<第189回国会 2015年7月30日 農林水産委員会>


従来の見解を放棄する農業委員会の公選制の廃止/農業委員の選任基準示せず

○農業協同組合法等の一部を改正する等の法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。私も二回目の今日、質問ですけれども、農業委員会について今日は、衆議院で議論が、審議がありましたけれども、そこで解決されていない問題などをお聞きをしたいと思います。
 まず、公選制についてなんですけれども、この制度を維持してほしいというのが当事者である農業委員会の多数の声です。北海道の農業委員会としてまとめた組織意見では、本道の農業委員は、農業、農業者の代表として、厳しい課題に主体的に対峙し、解決を進めてきた。この基礎こそが農業委員の公選制であり、地域、農業者から選ばれた代表としてその信任を得ているからこそ、農地の権利調整に関与し、農地を守る視点に立った業務をこれまで進めることができたと経過を分析して、公選制の維持こそが農業委員会の業務の推進に不可欠であると訴えているわけです。
 衆議院の参考人質疑でも地方公聴会でも、やはり参考人からそういう訴えがあったわけです。にもかかわらず、農業委員会の公選制を今廃止しようとしていると。
 七月三日の本会議で私は公選制廃止の問題をお聞きしたわけですけれども、林大臣は、平成二十四年の一月から一か月行ったアンケートを使って答弁をされました。
 資料をお配りしておりますけれども、このアンケートのところですね、見ていただきたいんですけれども、このアンケートです。農業委員会事務局、市町村、JA、都道府県出先機関、それから農地保有合理化法人、それから農業者と、それぞれアンケートを取っていますけれども、大臣はその一部の結果を示して、農業委員会の活動を評価している農業者は三割にすぎない、農地集積などの農家への働きかけが形式的である、遊休農地等の是正措置を講じないなど、農業者から余り評価されていないというふうに言われたわけです。ずっと繰り返しその答弁をされているんですけれども。さらに、農業委員の四割が兼業農家であり、担い手など農業経営に真剣に取り組んでいる方が主体となっていない、つまり兼業農家が多過ぎると述べられていると。
 しかし、私、このアンケートについては実はずっと疑問を持っておりました。まず、サンプル数ですけれども、この資料のように、回答数で見ますと、農業委員会の調査対象数五百九十五に対して回答数四百八十一の八一%、それからJAは五百九十五に対して回答数は二百八十八の四八%、それから農業者のところは対象数千五十に対して百八十九の一八%なんですね。
 これ、農業者のサンプルが余りにも少な過ぎるんじゃありませんか。いかがでしょう。

資料1:農業委員会のあり方に関するアンケート調査の概要

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 平成二十四年一月から二月に農林水産省が行いましたこのアンケート調査でございますが、今資料でお示しいただいたような中身で実施をさせていただいたわけでございます。
 この農業者というところでございますが、農業委員会の主たる業務でございます農地利用の集積、集約化の受け手となる土地利用型作物の農業者、これの集まりである全国稲作経営者会議の会員を対象に実施をしたところでございます。
 この全国稲作経営者会議の会員の資格でございますが、稲作経営を意欲的に行っている経営者というふうになっておりまして、その多くは大規模経営の専業農家ということでございますが、会員資格が専業に限られているというわけではないので、実際兼業農家の方も会員になっておられると聞いておるところでございます。
 したがって、そういう方々を対象に調査をいたしまして、これは回答を強制するわけにいきませんので、回答を御協力いただけた方がそういう数字であると、こういうことであろうかというふうに思っております。

○紙智子君 つまり、稲作経営で大規模なところが多い、専業が多いと。結局、兼業農家の割合というのは、そうすると分からないわけですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 会員の資格は先ほど申し上げたとおりでございますが、必ずしも会員の内訳を把握をしておるわけではないということではありますが、先ほど申し上げましたように、兼業農家の方も会員になっておられる、会員資格では限定されていないということでございます。

