<第189回国会 2015年5月21日 農林水産委員会>


統計業務や食品表示監視業務の人員削減は、政府統計への信頼性、食の安心、安全に対する国の責任を後退させる

○農林水産省設置法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今回の法改正の一つの目玉は、現場と農政を結ぶ部門を新設するということです。なぜこれ、新設するんでしょうか。今まで地方農政局において現場と農政を結ぶ取組が弱かったということなんでしょうか、大臣にお聞きします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 地域センターは、平成二十三年九月に、地方農政事務所と統計・情報センターを廃止した上で、統計調査、農業経営の安定、食品安全に関する業務等の執行業務の担当組織として設置をしたということでございますが、制度が定着をしてまいりまして、食品表示の違反率が減少するなど、業務を取り巻く環境が変化をしてきております。
 地域センターは、現場に最も近い地方組織でありますが、統計調査とか食品表示監視など、それぞれの個別の業務を執行するための組織ということでありまして、生産、流通、消費にわたる一連の農政改革を現場に伝え、また現場の声をくみ上げると、そういう機能は十分なものとはなっていないわけでございます。
 一方、活力創造プランを定めまして、大きな改革を着実に推進していかなければならないということで議論を大変たくさんいただいておりますように、現場とキャッチボールをしながら改革の方向性とか考え方をやはり現場と共有をするということで、スピード感を持って施策を推進していく必要が出てきたということでございまして、こういう状況を受けて、現場に最も近い地域センターを見直して、現場と農政を結ぶ役割を果たす組織へ転換するということといたしまして、地方農政局長の直属で現場と農政を結ぶ業務を担う地方参事官、これを県庁所在地などに配置をすることにしたところでございます。

○紙智子君 私は、農政と現場を結ぶという点では、やはり現場で頑張っている農業者、農協、自治体の要望、それから苦労、政策過程に農林水産省が機敏に対応してきたかどうかということが問われていると思うんですね。
 それで、今日、お聞きしたいんですけれども、昨年の二月に関東地方を中心とした大雪による被害が起きました。農業用ハウスの被害についてお聞きします。
 農林水産省は、二〇一四年の三月三日、昨年ですね、新たに被災農業者向け経営育成支援事業、いわゆる農業用ハウス等の再建、修繕補助金を打ち出しました。しかし、一年経過した現在でも農業者の手元に補助金が届いていないというふうに聞いているわけです。この補助金の配分額、並びに、今年度繰越しが行われていますけれども、その繰越額を示していただきたいと思います。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) 二十五年度の大雪対策でございます。今御指摘がございましたように、二十五年度の大雪につきましては、被災農業者向け経営体育成支援事業、これで支援をしてきているわけでございます。これまで六百四十四億円、これを都道府県に配分をいたしまして、このうち今年の三月末までに再建が完了した施設につきましては、市町村を通じて農業者へ二百六十七億円の支払が行われております。今年の三月末までに完了が間に合わなかった残りの額につきましては、翌年度に予算を繰り越して対応しているところでございます。

○紙智子君 ちょっとこれは私も驚いたんですけれども、豪雪被害から一年経過しているのに、なぜ現場の農業者に補助金が届いていないんでしょうか。農政局の説明、状況を聞いたわけですけれども、昨年の四月三日にさいたま市、四月十八日は京都市、四月三十日は岡山市、九月十一日にさいたま市、今年に入って一月二十日に熊本市で説明会が管轄エリアで一回のみ開かれていると。被害が大きかった福島県や宮城県を管轄する東北農政局では説明会が行われたとは聞いていないわけです。
 初動の動き、説明会の方法、支援体制に機動性がなかったんじゃないのか、迅速性に欠けたということが対応を遅らせたということなんじゃないのかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) この対策につきましては、昨年のこの対策を決めた後、これは昨年の二月二十四日の翌日からということになりますが、関東地方、ここが一番被害が多かったところでございますので、ここを中心にいたしまして、都府県、それから市町村の担当者の方、それからJAの職員等に対しまして、合計で三十七回の説明会におきまして事業の周知を図ってきたところでございます。
 それから、個別案件にも対応できるように、QアンドAの作成配布、それからホームページでの公表、それから農林省の担当者も直接現地に派遣をいたしまして、延べ百七十一名派遣をして迅速な再建ですとか事務の効率化のための現地でのきめ細かな指導を徹底してきているところでございます。

