<第187回国会 2014年11月6日 外交防衛委員会、農林水産委員会連合審査会>


日豪EPAは、重要農産物を関税撤廃・削減の対象から外すとした国会決議に反する

○経済上の連携に関する日本国とオーストラリアとの間の協定の締結について承認を求めるの件

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 日豪EPAについて、西川農水大臣にお聞きしたいと思います。
 農林水産省は、日豪EPAの交渉に当たってという文書を日豪EPA交渉を開始する際に発表しています。それを見ますと、「今後の交渉の基本方針」として、「重要な農林水産物が除外又は再協議の対象となるよう、多様な農業の共存を目指し、粘り強く交渉します。」としています。もちろん、これは二〇〇六年の国会決議を踏まえた方針です。
 それで、大臣として、二〇〇六年の国会決議及びこの基本方針と、今回の日豪EPA、すなわち牛肉の関税の引下げや乳製品のチーズの輸入拡大を進める合意案は、これは明らかに決議に抵触、違反だというふうには思われませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 私どもとしましては、国会決議を守り抜くための交渉をしてまいりました。あとは、御判断は国会にしていただくと、こういうことでございまして、御理解をいただきたいと思います。

○紙智子君 米は除外になっているけれども、しかしそれ以外はそうなっていないということであります。
 それで、国会決議は、再度言いますけれども、重要品目が除外又は再協議の対象となるようとしていまして、牛肉というのは重要品目です。政府が、この間、質問のやり取りで、メリット、デメリットはどうかと聞かれたら、答弁の中で、デメリットとしては牛肉の関税率引下げがあるというふうに言っているわけですよ。明らかにこれ、国会決議に反するんじゃないですか。これ、明快じゃありませんか。
 今年の四月三日、昔の話じゃないです、今年の四月三日ですよ、日本消防会館で日豪EPA交渉にかかる国会決議実現に向けた緊急全国要請集会が開かれました。ここに西川大臣も参加をされて挨拶をされています。
 ここでは全中の飛田副会長がこう言っています。決議には除外とある、文字どおり除外で、関税削減も認められない、是非決議を実現してほしいと代表要請をされたわけですね。
 これに対して、森山裕自民党農水貿易対策委員長は、自民党での決議は総務会でも了承をもらったため、党として最高の決議なんだと、この決議を基に衆参の農水委員会でも決議された、しっかり守り抜くのは当然のことで、政治の信頼に関わる問題だと演説をされたんですよ。
 西川大臣は、そのとき、当時は自民党のTPP対策委員長だったわけですけれども、安倍首相にみんなの気持ちはこうだと伝えて判断してもらうことになる、私も皆さんと一緒に何としても勝ち取るべく努力していくと、こういうふうに演説をされたわけですね。
 まさに、こう演説していて牛肉の関税を下げていくということで合意したということは、これ、政治の信頼に関わる問題じゃありませんか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 牛肉の現在の関税率は三八・五%。それで、私もTPPの交渉時にオーストラリアのロブ大臣とも意見交換をしました。日本の政府もオーストラリアの政府も早く、七年も掛かっているEPAですから合意したいと、こういう状況の中でいろいろお話を聞きました。
 その中で、冷蔵肉も冷凍肉もオーストラリアの主張は一本だと、さらに関税についても全体で半分以下だと、こんな主張でありました。しかし、私はそれを決める立場にありませんので、それらの意見を聞きながら党内の皆さんと相談をさせていただいたと。その結果、牛肉の冷凍肉と冷蔵肉は分かれることができて、冷蔵肉については二三・五%、冷凍物については一九・五%、こういうことになったわけでありまして、それを私どもが、今大事にしております国会決議と整合性については守られたという御評価をいただけるように努力してきたつもりでおります。

