<第186回国会 2014年5月22日 農林水産委員会>


農業協同組合(JA)や農業委員会の見直し/「関係者から要望は出されていない」と副大臣が答弁

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、十九日の産業競争力会議で安倍総理が、農業委員会の見直しと農地を所有できる法人の要件見直しの具体化を図りたい、農業協同組合の在り方についても抜本的に見直し、三点セットの改革をセットとして断行するというふうに述べて、今が農政転換のラストチャンスだと強調したということが報道されていますけれども、これは間違いないかどうかということ、それから、この会議に同席をされた林大臣はそれをどう受け止められたのかということをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 五月十九日の産業競争力会議課題別会合の場で、安倍総理から以下の御発言がありました。農業委員会の見直し、農地を所有できる法人の要件見直しについて具体化を図っていきたい、また農業協同組合の在り方について、地域の農協が主役となりそれぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投入できるように抜本的に見直していきたい、以上の三点の改革をセットで断行していくと、こういう御発言がございました。
 私といたしましても、今後与党と協議しながら、農業者、特に担い手農業者から評価され、農業の成長産業化に資する改革案を早急に検討したいと考えております。

○紙智子君 私もこの規制改革会議の農業改革に関する意見というのを拝見いたしました。率直に言って、この間もずっと議論されておりますけれども、例えば農業委員会の制度の中立で健全な運用を担保するために農業団体等からの推薦制度を廃止する、中立で健全な運用のために廃止するとかですね、そのほかいろいろあるんですけれども、全くこれは身勝手なひどい暴論だと。これが実行されれば農業、農村の解体につながると言わざるを得ません。
 そこで、規制改革会議にお聞きしますけれども、このような改革案を取りまとめるのであれば、当然関係団体やJA、全中や全国農業会議所の意見を聴取したはずだと思います。その経緯について明らかにしてください。

○副大臣(内閣府副大臣 後藤田正純君) お答えをいたします。
 事実関係を申し上げます。当グループでは、競争力ある農業、魅力ある農業をつくり、農業の成長産業化を実現するという観点から、専門委員として農業者、また農業経済学者の方々にも加わっていただいた上で、大規模農業者、若手の新規参入者、全国組織及び地域の農業団体、学識経験者等々、様々な農業関係者からのヒアリングや意見交換会を行ったほか、農業現場も何度となく視察を実施をし、現場の農業関係者との意見交換を行ったところでございます。
 具体的には、農地の利活用、保全における農業委員会の在り方については、全国農業会議所及び三つの農業委員会からヒアリングを行いました。群馬県、埼玉県、長野県のそれぞれの委員会からのヒアリングを実施をいたしました。
 農業者、消費者に貢献する農業協同組合の在り方については、全中さん、全農さん、全共連さん、農林中央金庫、ホクレン、農業協同組合連合会及び八つの単位農協からヒアリングを行いました。静岡県、岐阜県、山梨県、富山県、新潟県、宮崎県、奈良県、佐賀県に立地する単位農協からのヒアリングを実施したわけでございます。このほか、新規就農者を含む若手農業者の方々などからもヒアリングを実施したところでございます。
 これらの多くの農業関係者の方々とのヒアリング、意見交換等を踏まえまして、限られた時間ではございましたが、今回の提言がまとめられたものと認識をしております。

○紙智子君 今、数々の皆さんから話を聴取したということで調査もされたということが語られたんですけれども、それでは農業関係者からこの中央会制度の廃止とか全国農業会議所の廃止というような要望、意見というのは出されたんでしょうか。

○副大臣(内閣府副大臣 後藤田正純君) 先ほども申し上げましたワーキンググループの議論におきましては、新規就農者を含む若手農業者の方々からのヒアリングを行ったほか、様々な視察も含めて意見交換を行いました。そして、ワーキンググループの場におきましては、農業者からは直接的に中央会制度や全国農業会議所制度に対する廃止要望は出されなかったと認識をしております。
 しかしながら、様々な意見を集約をし、我々、規制改革会議は総理大臣の諮問を受けて、まさに規制改革会議、そのワーキンググループは意見を提出しなくてはいけませんので、その中で意見を伺った上での回答をしたということでございます。

