<第189回国会 2015年8月27日 農林水産委員会>


准組合員の事業利用問題/コメ5万トン輸入/安倍総理語らず

○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 安倍総理は、戦後レジームからの脱却、岩盤規制の打破を掲げて、今年、六十年変わらずに来た仕組みを抜本的に改める、農協、農業委員会の改革を断行するといって法案を出されました。しかし、この農政・農協改革について審議すればするほど、疑問、不安、懸念がたくさん出されました。
 富山の地方公聴会では、自己改革案をまとめたJAの会長は、今回の改革は改革先にありきだ、従来の改革と全く違うというふうにおっしゃいました。参考人質疑では、広島のJAの会長が、だまし討ちに遭ったようだと、このように語ったわけです。全国農協青年組織協議会の会長は、青年部の意見を聞かず規制改革会議で勝手に意見を無視して進めてしまったために不満だとか不安だとかが染み付いているということを理解してほしいと、こういうふうに述べたわけです。
 協同組合として自主的に議論をして改革案をまとめているのに、結局頭ごなしに政府案を押し付けたんじゃありませんか、総理。

○内閣総理大臣(内閣総理大臣 安倍晋三君) 農業の改革は待ったなしの課題であり、手をこまねいていていいと思っている方はおられないんだろうと思います。地域農業を活性化させるためには、地域農業を牽引する担い手が活躍しやすくなるようにしていくことが必要であり、農業者にとって身近な存在である農協が、その本来の役割を十分に発揮できるように見直すことによって、担い手が活躍しやすい環境をつくり出すのが今般の法改正の目的であります。
 また、衆議院、参議院の地方公聴会、参考人質疑の中でも、農業の担い手の方々からは、農協は農協離れが進んでいる大規模農家や担い手の期待に応えられるような事業運営を行ってほしい、農協が農業者の所得向上に全力で取り組むことを強く期待しており、農産物の販売や営農指導などに積極的に取り組んでほしいなどの農協の改革を強く求める意見があったと聞いているわけでありまして、農協は農業者によって自主的に設立された民間組織であり、その改革は自己改革が基本であることは言うまでもありませんが、今回の農協改革がこうした農協の自己改革を促進するという観点から、地域の農協について責任ある経営体制を確立するための理事構成や経営の目的などを規定し、自己改革の枠組みを明確にするとともに、中央会について地域農協の自己改革を適切にサポートできるような組織体制に移行することとしたところであります。
 今回の法改正を契機として、農業者と農協の役職員が徹底した話合いを行い、このような担い手の思いに応えて地域農業全体の発展につながる自己改革を実現していただくことを期待しております。

○紙智子君 自己改革を促進するものだと言いますけれども、じゃお聞きしますけれども、例えば准組合員の事業の利用規制についてお聞きします。
 公聴会や参考人質疑でも、銀行や病院、農産物の直売所、信用、共済事業、ガソリンスタンドなどの地域住民のセーフティーネットの支え手になっている准組合員の利用を規制すれば、これ総合農協としての役割を果たせないと。だから、五年後の見直し規定を入れて調査をするという必要性が分からないと。五年後の見直し規定の削除を求める意見も出ているわけですよ。
 日本の農業を担う全国農協青年組織協議会の天笠会長は、我々の准組合員に対する理解というのは、食と農の理解を広げてくれ、我々を応援してくれる存在だ、だから我々も今まで以上に恩返しをしなきゃいけないと、こういうふうに発言しているわけですね。
 准組合員の事業の利用の問題というのは、規制先にありきということで、法律で縛るのではなくてやっぱり自主性に任せるべきだと。自主性に任せるべきではありませんか、総理。総理。

○委員長(山田俊男君) 林農林水産大臣、簡潔にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 党の御議論もいろいろいただいた上で、この法案、政府取りまとめになった経緯は何度も御説明をしてきたとおりでございまして、総理にもそこは共有をしていただいているわけでございます。
 したがって、今のような御意見も当然ありましたけれども、一方で、同じような仕事をやっている、この間は葬儀屋の例を挙げましたけれども、そういうことについて圧迫をされているんじゃないかという御意見もあったところであります。同じところを見て議論しているんではないかと、こういうこともありまして、今まで規制がなかったということで、この実態をまずは把握して、そして調査をした上で検討するということでございますので、それに従ってこの条文を提出させていただいていると、こういうことでございます。

