<第187回国会 2014年10月16日 農林水産委員会>


西川農水相・安愚楽牧場からの献金認める/米価暴落対策を要求/ビキニ水爆被災船資料の再調査を約束

○農林水産に関する調査

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、西川農水大臣にお聞きいたします。
 まず、大臣の政治倫理上の問題について、これは栃木県の安愚楽牧場の事件についてです。
 黒毛和牛の委託オーナーの被害者数七万三千三百五十六人、被害総額四千二百七億六千七百万に上って、この代表取締役が特定商品預託法の違反の併合罪で懲役二年十か月の有罪判決を受けています。元々は、被害が続出した特定商品等の預託等取引契約に関する法律に家畜が追加規制されるきっかけとなった和牛預託商法の流れをくむ事件です。
 安愚楽は二〇〇二年からは自転車操業状態で、繁殖牛の充足率も七割に満たないものでした。それでも隠して投資を呼びかけていっていたと。大臣はこのような安愚楽牧場についてはどう思われていたでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 安愚楽牧場の件に関しまして、安愚楽牧場が出資者に対し損害を与え、経営者が有罪判決を受けたことについては承知しております。

○紙智子君 既に報道もされているんですけれども、大臣はこの安愚楽牧場から、二〇〇六年から二〇一〇年までに百二十五万円の政治献金を受けたと。大臣の御長男も安愚楽牧場の顧問をされていました。
 安愚楽牧場の経営状態を当時から知り得る立場だったんじゃないかというふうに言われているわけです。それなのに、七万人を超える被害を出した当該企業から政治献金を受けていたと、その政治責任というのは極めて重いと言わざるを得ないわけですけれども、大臣としては、政治倫理上どのように責任を取られるおつもりでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 私が以前に安愚楽牧場から献金を受けていたことは事実であります。この献金につきましては、既に受け取った献金は全て返金を完了しております。
 それから、私の長男についてのお話がありましたが、安愚楽牧場から労働の対価として報酬を受け取っていたものであり、問題はないものと考えております。

○紙智子君 お金は返したということなんですけれども、返したらそれでいいのかというふうに思うんですね。これ、七万人もの人が被害を受けていて、しかもこれ、まだ解決していないですよね。この七万人の中には、本当に生涯がそれこそめちゃくちゃになったとか、それでもって体を壊したという方もいらっしゃるわけで、そういうところから、まず受け取ってはいけなかったんじゃないかというふうに思うんですけれども、大臣としてどうお考えですか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 有罪判決を受けたと、こういうことでありますから、私は受け取った献金は全て返金を完了しております。

○紙智子君 その前後関係というのはありますよね。だから、分かっていたのに受け取ったのかと、それとも全く知らなかったのかということをめぐっては、これは事実がどうだったのかということは今のお話だけでは分かりませんから、私は、やっぱり政治倫理の問題というのは大臣の資格に関わる大事な問題なので、引き続きこの問題はやらせていただきたいと思っております。
 次の質問ですけれども、先日の所信的発言の中で大臣は、農林水産業の所得を増やすため全力を挙げるというふうに言われました。私は、そうであるなら、目下のところ、最も切実なこの米価下落問題について、緊急に対策を打たなければならないというふうに思うんです。
 私、千葉と茨城に行きまして、農家から話を聞きました。二〇一四年産米の概算金が前年比で二千円から三千円下がっていると、全国的には六十キロ当たり一万円を割って、一部銘柄を除くコシヒカリが九千円台、それから東北の主要銘柄が八千円台など、生産現場に衝撃を与えているわけです。
 米の生産費は六十キロで一万六千円、これ二〇一〇年ベースですけれども、なわけで、全国の米農家から、今年の資金繰りができないし、これでは来年の作付けの見通しが立たないと、米作りも終わりだと悲痛な声が上がっているわけです。
 まず大臣に、この概算金が過去最低の県が続出しているという認識があるか、またその現状に対する大臣の御認識を伺いたいと思います。