○紙智子君 今お話あったように、たくさんの方から聴取したけれども、直接は出されていないということですよね。農業関係者からそういう要望も出されていない中で、このような改革案を取りまとめるような規制改革会議の在り方というのは極めて乱暴じゃないかと、正さなければならないんじゃないかと思うんです。
 林大臣、農業関係者から要望も出されていないような改革案を推進するということになるんだったら、一体何のための農林水産省なのか分からない。農林水産省の本来あるべき姿ではないんじゃないかと思いますし、農業関係者の信頼をこれ大きく損なうんじゃないかと思われますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 推進するということをどこで誰がおっしゃったかちょっと記憶が曖昧でございますが、我々としては、規制改革会議農業ワーキンググループ、今副大臣から御説明がありましたように、多くの農協、農業委員会、農業者のヒアリングを行った上でワーキンググループとしての農協、農業委員会等に関する改革案を取りまとめられたと、こういうふうに承知をしております。
 我々としては、農協、農業委員会の改革、これは農業者、特に担い手農業者から評価をされ、農業の成長産業化に資するものでなければならないと、こういうふうに考えておるところでございます。したがいまして、今後与党とも協議をしながら改革案を早急に検討し、農林水産業・地域の活力創造プラン、これ昨年十二月に決めさせていただいたものでございますが、この改定に改革案を盛り込んでいきたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 ですから、たくさんの聴取をやって、それで、農業者からは出なかったけれども、一応それを行った上でワーキンググループの議論の中から出てきたものをまとめたんだと。農業者の声が反映されていないんじゃないですか。ワーキンググループの会議の中でということは、一体どなたがそういう発言をされているのかというふうにも思うんですけれども、いかがですか。

○副大臣(内閣府副大臣 後藤田正純君) 今委員が、その我々ワーキンググループが出した結論をヒアリングをした人が直接に言ったか言わないかということではなくて、我々の課せられたミッションは、まさに総理大臣の諮問を受けて、農協の在り方、そしてもっと言えば農業者の、まさに農協法の一条にあります、農業の生産性を高めて農業者の経済的社会的地位を向上させ、もって国民経済に資すると、こういう目的を達成するためにどのような改革をするかということをいろんな方々からのヒアリングをした結果、その中でどういうことをすればそういう方々にとってプラスになるかということを結論を出したということでございますので、その中の結論のエキスとして、いろんな方々から出た意見を総合するとそういう結論を出させていただいた。何もしないことが農業者や農協さんの未来を守ることではないと、こういうふうに我々は考えて出させていただきました。

○紙智子君 ですから、何度も言いますけれども、直接農業者じゃない、農業者のところから出てない、第三者から出ている意見を要はまとめてやろうという話になっていて、これは非常におかしい話だなと思うんです。
 それでは、林大臣にお聞きしますけれども、大臣は本当にこのJAの中央会制度や全国農業会議所を廃止したら農業振興になると思われますか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この全中の廃止についていかがお考えかと、こういうことでございますが、農協は農業者の協同組織であります。担い手農業者のニーズに的確に応えて、農産物の販売を有利に行う、また資材の調達等を有利に行うことで農業者の所得を向上させて地域農業を発展させていくと、こういうことが何よりも重要だと、こういうふうに思っておりまして、したがって、農協が農産物販売等に最重点を置いて積極的に取り組む、それからそれぞれの農協が自らの創意工夫で経済事業を展開すると。そのためにこの連合会、中央会がどう農協をサポートしたらよいかということを真剣に検討していく必要があると考えておりますので、そういう意味で問題意識は共有ができていると、こういうふうに思っておりますので、具体的な内容は今から与党と協議して検討していきたいと思っております。

○紙智子君 今のではちょっと私の質問に答えたというふうに思わないんですよね。廃止したら農業振興になるかどうかというふうにお聞きしたんですけど。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) この中央会は、農業協同組合法に基づきまして、農協や農協連合会の健全な発達を図ることを目的として、全国段階、都道府県段階にそれぞれ一つに限り設立されると、こういうことになっております。
 中央会の事業ですが、農協法の七十三条の二十二で、組合の組織、事業及び経営の指導、組合の監査、組合に関する教育及び情報の提供、組合の連絡及び組合に関する紛争の調停、組合に関する調査及び研究、前各号の事業のほか、中央会の目的を達成するために必要な事業と。こういうふうにされておりまして、このうち農協や連合会の指導については、この農協中央会が合併の促進、連合会の再編を進めることによる農協連合会の経営基盤の強化、それからJAバンクシステムの下での経営不振農協の処理等の農協の健全性の確保、これずっと取り組まれてきたところでございます。
 そういう努力もあって、昭和二十九年に中央会制度がスタートしたときは一万を超える農協があったわけですが、したがって農協の経営基盤も非常に脆弱であったと、こういうふうに思っておりまして、中央会の指導の意義というのは大変大きかったと、こういうふうに思っております。現在、合併等によって農協の数が七百程度となりまして、経営基盤や財務内容、強化されてきて、状況が変化をしてきているということも事実でございますので、農協をサポートする中央会の在り方についても真剣に検討していく必要があると、こういうふうに思っております。