○紙智子君 今答えていないですよ。なぜ一年たってもまだ終わっていないんですかということですよ。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) これにつきましては、農業用ハウス等の施設の竣工後に農業者からの支払の請求に基づいて補助金を支払うということになっております。
 昨年の、二十五年度の大雪に係る被災施設の再建に当たりましては、被害規模が大きかったこともございます。再建のための資材あるいはそのための施工の人員、これが不足していたということが一つございます。それから、農家の方の方から見て、当面の収益確保のために、農業者がすぐ再建するというよりも、取りあえずは露地栽培による収穫の方を優先させるといったこともあったというふうに聞いておりますけれども、こういったことを理由に、まだ完成していない、未竣工となっているものが多く発生しておりまして、これらの補助金の支払ができていないところでございます。
 農林水産省といたしましても、再建が遅れている施設についてもできるだけ早期に竣工がなされまして補助金の支払が進むように、県、市町村と連携して対応してまいりたいと考えております。

○紙智子君 業者の不足とか資材不足という話は、これは去年の今頃もう既に分かっていたことで、問題になっていたと思うんですよね。
 農林水産業・地域の活力創造プランでは農林水産業を成長産業化するというふうに言っているわけですよね。やはり、昨年の豪雪被害において私は初動の動きが弱かったんじゃないのかというふうに思うわけですけれども、いろいろあっても、やっぱり一年間も生産活動にブランクを空けるということは、これは販路をなくしますし、それから資金繰りも大変になるということは明らかなわけですよね。
 それから、県でも農業用ハウスなどの補助金の説明会を行っているんだけれども、農業者に伝わるのが遅くて、農業者からは、来年、つまり今年の作付けには間に合わないというふうに言われます。十年先まで農業を続ける農家は資金繰りを考えるけれども、将来展望が見えないということで補助金申請を諦めた方もいるというふうに聞いているわけですよね。
 今回、県庁所在地に地方農政局長の直属の地方参事官を置いて相談業務を担当するスタッフ二十名程度を配置するということですけれども、今回の改正案は、これ百三か所あった地域センターを廃止をして五十一か所に半減するということですよね。そうすると、災害発生時にはアクセス道が遮断されたりすることもあるわけです。県庁所在地に一か所置くよりも、これ現場に近い地域センターに数名のスタッフを置いた方が農家の要望や政策課題にきめ細かに機動的に対応できるんじゃないんでしょうか。これは大臣にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この現場と農政を結ぶ業務については、地方参事官の下でスタッフ二十人程度を配置することにしております。こういった体制を県庁所在地等に置くことで、まず、県や農業団体の幹部と定期的に情報交換をいたしまして、地域農業の課題解決に向けた役割分担を調整をするなど、県庁や農業団体等と密接に連携することが可能になります。また、災害や家畜伝染病等の緊急事態発生時においても重点的に人員を投入すること等が可能となりまして、より一層の効果の発揮を期待するところでございます。
 また、活動拠点を集約するわけですが、地域の課題解決に必要な農政サービス、これは十分に提供できるように、地方参事官なりそのスタッフが積極的に各地に出向いていってきめ細やかな対応をしていくということでございますし、また、そういう活動を通じて、県、市町村、それから農業団体の皆様とネットワークをつくっていただいて、そういう中でしっかりと現場のニーズに対応していきたいと思っております。また、業務の実施に当たっては、必要に応じて宿泊付きでも出張を行って、計画的、効率的に巡回を職員がするということにしております。
 一県一か所、原則ですが、拠点がそういうふうになる中で、より現場と農政が効果的に結ばれるようにしっかりとやっていきたいと思っております。

