<第190回国会 2016年3月10日 農林水産委員会>


東日本大震災から5年、農林漁業再生策求める/TPP影響試算/調製品が与える見解を、何故、変えたのか

○平成2016年度の農林水産行政の基本施策に関する件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 明日三月十一日は、東日本大震災、原発事故から五年目を迎えます。震災で亡くなられた方に改めてお見舞いを申し上げるとともに、復旧復興のために日々奮闘されている関係者の皆さんに心から敬意を申し上げたいと思います。
 まず、農業についてお聞きします。
 津波で大きな被害が発生した仙台市の東部、あるいは冠水で大きな被害を受けた特産イチゴの「もういっこ」という、もう一個食べたくなるから「もういっこ」という命名をしたという亘理町、それから、放射能汚染で肉牛を出荷できなくなった奥州市とかいうところで農家の皆さんの苦しみにも接してきましたし、復旧事業が終わって作付けの喜びを本当に語っておられる農家の方にも接してきました。それから、福島原発事故によって大きな被害を受けた福島では、人類が経験したこともない本当に困難な中で農業の再建に取り組む農業関係者の方の努力も見てきました。
大臣は、所信で、東日本大震災からの復興は安倍内閣の最重要課題です、私も復興大臣であるとの覚悟の下、将来を見据えた農林水産業の復興に取り組みますと述べられました。
 復旧復興の現状をつかんで農林漁業者に寄り添い、従来の枠にとらわれない支援が政治に求められているというふうに思うんですけれども、ちょっと通告していなかったんですけれども、まず大臣の御認識を伺いたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 被災地を訪れますたびに、やはり福島ではまだ特別なことを感じますし、また宮城にいたしましても岩手にいたしましても、いろんな地域で想像に絶する被害だったんだなというふうに思っております。
 農地の復旧につきましても随分進んでまいりましたし、また漁港の整備についても幾らか進んでまいりましたけれども、ここに戻ってきていただいて再生産にどう励んでいただけるかということが今からの大変大事な課題だろうというふうに思っております。
 そのためには、今までのことに余りとらわれないで政策を考えるということは大事な視点ではないかなというふうに思っておりまして、今からどういうことが創造できるかということすら考えが及ばないところでありますけれども、その局面局面で現場の皆さんの御意見も聞かせていただいて、自治体と一緒になって復興復旧に努めさせていただきたい、創生に努めさせていただきたいと、そう考えております。

○紙智子君 原発事故、原子力災害から五年、この間、本当に様々なことがあったと思います。やっぱり今まで行ってきた施策の在り方をしっかりと必要な見直しをしていく、検証する、見直しをするということが求められていると思うんです。
 そこで、原発事故による農業被害についてなんですが、原発事故によって放射性物質がどこに飛散したのか、拡散したのか、汚染の広がりを測定をし、汚染マップを作成して公表するということや、除染が必要なんですけれども、どこまで進んだのか、農林水産省と環境省、現状を簡潔にお答えいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 福島第一原発の放射能放出による汚染状況の把握に今しっかりと努めているところでありますが、農地につきましては、平成二十三年度以降、毎年モニタリング結果を公表させていただいております。また、平成二十六年度は、福島県内の四百十七地点を調査をさせていただきまして、水田は前年より約一〇%の濃度の低下が認められたところでございます。
 森林につきましては、空間線量率は徐々に低下してきており、平成二十六年度では森林の調査地点の九割において、県が伐採、搬出を可能としている毎時〇・五マイクロシーベルト以下となっている状況であると承知をしております。
 また、農業用水につきましては、平成二十六年度に福島県内の約二千六百か所のため池の水質調査を実施をさせていただきまして、避難指示区域外では放射能セシウムはほとんど検出をされなくなりました。
 引き続き汚染状態の把握を行うということは大事なことでございますので、その結果も引き続き広く広報をさせていただき、情報提供してまいりたいと考えております。

○政府参考人(環境大臣官房審議官 早水輝好君) 環境省から除染の進捗状況についてお答えいたします。環境省では農地あるいは生活圏の森林、宅地といった分類で集計しておりますので、農地及び森林の除染実施計画に対する進捗率としてお答えいたします。
 環境省が直接、直轄で除染を行っております除染特別地域につきましては、二月十五日現在の除染の進捗率は、農地が五六%、森林が八五%となっております。また、市町村が除染を行っております汚染状況重点調査地域につきましては、福島県内の一月末の時点の除染の進捗率は、農地が八三%、森林が五五%となっております。また、福島県以外の県では、昨年十二月末の時点で農地、森林とも終了しております。

