<第186回国会 2014年5月13日 農林水産委員会>


TPP、日米協議における牛肉等の「合意」を批判し、交渉からの即時撤退を要求。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 冒頭、PED、豚流行性下痢の対策について質問いたします。
 五月八日現在、日替わりでどんどん変わっているのでこれ自体も古いんですけれども、全国三十六道県、五百八十戸の養豚場で発生して、五十万頭を超える発症頭数で既に十二万五千頭が死亡していると。北海道でも、森、美瑛、赤井川、栗山、上川、苫小牧市、伊達市、今日また厚真ということで、八市町村の養豚場で四万頭を超える豚がこのPEDにかかって、六千頭を超えて死んでいます。
 先日、青森でも、ワクチンを接種した母豚から生まれた子豚が感染して、発症して十日間の間に生まれた子豚が約百六十頭が全て死亡すると。被害が非常に深刻化しているわけです。放置すれば、やはりこれ倒産や廃業が広がって、日本の養豚が深刻な事態になりかねないということであります。
 各地からも、この間いろいろ要望が上がっていると思います。一つには感染原因と拡大ルートの早急な解明という問題、二つ目にはワクチンの円滑な供給体制の一刻も早い確立、三つ目は屠畜場や農場を出入りするトラックなどの防疫体制に万全を尽くす、四つ目に発生農場の経営支援など、必要な対策が求められているわけですけれども、これらをめぐって今国として取っている対策について、できるだけ簡潔にポイントを絞ってお話しください。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 大事なお話でございまして、今三点ほど御質問いただきましたので、簡潔にお答えしたいと思います。
 まず、感染経路、また発生原因ということでございましたが、海外からの感染経路、それから国内における発生拡大原因の早急な解明、これが重要であると思っておりまして、ウイルスの海外からの感染経路について、国内で確認されたウイルスの遺伝子、これがアジア諸国やアメリカで確認されているものと極めて近いということで、可能性としてはそれぞれの国々からの人や物を介した侵入であると考えられるわけですが、まだはっきりと解明したというところに至っていないわけでございます。
 また、国内における発生拡大原因についても、発生農場間で同一の屠畜場に豚を出荷している事例があることなどが確認はされておりますが、現在では全ての事例に関する発生拡大の原因の解明にまだ至っていないと、こういうことでございまして、引き続き早急にこの解明をしていきたいと思っております。
 また、この防疫体制、ワクチン等についてでございますが、やはり本病、ふん便を介して伝播をすると考えられておりますので飼養衛生管理を徹底するということが大事だと、こういうふうに思っておりますので、発生当初から都道府県に対して、飼養衛生管理の徹底や、発症した場合、早期通報してくださるように通知を行ってきたところでございます。また、四月からは、消費・安全対策交付金というものが活用できるように、こういうものを使って畜産農家、屠畜場等の出入口での消毒機器の設置や消毒実施に必要な経費を見ると、こういうことにしたところでございます。
 それから、ワクチンでございますが、必要量を確保するとともに、必要とする農家に広く円滑に行き渡るように、都道府県、ワクチン製造事業者等との協力体制を構築したところであります。需要家の方の需要をきっちりと把握して、余り必要以上に多めにやられますと行き渡らないということもございますので、そういうことまできちっとやっていかなければならないということで徹底しておるところでございます。
 それから、三つ目の経営支援対策でございますが、離乳前の子豚である哺乳豚、これが死亡被害が生じやすいということで、この哺乳豚が死亡をたくさんした場合は、六か月程度で出荷するということになりますので、六か月後の出荷頭数の減少によって収入が減少してくると、こういうことになります。
 したがって、この哺乳豚の死亡数、今回、増加したのは昨年の十二月以降でございますので、養豚経営の資金繰りに実際の影響が出始めるという意味では今年六月以降と、こういうことになろうかというふうに考えておりますが、このために、経営維持に必要な運転資金として日本政策金融公庫の農林漁業セーフティネット資金、それから既往負債の償還が困難な農家に対する畜産特別資金制度が活用可能であります。また、日本政策金融公庫等の金融機関や団体に対しまして、養豚経営の維持継続に必要な資金の円滑な融通、それから個別の経営事情に応じて、既に貸し付けてあるお金の償還猶予、これに配慮をお願いする通知を四月二十五日に出したところでございます。また、適切な飼養管理の徹底、そのための家畜飼養管理やふん尿処理に機械や装置等も必要になってくる場合がございますので、畜産環境整備リース事業、これを措置しておるところでございます。
 したがって、今後はこうした支援策、これを周知徹底して養豚経営の維持継続が図られるようにしっかりと取り組んでまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 気温が上がってくるとこれは下火になるんだという話、最初されていたんですけれども、広がっていますので、是非そこは危機感を持って対応していただきたいというふうに思います。
 それでは、TPPについてお聞きします。
 まず、澁谷審議官に確認しますけれども、今回の日米首脳会談と共同声明及びあなたが記者会見で言及された今回の日米二国間のTPP協定の協議の到達点について明らかにしていただきたいと思います。先ほどちょっと話がありましたけれども、進展があったという話と具体的な合意内容はどうかということも含めてお話しください。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 今回の結果を一言で言いますと、進展以上合意未満ということでございまして、これまでの協議に比べれば大きな進展があったと、それは先ほど申し上げたとおりでございまして、その進展の成果というものがまさに前進する道筋を特定したということであります。
 この道筋というのは、先ほどから申し上げておりますように、甘利大臣は方程式と言い、フロマン代表はパラメーターと言っておりますが、個々の品目ごとに最終的に合意するべきそのパッケージの構成要素について、どんなものがあるかということについてのおおむねの共通認識が得られたということでございます。
 今後、このパッケージの構成要素の中に具体的な様々な数字などを入れ込んで、いわゆる合意パッケージのオプションというものが形作られていく、それからだんだん交渉が大詰め化していくという、その前段階のところまで差しかかっていると、そういう状況でございます。

