<第187回国会 2014年11月18日 農林水産委員会>


米価暴落 農家は年越せない/政府の対策を批判
○農林水産に関する調査
○外国人漁業の規制に関する法律及び排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の一部を改正する法律案(衆議院提出)

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 米価暴落問題についてお聞きします。
 この問題は、事の重要性から、私ども、九月二十四日に大臣宛てに申入れを行って、政府として、過剰米の市場隔離を始め、米に対する需給調整を直ちに行うことと、今年度の米の直接支払交付金の半減措置を撤回をして、農家の経営安定対策を取ることを求めました。
 これに対する農水省の対応は、需給調整はできない、ナラシ対策で対応するの一点張りだったわけです。で、十一月十四日になって、農水省はやっと平成二十六年産米等への対応についてということで発表して、緊急対策として、当面の資金繰り策とナラシ対策の運用改善などの対策を打ち出しました。
 そこで、お聞きしますけれども、当面の資金繰り対策として、農林漁業セーフティネット資金の円滑化や実質無利子化を打ち出しているわけですけれども、これは、対象となる稲作農家は認定農家、主業農家、集落営農だけで、それ以外の農家は対象になりません。また、無利子といっても一年目だけで、十年貸付けということになると、これは〇・四五%の利子で九年間は利子が付くわけですね。要は借金だと。既存資金の償還猶予もお願いベースでやりますから、これ、金融機関と稲作農家の相談次第と。相談の結果できないということもあるわけですね。
 結局、米価暴落で年越しもできない農家に対して、これは新たに借金をしてしのげというもので、何の対策にもなっていないんじゃないかと思いますけど、いかがですか。

○政府参考人(奥原正明君) 当面の資金繰り対策でございますけれども、ナラシ対策はこの二十六年産についても措置をされているわけでございます。標準的な収入から下がった場合に、下がった分の九割を補填するということになりますけれども、これにつきましては、三月までの価格を見るということになっております。実際上の三月の米価が分かりますのは四月の下旬ということになりますので、このナラシの交付金が出るのは大体五月から六月にかけてということになりますが、それまでの間をどうやって資金的につなぐかというのが今回の資金繰り対策でございます。
 御指摘がございましたように、日本政策金融公庫ですが、ここの農林漁業セーフティネット資金、これを借りやすいように措置をいたしまして、かつ一年間については無利子にするという措置まで講じているわけでございます。
 ナラシが出るまでのつなぎということで使っていただけば、その間は無利子ということになりますので、事実上はこのナラシ対策の交付金が早めに手当てできるのと同じことになるという対策として仕組んだものでございます。

○紙智子君 ナラシ対策の運用改善というのは当然のことだと思いますけれども、来年の五月以降の話ですよね、今の話でも。
 そもそもナラシ対策というのは収入変動をならすだけですから、だからナラシなんですけど、望ましい生産者の手取り米価水準の実現を何ら保証するものではありません。結局借金でつなげということじゃないかと思うんですね。
問題は、この対策の中で、農協系統などに早期の追加支払の要請と周年安定供給のための売り急ぎ防止対策を求めていることです。早期の追加払いをするためには、早期に売りさばかなきゃいけないわけですよね。で、それをやると、売り出す量が多くなれば市況が悪化するわけですから、それを防ぐために今度は売り急ぎ防止対策を取れと。
 これ全く相反することを要請しているわけですよ。
 こんな矛盾した要請はないと思うんですね。
 本来国が責任を持つべき需給調整を放棄しておいてこんな矛盾した要請をするというのは、極めて問題じゃないかと思いますけど、いかがですか。
 アクセルとブレーキですよ。

