<第189回国会 2015年8月25日 農林水産委員会>


ジャガイモ・シロシストセンチュウの被害まん延防止対策を/農業者の代表機構を奪う/地域に根ざした協同組合を

○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、ちょっと急がれている問題で、ジャガイモのシロシストセンチュウについてお聞きします。
 農林水産省は、十九日に北海道網走市内の圃場でジャガイモの害虫であるジャガイモシロシストセンチュウが発見されたと発表しました。国内での確認は初めてということです。硬い殻で覆われているシストセンチュウが〇・六ミリほどの大きさで、これ農業新聞では、乾燥や低温に強く、最大二十年は土中に残り、土壌消毒でも根絶は難しいというふうに報道しています。
 被害の状況並びにこのシロシストセンチュウの発生原因、侵入経路を説明いただきたい。あわせて、シロシストセンチュウは主にどこの国で発生しているのかということも説明してください。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小風茂君) 委員御指摘ございましたけれども、八月十九日に農林水産省は、北海道の網走市内の一部の圃場におきまして、我が国で未発生でございますジャガイモシロシストセンチュウを確認いたしました。発生地域からのバレイショの移動経路などを踏まえまして、本日から、本線虫の発生の可能性が高いと考えられます網走市内、そして近隣の市町村で発生範囲を特定するための調査を実施しております。したがいまして、現時点では本線虫の発生の面積などの被害状況は把握はできておりません。
 また、現時点では本線虫の発生原因についても不明でございますけれども、今後、発生状況の調査などを進めながら原因の解明を進めていきたいと考えております。
 それから、海外における発生国の状況でございます。インドなどのアジア地域、あるいはドイツなどのヨーロッパ地域、そしてアメリカ合衆国などの北米地域、そしてペルーなどの南米地域、こういうジャガイモの生産国を中心に五十一の国と地域で発生が確認されていると、こういう状況でございます。

○紙智子君 日本にはない線虫ですから外国から侵入したということになるわけで、植物防疫体制にも問題がなかったのかということでは検証を求めておきたいと思います。
 それから、芋を食べても人体に影響はないということなんですよね。ただ、ジャガイモは枯れてしまうということなので、蔓延防止策が急がれるわけです。線虫が発生した場合は農家は一体どう対応したらいいのかと。サンプル検査をするというふうに聞いているんですけれども、この検査体制というのは、どんどんとサンプルを送れば結果が出てくるという仕組みになっているのか、その体制も含めてどうでしょうか。

○政府参考人(農林水産省消費・安全局長 小風茂君) 先ほど申し上げました発生状況の調査でございますけれども、これ圃場に参りまして、ジャガイモを抜取り調査いたします。その中に、その根の部分に線虫あるいはそれに疑わしきものがあるかどうかと、こういうものを確認いたしまして、これを植物検疫所の方に送りまして同定作業を行う、それによりまして被害の状況の広がりの範囲を確定すると、こういう作業を急いで進めてまいりたいというふうに考えてございます。

○紙智子君 現地の農家の方は、いや、一か月も待たされないと、結果が出ないと分からないんじゃ困ると、今収穫にいろいろ向かう時期なので、やっぱりそこを早くやってほしいということでは、ちゃんと検査体制も含めて強化してほしいという話が出ておりますので、是非受け取っていただきたいと思います。
 それから、蔓延を防止するには土を動かさないということが第一だと。薬剤、それから薫蒸、それから焼却などの方法もあると。蔓延防止に係る費用への支援、それから農家が安心して営農できる支援を行うべきだと思うんですけれども、この点、いかがでしょうか。これ、大臣にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ジャガイモシロシストセンチュウは、バレイショ生産に重大な損害を与えるおそれがあるわけでございまして、我が国未発生の病害虫であるということでございます。今委員から御指摘いただいたように、このものが確認された地域からの蔓延防止措置を直ちに講じることが重要だと考えております。
 先ほどから答弁ありますように、まず発生範囲を特定するための調査を開始をする。そして、今委員から御指摘いただいたように、土壌の移動防止等の蔓延防止対策の徹底、これを北海道庁に文書で要請をしております。また、バレイショ及び土壌の移動について、植物防疫官による検査を実施すると、こういうふうにしております。
 この発生範囲の特定調査、それから本線虫の薬剤防除など蔓延防止措置に必要な経費について、消費・安全対策交付金というのがございます。こういうものを活用して支援をしていきたいと、こういうふうに思っております。北海道庁、生産者団体と連携して蔓延防止に万全を期してまいりたいと思っております。

