<第189回国会 2015年4月22日 東日本大震災復興及び原子力問題特別委員会>


健康調査の充実を求め、実施自治体への支援が必要。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 福島復興再生特別措置法の改正案については、これ大熊町の拠点整備や、戻って事業を再開しようとする地元事業者を支援するというものですので、賛成です。
 それで、今日は健康調査について質問したいと思います。
 健康調査を進めるために、子ども・被災者支援法、それから福島復興再生特措法がありますけれども、独自に町民の健康管理を行っている自治体があります。福島県の浪江町の取組です。
 原子力発電所内で異変がありますと、これ協定に基づいて東京電力は速やかに町に通報することになっているんですけれども、事故当時この通報がされませんでした。三月十二日から十五日の間も町には連絡がなく、集団避難をした町内の津島地区ですね、津島地区に避難したんですけれども、実は高濃度の放射性物質が降り注いだ地域だったことが後で分かったんです。風の方向ですっぽり入るということだったわけです。その結果、多くの町民は、放射線被曝という生涯にわたる健康不安を与えることになったと。そのために、町では早急な健康対策をするように国や県に求めたんですけれども、十分な対応が得られなかったということで、独自で事業を実施することにしたということなんです。
 健康管理では、生活、健康、人権を守る見地で放射線健康管理手帳というのを作っています。手帳の目的というのは、浪江町に帰ったときの健康管理、それから精神的な管理になり、大学とも協力をして甲状腺以外の検査も始めています。
 浪江町は、こうした取組や、地震、津波、原発事故直後の災害医療にどう取り組んできたのか、また健康管理にどう取り組んできたのか、今後の施策として何が必要なのかということをまとめた健康白書、避難町民健康管理施策というのを昨年の十二月に発表しました。それがこれです。大臣、御覧になっているでしょうか。
 それで、こういう浪江町の取組についてどのように思われるか、感想をお聞きしたいと思います。

○国務大臣(竹下亘君) 浪江町が独自に健康管理施策として小冊子を発行していることは存じ上げている、詳細に読んだわけではありませんが、ぱらぱらと読ませていただいたことは事実でございます。そのこと自体をいいとも悪いとも言える状況ではありませんが、浪江町は浪江町の努力をしていらっしゃるということは率直に受け止めなければならないと。
 ただ、我々がやっておりますことは、より安全な除染をしっかりして帰ってもらうためのことをやっているのであって、そこに向かって、仮設住宅の住まいが長くなる、そういうことに対するケアを今やっているわけでして、放射能の不安を取り除く、あるいは誤解を取り除くといったような部分もないわけではありませんが、不安を取り除く作業、そしてもう一つは、避難が長期化しておりますので、心身のケアというものにこれからますます力を注がなければならない、多分、浪江町もそういったことも考えているであろうと、こう思っております。

○紙智子君 浪江町のお医者さんからお話を伺ったわけですけれども、医療機関、医師の果たしている役割って本当に大きいというふうに思います。
 それで、震災前からずっと診ているお医者さんもおられて、避難してから四年になるんだけれども、震災後、やっぱり心身共に疲れていると。それで、事故後に浪江町に常勤医として支援に入った医師もいらして、初めは病気の話をするんだけれども、それだけで済まなくて、それで、身の回りの話も含めてされると、やっぱり心のケアが大切だということを言われています。
 やっぱり被災地で医者を始め医療従事者を確保するということ、大変な苦労されてやられたようなんですけれども、健康調査を進めるために、医療機器整備費を始め体制や環境を整備するための支援、これは本当に必要だと思いますけれども、これやるべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○委員長(櫻井充君) どなたになりますか。

○紙智子君 大臣。

○国務大臣(竹下亘君) 医療あるいは介護、看護、先ほども議論がありましたが、その分野の人材が極めて厳しい状況にあるということは我々も承知をしておりまして、何とかならないかということで、今、厚生労働省そして福島県とも協力をして様々な施策を行っているところでございます。
 しかし、まだまだ十分ですという状況には残念ながら程遠い状況でございます。復興庁といたしましても、福島県における医療、介護の人材や看護師の確保といったようなものは非常に重要であると考えておりまして、今後とも厚労省や福島県等と協力しながら、連携しながら、これは本当にやり抜いていかなきゃならぬ課題だと思っております。