○政府参考人(松島浩道君) まず早期追加支払についてお答え申し上げます。
 先週十四日に公表させていただきました農水省の対応の中で、全農、経済連等に対しまして、二十六年産米の概算金への追加払いにつきまして、可能な限り早期に支払われるようお願いするという要請を行いました。
 この提案につきましては、通常、二十六年産米につきましては、九月から売却が始まるわけでございますけれども、一年間を通して販売が行われるということでございまして、その追加支払につきましては、十、十一、十二という販売が行われる中で、年間を通じてどの程度の価格水準で販売が可能かという見通しが立つという前提で、これまでの過去の経験を見ますと、JAによって異なりますけれども、年末なり年明け早々に追加支払が行われているという実態がございます。したがいまして、そういったことも、過去の経緯も念頭に置いて、そういった中にあっても早期に支払われるようお願いしたという経緯があるということでございます。
 また、売り急ぎ防止対策について矛盾しているのではないかという御指摘がございました。
 これは、売り急ぎ防止対策につきましては、これは政府ではなくて米穀機構において検討されている仕組みでございますけれども、米穀機構が、自らの資金を活用いたしまして、二十六年産米を早く売り切ろうとして収穫後の早い時期に集中的に売られる、こういったことを防ぐために、長期間掛けて計画的に販売される米に対しまして追加的に必要とされる保管料について支援をするというものであるというふうに聞いております。
 こういった対策によりまして、米が安定的に販売され、生産者から受託を受けました集荷業者が長期間掛けて米を販売しても追加的費用が掛からないということであれば、米が年間を通じて安定的に販売されますので、需給状況に応じた米の価格形成に資するものというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 この売り急ぎ防止対策、これは農協系統が長期計画的に販売する米をそれぞれの農協が保管した場合は、その保管料を米穀安定供給確保支援機構が支援するということですよね。その保管規模も保管年数も決まっていないわけです。
 そして、その期間に保管して、結果的に販売ができなかった場合のリスクをどうするのかというと、それぞれの農協が持つというもので、これほどいいかげんな対策をもう聞いたことがない。発表するのであれば、きちんと保管規模や保管年数を、さらにリスク対策も、明確なものを発表すべきだと思うんですよ。
 こんないいかげんなもので、政府は米価の対策をしたというふうに言えるんでしょうか。

○政府参考人(松島浩道君) 米穀機構及び米の生産者団体におきましては、本年産は、概算金の大幅な低下ということから明らかなように、需給の緩和見通しの中で、米の売り急ぎをしたことがこの米の価格の低下につながっているという共通の問題意識を持っておりまして、こういった事態を改善するために二十六年産米の周年的な安定的な販売ということが大事であるという認識に立ちまして、今回農水省が発表する際に合わせて、民間の取組としてこういったことを公表したいということで、私どもの発表ペーパーの中に盛り込んだという経緯があるところでございます。
 委員からお話ございましたように、まだ具体的な内容、実施時期については、現在、米穀機構において生産者団体を交えて検討しているところでございますけれども、できるだけ早く検討が進むように当方からも要請していきたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 とにかくすごくもういいかげんな対策ですよ。これはもう急いで出したという感じですよ。
結局、これまで一万五千円支払われていた直接支払交付金ですね、これを半分の七千五百円にして、米価暴落は国として何の需給調整もしないと。
 年越しは新たな借金でしのげと。農協には、早期の追加支払のための販売促進と、売り急ぐなというこの長期保管を依頼する矛盾した要請をする、とても対策とは言えない代物だと思うんです。
 しかも、十二月十五日までに直接支払交付金を支払うようにしているというんですけれども、これまでも直接支払交付金は大体九五%は年内に支払ってきたわけですよ。何か今新たにというんじゃなくて、今までもそうだったわけですよ。それをあえてこう言うというのは、これ、選挙目当てと言われても仕方がないと思うんですね。
 問題は、どの国もやられている農産物の価格支持と所得補償を政府が放棄していることだと思います。アメリカなんかでは、米や麦などの主要作物の生産費を確保する価格保証、所得補償があるわけです。価格暴落のときには三段階で補償するようになっていると。一つは、生産が続けられる最低水準の融資価格までの支払。二つ目は、面積当たりの一定額の固定支払。三つ目は、それでも生産費の水準の目標価格に達しないときはその差額分の不足払いと。
 アメリカでもやられているような、生産コストを賄う米政策、何でこれ日本でできないんでしょうか。大臣、お願いします。