○紙智子君 あと、農業者というふうにくくっているわけですけど、稲作以外の畑作や果樹や畜産農家はどういうふうに答えているんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは、申し上げましたように、農業委員会の主たる業務が農地利用の集積、集約化の受け手となる土地利用、集積、集約化でございますので、その対象者ということで、土地利用型作物の農業者の集まりであるこの稲作経営者会議の会員を対象に実施をしたということでございます。

○紙智子君 つまり、畑作や果樹や畜産だとか酪農だとか、こういう方たちについては聞いていないということなんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 基本的にはそういうことでございます。
 なお、麦、大豆等の土地利用型作物の農業者は、裏作でやっていらっしゃる方もこの中には含まれておられると、こういうふうに思っております。

○紙智子君 大臣は本会議の答弁で、公選制廃止の理由にこのアンケートを使ったわけです。私は、これでどうして公選制を廃止する理由になるのかということは全く理解できないんですね。
 アンケートの二枚目、三枚目の、特に三枚目のところを開いてみてほしいんですけれども、内容についてもお聞きしたいと思うんです。アンケートの項目で、活動はしているけれども内容に不満があるんだと。その不満の理由に、監視活動は行っているが、遊休農地や違反転用の是正措置を講じないというのがあります。一番多いとか二番目とかとありますけれども、二番目に多いところでいうとこういう理由が書かれているわけです。
 それで、そもそも遊休農地については、二十一年の農地法の改定で市町村から農業委員会に移行して間もないときなんですね。ですから、移行してすぐということですから、十分でないのはあり得る話だと。ただでさえ市町村でやっていても大変だったことを農業委員会に移したわけだけれども、すぐそれでスムーズにいくかと言ったらそんなふうに簡単にはいかないということですから、それはあり得る話と。
 それから、農地の違反転用の是正措置を講じないという項目があるんですけれども、これ、農地の転用について違反是正をする権限というのは都道府県の知事なわけですよね。農業委員会は、是正措置は知事に対して要求はできるけれども、直接是正するのは知事なんですよ。だから、権限はないわけですよね、農業委員会は。それを、あたかもこれ項目を見ると農業委員会の責任のように書いているわけです。だから、受け取った方は、恐らくこれ誤解したまま回答しているんじゃないかなというふうに受け取れるんですね。誤解を与える取り方をしているのに、あたかも農業委員会に問題があるかのような誘導質問になっていると思うんです。
 こういうやり方だったら政策判断を誤るんじゃありませんか。いかがでしょうか。

資料2:農業委員会の活動状況に対する評価

資料3:活動に不満がある理由【複数回答】

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 是正措置を講じないと、こう書いてございますので、是正措置の前段の要請をしないと、こういうことだということですが、これ関係者の皆様でございますし、農業委員会の事務局のところを見ていただいてもそういう意見が実は出ておりますので、自分たちでこれは是正措置を講じないということを誤解しているということはなかなか考えられないと思いますが。
 そこを見ていただきますと、農業委員会の事務局でも、働きかけが形式的である、監視活動を行っているが違反転用の是正措置を講じないというのも五割を超えていると、こういうことでございまして、その部分については農業者の方がむしろ低い数字にはなっている、こういうことでございます。