○紙智子君 方程式は、式が決まったということは数字を入れれば答えが出るということだと思うんですけれども、それだけでなくいろいろというパッケージの話がありました。具体的な合意内容というところまでは話になっていないんですけれども、全くの白紙ではなく、進展した中身として、途中段階も含めた具体的な関税率、それから関税を引き下げる期間と方法、セーフガードを発動する基準などを今後日米間で協議することを確認したというわけですよね。それは当然、重要五品目についてもこの組合せの中には入っているということですよね。

○政府参考人(内閣官房内閣審議官 澁谷和久君) 今お話にあったような構成要素を品目ごとにパッケージ化して、最終的な合意に到達できるかどうかということをこれからまさに交渉していくということでございます。

○紙智子君 報道ベースでは、牛肉の関税を九%へと、豚肉については一キロ四百八十二円から五十円にそれぞれ引き下げることで合意となっていると。これは報道ベースですよね、これは違うとか、そうじゃないとかという話があるんですけれども。
 これがまだ決まっていないとしても、重要五品目の関税引下げという点ではこれは日本側も合意しているわけで、引下げに向けて話していると思うんですけれども、ということですから、ですからこれは明らかに国会決議に反するものだと思うんですよ。それを承知しながら日米協議とTPP交渉を進めるのかということなんですね。それ自体が国会の意思を踏みにじるものじゃないか。
 これ、農水大臣、いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これも度々ここでお答えをしているところから余り変わらなくて恐縮なんですが、具体的な協議の内容、これは先ほどからやり取りがあったように、内閣官房の方から誤報であるというお話もありましたけれども、この個別のラインの関税率について日米間で合意している事実はないということを申し上げさせていただきたいと思います。
 決議との関係でございますが、この委員会決議は立法府であるこの委員会それから衆議院の委員会の意思表示であるわけでございますので、この決議の意味するところについては両委員会で御判断いただくということであって、私から具体的な解釈を示すことは適切でないと、こういうふうに考えております。

○紙智子君 今の御答弁も前回もお聞きして同じ御答弁だったわけで、これは、でも、国民から見ても全く納得いかない話ですよ。最初はやっぱり決議を守るということで来たはずなのに、いつの間にか、それは私は触れられなくて、これは国会で決めてもらうと。ルールはそうなんでしょうけれども、国民から見ればこれは納得いかない話です。
 さらに、問題なのは、米国政府がTPAを持っていないと。これ、先ほど来議論になっていますけれども、仮に日本とアメリカが合意しても、米国議会が合意内容を承諾しないというふうになって再交渉に追い込まれることが必至じゃないかと思うんですね。
 過去に、このTPAを取得していても、米国政府は議会の要請に応じて米韓FTAでは追加交渉したわけです。TPAがなければ、米国議会が条約交渉権を持っているわけですから、米国政府は議会の意向に完全に従わざるを得ないと。だから、今そういうふうな米国政府と合意するということは極めて危険であるということが、先日、自民党の議連、TPP交渉における国益を守り抜く会の中でも、その中でも指摘されたんじゃありませんか。
 西村副大臣にお聞きしますけれども、その点についてどういうふうに判断されているんでしょうか。