○紙智子君 以前、やっぱり線虫が発生したときに、土を移動できないということですごく大きな問題になりました。網走の農業というのは、麦、てん菜、ジャガイモという輪作で成り立っていて、早期の対策が求められているというふうに思います。それで、是非、シロシストセンチュウに抵抗性のある品種も作るということも含めて、早期に開発するように求めておきたいと思います。
 それでは、法案の審議に行きたいと思います。
 この間の林農水大臣の答弁、ずっとやり取りしてきましたけれども、農政改革について、いろいろな意見はあるけれども、政府・与党で取りまとめて法律を出したんだと。言ってみれば、専ら経緯について、経過について説明するという答弁が多くて、大臣御自身が一体どういうふうに農協の問題、農業委員会を考えているのかということがよく分からないというふうに思ってきたわけです。今日は、是非大臣の考えを、大臣御自身の考えを聞かせていただきたいというふうに思います。
 まず、農業委員会の選任基準の問題です。
 これ、現行法では、農業委員の基準が七条、八条で規定されています。例えば、区域内に住所を有する者で年齢は二十歳以上、農地について耕作の業務を行う者というふうにあります。
 私、七月三十日の質問で、この改正案は公選制を任命制に変えるということになるわけですけれども、選任基準が示されていないんじゃないかと。仮に公募者が定数に達しなかった場合、あるいは定数よりも多かった場合の調整方法や、政府の農地流動化に異論を唱えるような人がもし公募した場合、調整方法も明らかにするように求めたわけです。林大臣の答弁は、「透明、公正に適切な選任が行われるように、地域の関係者の意見を聞く機会を設ける」というふうに答弁されたんですけど、これだけではよく分からないわけですね。それで、地方公聴会でも透明性が果たされていないという意見が出されているわけです。
 透明というのはどういう状況をいうのか、公正さの基準というのは一体何なのか。透明性、公正性についてみんなが納得する選任の基準についてお示しいただきたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この法案の中で、農業委員の選出方法につきましては、公選制から市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制に改めると、その際に、推薦、募集を行いまして、推薦を受けた者及び募集に応募した者に関する情報を整理、公表するとともに、推薦及び募集の結果を尊重しなければならないと、こういうふうにしております。
 どういう人を選ぶべきかという選任基準については、国として法律に規定されている以上の内容を定めるということは適当ではないと考えておりますが、一方で、農業委員の選任の手続でございますが、これは市町村長による恣意的な選任が行われないようにする必要がありますので、農業委員の選任が公正かつ透明に行われるように、推薦及び募集の候補者が委員の定数を上回った場合等に市町村長が関係者の意見を聞くなどの手続を取るよう努めると、こういった基本的な考え方を省令や通知などでお示しする方向で検討いたしたいと、そういうふうに考えております。

○紙智子君 今日も参考人の方からの発言がありましたけれども、農業委員というのは、やっぱり農家の財産は農家の財産というだけじゃなくて、ずっとそこにある社会資産としてのというか財産、農地の権利を扱うわけですから、何よりも農家から信頼されることが大事だという話がありました。
 現場の農業委員は混乱しているわけですね、今、議論で。例えば、野村先生のところの鹿児島の農業会議の改正をめぐっての議論でも、地域からの推薦を優先するのか、アンケートによる地域住民の意向を確認するのか、公職選挙法に基づかない選挙か、いずれにしても選任に当たって透明性が求められますよねと議論しているんですけれども、どういうふうにするのかというのがなかなか混乱していると。北海道などでも、選任が市町村長の恣意的な判断にならないようにするためには、やっぱり農業者や学識経験者などを入れた選考委員会などをつくるなど、より民主的な選任方法を求める必要があるということでの意見もあるわけですけど、この点にめぐってはどうでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この公正かつ透明な選任を行うための方法というのはいろいろあると思いますが、今先生がおっしゃったような、学識経験者などから成る選考委員会を設けると、これも一つの方法であると考えております。