○紙智子君 森林・林業についてもお聞きしたいと思うんですけれども、昨年十二月に環境省は、生活圏から二十メートルの範囲と日常的に人の出入りがあるキャンプ場などを除いて除染しない方針を固めたことから、福島県や農林漁業者から、政府はなぜ山の問題を放置し続けるのかと怒りの声が噴出しました。
 環境省に伺いますけれども、この除染方針を見直すべきではありませんか。

○政府参考人(環境大臣官房審議官 早水輝好君) 森林の除染についてお答えいたします。
 昨日、九日でございますけれども、福島の森林・林業再生のための関係省庁プロジェクトチームを開催いたしまして、復興庁、農林水産省とともに、除染以外の取組も含めまして、福島の森林・林業の再生に向けた総合的な取組を取りまとめたところでございます。
 環境省といたしましては、この総合的な取組に基づきまして、住居等の周辺に加え、里山等の森林内の日常的に人が立ち入る場所について、地元の具体的な御要望や現場の状況を勘案しながら適切に除染を実施してまいります。これまで、日常的に人が立ち入る森林の除染の対象としましてはキャンプ場やほだ場などをお示ししてきたところでございますけれども、散策道、林道、休憩所、広場、駐車場なども含め、地元の御要望をよくお聞きした上で、対象範囲や実施方法などを検討して、適切に除染を実施していきたいと考えております。

○紙智子君 今の御発言は、困難だということで今まで区切っていたところを除染区域を広げるということで確認をしてよろしいでしょうか。
 そして、今ずっといろいろおっしゃったんですけれども、例えば落ち葉の除去だとか、あるいは放射線量のマップの作成とか、間伐なんかも含めてやるということで確認してよろしいでしょうか。

○政府参考人(環境大臣官房審議官 早水輝好君) 森林の問題につきましては、昨日のプロジェクトチームで、除染だけではなくて、放射線対策と林業再生を一体とした形で総合的に進めるということになっております。
 このため、環境省では可能なところの除染を、それから林野庁さんでは森林再生という形で連携して取り組んでいきたいと思います。また、里山を対象としたモデル事業も実施していきたいと考えております。

○紙智子君 区域もそれでは今までよりも広げてということではあるわけですよね。

○政府参考人(環境大臣官房審議官 早水輝好君) お答えいたします。
 先ほどもお答えしましたように、いろいろ御指摘をいただきましたので、日常的に人が立ち入る里山道などの場所につきまして、地元の御要望もお聞きしながら対応してまいりたいと思っておりますし、今までの例示を増やす、あるいは自治体の御意見をよく聞くということで、実質的に広がっているというふうに考えております。