○国務大臣(西川公也君) 日本の農業政策の中でも、価格政策がずっと主流でやってきたわけですね。しかし、そういう中で、WTOの問題等もあって、これはなかなか理解が得られないということで所得補償に切り替えたと。こういうことで所得補償政策で今やっているわけでありますが、需給のバランスが取れなければ、価格が期待以上に下がってしまうと、こういう大きな問題等があるわけであります。
 そういう中でありますから、所得補償の考え方の中で、今度は経済対策の中で何ができるかと。
 やっぱり一番は、先ほども申し上げましたけれども、需要と供給のバランスが崩れていると。ここに、やっぱり価格形成が非常に農家が困る状態だと。こういうことになってきているわけでありますから、私どもは、所得補償の中でも、よく需要と供給のバランスが取れるように指導を強めていきたいと、こう考えております。

○紙智子君 いろいろ今おっしゃったんですけど、やっぱり最大の問題は、政府が米の需給調整さえ拒否して市場に任せようとしているということだと。それこそ、アベノミクス農政というふうに思うんですけれども、今やアベノミクス農政の看板の農業所得倍増計画なんていうのは、農村地域で、現場でいえば、米価を暴落させておいて何が所得倍増かと。もう嘲笑の的ですよ、これは。
 生産調整を廃止して、担い手と言われる農家でさえも展望が持てないと言っているわけで、この担い手が離農を始めたら日本の農業支えられないという、そういう深刻な問題だということをしっかり受け止めるべきだと思います。
もう、ちょっと時間になってきましたので、最後、豪雪に伴う問題についてお聞きします。
 今年二月に、関東地方を中心に大雪で農業用ハウスを中心に大きな被害を受けて、農林水産省は新たに被災農業者向けの経営体育成支援事業、いわゆる農業用ハウス等の再建、修繕の助成金を打ち出したわけで、これは非常に自治体も含めて期待が高まっていたわけですね。ところが、既に九か月たっているのに農家は助成金が届いていないという事態なんですね。余りにもスピード感がなさ過ぎるじゃないかという声が上がっているわけです。
 農業用のハウス支援事業の要請額と支払額がどうなっているのかということで改めて調べてみたら、埼玉県でいうと、要望額は百三十億円、支払額は三十二億円。群馬県は、要望額百五十四億円、支払額は百万円。栃木県は、要望額が四十三億円に対して支払額二千八百万円。茨城県は、二十四億円の要望に対して支払百万円ですよ。何でこれしか支払われていないんでしょうか。

○政府参考人(奥原正明君) 大雪対策の被災農業者向けの経営体育成支援事業の関係でございます。
 これにつきましては、市町村から都道府県経由で国の方に対して事業計画が提出をされまして、本日までに総額で六百十五億円の都道府県に対する配分通知を行っております。さらに、この事業の着工に必要な金額といたしまして、これは都道府県からの交付申請を受けるわけでございますが、これに基づきまして、三百十二億円、これを都道府県に対して交付決定を既に行っております。国が交付決定を行った分につきましては、市町村、都道府県から概算払の請求が行われますと、すぐに国から都道府県に概算払を行うということになっておりまして、本日までに都道府県に対して行った概算払は五十八億円ということでございます。
 現時点でのこの事業の申請者、全部合計いたしますと三万六千名いらっしゃいます。それぞれの地方公共団体で相当事務の負担が大きくなっているということもあるかと思います。それと、撤去は大体のところが終わっておられると思いますけれども、ハウスの再建まで至っている方がそれほどまだ多くはないということがございまして、この概算払の申請がまだそれほどペースが上がっていないという状況にございます。
 ですが、一日も早くこのお金をきちんと交付をしていくということが大事でございますので、地方公共団体とも連携を密にし、いろいろ協力もしながらできるだけ迅速に支払をしていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 既に、その申請をしてきたと思っているのに、農家の手元に届いていないと。それで二年もこれ休まなきゃいけないということになったら、もう続けるかどうかということも考えているという状況があるわけです。
 群馬県なんかは申請を打ち切ったというふうに言われていて、これは、ちょっと時間もあれですけれども、後で聞いたら、その後からちゃんと上がってきているのは対応しているという話なんですけれども、それをちょっと確認します。ちゃんと対応されているんですね。