○紙智子君 私は、このアンケートの項目、今言った項目だけじゃなくて、例えば一つ目の農地集積などの農家への働きかけが形式的とあるんだけど、形式的なのかもしれない、だけど、なぜそうなっているかという分析なんてないんですよ。
 当時で言っても議論ありましたけど、農業委員会自身が、やっぱり体制が足りなくて大変だ、自分たちが経営やっているほかにパトロールしたりいろんなことをやるわけですから、それは大変なわけで、理由がもしかするとそういう体制が不足している中でだったかもしれないわけで、本来分析するのが当たり前なのに、その分析もなしに、こういうやった結果の表面上のことだけを使ってやると。
 やっぱり是正できる権限を持っているのは知事だったわけで、農水省はこのアンケートを使って農業委員会の活動が農家から評価されないということを言うわけだけれども、私は、畑作や果樹や畜産酪農や幅広い農家の人の動向を聞かないで公選制を廃止する理由にはならないというふうに思うんです。しかも、稲作農家といっても全農家の意向を聞いていないと。やっぱり兼業農家もいるわけで、そこのところを聞かないで、一部だけを都合よく使っているんじゃないかというふうに思うんですね。
 更にお聞きしますけれども、林農水大臣はさきの衆議院の審議で、農業委員会は一九五一年に三つの委員会を統合して各市町村に設置された経緯を話されました。農地委員会、それから農業調整委員会、農業改良委員会、この三つが統合したと。農業委員会の母体となっていた農地委員会と農業調整委員会が選挙制を取っていたこともあって、農民の代表である農業委員の選出に当たって選挙制を採用したということを答弁をされています。また、一九五六年には、選挙制を廃止して首長の任命制とする改正法案が提出をされたんですけれども、当時の野党の反対で選挙制が維持されたという経緯を衆議院の方で紹介をされていたと思うんですね。
 なぜ、どういう議論で公選制がそのとき維持されたんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 昭和三十一年に当時の政府は、農業委員の公選制を廃止して、市町村の任命制とする改正法案を提出をいたしましたが、野党の反対によって公選制が維持されたというふうになっております。
 当時の議事録を見ますと、政府側の方は、公選制を廃止する理由について、全農業委員会のうち実際に選挙を行っている委員会が四分の一以下にとどまっている、それから、選挙の実施には多額の国費が掛かっていたと、こういう説明をしておるところでございます。これに対して野党の方からは、当時の農村社会はいまだ血縁的、地縁的なものであり、市町村長の選任制に改めますと、地域の封建的な実力者が委員として輩出されるのではないかとの反対意見があったと、こういうふうに承知をしておるところでございます。

○紙智子君 農林水産省が編集した農林行政史というのがありますけれども、これ読みますと、一九五六年当時、河野農林水産大臣、それから大石政務次官からは、部落ごとに委員を選出することが農業委員会と農民の結び付きを強くする上から望ましいというふうに公選制の長所を認めて、政府はこれに従うつもりであるという答弁があるわけです。
 それからまた、ここにありますけれども、「農業委員会法の解説」ということで、これ、農水省が監修しているわけですけれども、これを見ても、当時も公選制の下で実は無投票当選が七割五分に達していたと、当時もですね。それでも今まで公選制が守られてきたというのは、やっぱり公選制が不可欠だったからじゃないんでしょうかね。
 当時の提案理由を見ると、農民の意思と希望を反映し得るよう農民の選挙による委員及び学識経験者たる委員をもって構成され、その職務は法令に基づく所定の事項、建議、答申に関する事項等を処理することとして、これ三年間も議論しているんですよ。三年間議論した後、当時、今度農水大臣替わっていて井出農水大臣が、ちょっと前文省略しますけれども、過去三年間非常に議論をされてまいりました団体再編成問題の一応の結論であろうかと了承いたしますというふうに答弁されています。無投票が七割五分も当時もあって、費用がかさむという与党の提案があったけれども、しかし、やっぱり最終的には、議論の末、農民の意思と希望を反映し得るようにということで公選制を残したと。
 その農水省の見解をなぜ変えるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 先ほどアンケートについては御議論いただいたところですが、アンケートの結果、活動を評価している農業者が三割程度であるということで、御意見を聞いてみますと、先ほどお話があったように、働きかけが形式である、是正措置に向けた活動を講じない、農業委員が名誉職となっている、こういう評価をされていると、こういうことでございまして、今回はこれを踏まえて、認定農業者という、地域の農業を牽引するような適切な人物が確実に農業委員に就任するようにするために、公選制から市町村議会の同意を要件とする市町村長の選任制、これに改めるようにしたということでございますが、そのときに、市町村長は、事前に地域からの推薦、公募等を行う、その情報を整理それから公表もするということと、そしてさらに、その結果を尊重しなければならないと、こういうふうにやっておりますので、当時とその考え方はここで軌を一にするところがあるんではないかなと、こういうふうに思っておるところでございますが。
 一方で、昭和三十一年に公選制の廃止を一度は提出した際と比較しても、当時、実際選挙を行っている委員会が四分の一しかなかったということでしたが、今十分の一まで更に減少しているということ、それから、コストの面では、選挙人名簿の作成等で選挙の実施には多大なコストが掛かっているということ、それから、当時は反対意見として、地域の封建的な実力者が委員として輩出される、こういう御意見もあったところでございますが、地縁、血縁に縛られていた当時の農村というところも民主化も十分進展してきているんではないかと、こういうところから見て選任制への移行が適切であると、こういうふうに考えておるところでございます。