○紙智子君 生活再建、林業の復興に直結する問題だと思うんですね。現場の声に応えてやっぱり方針を見直されたというふうに理解をしています。引き続き現場の声に寄り添った対策をお願いしたいと思います。
 現場の要望に敏感に丁寧に対応するということは、これは福島の復興のためにますます大切になると思います。
 そこで、農林業に従事する農林業者が外部被曝を防護する対策や健康管理が必要です。農林水産省は、住居制限区域あるいは帰還困難区域以外の地域は特別な線量管理をしなくても農作業に従事することは可能だと言っています。また、政府は、来年三月には年間で二十ミリシーベルト以下の区域は帰還させると言っているわけです。
 しかし、本当に安心して田んぼや山に入れるのかと。畑作では舞い上がった土を吸うこともありますし、それから、農家が不安を抱えているときに対策を国に要請しても、これまででいえば、例えば環境省は、健康管理というのは福島県がやっているからそちらで聞いてくれと、対応してもらってくれと言うし、じゃ、厚生労働省はというと、厚生労働省は、労働者だったら所管するけれども、農家は対象じゃないというふうに言って引き取らないと。五年もそういう状況がずっと続いてきているわけですよね。
 やっぱり第一次産業の所管である農林水産省が真剣にそういう不安の声に耳を傾けて健康管理への支援を検討する必要があるというふうに思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) お答えいたします。
 現在、居住制限区域や帰還困難区域以外の地域においては、特別な線量管理を行うことなく営農に取り組んでいただける状況にあると認識をしております。
 一方、不安を持っておられる農業者がおられることも踏まえ、農林水産省では、これまで現場の声を聞きつつ労働安全の確保のために必要な情報を盛り込んだ農業生産工程管理、GAPの導入を進めてきたところであります。また、これに加え、被曝に関する知識を普及する観点から、有識者による健康講座の開催、農作業に当たり放射線の影響を減らすために注意すべき事項を盛り込んだチラシの配布等の取組を支援をしてきたところでございます。
 平成二十八年度におきましても、このような取組を継続して行うことが重要だと考えておりまして、現場の要望も踏まえ、引き続き農業者の皆さんの不安の払拭には努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 今大臣紹介された農業生産工程管理、GAPですね。これは、実は自己管理が基本なわけですよね。だから、自営業でやっておられる農家の皆さんは自分でやってくださいという話なわけですよね。
 政府は、二〇一七年の三月に、避難指示解除の準備区域、それから居住制限区域については避難指示を解除する方針を打ち出していますけれども、放射能に対する不安にも応えるべきだと思うんですね。ふるさとが大切だと思うのは、誰でもそう思うわけです、私たちも同じだと。しかし、郷土愛だけでは本当に帰りたくても帰れないという現実があるわけですよね。この現実をしっかり見据えて、もう一歩踏み込んで是非対応していただきたいということを強く求めておきたいと思います。
 それで、次に漁業、水産業なんですけれども、大震災で家族を奪われて、家屋、それから漁港や市場、漁船、水産加工場、漁協の施設というのは壊滅的な被害を受けました。漁業者は、船があれば漁は再開できるというふうに訴えて、国や全国からの支援、後押しで漁業を再開しました。
 岩手県や宮城では、一部を除いて復旧復興が進みました。引き続き復旧を進めることが大切だと思いますけれども、同時に、被災地では、現在の漁業の水準をどう維持するかということが非常に課題になっているわけです。その鍵を握るのは、やっぱり担い手づくりというふうに思うんですね。
 水産庁が行っている青年就業準備給付金というのは、これ、漁家の後継者というのは認められていませんよね、今。新規就農者というのも大事なんだけれども、やっぱり漁村に戻ってくる可能性が高い後継者こそ支援を欲しいと。うちの息子に戻ってきてもらってやるのはどうしてできないのかという声もたくさん寄せられているわけなんです。岩手県の沿岸部の市町村では支援が行われているというふうにも聞いています。国の支援を是非拡充すべきではないかというふうに思うんです。これがまず一点。
 それから、岩手県の沿岸の漁業、とりわけ小型漁船漁業では生活できない状況があるということを聞いています。漁で生活が成り立つように支援すべきだというふうに思いますけれども、この二点についてお答えをお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 漁業就業人口の減少する中で、漁村の内外を問わず、漁業の担い手を確保していくことは大変重要な課題であると考えております。このため、漁業の新規就業者に対しましては、漁業学校等で学ぶ若者に対する就業準備資金の給付、漁業現場での長期研修に対する支援を実施してきております。本事業は、漁家子弟であっても、親元などから離れて就業する場合は支援の対象としております。なお、これらの支援は、限られた財源の中で効果的な新規就業者を確保することが重要であり、経営基盤を有している親元に就業する場合は対象外としているところでございます。
 あと、岩手県の漁業の在り方につきましては今お話を承りましたので、どういう対応ができるか検討させていただきたいと思います。

○紙智子君 担い手の問題は、これずっと長い間壁になっていまして、たくさん要求はあるんだけれども、やっぱりそこのところで今までも抑えられてきているんですけれども、実際の現場の実態を見れば、担い手がたくさん余っているわけじゃなくて、足りない、不足しているという現実があるわけですから、やっぱりそこのところを見れば、即効性のある支援策が必要だというふうに思います。
 それから、福島の漁業については、宮城、岩手とは異なりますよね。福島県は原発災害への対応が第一で、水産業の本格的な復興というのができていないと。それで、原発で、建屋の中はいまだ高レベルの汚染が続いていますし、非常に危険な状態です。汚染水が増え続けていると。福島第一原発は、まあ言ってみれば綱渡り状態というか、今もそうだと思うんですね。そういう状態じゃないかというふうに思うんですけれども、このことについての大臣の御認識をお聞かせいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 福島の漁業振興のためには、二十キロ圏内をどうするかという課題が一番大きな課題ではないかと考えております。この取扱いにつきましては非常に慎重な取扱いが必要でございますので、地元の自治体とも、また漁業者の関係団体の皆さんともよく協議をさせていただきたい、そしてまた、関係省庁とも連携した取組をさせていただきたいと考えております。

