる仕入れ税額控除ができますので、免税事業者が取引を排除されるということはありません。例えば農業でしたら、地場のレストランとか、何でしょうね、小規模のスーパーとかいろいろあろうかと思いますけれども、そういった地元の農家から仕入れる場合などは今申し上げた例に当たるかなとは思いますけれども、そういったことで排除されるということは通常考えられないと思っております。
 また、免税事業者が課税選択というのを行う場合があろうかと思いますが、これは、簡易課税の利用によって事務負担というのはかなり軽減されるということも、これは十分に可能と思います。
 免税事業者に対して、こうした事情も、私のところにもいろいろ質問をいただくことがよくありますので、課税事業者への転換の方がいいんですかとかやらない方がいいんですかと言うから、それは相手をよく見ろと。どこに売っているのかもまず我々には分からぬからという話をして、是非そういった意味ではしっかりと準備できるようにすることが大事なのであって、我々といたしましては、インボイス制度の導入から、まず最初に四年間という準備期間があろうかと思いますので、その先、インボイス制度の導入から更に六年間は免税事業者からの仕入れについては一定の仕入れ税額控除を認めるということにしておりますので、この間、そういう心配をされる事業者の方々への対応、説明というものをしっかり掛けてやっていかねばと思っております。

○紙智子君 これから聞こうかなと思うところも含めて今返答いただいているんですけれども、要は、いろいろ質問もされる、それからいろんなケースが考えられるということでは、十分まだ整っていない部分もたくさんあるんだというふうに思うんですね。解決できないままやってしまっているということでいえば、私はやっぱりちょっと拙速にこの軽減税率導入を決めたんじゃないのかなというふうに思うんですよね。
 それで、実は農林水産委員会のやり取りを日本農業新聞が書いたわけです。書いて、この軽減税率とインボイスというのが農業の現場で大変大きな不安とそれから混乱を引き起こしているということでもあるし、だから関心もすごい高まっているということなんですけれども。
 一つは、来年四月から消費税率が八%から一〇%に二%増税になるということになると、価格に転嫁できないために農家の手取りが減るという問題があると。飼料や肥料やこん包するための材料や、それから水道光熱費や、仕入れに掛かる消費税率が今までの八%から一〇%に上がるということですよね。
 加えて言えば、現在円安が進んでいるということで、飼料を始め農業に必要な資材の多くが外国からの輸入ということなので、農家の生産コストというのは高くなって、急騰してきているわけです。一方では、農家は販売価格を自分で決められないということがあるので、出荷の方でいえば、飼料用のお米とか観賞用の花とかは一〇%だと、それから飲食料品は八%だと。仕入れに掛かった消費税の増税分を価格に転嫁できる保証がないということで、農家の手取りを減少させることになるというのが一つ大きな問題としてはあるわけです。
 それからもう一つは、インボイスを発行できない農家、大臣も今言われたんですけれども、インボイスを発行できない農家というのは商品取引から排除される可能性があると。それで、農業者のうちの九割を占める農家、百五十五万戸が消費税の免税事業者なんですよね。別に好きこのんで免税業者になっているわけではなくて、農業でもうけを上げるというのは、そもそも大変な、簡単なことではないわけです。頑張っても一千万以上の売上げが得られないというのが実情だということですよね。
 そこで、例えばスーパーなどの小売業者や食品製造会社やレストランなどの外食産業、道の駅、直売所などが消費税の仕入れ税額控除を行いたいけれども、免税事業者はインボイスが発行されないということになるので、インボイスを発行する課税業者に取引を変えようということになると。つまり、免税事業者が商品取引から排除される可能性もあるということで、そういった問題が今現場では、どうするんだということになっているわけです。
 この辺のところは大臣もお認めになるということでしょうか。