○大臣政務官(農林水産大臣政務官 佐藤英道君) 九月十五日現在の二十六年産米の作柄概況によりますと、確かに作況指数は一〇一と見込まれておりまして、主食用米の予想収穫量は、昨年よりも二十八万トン少ない七百九十万トンと見込まれているわけでございます。
 二十六年産米の需給状況につきましては、収穫や販売が本格化するのは十月以降でございますこと、また夏以降、日照不足などの天候不順が続いておりますことから、収穫の実測で生産量の把握がなされる十月十五日時点の作柄の状況をよく注視していく必要があるものと考えております。
 このような中で、JA等が農家に支払う米の概算金が下がって、農家の方々に心配の声があるということは十分に承知をしております。この概算金は、販売の見通しを踏まえて農家に追加支払が行われるものであり、JA等におきましては、今後、販売の戦略を立て、農家所得確保の観点から適切に価格を設定し、しっかりと販売努力をしていただくことが重要であると認識をしているところでございます。

○紙智子君 ちょっと申し上げておきますけれども、質問通告のときに陪席を私許したのは、大臣がお答えになるという前提だったわけですね。ですから、大臣にお答え、お願いしたいと思います。
 それで、今お答えありましたけれども、今、米価下落に対して非常に危機感が高いわけですね。米穀機構の意識調査でも、米取引関係者の間で、この後も米価は下がるという見方になっているということですね。しかも、市場では既に低い概算金に合わせた価格で販売されていると。大阪のスーパーなどでもう安売り合戦が行われているわけです。茨城のコシヒカリは本体価格で五キロ、千二百八十円、千葉のコシヒカリは千四百八十円と。これ、四、五年前だったら二千円前後だったと思うんですよ、五キロで。
 そういうふうに概算金が低いというのは、市場に価格は下がるというメッセージになるわけですね。そこに合わせてスーパーなどの値下げ競争がされて、農家は低い水準で固定してしまうんじゃないかというふうに心配しているわけです。大臣、そう思われませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 私も常々申し上げておりますが、この概算金がどうしてこういう数字が出たかと、こういうことを非常に私もこれ分析をしなければならないと思っています。
 それで、過去に、十九年のときもこんな事情がありまして、私はこれでは農家の皆さんのお気持ちに応えられないと、こういうことで、私はたしか党の基本政策委員長だったと思いますが、同僚の皆さんと一緒になって概算金の額を上げたことがありました。
 今回も、いずれ追加払いがあるからと、こういう話もありますが、追加払いがあったとしても、この下げていく、下がりそうだと、この流れが止まらないかもしれません。そういう中でどういう対応をすればいいかと、こういうことを私ども真剣に考えていかなきゃなりませんし、この農家の不安に対してしっかり応えられるように体制を整えていきたいと、こう思っています。

○紙智子君 今お答えいただいているわけですけれども、私、二つのことを言いたいと思うんですね。一つは、大臣が所信的発言の中で、農家の所得を増やすんだというふうにおっしゃいました。ナラシ対策などでは、今農家の収入減の打撃を防ぐことはできても所得を増やすことにはならないんですよ。それがまず一つです。それからもう一つは、今、何で概算金を低く設定しているのかという話がありました。それで、やっぱり私、これは本質的には国が市場原理に任せるようにしてしまったということがあると思うんですよ。
 我が党は九月に大臣にこの米価下落対策を申し入れているんですけれども、やっぱり国民の主食である米については、これ安定供給、価格の安定に責任を国が持つべきだと、全て市場任せにすべきでないということをずっと主張してきました。今回の事態というのは、まさに国が安定供給や価格の安定に責任を持たず市場原理に任せた結果起こっていることじゃないのかと。
 西川大臣は、全農が低い概算金を出して、それが非常に問題だというお話をされたんだけれども、これ、なぜ低い概算金を設定したのかといえば、やっぱり市況を見て判断することになっているからですよね。去年の在庫もあるし、今年も一定の量が余りそうだし、業界からは値下げ圧力があると。そうしたら、在庫を抱えて、損をしないようにというふうに設定しようと思ったら、やっぱりそうならざるを得ないというのが市場原理じゃないですか。ここに根本原因があると思うんですけれども、そう思われませんか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 今御指摘がありましたが、確かにもう今は米の価格は民間で決めていただこうと、こういう話に変わってきたことは事実ですね。それがよかったかどうかということはありますが、米に関して国が価格に関与すべきでないと、こういう流れの中で民間で決定してもらうと、こういうことになったわけです。
 民間調査会社が九月十五日の作況に対して、米が余りそうだと、一〇一になりそうだと、こういうことを申し上げたところであります。そして、在庫も増えそうですねと、先行きこれは下がるかもしれませんねと、こういうメッセージになっていったと、こういうことではないかと思います。
 そういう意味で、実際の価格は、十月十五日の価格を今月中に分析して米の収穫量を決めていきますから、どういう状況になるかは分かりません。それから、最終的な収量は十二月末をめどに確定してまいりますけれども、そのような状況の中でどういう需要、生産量になるかと、こういうことを把握して、把握する途中でもやっぱり農家の声を聞きながら、私どもは何ができるかと、こういうことを考えながら政策を進めてまいりたいと、こう考えています。