○紙智子君 今いろいろお話しになったのは、農協がこれまで果たしていた役割ですとか指導してきたという意義については話をされたんですよ。
 私も、もちろん農協中央会が今のままでいいというふうには思いませんよ、やっぱり改革しなきゃいけないことはあると思うし。しかしながら、今お話しになったような農業協同組合としての積極的な役割というのは果たしてきたわけですし、実際果たしている場面というのもあるわけですから。だから、正すべきは正すけれども、しかし、これまで果たしてきた役割を本当に重視しながらそれを発展させるという見地が大事なんじゃないのかと。それを何で廃止しなきゃいけないのかというふうに思うわけです。これ、中央会制度や全国農業会議所を廃止するというだけではないんですね、ここで言っていることというのは。企業の農地所有を認めようという財界の長年の念願を実行しようということがここに込められているわけですよ。
 それでお聞きしますけれども、これまで企業の農地所有を認めてこなかったという理由はどういうことだったんですか。

○政府参考人(農林水産省経営局長 奥原正明君) 企業といいますか、法人による農地所有の問題でございますが、参入した企業が農業から撤退した場合に、当該企業の所有する農地が耕作放棄地になったり、場合によっては産廃置場になったりしてしまうのではないかと、こういった農業、農村の現場の懸念がございます。こういったことから、農業を継続的に真剣に取り組んでいくことが担保される農業生産法人要件を満たす法人、これに限って農地の所有を認めてきたところでございます。
 この農業生産法人制度、これは昭和三十七年の農地法の改正によって設けられたものでございまして、農業生産法人でなければ農地を所有することはできないようになっております。

○紙智子君 今のお話でもはっきりしているように、やっぱり農地を農地としてちゃんと持続させていくというために、やっぱりそれが荒らされたり、もうけの理由で、それで違う方向に行ってしまわないように、ちゃんと歯止めを掛けてきたというのが今までの経過だと思うんですよ。それを今回、一定の期間、農業生産を継続して実施していることを要件として認めようとしているわけですね。一定の期間というのは一体どのぐらいの期間なのかなと思うんですけれども、この一定の期間を経過した後に利益が上がらないとして撤退することもありますし、それを防ぐことができないわけです。
 一定の期間中に当該企業が倒産した場合は、これ、債権を持っている企業に当該農地が売却されることになると。それから、農地を所有している企業が買収されることによって、買収企業が仮に外資系の企業だった場合には、これ、地域の営農自身が困難になりかねません。いずれにせよ、これまで企業の農地所有を認めてこなかった根拠がそのまま適用されるんじゃないですか、この改革案というのを見ますと。いかがですか。

○副大臣(内閣府副大臣 後藤田正純君) 今の農地の話でございますけれども、様々な施策を国と農協組織、また農業関連組織等取ってきたわけでございますが、しかしながら、私の地元もそうですが、耕作放棄地が増え、黄色いセイタカアワダチソウが生え、こういう状況は止まりません。やはり、それをしっかり課題を克服するという意味では、長年従事した農業者の方の豊富な経験を、まさに新しい世代や、また異業種の知恵、技術、ノウハウでつないでいくというチャレンジをしなきゃいけないし、またチャンスを与えなければなかなか今の現状を克服することができないんだろうと思います。
 今のお話でございますが、農業委員会のやはり許可を得た法人に、しっかりと退出に農業委員会の許可を要する等の規制を設けた上で、先ほどの条件緩和というものを付与をすると、こういう内容になっております。いわゆるその要件でございますけれども、一定の期間、農業生産を継続して実施していること、また地域の農業における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うと見込まれること、これをしっかりとした枠組みでやっていく。繰り返しますが、退出する、出ていくときにも農業委員会の許可を要するということの歯止めも規制改革会議の案では示されております。