○紙智子君 総理に対する質疑ですから、林大臣は立たないでください。
 それで、結局、自主性を促進するなんて言いながら、実際にはこれを止めているわけですよ。やっぱり削除すべきだと思いますけれども、できないというのはなぜかといえば、これは在日米国の商工会議所、ここが、規制改革会議が、准組合員の利用については正組合員の利用の二分の一を超えてはならないという意見を歓迎しているということや、民間とのイコールフッティングということを求めていると。日本の財界や大企業の要求を優先させたということを言わざるを得ないわけですね。
 もう一つお聞きします。加えて、財界の意向に沿って進めようとしているTPPの問題です。
 これ、私は八月十日の予算委員会で、ハワイの閣僚会合で大筋合意に至らなかった問題で総理に質問しました。甘利大臣が米を五万トン受入れする譲歩案を示したことについて、これについても安倍総理にお聞きしたんですけれども、そのとき総理は答えませんでした。改めてお聞きしますけれども、なぜ五万トンなんでしょうか。総理。

○内閣総理大臣(内閣総理大臣 安倍晋三君) 米は国民の主食であります。また、最も重要な基幹的な農作物であるとの認識の下、政府としても交渉を進めております。
 日米間の交渉の詳細についてはお答えを差し控えたいと思いますが、日米間の重要五品目を含む物品市場アクセスでは解決すべき課題が依然として残されており、次回閣僚会合へ向けて今後協議を継続していく考えであります。
 米を含む重要五品目については、引き続き衆参農林水産委員会決議をしっかりと受け止め、いずれ国会で御承認いただけるよう全力で交渉に当たっていく考えでございます。

○紙智子君 委員長、答えていないです。私、こういうふうに答えないのであれば、ちょっと進められません。この後質問できません。

○委員長(山田俊男君) 安倍総理、もう一度御発言をいただきます。

○内閣総理大臣(安倍晋三君) TPP交渉は、全体をパッケージとして交渉しているわけでございまして、米の扱いについても何らこれ確定しているものではありません。確定していない交渉の内容について、これをコメントすることは差し控えさせていただきたいというふうに思います。

○紙智子君 甘利さんはテレビでおっしゃったんですよ。全国放送で五万トンという数字言ったんですよ。これ、安倍総理は容認されるんですか。

○内閣総理大臣(内閣総理大臣 安倍晋三君) 日米間の交渉内容について、私は総理としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
 TPP交渉では、米について米国側から非常に激しい要求がなされていることは事実でありますが、我が国においては、米は国民の主食であり、また最も重要な基幹的農作物であるとの認識の下、慎重に交渉を進めているという状況でございます。

○紙智子君 全然答えていないですよ。甘利大臣がテレビで五万トンと言ったことについて認めるんですか。五万トンでよしとするんですか。五万トンだったらいいということなんですか。総理自身のお考えをお聞かせください。

○内閣総理大臣(内閣総理大臣 安倍晋三君) まさにTPPについては現在交渉中でございまして、大変厳しい交渉をしているわけでありますが、その厳しい交渉の中におきまして、私たちの基本的な立場というのは、衆議院、参議院農林水産委員会で決議をいただいているこの決議を踏まえて、日本の主食である米を基幹的な農作物であるという認識の下に慎重に交渉を進めているわけでありますが、いずれにいたしましても、この交渉が妥結をした暁には、しっかりと委員会においても御承認いただける結果を出すべく交渉を進めていきたいと、このように思っているところでございます。

○紙智子君 全然答えていないんですよ。安倍総理が、御自身が、自民党は交渉力があるから聖域は確保できるんだ、そう言ってTPPに入ったんですよ。それが、五万トンだったらいいような話をされて、それで容認するのかと。交渉中のことについては語れないと言ったけれども、だったら、甘利大臣は、これは守秘義務に違反したことになるんじゃありませんか。いかがですか。

○内閣総理大臣(内閣総理大臣 安倍晋三君) 先般、委員会において紙委員の御質問に甘利大臣からもお答えをさせていただいていると、こう思うところでございますが、まさに現在交渉中であるわけでございます。その交渉の中におきましても、米については国民の主食であるとの認識の下に日本もしっかりと慎重に今交渉を進めているわけでございますが、その中身あるいは数値については、まさに交渉中であることから、私、総理大臣としてコメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。

○紙智子君 答えられないのであれば、この五万トンは撤回させるべきだというふうに思います。
 アメリカ、USAのライス連合会というのは、米の関税率は問題にしていません。アクセス量の改善、つまり輸入量を増やすように求めているわけで、結局、こういう要求に応える形で譲歩案を出したということじゃありませんか。
 私は、安倍総理は、農協改革にしてもこのTPPにしても、日本の農家や国民の利益よりもアメリカや財界の方を見てやっていると言わざるを得ない。もうTPPからの撤退を強く求めて、質問を終わります。