○紙智子君 今の答弁は、ちゃんと答弁になっていないというふうに思うんですよ。私、お聞きしたのは、なぜ当時のその判断、最終的な、三年間も議論して踏まえたその判断をなぜ変えるんですか、どういう理屈で変えるということになるんですかということで、その変える理由を聞いたわけですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 先ほど申し上げましたように、当時も、政府はいろんな論点で提案をさせていただいて、いろんな議論の末に今お読みいただいた最終的な決着というのがあったということだと思いますが、その頃と比べて状況が変わってきて、先ほど申し上げました農業者の意見、それからもう一つは、認定農業者ということでやっていかれる方と、これは農協改革のときも何度も申し上げてきたところでございますが、階層分化も進んできておりまして、やはり担い手の方の意見をしっかりと反映をしていく、こういう必要性も出てきたのではないかと、こういうふうに思っておるところでございまして、そういう意味で、先ほど申し上げましたように、選挙がないところが更に増え、またコストの面ではコストが掛かる状況も変わっておらないということで、改めて今回、政府・与党で改革の見直しを決めさせていただいてこの法案提出に至ったということでございます。

○紙智子君 やっぱりちょっと分からないですよね。ずっと議論されて、それから以降ずっと続いてきた考え方を変えるわけですけれども、北海道の農業会議から提出されている、これ一番新しい今年の五月二十八日に出された要請書があるんですけど、この開いた一ページのところにある要求です。今現在の要求でもあるんですけれども、その要請の中身というのは、公選制は農業委員会に不可欠ですと書いてあるんですよ。それがなぜ従来の見解を変えたのか、その理由を聞きたいんですよね。ずっと今までやってきたやつを何で今変えなきゃならないのか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 公選制が不可欠だということがどういう文脈で使われておったかというのがつまびらかに承知をしておりませんが、私どもが議論したときは、やはり地域の代表性というものは大事にしなければならないであろうと、こういうことがあったわけでございます。
 したがって、地域の代表ということを残すという意味で、先ほど申し上げましたように、市町村長が事前に地域からの推薦、公募等を行って、その情報を整理、公表して、その結果を尊重すると、こういう仕組みを入れた上で、適切な方々が選任をされるための法的スキームを用意したと。先ほど、野田先生からもいろんな御指摘をいただいたところでございますが、現場ではそういういろんな声もあるところでございますので、そういう現場の声に応えて、また時代の変化というものにも対応して今回の御提案に至ったということではないかと思っております。

○紙智子君 全然納得できないんですよね。だって、現場の声と言うけれど、私もあちこち回りましたけれど、現に御苦労されている農業委員の皆さんに聞くと、何でこれを廃止するんだと、続けてほしいと幾ら言っても全然聞く耳持たないという声が現場からは出てくるわけですよ。今だってそうですよ。ですから、何でそうなのかというのが本当によく分からない。
 いろいろ考えますと、何で公選制を廃止するのかと。結局、戦後レジームからの脱却を掲げる安倍内閣、安倍総理が、規制改革会議を舞台にして農業委員会の見直しを推し進めてきたということなんじゃないでしょうか。規制改革会議の農業ワーキンググループで林いづみ委員の方も参加しているんだけれども、こういうふうに発言していると。農業委員会というのは、元々小作農を保護する観点から独立行政委員会として選挙制度がつくられた、現在の日本は農家の平均年齢ももう七十歳近くになっている、だから構造改革のラストチャンスなんだ、ここで戦後レジームの農業委員会の在り方を見直さなかったらいつ見直すのか、公選制の下で投票は一割程度じゃないか、選挙制度を取る必要性があるのかというふうに主張されている。
 つまり、これ戦後レジームの組織を変えるために公選制をやめるということなんでしょうか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 規制改革会議でいろんなお立場でいろんな御議論があるということは承知をしておりますが、我々としては最終的に、そこの意見もございましたけれども、いろんな意見を踏まえて政府・与党で改革案の取りまとめというのをさせていただきましたが、その趣旨は先ほど御説明したとおりでございまして、その中には特に戦後レジームを改革するといったような文言はなかったというふうに記憶をしております。