○政府参考人(奥原正明君) この事業の実施に当たりまして、各都道府県の方では、この事業に要する費用ですとか補助金額を把握するために、一定の期日を定めまして、市町村から事業計画の提出を求めたものというふうに認識をしております。特に、この被害が甚大でありました群馬県ですとか埼玉県、こちらの方は申請者の数も多いということもございまして、書類の確認等に時間を要するということも想定をして、早め早めに対応を行ったものというふうに聞いております。ただ、これはあくまでも作業上の一つの期日でございまして、群馬県の方でも九月の九日を期日として市町村から一旦この事業計画の提出を求めましたが、この期日を過ぎたからといって申請を打ち切るということではございませんので、これ以降に提出された事業計画についても随時受け付けているというふうに承知をしております。

○紙智子君 はい、確認しました。
 もう最後ですけれども、自民党政権に復活して二年たったわけですけれども、結局農民が望んでいない、願っていないようなTPPはどんどん推進すると。日豪EPAも、この間、十分な審議しないで決めるという形で不信、不安を広げているということなんですね。その一方で、こういう米価の問題とか、あるいは豪雪の問題とか、もう機敏に対応しないと。こういうやっぱり農政というのは、本当に力の入れどころが違っているんじゃないかと思うんですね。
 やっぱり、安倍農政の、この二年間を見ての実態だと思いますし、これ以上やっぱり続けることが農民、農家にとっては非常に不利だということでは、国民はもう早く審判したいと思っていると思うので、解散・総選挙で是非これは国民に信を問うていただきたいということを最後に述べまして、質問を終わります。


○委員長(山田俊男君) 外国人漁業の規制に関する法律及び排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。提出者衆議院農林水産委員長江藤拓君から趣旨説明を聴取いたします。江藤拓君。

○衆議院議員(江藤拓君) ただいま議題となりました法律案につきまして、提案の趣旨及び内容を御説明申し上げます。
 本案は、我が国の領海及び排他的経済水域における外国漁船の違法操業の実態等に鑑み、外国人の漁業等の禁止又は許可に係る違反及び立入検査の拒否等に関する罰則の強化等を行おうとするもので、その主な内容は次のとおりであります。
 第一に、外国人漁業の規制に関する法律の一部改正についてであります。
 本邦の水域における外国人による漁業、水産動植物の採捕、採捕準備行為及び探査の禁止に係る違反に関する罰金の額の上限を、四百万円から三千万円に引き上げるとともに、漁業監督官又は漁業監督吏員による検査に関する規定を漁業法とは別に設けることとし、その拒否等をした者は、漁業法における罰則より重い六月以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処することとしております。
 第二に、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の一部改正についてであります。
 我が国の排他的経済水域における外国人による漁業及び水産動植物の採捕の禁止又は許可に係る違反に関する罰金の額の上限を、一千万円から三千万円に引き上げるとともに、漁業監督官による検査に関する規定を漁業法とは別に定めることとし、その拒否等をした者は、漁業法における罰則より重い三百万円以下の罰金に処することとしております。
 なお、この法律は、公布の日から起算して十日を経過した日から施行することとしております。
 以上が本案の趣旨及び主な内容であります。
 何とぞ、御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願い申し上げます。

○委員長(山田俊男君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。
 これより質疑に入ります。──別に御発言もないようですから、これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。
 外国人漁業の規制に関する法律及び排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。
   〔賛成者挙手〕

○委員長(山田俊男君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。