○紙智子君 私は、地域が混乱しないようにするために一番やっぱり合理的だと思うのは、変えないことだと思うんですよ。今までどおり、従来どおりに公選制の方がよっぽど分かりやすい、合理的だというふうに思います。
 それで、本日、参考人質疑においても、女性農業委員会ネットワークの会長さんの伊藤さんという方が来られたんですけれども、女性の農業委員を増やす努力をこれまでずっとされてきたと、定数が半減されるということになったら、女性のせっかく増やした農業委員が大幅に減少することになる懸念があるという御意見も述べられておりました。
 やっぱり、農地の利用の集積とか耕作放棄地の解消などの活動を保障するためにもそうですし、やっぱり女性のそういう活躍、農業委員を増やすということから見ても、定数については少なくとも現状の体制を維持するということが必要だというふうに思うんですけど、一言、これ、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 現在の農業委員の機能でございますが、農業委員会として決定をしていただく行為、それから農業委員の各地域での活動と二つの活動がございますが、それぞれが的確に機能するようにする必要がございます。そういったことのために、今回は農地利用最適化推進委員を新設をするということになっております。
 それぞれの役割を改正後は果たしていただくということになりますが、昨年の六月の政府・与党の取りまとめ及び本年二月の法制度の骨格について、数でございます、今御指摘のあった、委員会を機動的に開催できるよう委員の数を現行の半分程度とし、委員定数の上限を定めている政令基準を変更すると、こういうふうにしております。一方、推進委員の数でございますが、人・農地プランの作成単位となる地域の数などを踏まえて政令で定める基準に従い条例で定めると、こういうふうになっております。
 そういったことでございますので、農業委員と推進委員の定数についてはこうしたことを十分考慮しまして、農業委員会がこれまで以上に農地利用の最適化の推進という使命を果たせるように、両者の合計人数が現在の農業委員数をある程度上回る水準となることを念頭に置きながら、政令の制定に向けて適切に検討していきたいと思っております。

○紙智子君 全然今の答弁では駄目ですね。せっかく女性の方の、今日、参考人の話もあって、そういう懸念もされている中で、やっぱり今の現状を維持するということで、是非受け止めていただきたいということを改めて申し上げておきたいと思います。
 次にですけれども、所掌事務を定めた六条二項についてです。農水省が監修している「農業委員会法の解説」の中では、とりわけ意見の公表、建議などについて、農業委員会の行政機関としての性格よりも農民の代表機関としての性格が強く前面に出されていると説明しています。今回の改正で、所掌事務から農業及び農民に関する意見の公表、行政庁への建議ができるというのが削除をされる、目的から農民の地位向上を寄与するの規定が削除をされると。これは、公選制を廃止するということと併せて、農民の代表機関としての性格を奪うものだというふうに思うわけです。
 今回、区域内の農地等の利用の最適化の推進という規定が入っているわけですけれども、農業委員会は農地利用の最適化の促進に集中する行政機関になってもらうと。要は、それ以外の余計な仕事はするなということなんじゃないんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 現行の農業委員会の所掌事務は、必須事務といたしまして農地法その他の法令に基づく許認可等の事務を処理するということと、任意事務として農地等の効率的な利用の促進、それから農業及び農民に関する事項に関する意見の公表、行政庁への建議、答申と、こういうこと等を行うことができるとされております。
 現時点で農業委員会の最も重要な任務は、担い手への農地利用の集積、集約化、耕作放棄地の発生防止、解消といった農地利用の最適化でございまして、今般の法案では、農業委員会が農地利用の最適化の推進業務に集中して取り組んでいただくことができるようにするために、この農地等の利用の最適化の推進に関する事務を必須事務といたしました。それから、意見公表や建議、これは法的根拠がなくても行えるわけでございますので、法令業務からは削除をすることにいたしたわけでございます。
 そのときに、農業生産、農業経営及び農民生活に関する調査及び研究、それから農業及び農民に関する情報提供と、これは一本化をしまして、農業一般に関する調査及び情報の提供として整理をいたしました。また、法人化その他農業経営の合理化に関する事項はそのまま存置をしております。
 したがって、今後も農業委員会は農地利用の最適化のみを行うということではございませんで、必要な事務は引き続き行うことができるということになっているところでございます。