○紙智子君 私は、国が関与すべきでないことになったと言うんだけど、そこがやっぱりそもそも違うんじゃないかと。安定供給や価格の安定に国は責任持つべきだと思いますよ。
 現場を歩きますと、来年もこの状況が続いたらもうパニックになるという声が出ているんです。米価の下落の緩和では対応できなくなるということですよ。行った千葉県のある農協では、全農の概算払が九千円だというけれども、組合員の状況を考えたら、我々としてはもう、ちょっと大変だと、だから独自に千円上乗せすることにしたんだというふうに言っていました。秋田の幾つかのJAもやっぱりそうやって上乗せをしています。それから、自治体サイドでもそれに対しての、暴落の対策ということでいろいろ対策を取るということに、独自でも自治体や農協サイドでやってきているんですね。
 これについてどう思われますか。

○大臣政務官(農林水産大臣政務官 佐藤英道君) JA等が農家に支払う米の概算金は、基本的には県単位で各県の全農、県本部、経済連が決定しているところでございますけれども、委員御指摘のように、地域におきましては傘下のJAが独自の判断によって上乗せなどの取組を行っていることは承知をしております。
 本年におけるJAの上乗せや自治体の支援を十分に把握しているわけではありませんけれども、概算金はJA等が農家に支払う仮渡金であり、販売の見通しを踏まえて農家に追加支払が行われるものでありまして、JA等におきましては、今後、販売戦略を立て、農家の所得確保の観点から適切に価格を設定し、しっかりと販売努力をしていただくことが重要であると考えております。
 いずれにしても、国としては、ナラシ対策などを措置し農家経営の安定を図るほか、主食用米から需要のある飼料用米など主食用米以外への転換を進めることにより米の需給の安定を図ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 では、次、大臣にお答え願いたいんですけれども、今やっぱりされている努力、生産意欲がそがれている現状を少しでも前向きにしようと、そういう努力をしているということで、そうしないと地域農業が崩壊するという危機感があるからだと思うんですね。そういう生産者の立場に立っての努力というのは私は立派だと思うんです。そういう努力されていること自体、本当によく頑張っているなというふうに思うわけです。そういう生産者の立場に立ってやっていくということでは、農協や自治体はそれぞれのところでは見えますけれども、だからといって全体的な需給関係を見て、そして全体をつかんで手を打つことはこれはできないんですよ、それぞれのところでは。だから、国が踏み込んだ対策をやって、安心してもいいよということをメッセージを出すべきだと思うんですね。
 先ほど来大臣は、何ができるか考えると言いましたけれども、是非この点でメッセージを出すべきだと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) まず、この十月十五日の作況が今月発表になります、末にですね。それから、十二月に確定的な作況が発表になります。今、一〇一と発表されていますね。それで、果たして幾つで落ち着くのかというのは私ども分かりません。しかし、過去の例からしますと、過去は、十二年間の数字を取りますと、八年間は途中の作況より下がったという結果が出ています。それから、あとの四年間は、途中、作況が出てから上がったという結果も出ております。そういう中で、この十月十五日の作況がどういう状況になるかというのをまず見定めさせていただきたいと思います。
 農家の皆さんが来年作ることに不安があると、これはもう本当に私ども農政の担当者としても非常に困ることでありまして、農家が水稲に進んでこれは作っていただけるように、約束の範囲内で作っていただくように、これは私どもは推し進めてまいりたいと、こう考えています。