○紙智子君 とてもコントロールされているような状況だというように言える状況じゃないというように思うんですね。復興の道筋を示して、やっぱり福島の漁業を再建するための特別の手当てが必要だと思います。もう五年間漁をできないままの人たちも、本当に苦しみを抱えながらやっているということになっていますから、是非そこのところも特別の手だてということを考えていただきたいということを申し上げておきます。
 それから次に、TPPです。三月七日の予算委員会で私取り上げましたTPPにおける農林水産物の影響試算についてお聞きします。
 アメリカは、二月五日の署名から百五日以内にアメリカの国際貿易委員会が経済効果分析、評価書を公表します。日本は、署名する前、調印もしていないのに農林水産物の影響試算を出しました。アメリカは百日掛けて第三者機関が影響評価を出すといいますから、日本が客観的な試算というふうに言えるのかどうかということも問われてくると思います。
 内閣府はGTAPモデルを使って経済効果を発表しましたけれども、なぜ農林水産物はGTAPモデルを使って試算しないのでしょうか。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) お答えいたします。
 GTAPは応用一般均衡モデルと呼ばれているものでございまして、基本は価格メカニズムで経済のシミュレーションを行うものでございます。
 我が国の農林水産物につきましては、農地に係る用途などの様々な制約、国家貿易制度、生産流通管理などの様々な政策的要因に影響を受けること、また、個別品目それぞれについて生産流通の実態などを十分に踏まえる必要があることなど、生産に関して価格以外の要素にも大きく影響を受けることから、三年前の政府統一試算におきまして、農産品については農林水産省において試算をしたというところでございます。
 今回の経済効果分析におきましても、三年前と同じ理由で同様の対応をしたものでございます。

○紙智子君 一度やってみてほしいなと実は思うんです。それで出してみてほしいなというふうに思います。
 それで、大臣にお聞きしますけれども、このFTAの影響評価をGTAPモデルで試算した場合に、日本の米や砂糖などの生産量が減少するという指摘もあるんですよね。農水省の試算では生産量は減らないというふうに発表しているので、その根拠が崩れることを避けたんじゃないのかなと。内閣府は経済効果をGDPで十四兆円だということで試算しましたけれども、農林水産省の試算とこれ整合性が取れたものじゃないんじゃないかと。いかがでしょうか。

○委員長(若林健太君) 澁谷内閣審議官。

○紙智子君 これは大臣に聞きました。農林水産省との整合性だから。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) それではお答えいたします。
 内閣官房が実施したモデルによる評価結果は、TPPが我が国経済全体に与える効果を分析したものであります。
 その際、農林水産物につきましては、国家貿易等通常の関税と異なる複雑な国境措置があることから、その影響については、農林水産省において示した個別品目ごとの生産流通の実態等を基に精査し、積み上げた生産量の見込みをGTAPモデルに組み入れて試算をしたと承知をしております。

○紙智子君 様々なやり方もあるんだというふうに聞いていますので、是非いろんなやり方をしていただきたいなと思うんです。
 次に、予算委員会でお聞きした牛肉、豚肉の調製品の試算についてお聞きします。
 私は、牛肉、豚肉の調製品の数量を農林水産統計を使って紹介をしました、先日ですね。農林水産省からその後、統計上、調製品と輸入肉の区別が不明確だ、明確になっていなかったんだということで説明がされました。しかし、それにしても、新たに聞いた数字で見ても、豚肉でいうと二十三万トンが調製品ということですから、これは決して影響は小さくないというふうに思うんですね。
 そこで確認したいんですけれども、農林水産省の試算で、牛肉の生産減少額は三百十一億円から六百二十五億円、豚肉は約百六十九億円から三百三十二億円というふうになっています。農家の所得は確保されて、国内生産量は維持されるとしているわけですね。この試算に牛肉、豚肉の調製品は入っているのでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) お答えいたします。
 牛肉、豚肉の調製品については、ビーフカレー、ビーフジャーキー等の牛肉調製品は輸入量が約七千トンと、牛肉の輸入量五十二万トンに比べて僅かな量であります。また、ハム、ソーセージ等の豚肉調製品は、輸入が増えれば、輸入豚を使って国内で生産される国産の豚肉調製品の量が減り、輸入豚肉そのものの使用量が減少するという、輸入製品と輸入原料の置き換わりの関係にあるというふうに考えております。
 このため、牛肉及び豚肉の調製品の関税撤廃の影響はいずれも限定的と考えられることから、牛肉及び豚肉の影響試算には含まなかったところでございます。