○国務大臣(財務大臣 麻生太郎君) 消費税の引上げによって、免税事業者である農家については、仕入れ税額が増える、先ほど言われました一〇%等々になった場合は、その増加分は、先ほど申しました、一番最初の基本中の基本ですけれども、消費税の仕組み上、これは価格に転嫁していくというのはこれは基本です。これは価格、できるとかできないとかいう話じゃなくて、するのが基本。これははっきりいたしておると思っております。
 したがいまして、中小業者、零細業者と言うべきか、そういった事業者の方々がそういったものを円滑かつ的確に転嫁できるように転嫁対策特別措置法という法律まで作っておりますので、これはしっかり転嫁対策に取り組んで我々もまいりたいと思いますけれども、今おっしゃられたようなことごとに関しましては、スーパーというのは、大きなスーパーであれば間違いなく農協を通していると思いますので、そういったところだと今の問題は解決できるはずですし、小さな、一軒だけでやっているスーパーとかレストランとかいうことですと、今先ほど申し上げた例で対応できると存じます。

○紙智子君 農水委員会でも、JAを通せば大体大丈夫だと言うんだけれども、大体JAを通さないところも結構あるんですよ。例えば三割ぐらいあると考えたら、大体戸数にすると四十数万戸ぐらいの農家はそこに入らないことになると、非常に大きな影響を受けるということがあるんですね。
 最後にちょっともう一点お聞きしたいのは、税の三原則ということで、公平、中立、簡素というのがありますけれども、このことは財務省のホームページにも載っているわけですけれども、この中で、簡素というところの意味するところはどういうことなのかなというふうに思って、ちょっと時間がもうそろそろなので続けて言いますけれども、軽減税率が導入されることによって取引に複数の税率が持ち込まれるわけです。先ほど、米農家の話であれば、食用の米は税率八%、飼料米であると税率一〇%。経理が複雑になる、煩雑になるということがあります。仕入れと出荷、出荷だけでも税率が異なるので、インボイスが入るとますますこの事務負担が増大すると。
 このことというのは、税の三原則が求める簡素に反するんじゃないのかなというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○委員長(大家敏志君) 簡潔に答弁を。

○国務大臣(財務大臣 麻生太郎君) 簡潔。これは簡潔はほとんど無理です。改めてまた御答弁申し上げます、とても時間がないんでしょうから、これちょっと簡単にはいきませんですから。こういう御質問をされるときは、あらかじめ時間のある最初のうちに質問していただくとお答えしやすいと思いましたが。

○紙智子君 いずれにしても、非常に複雑になるということでは……

○委員長(大家敏志君) おまとめください。

○紙智子君 こういう軽減税率とインボイスはやるべきじゃないということを申し上げて、質問を終わります。

○委員長(大家敏志君) ただいまから財政金融委員会を再開いたします。
 休憩前に引き続き、関税定率法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 関税定率法等の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(大家敏志君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。
 この際、大久保君から発言を求められておりますので、これを許します。大久保勉君。

○大久保勉君 私は、ただいま可決されました関税定率法等の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党、日本のこころを大切にする党及び新党改革・無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。
 案文を朗読いたします。

    関税定率法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)
  政府は、次の事項について、十分配慮すべきである。

 関税率の改正に当たっては、我が国の貿易をめぐる諸情勢を踏まえ、国民経済的な視点から国内産業、特に農林水産業及び中小企業に及ぼす影響を十分に配慮しつつ、調和のとれた対外経済関係の強化及び国民生活の安定・向上に寄与するよう努めること。
 日本企業から大型の技術流出事案が相次ぐ中、営業秘密を保護し我が国産業の国際競争力を強化する観点から、経済産業省等の関係省庁との連携及び情報共有を強化しつつ、一層厳格な水際取締りを行うこと。
 最近におけるグローバル化の進展等に伴い、税関業務が増大し、複雑化する中で、適正かつ迅速な税関業務の実現を図り、また、覚醒剤等不正薬物・銃器を始めとした社会悪物品等の国内持込みの阻止など水際におけるテロ・治安維持対策の遂行により、国民の安心・安全を確保するため、取締検査機器等の整備に努めるとともに、高度な専門性を要する職務に従事する税関職員の定員の確保、処遇改善、機構の充実及び職場環境の整備等に特段の努力を払うこと。

   右決議する。
 以上でございます。
 何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。

○委員長(大家敏志君) ただいま大久保君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。
 本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(大家敏志君) 全会一致と認めます。よって、大久保勉君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。