○紙智子君 次に、福島県民健康調査についてお聞きします。
 福島復興再生特措法の第三十九条で、福島県は健康管理調査を行うことができると定めています。
 それで、福島県民健康調査は、県民の被曝線量の評価を行うとともに、県民の健康状態を把握をして、病気の予防や早期発見、早期治療につながることで将来にわたる県民の健康維持や増進を図ることが目的です。
 環境省の専門家会議の中間取りまとめがありますけれども、この県民健康調査の甲状腺検査は充実させるべきとしています。甲状腺がんの治療費を支援するべきではないかと思いますけれども、環境副大臣、いらっしゃっていると思いますけれども。

○副大臣(小里泰弘君) 御指摘のとおりでございますが、専門家会議におきまして、国は、福島県の県民健康調査甲状腺検査について、分析に必要な臨床データを確実に収集できる調査実施体制となるよう福島県を支援するべきであるとしております。
〔委員長退席、理事浜野喜史君着席〕
 これを受けまして、県民健康調査の甲状腺検査の結果、甲状腺がん、あるいはその疑いで引き続き医療が必要である場合の支援につきまして、平成二十七年度予算に計上したところであります。
 そして現在、どのような支援が可能か、その枠組み、手続等について検討をしているところであります。

○紙智子君 是非しっかり充実をさせていただきたいということを求めておきたいと思います。
 それで、甲状腺検査なんですけれども、報道によりますと、甲状腺検査を独自に行っている自治体もあるんですね。茨城県の龍ケ崎市、あるいは東海村、常総市、かすみがうら市、それから牛久市、つくば市などです。無料のところもあれば、三千円から五千円ぐらい助成している自治体もあります。
 もう一度環境副大臣にお聞きするんですけれども、自治体独自になぜこの甲状腺がんの検査を行っていると思われますか。

○副大臣(小里泰弘君) 福島県近隣県の市町村におきまして、独自の判断で甲状腺検査を実施、あるいはまた一部費用の助成を行っている、そのことは承知をしているところでございまして、その実施理由につきましては、被曝による健康影響への不安を払拭又は軽減すること、記録を取り経過を観察すること、子供への被曝の影響を長期にわたり見守ること、各自治体が独自にしっかりとしたデータを持つことなどが理由としてあると承知をしております。

○紙智子君 福島県は福島県の健康調査をやっているわけですけれども、国はやっていません。やっぱり住民の願い、今お話あったように不安の問題ですとかいうこともある中で、その願いに応えて調査をやっているということだと思うんですね。
 その自治体自治体の取組に対しても国も支援をするべきじゃないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。これは副大臣です、環境省。

○副大臣(小里泰弘君) 今般の原発事故による放射線に係る住民の健康管理につきましては、専門家の御意見を十分に尊重した上で、コンセンサスが得られた科学的知見に基づいて進めることが大事であると認識をしております。
 福島近隣県では、各県で開催された有識者会議の結論として今のところ特別な健康調査等は必要ないとの見解が取りまとめられているところでありまして、また国際機関であるWHOやUNSCEARの報告書でも福島県外における健康調査の必要性は指摘をされていないところであります。

○紙智子君 被曝の影響というのはすぐには出ないわけですよね。やっぱり何年かしてから出てくるということなので、継続して見ていくということが必要だというふうに思うんです。
〔理事浜野喜史君退席、委員長着席〕
 先ほど紹介しました浪江町では、毎年実はこの甲状腺の検査を行っています。避難者は全国にいますから、浪江町に来てもらうのは大変なものですから、不便さの解消をしながらも、この健康管理を徹底するために、全国各地にある民医連ですとか、全国民主医療機関連合会や独立行政法人の地域医療機能推進機構と甲状腺検査の契約を結んで、対象年齢も大幅に引き上げて毎年検査をすることにしていると、こういう安心の積み重ねが浪江町に帰ったときの安心につながるんだというふうにお話をしておりました。
 福島県の近隣県で独自に甲状腺検査が行われています。それを支援するのではなくて、この環境省の専門家会議の結論で特に問題ないんだということで終わらせてしまうのではなくて、むしろやっぱり復興庁などが、子ども・被災者の支援法に基づいた健康調査が行われるようなリーダーシップを発揮するべきではないかと思うんですけど、今度はちょっと竹下復興大臣にお聞きします。

○国務大臣(竹下亘君) 子ども・被災者支援法第十三条には、原発事故により放出された放射線に関して、健康への影響に関する調査等といった施策について国が必要な施策を講じるべき旨を定めたものというふうに承知をいたしております。
 具体的には、環境省において必要な施策を検討し、実施をしているところでございます。
 今後とも、地元自治体や被災者の声をよく聞きながら、環境省を含め関係省庁と連携し、引き続き必要な施策の推進に努めてまいりたいと、このように考えております。