○紙智子君 今のお話聞いていても、農業者との約束、国民との約束、どうだったのかという話ないじゃないですか。党内で相談して、そして、それでもって了承を得たからこれで頑張ってやれたんだというのは、これ全然当てはまらないですよ。これは私とっても納得できないし、政治家として自らの言明に責任が問われている問題ですよ。もう到底許されないと思いますね。
 集会に参加した青年協議会の会長さんは、その集会の中で、皆さんの政治家の発言聞いて、非常に心強い言葉をいただいたと、政治は信なくば立たず、そういう言葉もあると、是非決議を実現してほしい、実現してほしいと言ったわけですよ。これに反するじゃないですか。
 そして、政府はセーフガードがあるからというふうに言うんだけれども、これ二年で一〇%も牛肉の関税率は下がるわけですよ。それを防ぐことはできないんですね。合意文書を交わせば、来年の四月から一〇%いきなり下がるんですよ。これ、止められるんですか、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 今、冷凍肉の話を例えられたと思います。これ、条約が締結されていけば、当然初年度に八%、そして次の年に二%と、こういう下がり方を冷凍肉はなるわけでありますが、後は余り下がらないということでありますが、全体を見て、私どもは、非常に厳しい要請、オーストラリア側からの要求でありましたが、我々はぎりぎりそこをここでとどめたと、こういうことでございまして、これは国会の委員会の場でどうぞ御判断をいただきたいと、こう考えています。

○紙智子君 とどめたなんて言わないでほしいんですよ。これ、セーフガードがあるから止めると言うけれども、実際上は、確かにたくさん入ってきたら、一遍に、量的には発動して止まるかもしれないけど、価格の下落は止まらないですよ。大変な問題ですよ、これは。来年四月といったらもうすぐじゃないですか。あと五か月後ですよ、来年の四月は。
 今日の農業新聞には、既に流通業界は、協定発効を踏まえて、年明け以降、オーストラリア産牛肉の特売セールを検討中というふうに書いているんですよね。
 今年四月の集会でも、北海道のJA士幌の組合長は、このままでは将来に希望が持てず農業をやめる農家も出てくる、それは地域の崩壊につながる、絶対妥協してはいけないと言ったんですよ。福島のJAたむらの組合長は、もうこれ以上農業経営に打撃を与えないでほしい、交渉で自動車と牛肉を引換えにすることだけはやってほしくない、こう言った。それぞれ訴えられたわけですね。
 とりわけ、関税削減が大きい冷凍牛肉と品質が競合する乳用種への影響は大きいわけです。西川大臣はこれらの訴えにどう応えるんですか。今回の日豪EPA協定はこれらの声にもう正面から反するものだというふうに思われませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) この日豪EPAの問題は国会でまず御判断をいただく、これはもう動かせない決定でございます。
 そこで、今、冷凍肉について、日本の肉に影響が出ないかと、こういう話でありますが、私どもとしては、この影響は出るとしても最小限にとどめたいし、この機を生かしましてほかの対策等についても影響を見ながらやっていきたいと、こう考えています。

○紙智子君 影響を最小限にとどめたいと言いますけれども、それに対しても試算だって出していないじゃないですか。もう思いとしては最小限にとどめたいと言っても、担保することが何ら証明されていないわけですよ。そういう中でやるというのは本当に許されないと。
 再度言いますけれども、大臣はあの集会の中で、安倍総理にみんなの気持ちはこうだと伝えて判断してもらうんだと、私も皆さんと一緒になって何としても勝ち取るべく努力していくと言われたわけですよ。これは、安倍総理を説得しても勝ち取っていくんだということを言われたんだとみんな思ったわけですよ。それがどうして牛肉の関税下げて勝ち取ったということになるんですか。これがどれほど農民にも国民にも失望を与えているかというふうに思いますし、政治への不信感を広げることになると思いますよ。
 しかも、こんな大事な問題なのに全く不十分な質問時間で、まあ連合審査ということになったことはいいですけれども、たった一時間半の中でこんな大事なことを判断なんかできないというふうに思います。
 そういう意味では、こういうことについて採決まで行くというのはすべきではないということを強く申し上げまして、私の質問を終わります。