○紙智子君 やっぱり行政の拠点が現場から遠くなるわけですよね。だから、市町村合併のときもそうですけれども、市町村合併によって役場が遠くなってサービスが下がったというふうに実感している方が実際には多いわけですよ。だから、近くにいるから相談できるわけですけれども、結局、遠くなった場合は、それも回るんだと言うんだけれども、そんな遠くからわざわざ来てもらわなくてもいいということにもなりかねないわけですよね。
 だから、今、農家の人たちにとっては、TPPや農産物の価格の問題が低迷している中では、本当にそういう不安な状況の中で、寄り添った農政であること、見える農業であるということが大事だというふうに思うわけです。ですから、地域センターをなくして集約化するという方向は、私は農政を現場からますます遠ざけることになるんじゃないかというふうに思います。
 次に、統計の問題についてなんですけれども、今回の改正で、地域センターの業務、統計調査、食品表示監視、それから経営所得安定対策の交付事務が県の支局に統合されるわけです。三業務を行っていた人員が五千四百六十三名から四千五百名へと二七%削減されると。これ、大幅な削減なわけです。
 そこで、統計業務についてお聞きしますけれども、政府の統計は、食料自給率を引き上げる上でも農林水産業を振興する上でも、政策をつくる上で重要な基礎データになるものです。それから、国民の協力、信頼なくして調査を行うことはできないわけですよね。政府統計は、国や社会の姿を映し出す鏡となって進むべき方向を示す羅針盤とも言われているわけです。
 それで、大臣に、この農林水産統計の役割について、その基本認識をお聞きしたいと思います。長くならないようにお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 簡潔にお答えいたしたいと思いますが、この統計の調査、農山漁村地域、農林水産物の生産、流通、加工、消費の実態動向等を把握して、その結果を広く提供しておりまして、農林水産行政を支える情報インフラとして機能をしております。
 今御指摘いただいたように、基本計画の各種の計画に基づく政策の目標設定、評価、また需給安定対策等の施策の発動基準、各種補助金の算定根拠、こういうものに用いられておりますので、これらの施策の実施に支障が生じることのないよう、質の高い、信頼性のある統計データの整備、提供に今後も努めてまいりたいと思っております。

○紙智子君 農林水産統計調査がこの間どう変わったかということなんですけれども、平成十二年度三十七調査あった調査が平成二十七年度には二十九調査に減っています。十三調査が統合されて四調査になったと。六調査が廃止になった。七調査は新設、他部局から移管されています。二十九調査の内訳ですけれども、職員調査が二十八調査から五に減ったと。郵送・オンライン調査が九調査から二十三に増えて、統計調査員調査というのは十一から十二になったと。民間委託調査がゼロだったものが六調査になりました。
 統計部門の職員は、平成十二年度末に五千百人だった人員が平成二十六年末には千五百人、平成二十七年末には千二百人に、平成十二年当時からは四分の一まで削減されているわけです。なぜ職員調査が二十八から五に削減されたのか。これは明らかに人員削減によるものです。人員削減で調査項目を減らさざるを得なくなったと。郵送・オンラインの調査や調査員調査が増えた結果、記入漏れや誤記入などエラー率が増えたと。二〇〇五年の農林業センサスのこの調査手法に関する研究調査結果について、エラー率が三%から一〇%に増えたという指摘もあります。
 調査手法や実査方法を変更したことがよかったのかどうか、正確性や信頼性が高まったのかどうかということについて、どのように評価されているでしょうか。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 委員御指摘のようなこれまで統計調査について変遷を経てきているわけでございます。こうした外部化でありますとかあるいは効率化に当たりましては、当然、その調査結果を活用する政策部局と事前に十分な調整を行って実施に移してきているところでございまして、政策上必要な調査については、質の高い、信頼性のある統計データを継続的に整備、提供することを旨として実施してまいっております。
 なお、統計調査につきましては、調査手法の変更を行う場合も含めまして、原則として統計法に基づく総務大臣の承認を受ける必要がございます。この承認に当たりましては、統計技術的に合理的かつ妥当なものであるかどうかについて判断がなされているほか、基幹的な統計調査につきましては、これに加えまして、その変更内容等が調査の目的に照らして必要かつ十分なものであるかといったことについても判断がなされてきているところでございます。

