<第190回国会 2016年2月10日 国際経済・外交に関する調査会>


TPP協定に関税撤廃の除外規定なし/関税撤廃の危険性

○我が国の経済連携への取組の現状と課題について

○政府参考人
 外務省経済局長 金杉憲治君

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 調査会、久しぶりの調査会ということになりまして、前回以降でいいますと、昨年の十月五日に大筋合意が政府から発表されまして、つい先日、二月四日に調印式が行われました。また、TPPの担当大臣であった甘利明議員が政治とお金の疑惑で辞任せざるを得なくなりました。TPP交渉では、これ秘密交渉でしたから、その内容を熟知しているのは関係省庁の皆さんと、そして安倍総理になると思います。
 まず、TPPについて、私ども日本共産党の考え方を一言述べさせていただきますと、TPPは農産物だけではなくて、工業製品やサービス、食の安全、投資や金融、政府調達、著作権、労働など地域経済や国民の生活と営業に密接に関わるものだと。日本の国民の利益あるいは経済主権をアメリカなどを中心とした多国籍企業の都合に合わせて国の形を変えるといいますか、国の在り方を変えていくものだというふうに考えております。
 それで、今日確認をしたいのは、日豪EPAとTPPの違いについてです。
 今日、外務省の方にもおいでいただいていると思いますけれども、日豪EPA協定には米などの特定の農産物を除外する規定があります。ここに日豪EPAの協定とそれからTPPのを持ってきたんですけれども、この中に、日豪EPA協定の第二の四条、ここに附属書一というのがあって、それに従って関税の撤廃や引下げ時期を定めているわけです。附属書一は、その実施区分を事細かに規定しています。例えばAという区分がありますけれども、Aというのは、関税については完全に撤廃し、当該原産品はこの協定の効力発生の日に無税とするとしています。そして、区分にはAというだけじゃなくてAとかB3とかQとかいろいろありますけれども、今日お聞きしたいのはXという区分です。
 附属書では、「「X」を掲げた品目に分類される原産品は、(a)から(u)までに規定する関税に係る約束の対象から除外される。」とあります。この除外されるということがどういう意味なのかということを外務省の方にお聞きしたいと思います。

○政府参考人(外務省経済局長 金杉憲治君) お答えいたします。
 先生御指摘のとおり、日豪EPA附属書一第三編第一節一の(v)、ちょっと細かくて恐縮でございますけれども、そこにおいて、Xを掲げた品目に分類される原産品については、関税に係る約束の対象から除外される旨が規定されております。それは、こうした品目については関税に関する約束に関する他の規定における見直し等の対象にならないということでございます。

○紙智子君 今確認しましたけれども、要するに、約束の対象から除外される規定と、それから見直し等の対象とはならないということで確認をいたしました。
 それで、これについて、日豪EPA協定が審議されたときには、政府は、米については関税撤廃などの対象から除外したと、胸を張ってそういうふうに言われたと思います。除外ということは関税に関する義務を負わないと、関税の撤廃や削減の対象にしないという意味だと思います。そういう意味で捉えてよろしいですか。もう一度お願いします。

○政府参考人(外務省経済局長 金杉憲治君) お答えします。
 そのように捉えていただいて結構だと思います。

○紙智子君 確認いたしました。関税に係る義務を負わないという意味というふうに思います。
 そこでなんですけれども、次にお聞きしたいのはTPPについてなんですが、TPP協定の第二の四条、ここに附属書二―Dに従ってと、関税を撤廃する時期を定めているわけです。附属書の二―Dは、多くの原産品の関税の実施区分を事細かに規定しています。例えばEIFという区分があるんですけれども、このEIFというのは、原産品の関税については関税を完全撤廃、協定が効力を生ずる日から無税とするというようにしています。
 そこで、お聞きしますけれども、TPP協定にこの日豪EPAのような除外規定というのはあるんでしょうか。外務省、お願いします。

○政府参考人(外務省経済局長 金杉憲治君) お答えいたします。
 TPP協定におきましては、関税に係る各国の約束について日豪EPAと同じ意味で除外という用語が用いられていることはございません。

○紙智子君 今確認をさせていただきました。つまり、TPP協定においては、関税に係る各国の約束について除外という用語は用いられていないということです。
 それで、なぜそれは用いられていないんでしょうか。

○政府参考人(外務省経済局長 金杉憲治君) 先生御指摘のとおり、TPP協定の第二・四条におきましては、各締約国は、この協定に別段の定めがある場合を除くほか、原産品については自国の表に従って漸進的に関税を撤廃するというふうに書いております。
 ただ、この別段の定めがある場合を除くほかという部分につきましては、日本の関税表などでも重要五品目を含む多くの産品について関税撤廃の例外となる措置が規定されております。したがって、除外という言葉は使われておりませんけれども、関税撤廃の例外となる措置というのは担保されているというふうに考えております。

○紙智子君 そこのところがよく、言葉は使っていないけれども例外を確保できるというのは、一体何をもってそう言えるのかというのがよく分からないですよね。それであれば、なぜその言葉を使わないのかというふうに思いますけれども、いかがですか。

○政府参考人(外務省経済局長 金杉憲治君) お答えいたします。
 TPPにつきましては極めて野心的な協定ということで、交渉の前提として関税を撤廃するということがございました。ただ、その上で、繰り返しになって恐縮でございますけれども、この協定に別段の定めがある場合を除くほかということで、我が国としてはこの別段の定めというところで関税撤廃の例外を確保したというふうに考えております。

○紙智子君 いろいろ納得しないところはありますけれども、除外規定は、どっちにしても、日豪EPAのときには使っていたけれども、TPPでは除外規定はないと。除外規定がなければ関税撤廃のこのレール、軌道に結局乗らざるを得なくなるというふうに思うんです。国会決議では重要五品目は除外するとなっているわけです。この決議に明らかにこれは反しているというふうに思います。TPP協定の二の四条というのは、関税を引き上げて、又は新たな関税を採用してはならないというふうにはっきりと関税自主権については制約を掛けているわけです。
 ですから、TPPは後戻りできないと、そういう関税撤廃に突き進む協定であって、こうした危険なTPP協定の批准ということについては、我々としてはやはり中止をすべきだというふうに思います。
 以上で終わります。