○紙智子君 今そういうふうに大臣は答えた。要するに、影響が少ないという話で、試算には入れていないというわけですよね。
 実は、予算委員会でもやりましたけれども、重要五品目の中の三割が関税撤廃になったと。その中のほとんど調製品というふうに私たちは思っているわけですけれども、そんなに小さな影響なのかと。これもやっぱり全部出すべきだというふうに思っております。
 それで、影響は小さいから対象にしていないんだと言われるんだけれども、実は二〇一三年の十一月に決算委員会で、当時、農林水産大臣、林さんですか、林さんに私が、重要五品目のうち、加工品、調製品の関税を撤廃した場合にどのような影響が出るのかということで質問をしています。
 そうしたら、加工品、調製品の関税が仮に一般論として撤廃された場合、国内市場において国産品が安価な輸入品に代替されることが考えられます、その結果、たとえ加工品、調製品以外の品目の関税が維持されたとしても、原料としてのこれらの品目の需要が減少するため、その生産が減少し、国内の農畜産業に影響が及ぶおそれがあるというふうに答弁していたわけですよ。山田俊男先生もこの質問を私の質問の前にしておられたと思うんですけれども、こういう答えをされていたわけですよ。
 つまり、調製品以外の関税が維持されても、調製品の輸入が増えれば国内生産量が減少し、影響があるというふうに答えていたわけです。なぜ、輸入実績は少ないから影響がないなどと見解を変えたんでしょうか。

○政府参考人(農林水産大臣官房総括審議官 大澤誠君) 今回、TPPにおきまして、重要五品目の中で関税を撤廃したラインというのは、最近、HSコードの転換に伴って数字を若干、結果が異なっておりますけれども、今百七十ラインでございますけれども、それぞれ調製品の全てを撤廃したわけではございません。
 例えば米でいきますと、約二十四ラインが調製品等でございますけれども、撤廃したものは十五ライン、撤廃しなかったものは九ラインということで、非常に本体に近いものについては撤廃ではないという解決方法を取っているわけでございます。
 そういうものでございまして、撤廃したものにつきましても、幾度か答弁させていただいておりますとおり、撤廃の影響が少ないものということを一つ一つ見ているわけでございますので、そういうものとして、今回撤廃したものも調製品全てではないということではないかと思っております。

○紙智子君 予算委員会でもやったんですけれども、要するに、限られた品目で試算をしているんですよ。そこから外れているものについては分からないわけですよ、みんな。県独自にその範囲に入っていないものも含めて試算しているところありますけれども、長野県とかその他の県でもありますけれども、極めてそういう意味では大きな影響があるというふうに心配しているところ、多々あります。ミカンなんかもそうですね、和歌山なんかもそうですし。
 私は、今の説明だけだったら全然分からないと。農産品で十九品目、林水産品で十四品目だけをやってきているわけだけれども、今回の影響試算で対象から外れている十九品目以外の品目も、調製品も全て影響試算をやるべきじゃないかと、そうやって試算をやり直すべきだと。それもやらないで、まだみんなが納得していないうちにどんどん進めていくということはやめるべきだと。ちゃんと出して、そしてやっぱり議論に掛けて国民の皆さんにもちゃんとお知らせをして進めなきゃ駄目だということを申し上げたいと思うんですけれども、大臣、最後に一言お願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 森山裕君) 牛肉、豚肉を始めとした加工品や調製品の関税削減が国内の生産に与える影響は、どう考えても限定的だと考えております。
 現在、公表している試算を見直すことは考えていないところでございます。

○委員長(若林健太君) 時間が来ていますので。

○紙智子君 はい。
 今の答弁では全然納得できません。やっぱり全てやるべきだということをこれからも引き続き要求していきます。ということで、質問を終わります。