○紙智子君 法律事項から削除したのに今までと同じようにできるということにはならないですよ。誰が見たって、ちゃんと法律に書いてあるものと、削除したのに、それで同じ位置付けになるなんて思えないですよね。本当に大事な意見を述べる、現場の意見を述べる建議の場や、意見を表明する場というのをなくすというのは大問題だというふうに思います。
 それから、一番の最重要は、その最適化に関わってのことを進めていくことなんだということなんだけれども、それ以外のことも大事なことはいっぱいあるわけで、結局そこに集中させていこうということになりかねないというふうに思うんですよ。
 今日の参考人質疑の中でも、やっぱり農業委員会が机上委員会になるんじゃないかという指摘がありました。結局そういうことになるんじゃないんですか。農業委員については、最適化で推進委員の方と分けて、いろんなことを聞いていろいろ議論するデスクワークに専らされてしまうということになるんじゃありませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この度、農地の最適利用に向けた仕事をやっていただくために推進委員というのも新たに置くことになりました。また一方で、農業委員会、効率的に開いていただけるためということもあって、農業委員と推進委員というこの二本立てにしたところでございまして、それぞれしっかりと連携をしていただくことによって、そういう机上委員会ですか、机上の空論の机上ということだと思いますが、そういうふうに言われないようにしっかりと運営をしていかなければならないと思っております。

○紙智子君 やっぱり、現場に出ていかない、そういう農業委員会になってしまったら、農民の代表機関としての機能を奪われるということになって、結局は行政の下請機関にならざるを得なくなるというふうに思います。
 農協法についてもお聞きしたいと思います。
 農協の事務運営について、組合は営利を目的として事業を行ってはならないという、この非営利規定を削除すると。農業所得増大への最大の配慮、あるいは高い収益性の実現というふうに変えました。組合員には准組合員も含まれますけれども、組合員への奉仕、農業所得の増大、収益性というこの三者が両立するのかどうか。担い手農業者のニーズに応えて農業所得の増大に最大限に配慮する方向が評価されれば、結局、准組合員への奉仕ということが軽視されることにならないでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 農協は一条で定めてございますように農業者の協同組織でございますので、やはり正組合員である農業者のメリットを拡大をすると、これが最優先でございます。したがって、何度か申し上げておりますように、准組合員へのサービスに主眼を置いて正組合員である農業者へのサービスがおろそかになってはならないと、こういうふうに考えております。一方で、過疎化、高齢化等が進行する農村社会においては、農協が実際上地域のインフラとしての側面を持っていると、これも事実でございます。
 したがって、この准組合員の利用規制については、いろんな議論を経て、まずは利用実態を五年間の調査をしていこうと、こういうことで、その調査をした上で規制の在り方について検討をしていくと、こういうことにしたところでございます。

○紙智子君 大臣は、今の答弁でも、農協というのは正組合員の組織だから准組合員へのサービスに主眼が置かれてはならない、だから調査をして結論を得ると、附則の五十一条の二項ということですけれども、言われるわけですけれども、この間、与党が推薦された参考人からも、准組合員というのは農業や地域経済の発展を支えるパートナーなんだ、総合農協の役割が理解されていないじゃないか、今回の農政改革の進め方には不信が募っているんだ、残っているんだというふうにも言われているわけですよ。
 農協は農業者の自主的な組織なわけで、准組合員の事業利用をどうするかということを、今日も参考人の皆さんから出ていましたけれども、法律で縛るのではなくて、農業協同組合自身が自主的に決めるものなんじゃないかと、私もそう思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(林農林水産大臣 林芳正君) これは制度の骨幹が農協法という法律で規定をされておりますので、しっかりと法律については議論をして枠組みを決めていくというのは政府・与党としてやらなくてはならない仕事であると、こういうふうに考えております。