○紙智子君 作況を見てからというその中身の、何を示すかの中身が大事で、やっぱり市場隔離するとか需給調整するとか、価格の安定のための踏み込んだ対策を打たなきゃいけないんじゃないかと。そうしないと解決しないと思うんですよ。それと、先ほども議論になっていましたけれども、やっぱり米の直接支払の交付金の半減措置、これはもう見直すべきだと、もう撤回すべきだというのは一貫して言っていますけれども、そう思います。
 そして、しっかり認識してほしいのは、これまで国が応援してきた大規模の優良農家とか集落営農で頑張ってきたところが悲鳴上げているんですよね。土地改良区なんかも、運営状況が非常に厳しいと。農家の経営が大変になったら賦課金を回収することできないという事態なんですよ。だから、行ったところの話でいうと、用水を週のうち二回休ませてやらないと回っていかないという、そういう状況になっているということですから、そこはしっかりと見ていただきたいというふうに思います。
 続きまして、EPAの問題、日豪EPAの問題についてお聞きします。
 当委員会でも日豪EPAの交渉開始に関する決議を可決をして、その中でも、米、麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目が除外又は再協議の対象となるように政府一体となって全力を挙げて交渉することというのが決議の第一項目になっているわけです。しかし、今回の日豪EPA協定は、除外どころか、冷凍牛肉の関税率は締結して二年間で一〇%引き下げると。それから冷蔵牛肉の関税率も締結した後二年間で七%も下げるわけですね。これだけ見ても国会決議に明確に反すると思うんです。
 大臣、今のこの極めて厳しい酪農、畜産状況の中でこのような決議違反の協定を批准しようとしていることについて、どのようにお考えでしょうか。

○副大臣(農林水産副大臣 小泉昭男君) 御指摘の部分でございますけれども、日豪EPAの協定の内容と衆参両院の農林水産委員会の決議との整合性につきましては基本的に国会に御判断をいただくものであると考えておるところでございますが、政府といたしましては、決議を踏まえて真摯に交渉を行い、国内農林水産業の存立及び健全な発展とを両立し得る合意に達することができたと考えております。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 紙委員、これだけでは不満かと思いますから、私からも答えさせていただきます。
 日豪EPAの問題で、確かに牛肉の問題、三八・五%を二三・五%に、あるいは一九・五%に、十五年と十八年掛けて冷蔵と冷凍をやりましょうと、こういうことになっているわけであります。
 ただ、この中身を見れば、数字を下げる云々よりも、セーフガードをすぐに発動できるようにしてありますので、そう簡単に牛肉の日本への輸入は増えてこないと、こう思います。
 それから、今、酪農家の話、されました。酪農家の話は、この牛肉の問題じゃなくて酪農製品の問題だと思いますが、これもいろいろ工夫されておりまして、この日本の牛乳とオーストラリアの牛乳と抱き合わせで製品を作っていくと、こういう仕組みを導入しまして、すぐに日本の酪農が傷む、こういう状況にはならないだろうと、こういうことでぎりぎりの交渉が進められたと承知しております。

○紙智子君 私は、農水大臣の答弁としては非常に甚だこれはもう不満足です。
 決議したのは農水委員会ですよ。衆参の農水委員会で決議したわけですよ、一番影響があるから。本来であれば、この当委員会で、日豪EPAの協定の国会決議に照らしてどうなのかということをよく審議しなきゃいけないと。それが、外務委員会と財務委員会だけで審議して批准してしまおうなんというのは、もうまさにこれ、国会決議をないがしろにするものだというふうに思うんですけど、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) この審議の委員会をどこでやるかというのは、私ども行政側が直接意見を申し上げることができませんで、これは議院側、国会側でお決めいただいたと、こう承知しております。