○紙智子君 今申し上げましたように、農地所有を認めてこなかった根拠ということが何か変わったんじゃなくて、そのままの状態で、何らこれはこうだから変えるんだということはなしにそのまま適用されるんじゃないかと、今回のは、というふうに思います。これ中身をめぐっては更にまたこの後も質問したいと思います。
 私、もう一つ、TPPの問題も質問したいと思います。
 二十日の東京新聞に、四月二十三日の安倍総理とオバマ大統領との銀座すし会談というのがありました。豚肉の差額の関税制度の撤廃をオバマ大統領から要求をされて、安倍総理がその要求を受け入れたということが報じられているわけです。このすし会談は、すしを食べながら激しい議論をしたと。おすし屋さんの主人は疲れ果てたという報道もされているわけです。それ自体、否定されていないんですね。すし職人がいる中での会談ですから、これ秘密の保持もままならないわけです。
 もし豚肉の差額関税制度を認めたとするのであれば、これ極めて重要だと思うんですけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 私はすし屋に行っておりませんでしたが、日米協議に関して様々な報道があることは承知をしておりますが、ここで私何度も申し上げておりますように、日米間で合意している事実はないということであります。
 オバマ大統領が訪日された際に、安倍総理とオバマ大統領との間で、おすし屋さんもそうですし首脳会談もそうですが、日米の様々な協力関係について議論が行われたと、こういうふうに承知をしております。
 総理御自身も、国会において、衆参の農林水産委員会の決議をしっかり受け止める、守るべきものは守ると答弁をされております。私としても、決議を踏まえて、国益を守り抜くように全力を尽くしたいと考えております。

○紙智子君 おすし屋さんも含めて周りにいっぱいいたわけですから、実際どういう話だったかというのは分かると思うんですよ、聞けば分かると思うんですよ。今ちょっと否定されましたけど。
 大臣、この豚肉の問題を含めTPP交渉については、基本合意したとか合意に至っていないとか、この間本当にいろんな情報が飛び交っているわけです。そのたびに、農家はもちろんですけれども、業界や国民というのは振り回されているわけですね。何でこんなに国民が振り回されなきゃならないんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 我々は一貫して、先ほど申し上げたように、決まったことはないということを国会できちっと正式な場で申し上げ続けておりますし、また、共同声明というものも日米首脳会談の後に出されておるわけでございますので、それについて、この間もここの場でもいろいろやり取りがございましたけれども、内閣官房の方でしょうか、いろいろと情報公開については工夫をされ、マスコミとのやり取りについても大変に苦労されておられるということがここのやり取りでもございましたけれども、報道の自由や表現の自由ということがきちっとある国で我々として最大限の努力をしてまいりましたし、今後も続けていくということだと思います。

○紙智子君 ごめんなさい、確認しようと思ったんですが、澁谷さんもそこにいらっしゃっていたんでしたっけ。

○委員長(野村哲郎君) そことはどこですか。

○紙智子君 すし屋の。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 私はその店には全く一度も行ったことはございません。

○紙智子君 行っている方いらっしゃいますよね、たしか。私、それでお呼びしたと思うんだけど。どなただっけ、森さん。(発言する者あり)外務省は行っていたんじゃない。

○政府参考人(外務大臣官房参事官 森健良君) 外務省の森でございますが、行っておりません。

○紙智子君 そうですか。(発言する者あり)

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) いや、鶴岡首席も行っておりません。あんな高いおすし屋さん、まだ誰も行っていないんじゃないかと思います。

○紙智子君 いずれにしても、情報がいろいろと振り回されると。何でこんなに振り回されるのかといえば、これは政府がちゃんと情報を出さないからですよ。なぜ出さないのかといえば守秘義務があるからだというわけですよね。
 だけど、秘密交渉については、先ほど徳永エリさんもやりましたけれども、これ各国で今非常に不満と問題になっているわけですよね、おかしいと、こういう秘密のやり方というのは。昨日の東京新聞でも報じています。情報開示をするべきだということでの要求が高まっているわけです。
 大臣、これは農業、国民の利益に反することが突然決まればこれはもう大変ですよ。やっぱりこういう交渉の在り方というのはおかしいんじゃないですか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) せっかく外務省、内閣官房から来ておられますので、このTPP交渉、本部で甘利大臣を中心にやっております。したがって、先ほど、マスコミとのやり取り、それから情報公開、中でも各国で情報公開についていろんな議論があると。ベストプラクティスをたしかやっていこうじゃないかということになったというお話も先ほど澁谷審議官からあったとおりでございますので、そういう努力は絶えずやっていくということだと思います。

○紙智子君 二十日にTPPのシンガポール会合が終わりました。結局、大筋合意にはならなかったようですけれども、二国間の協議で、例えばニュージーランドから関税撤廃を求められ、ベトナムからも米の関税撤廃を求められたということが報じられています。加えて、知的所有権や国有企業の分野ではまだ見通しが立っていないと。しかし、交渉を続ければ続けるほど農産物の関税引下げの報道だけがどんどんと出てくると。日本の農業の打撃が大きくなるというのはこれ間違いない話で、これはもう本当に許されないというふうに思うんです。
 ですから、やっぱり早く撤退すべきだということを最後に申し上げて、質問を終わりたいと思います。