○紙智子君 なかったと言われますけど、でも、やっぱり総理の意向に沿って、言ってみれば農業委員会法の改正というのは総理の意向に沿っているわけですよね。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 我々は、政府・与党で物を決定をしていくときは、ボトムアップで党で御議論いただいて案を作って、そしてやっていくということですが、総理の意向と全く違うことを内閣として決めるということはなかなか難しいことではないかというふうに思いますが、特に総理の意向が個人的にどこかでそういうふうに示されたということは私の記憶にはないところでございます。

○紙智子君 でも、安倍総理がリーダーシップを取って、責任者となって規制改革会議を諮問会議として持って、そこで議論してきたものを使って出しているわけじゃないですか。閣議決定までやっているじゃないですか。やっぱり安倍総理の意向に沿った改正じゃないんですか、これは。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) ですから、私が申し上げましたように、規制改革会議、経済財政諮問会議等々いろんな、規制改革会議は特に諮問会議で総理に対する諮問をするということでございますから、総理が諮問をされて、それを受け止めて、そして我々閣僚にどういった指示を出されるかと、こういう仕組みになっておるわけでございます。そういう指示を受けながら政府・与党で最終的には成案を得るというのが、少なくとも我が党や連立与党を組んでおります公明党のシステムだというふうに考えております。

○紙智子君 やっぱり安倍総理が主導して、官邸主導でやっているんですよ、これは。
 公選制を廃止するのに、一つは無投票が多いという理由と、二つ目は、農家から活動が評価されていないというふうに言っているけれども、実際、無投票は今始まったわけじゃなくて、一九五〇年代も多かったわけですよ。それから、評価されていないというアンケートは、ほんの一部の農家のアンケートを政府の都合に合わせて使っていると。現場のやめてほしいという要求を聞かずに、これ全く廃止する論拠がないんですよね。はっきりしているのは、戦後レジームにつくられた制度は変えるということですよ。
 もう一つ、任命制についてもお聞きします。
 公選制を廃止して、市町村長が市町村議会の同意を得て任命するというふうにあります。第八条の第五項、第六項で、農業委員は認定農業者が過半数を占めること、そこには利害関係を有しない者を加えています。第九条では、任命に当たっては、農業者、農業団体に候補者の推薦を求めて公募しなければならないというふうにあります。
 それで、衆議院の質問では、例えばそれは弁護士とか司法書士とか行政書士、農業委員会の所掌に属する事項に関して利害関係を有していない会社等の役職員などと挙げられています。果たして地方の中山間地の市町村でそういう方がいるのかどうかというのもよく分からないです。地方では弁護士さんがいない地域もあると思うんですね。
 首長の意向に沿った選任はしないと断言できるでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) いろんなケースが想定をされると、こういうふうに思いますけれども、改正後の農業委員会法第九条で、先ほど申し上げましたように、推薦、公募を行った上で、募集に応募した者や推薦を受けた者に関する情報を整理、公表して、その結果を尊重しなければならないと決めております。また、そういう推薦、募集による候補者が委員定数を下回った場合の対応については、推薦、募集期間の延長等を行うとか、それから市町村長が関係者から意見を伺うということで、きちっとした手続を行っていただくということが適当ではないかというふうに考えております。
 いずれにしても、現場が混乱をしないで適切に委員の選出が行えるように、具体的なルールをよく検討してまいりたいと思っております。