○紙智子君 何か全然答弁になっていないなと。林大臣がどう思われるんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 私は大臣として今答弁をしたつもりでございまして、個人的に何か感情を持って答弁を差し上げるのではなくて、これは法律の審議をしていただいておりますので、法律についてしっかりと御説明をして審議をいただくということが大事だと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 全然現場の思いにかみ合っていないですよね。
 規制改革会議の議論の中で、准組合員利用量の規制は数値基準も明確にした上で極力早く導入すべきであるというふうに提言しているわけですよ。これ、自主改革と言いながら、やっぱりそう言われることに縛られているんじゃないかと。全くそういう意味では自主改革を損なうものだというふうに思います。
 それから、農協法の質疑を通じて、自主自立を基本にした改革になるかどうかということが今日も参考人の皆さんからも出されて議論になったわけですけれども、政府は、担い手の農業者のニーズに応えた農協、職能組合化を求めていると。一方、参考人からは、食と農を基軸として地域に根差した農業協同組合、協同組合の価値と原則に基づいて発展すると、農を基軸とした職能的地域組合を求める意見が出されたわけです。
 私は、国際協同組合同盟、ICAの原則と、それから二〇〇二年にILOの勧告に沿った対応をすべきだと思うわけです。ILO、国際労働機関は、労働条件の改善を通じて社会正義の実現に資することを目的とする国際機関だと、同時に、協同組合の育成に携わってきたわけですね。国際基準を策定している唯一の機関なわけです。ILOは、二〇〇二年に協同組合の促進に関する勧告を採択しています。その中では、グローバル化が協同組合の圧力になっていると、各国政府に、協同組合の自治を尊重することと、自治的、自主管理の企業体として協同組合を奨励するということなどを、政策的な支援と法的な枠組みを求めているわけです。
 本来、このICAの原則や今述べたILOの勧告に基づいた協同組合にすることが求められているんじゃないかと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) このICAの協同組合原則は、非政府組織でありますICAにおいて採択されたものでございますので、条約ではないわけでございます。したがって、政府としてこの解釈権を持っておりませんし、またその内容に拘束をされるような性格のものでもないということでございます。しかしながら、世界の数多くの協同組合が参加するICAの協同組合原則は、やはり我々としてもできる限り尊重したいと、こういうふうに考えております。
 今回の農協改革は、農協の自己改革を促進するという観点で、地域農協が責任ある経営体制を確立するための理事構成、経営の目的などを規定しまして、自己改革の枠組みを明確にしております。また、行政に代わって経営の再建指導を行う特別認可法人でありました中央会については、地域農協の自己改革を適切にサポートできるような自律的な組織体制に移行すると、こういうことを規定をしておりまして、改正後の農協法についてもICAの協同組合原則を尊重した内容になっていると考えておるところでございます。
 ILOが二〇〇二年に協同組合の独自性の促進、強化がICA原則に基づき勧奨されるべき旨などを盛り込んだ協同組合の促進に関する勧告を採択をされたということは承知をしております。これも勧告でございますので法的拘束力を有するものではないわけでございますが、今回の法改正については、これまで述べたように、ICAの協同組合原則を尊重した内容になっておりますので、このILOの勧告とも整合した内容になっていると、そういうふうに考えております。

○紙智子君 尊重してやりたいという話なんですけれども、実際上、ICAは、地域社会への関与、共同所有、それから民主的管理による組合員ニーズと願いを満たすための自発性と自治の組織にすることを求めていて、そこに沿ってやっていたら意見なんか出なかったと思いますよ。やっぱり沿っていないから意見が出ているわけですよ。この間の議論を通じて、やっぱり農業関係者から要望が出て始まった改正じゃないところは、企業が世界で一番活躍しやすい日本にするという官邸主導のこれ改悪案だということが明らかになったと思います。
 今回の改正案は、農協組合に企業論理を持ち込んで、結局、総合農協を解体する道につながる、そういう意味では自主的な組織に対して政府の介入ということが非常に問題になっている、容認できないということを強く述べまして、質問を終わります。