○紙智子君 それでは、委員長に要求いたしますけれども、今回の日豪EPAの協定については、本委員会の決議に明確に反するもので、当然これ、批准に際しては当委員会と連合審査をしていただきたいということを要求いたします。よろしく御検討ください。

○委員長(山田俊男君) 理事会で協議させていただきます。

○紙智子君 続いて、TPPの問題ですけれども、十月二十五日から二十七日まで、オーストラリア・シドニーで閣僚会議、十一月はAPECの会議があると。妥結に向けて、日本は関税の引下げで更なる譲歩を提案しているんじゃないかと不安の声が出されております。国会決議では、重要五品目の除外ないし再協議を明記して、それができないときは撤退を求めると。
 大臣に確認をしておきたいんですけれども、自民党のTPP対策本部長のときに、重要五品目の五百八十六品目の中で譲れるものはないかどうかということをめぐって具体策を検討されたという報道がありましたけれども、その立場というのはこの農水大臣になられてからも変わらないんでしょうか、変わるんでしょうか、いかがでしょう。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 五百八十六品目が重要五品目のタリフラインですね。そこで、交渉ですから、これから自由化率が幾つになるかというのが最終的に議論になると思います。
 しかし、私どもとしましては、五百八十六品目でどういう形で守り抜くかということからすれば、今の輸入の実態等も調べておかなきゃならないと、こういうことでありまして、私は守り抜くためにどういう実態かということを精査したと。これが実態であります。

○紙智子君 私は、守り抜くという立場であれば、もう余地なく、一つもやっぱりそれは譲れないと、動かせないということをはっきり言えばそれでいいことだと思うんです。まさか、一桁台であったとしても、関税率を残したということをもって守られたなんということはないだろうなというふうに思うわけですね。
 我が党は、TPPというのは原則関税撤廃というのがありますから、それで米国政府に限らず、まずスタートだったP4、四か国ですね、そのほかの交渉参加国もその原則の立場を維持しているわけですよ。前回の日米二国間の交渉においても、その原則をまた再び日本に対して確認をしているというわけで、まとめようとする妥協策自身が、日本の農業はもちろん、地域の崩壊につながりかねないということを考えれば、私は一日も早く撤退をすべきだということを求めておきたいと思います。
 それで、最後の質問になります。ビキニ被曝の問題について質問いたします。
 太平洋マーシャル諸島ビキニ環礁で一九五四年三月一日にアメリカが行った水爆実験で第五福竜丸が被災したことは多くの皆さんが知っているところです。しかし、アメリカが当時六回にわたって行った水爆実験で第五福竜丸以外の多くの日本の漁船と漁船員が被曝したことは余り知られておりません。
 太平洋核被災支援センターの山下正寿事務局長は、高校の教師をしながら、水爆実験に遭遇した乗組員の聞き取りや関係資料を調査しました。その結果、被災した漁船が延べ一千隻、船員は約一万人になることが明らかになりました。厚生労働省に一緒に要請に私も行きましたけれども、マグロ船第二幸成丸の乗組員の方一緒だったんですけれども、その人は、自分も灰をかぶったと、四十代から毎年のように仲間が亡くなっている、私も白血病や胃がんになったということで実情を語りました。
 アメリカの水爆実験で被災した船が第五福竜丸だけでなかったということを大臣は御存じでしょうか。そしてまた、この問題は日本の漁業や水産業に深刻な影響を与えたと思いますけれども、この二点について大臣の見解をお聞きいたします。大臣の見解をお聞きいたします。短くお願いします。