○紙智子君 環境省の専門家会議の中間取りまとめで、甲状腺がんについて、福島近隣県における今後の方向性ということで、甲状腺がんに対する不安を抱えた住民には個別の健康相談をすることが重要というふうに指摘をしています。
 それで、個別というのはどういう意味なのか、また環境省に確認したわけですけれども、そのときに、講演会とかシンポジウムを行ってきたんだけれども、さらに車座座談会も行って相談に応じるという回答だったわけです。それで、個別相談ということですから、これ集団で相談に応じるだけではなくて、やはりいつでも相談できる医療機関や医師の配置やフリーダイヤルの設置などが必要ではないかと思うんですけれども、もう一回、副大臣、お願いします。

○副大臣(小里泰弘君) 個別の健康相談についてのお尋ねでございます。
 この原発事故によりまして、福島県外でも放射性物質による汚染が生じたことから様々不安を抱えた住民の方々がおられるところでございます。
 御指摘の専門家会議の中間取りまとめにおきまして、自治体による個別の相談や放射線に対するリスクコミュニケーションの取組について一層支援すべきであると御指摘をいただいております。
 このようなことを踏まえまして、環境省としましては、リスクコミュニケーション事業の継続、充実を進め、地域のニーズに合わせた柔軟な、かつまたきめ細かな事業に努めることとしておりまして、自治体による個別の相談についても、リスクコミュニケーション事業の枠組みの中で必要な支援を検討していきたいと考えております。
 もし、更に具体的な答弁が必要であれば、事務方から答弁させます。

○紙智子君 今答弁していただいたんですけれども、是非、やっぱり一人一人の皆さんのそういう要請に応えられるような形で充実をしていただきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、専門家会議の中間取りまとめで、甲状腺検査について一律に実施することについては慎重というふうに書いてあるわけですよね。一律にと言わないで、これ希望に応じて実施すればいいんじゃないかと思うんですけれども、この点についてはいかがですか。

○副大臣(小里泰弘君) 一律を超えて希望に応じてということでございますが、なかなか難しいところでございます。
 委員も御承知おきのことであると思いますが、この調査を希望に応じてであれ行うことにつきましては、様々メリット、またデメリットもあると承知をしております。特に、身体に影響のないものまで発見してしまう、あるいはまた疑陽性であって実際には影響がなかったということなども、発見することによって体験しないでいい不安とか、またストレスにつながってしまう、そういったことも聞き及ぶところでございます。非常に難しい問題であるなと考えております。

○紙智子君 環境省の専門家会議、度々紹介されているわけですけれども、被害者からは聞き取りをしているわけではないという点でも、健康被害はないという取りまとめを行ったという点でも、被害者の認識とやっぱりずれがあるというふうに思うわけです。
 その辺が非常に問題だと思っているんですが、子ども・被災者支援法の第十三条、先ほど復興大臣も紹介していただいたんですけれども、「国は、」「少なくとも、子どもである間に一定の基準以上の放射線量が計測される地域に居住したことがある者及びこれに準ずる者に係る健康診断については、それらの者の生涯にわたって実施されることとなるよう必要な措置が講ぜられるものとする。」と定めているわけです。ですから、これ国の役割って本当に大きいというふうに思うんですね。
 それから、健康調査は集中復興期間内で終わるものではないというふうに思います。福島原発事故の責任が、やっぱりこれ国と東電にあるということである以上、国はこれまで以上に健康調査を充実させるべきだというふうに思います。
 最後にもう一度大臣の見解を求めたいと思います。

○国務大臣(竹下亘君) 子ども・被災者支援法の十三条によりまして、様々な、国が必要な施策を講ずるべき旨を定めていることはもちろん承知をいたしておりますし、具体的には、これは環境省においてこれまでもいろいろやってまいりましたし、これからもいろんなことをやっていかれるだろうと。ただ、むやみな範囲を広げるとか、何でもかんでも無料にするとかということは多分ないだろうと私は思います。それが本当にいいことなのかなということも含めてそう思います。
 今後とも、地元の自治体や被災者の声をよく聞きながら、環境省ともよく連携をいたしまして、引き続き必要な施策を実施をしていきたいと考えております。

○紙智子君 むやみな広げ方なんていうのは言っているわけじゃありません。私たちも言っているわけじゃないですけれども、いずれにしても、子ども・被災者支援法は、自民党から共産党まで含めて超党派で本当に一生懸命話し合って、その被害に遭われた方々の立場に立って提案し、決められたものですから、その提案した理念というか、そこをやっぱり後退させてはならないということを改めて申し上げまして、質問を終わらせていただきます。