○紙智子君 ちょっと分かりづらくて、どう評価したんですかというふうに聞いたので、一言、もうちょっと、どういうふうに評価されているのか、この間の。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) お答えいたします。
 政策部局との調整を経まして、政策推進上必要なデータにつきましてはきちんと確保してきているというふうに考えておりますのと、先ほど委員の御発言の中で、精度への言及が若干ございましたけれども、米等々を中心とするものにつきましてはほかに例を見ない極めて高い精度を誇ってきている、そういうレベルには余り変化はないものというふうに認識をいたしております。

○紙智子君 要するに、余り変化はないんだ、ちゃんと保たれているという評価だと思うんですけれども、いや、そういう評価でいいんでしょうか。
 二〇〇〇年に入って、構造改革の一つとして統計行政改革が行われたわけです。二〇〇九年に内閣府の統計委員会の舟岡産業統計部会長が、ここ数年間に農林水産統計組織は大幅な人員縮小が余儀なくされ、農林水産政策に必要と考えられる統計ですら十分に作成できていない状況になっていて、ましてや公共財としての統計の維持は危機的な状況にあります、また、農林水産統計調査は、ほかの統計調査に比べて高い専門性が要求される調査であり、アウトソーシングも容易ではありません、農林水産統計の品質と精度維持を確保するためこれ以上の調査内容の削減や人員等統計資源の縮小に歯止めを掛けるべきだと考えますという意見書が書かれているわけですよ。これ、内閣府統計委員会の中身ですよね。
 こういう意見書が出されていて、今回、職員調査として行われている五調査に専門調査員調査を導入するというふうになっているわけです。職員調査がなくなると。産業統計部会長のこの指摘、これをやっぱり真剣に受け止めるべきではないかと思うんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(農林水産大臣官房統計部長 佐々木康雄君) 今御指摘のございました御指摘は、当然重たく受け止めているものでございます。
 それで、本年度から、これまで職員が実施してまいりました調査につきまして専門調査員の方を導入するということになるわけでございますけれども、その際には、当然その節目節目で専門調査員になっていただく方々に研修を施し、実査を担ってもらう際にきちんと能力を持った方が担当してもらえるような体制を築いてまいりたいと思っております。
 また、職員はその調査員の方々をいろんな場面でサポートをするわけでございまして、その際に調査の設計とかあるいは審査といった判断を要する業務は職員が引き続き行うといったこと等々を通じまして、これまでの精度をきちんと継続をし、信頼性の高いデータの提供に今後とも努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 職員調査の廃止は容認できないというふうに思うんですね。
 そこで、作物統計調査の調査対象、調査方法はどう変わるのかということで、ちょっと事前にお聞きしたわけですけれども、基準筆、それから刈取り調査に一割を専門調査員調査にすると。一割は専門員にするという話なわけです。専門調査員調査というのは、専門知識、能力を持った専門員という、何かあたかも専門家であるかのような印象があるんですけれども、実際は公務員試験受けていないでいるわけで、その知識、能力があるかというのは誰が判断するのかという問題があると。
 それから、専門調査員は非常勤の国家公務員とされていますけれども、雇用期間や年間労働日数、賃金など雇用条件を聞いたわけですけれども、そうすると期間は年度ごとで年間百二十日で、日当が九千五百円だと。だから、公務員が行う調査を専門知識があるというふうに勝手に判断して民間に出す、しかも研修だけで済ませると。
 これで本当に政府統計の信頼性や正確性が保てるのかというふうに思うんです。技術が継承できるのかということなんですけれども、これについて大臣、最後にお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 今般導入する専門調査員はその任期を一年としておりますが、農業等に関する高い専門性が要求される業務に従事する者でありますので、毎年度専門調査員に対する評価を実施しまして、一定の評価を得られた者について翌年度も継続して任命をするということでやってまいりたいと、こういうふうに思っております。
 手当については今御指摘のあったとおり、一日当たりの単価が九千五百円程度、また年間労働日数については、勤務状況によってばらつきが出ると考えますが、年間百日を超える場合もあると見込んでおります。身分としては、今御指摘のあったように守秘義務が掛かる非常勤の一般職の国家公務員ということになるわけでございます。

○紙智子君 人員削減を優先させて、やっぱり統計調査や食品表示監視等、行政サービスを低下させるのではなくて、やはり国民から求められる行政サービスを拡充する道こそが求められていることを強く要望して、質問を終わります。