○政府参考人(水産庁長官 本川一善君) 今年一月に情報開示請求を受けまして、我々調査をいたしましたところ、情報開示請求としては、一九五四年から六〇年までに水産庁で作成したビキニ核実験に関連する文書一覧、一式というのを要求をいただきまして、保存年限は当時二十年、今で三十年でございますけれども、水産庁の倉庫に残っておるかというのを調査しましたところ、まさにおっしゃるとおり、ビキニ被災事件に伴う賠償措置の経過についてという水産庁文書が見付かって、これを開示させていただきました。
 それによりますと、米国から慰謝料二百万ドル、当時の七億二千万円を受け取りまして、これを水産庁ほかの省庁で各関係者に分配をするということを行ったわけでありますが、当然、第五福竜丸の乗組員を始め、マグロの生産者あるいは流通加工団体、こういった方に配付をしたということでございます。
 もう一つ見付かった資料は、船の名前と船主さんと、それに幾らお配りしたかという資料が見付かったんでございますが、これはまさにそれぞれの個人の情報が明らかになるということで、これは開示を差し控えさせていただいておりますが、その資料によりますと、影響を受けた漁船は千四百隻に上るというようなことが明らかになってございます。
 以上でございます。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 今、本川水産庁長官から詳しい話申し上げました。私も当時の資料の一端を見せていただきましたが、過去のことで、なかなか現実、分かりにくいことがたくさんあるわけでありますが、当時多くの漁業者に迷惑を掛けたと、これは誠に遺憾であると、こう考えております。

○紙智子君 山下さんは、アメリカの水爆実験に被曝の実相、全体像を明らかにするように何度も政府に求めてきました。情報を明らかにされなかったんですね。我が党の山原健二郎衆議院議員が衆議院の予算委員会で当時調査を求めても、当時の厚生省も水産庁も資料はないというふうに答弁していたわけです。
 ところが昨年、アメリカの公文書館で極秘文書が公表されて、日本の外務省も資料を開示しました。私、七月にこの太平洋核被災支援センターと二十一世紀の水産を考える会の方と一緒に厚生労働省に交渉に行きました。七月に言って九月に回答がありましたが、今までないと言っていたその資料が初めて出てきたわけです。三百四点、分厚いファイル三冊、B4で一千九百枚です。当時、山原議員の質問に対して、まともな調査もしないで、ないと言っていた、というふうに答弁したことは、国会議員の質問を愚弄するものだというふうに本当に怒り感じました。
 今回出された厚生労働省の資料を見ると、東畑農水次官、それから清井水産庁長官の名前が随所に出てきます。そして、ビキニ水爆実験による直接被害に関する件、これ、昭和二十九年の五月一日、水産庁というマル秘文書や、ビキニ灰による乳の汚染、それから農作物の汚染に関する調査、これ農水省の技術の研究所が出しているんですけれども、こういう文書も含まれているわけですよ。
 それで、大臣、先ほど非常に遺憾だという話をされたわけですけれども、是非農水省としても改めて調査をして資料を公表すべきだと思いますけれども、いかがでしょうか。ちゃんと大臣にお願いしますよ。二人、はい、じゃお願いします。

○政府参考人(水産庁長官 本川一善君) 先ほども少し申し上げましたが、当時、五十一年当時ですね、山原先生から御質問をいただいたときに、もう既にその当時で当時の保存年限二十年を超えておりまして、倉庫も一応調べたんだろうと思いますが、手元に資料がなかったものですから、担当課長が、「水産庁においては残念ながら現在のところ手持ち資料はございません。」という答弁をさせていただいたところでございます。
 今回調べましたところ、一冊のファイルが見付かったということでございます。ただ、このように国会で、古い資料でございますけれども、国会で質問をいただいたこともありますので、再度水産庁の倉庫を調査させていただきたいと考えております。

○国務大臣(農林水産大臣 西川公也君) 水産庁長官から申し上げたとおり、また倉庫を捜させていただきたいと、ここは申し上げておきます。そういうことで、水産庁が今の御趣旨に沿って再度調査をすると、こういうことを約束させていただきたいと思います。

○紙智子君 よろしくお願いします。
 過去のことにせず、非常に大事な問題なので、よろしくお願いいたしまして、質問を終わります。