○紙智子君 いろんなことが考えられるわけですけど、極端な例を挙げれば、地域開発に熱心な首長さんの場合、その意向に沿った選任がなされた場合は農地転用も甘くなるかもしれないということもあるわけですよね。
 六月に可決されました地方分権一括法で、農地転用に係る大臣許可権限というのがなくなりました。それで、地方自治体にそれが移譲されたわけですから、その可能性というのは大きくなってくるということです。そうなると、農業委員会としての役割は、これそういう形にゆがめてしまうと、農業委員会としての役割、機能しなくなるんじゃないかと思うんですけれども、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは地方分権のお話でございますが、本会議でもあるいは御答弁をしたかもしれませんが、これはあくまで地方分権であって規制緩和ではないということをそのときも申し上げたというふうに思っておりますが、まさに同じ基準で、それを運用してもらうところを一定の基準を設けて、その基準に該当するところについては市町村長にもやっていただけるようにしようという地方分権でございますので、転用基準そのものが変わるということではございませんので、しっかりとその線で、今、どういう市町村にやっていただくかというところは専門家の皆様に基準を作っていただかなければならないと思って作業をしておるところでございます。

○紙智子君 加えてお聞きしますけれども、逆に、公募に応じて手を挙げる人が多くて定数を超えるという場合もあるかと思います。その場合どうするのか。定数以内に収めるために、やっぱり恣意的に任命するということもあるんじゃないのかというふうに思うんですけれども、どうでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今般の法案でございますが、農業委員の選出方法について選任制に改めていくと、そして、繰り返しになりますが、推薦、募集を行って、推薦を受けた者、募集に応募した者に関する情報を整理、公表して、推薦、募集の結果を尊重しなければならないと、こういうふうに定めております。したがって、推薦及び募集による候補者が農業委員の定数を上回った場合の対応について、これも透明、公正に適切な選任が行われるように、地域の関係者の意見を聞く機会を設けるなど適切な手続を取っていただくと、これが必要だというふうに考えておるところでございます。

○紙智子君 国が進める農地集約に例えば異論を唱える方が任命されるということもあるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) どういう方が推薦又は募集の対象になったか、また、推薦を受けた方がどういう方であるかということは全て整理、公表をされております。それを言わば市町村長さんにとっては、有権者の方がみんな見ている中でこの結果を尊重するという法文の下で選任をしていただくと、こういう格好になろうかと思います。

○紙智子君 農業委員になろうとする者の情報を整理して公表するというのが第九条にありますけれども、これは当たり前のことだと思うんですね。手を挙げる人が定数よりも多い場合、あるいは少ない場合、いろいろあるわけですけれども、どう調整するかということでは、農政について多様な見解を持つ方が農業委員になれるのかというのは、これ全く不透明で定かじゃないんですね。やはりそういうことを考えると、例えば農地のいろいろ流動とかというと、農家の財産を仲介する役割なわけで、非常に大事な役割なんですけれども、そういう意味では、それをやる人が任命制で本当に堪え得るのかということもあります。やっぱり、そういうことを考えると、選挙で決めていくというのが最も合理的なことなんじゃないのかというふうに思うんです。
 そこで、委員長になんですけれども、最後になりますけれども、現在の農業委員の選挙権、被選挙権、これ条文に書かれていますけれども、任命制に変えるということであれば、任命基準を本委員会に出すように要求をしておきたいと思います。

○委員長(山田俊男君) 後刻理事会できちっと相談します。

○紙智子君 今ちょっと質問を通じて、何で公選制を廃止するのかというのはやっぱりやり取りしてもよく分からなかったと。はっきりしているのは、戦後レジームの体制を変えるということの流れの中で出てきていると。そして、規制改革会議を舞台に農業委員会を廃止唱える財界の代表が攻撃しているということだと。これまで農村、農業の持つ課題を現場の視点から解決していくために多くの提言を行って、政府の策定に寄与してきた重要な農業委員会の役割を事実上否定するものだということでは、本当に公選制をなくすことと、それから、やっぱり第一条の目的を変えるというところもつながっていると思いますけれども、引き続き、時間になりましたので、質問することにいたしまして、終わります。