○副大臣(内閣府副大臣 西村康稔君) 一般論で言えば、TPA、権限があった方がこれは我々も安心して交渉できるということは、TPAですね、そのとおりだと思います。
 ただ、十二か国それぞれ国内の手続あるわけで、私どもも最終的に国会で御承認いただかないと批准できませんし、参加できないということでありますので、国会決議も踏まえながら、国会で御承認いただけるぎりぎりのところを考えながら交渉しているわけで、アメリカはアメリカで国内の手続に責任持ってやっていただくということで、これは十二か国それぞれが国内手続を責任持ってやるという信頼関係で交渉を続けているところでございます。

○紙智子君 その自民党の部会の中でも話になった、TPAがあっても怖いのに、なければもっと怖いと、ひっくり返される可能性を考えて慎重にしなきゃ駄目だという話をしているんじゃないですか。だから、米国は米国で日本は日本じゃなくて、日本だって、批准する前にそういう段階で交渉を妥結させては駄目だということですよ。もうやめるべきだということですよ。
 農水大臣にお聞きしますけれども、日豪EPAの合意内容について、北海道では合意内容に現地で激震が走ったと。これは日豪EPAですよ。安倍政権が進める自由化路線の中で、畜産、酪農を始め農業者の先行き不安が高まっている、畜産の生産基盤は音を立てて崩れ始めていると報道されているわけですよ。
 この日豪EPAについて、USTRのカトラー次席代表代行が、TPPの野心的な自由化水準に比べ、レベルがかなり低いと指摘をして、日豪EPAをはるかに上回る自由化水準を進めることを明らかにしているわけです。これで日本の畜産、酪農は崩壊の危機を迎えるということは必至になってしまうんですね。そのことを、担当大臣として林大臣はどのように受け止めておられるんですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 御指摘が今ありましたように、アメリカが、TPPは日豪EPAよりかなり高い水準を目指すと、こういうふうに言っておるということが報じられていることは承知をしております。
 アメリカはTPP交渉において、かねてから包括的で高い水準の協定を目指し、重要五品目についても我が国の市場開放を求めてきたと。これはもうずっとこれまでそういう主張をしてきたという事実がございます。これは交渉でございますので、先方はそういう主張をするし、我々はそれに対してどうするかといえば、重要五品目などの聖域の確保について、これらの品目が引き続き再生産可能となるよう、衆参両院の農林水産委員会の決議を踏まえて粘り強く交渉を行うと。これも今まで申し上げてきたとおりでございます。

○紙智子君 本当に危機感を持って捉えておられるのかなと思うわけです。
 日米合意がこれ日豪EPAを上回る自由化水準になったら、今度はオーストラリアの政府は再交渉を求めてきますよ。そういうことだったら、やっぱりアメリカがそんなに低くするんであれば、我が国ももっと低くすべきだと言ってくるに決まっているわけで、そうならないという保証があるんでしょうか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 我が国のEPAといいますか、日豪EPAとTPPの関係いかんと、こういうことでございますが、これまでも、我が国が同じ国と複数のEPAを締結した例としては、ASEANの加盟国と日・ASEAN包括的経済連携協定及び二国間EPA、それぞれ締結した例がございます。
 法的な優先関係が存在しない全く別個の二つの協定がある場合は、両協定の締約国となっている国と我が国との貿易において、ある産品がそれぞれの協定に基づいて原産品として認められれば、それぞれの協定に定める異なる特恵税率が適用可能になると、こういうことであります。
 したがって、例えばASEANの国との間で、その国との二国間EPA若しくは日・ASEAN包括の経済連携協定、このどちらの協定に基づく特恵関税が利用できるかは、原則はこの輸入者がどちらの協定に基づいて輸入申告するかと、こういうことになるわけでございます。

○紙智子君 誰が考えても、下げればそれに向けてまたこっちも下げろというふうになるに決まっているわけですよ。
 米についても、日米協議で、ミニマムアクセス米とは別枠で主食用のアメリカ枠を設けて無関税で輸入することが報道によって推測されているわけです。これもまだ決まっていないと言うかもしれませんけれども。それ以外に、日本政府が譲歩案として検討している加工米と米の調製品の関税撤廃も加わってくると、これは日本の米生産者にも甚大な影響を与えることになるわけですね。そういうことにならないというふうに言い切れるかどうかということがあります。これについて、どうですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これも先ほど申し上げましたように、関税品目の中で合意したものはないというふうに申し上げましたので、それは米についてもそういうことでございます。
 したがって、先ほど来申し上げていますように、決議を踏まえてしっかりと交渉すべきだというふうに考えております。

○紙智子君 今、大臣、そういうふうに答えられたんですけれども、今、甘利大臣は、十九日から始まるシンガポールのTPPの閣僚会議までに日米協議をまとめると、まとめなきゃいけないというふうに言っているわけです。
 甘利大臣の一存でこれやっているわけではないわけですよね。これは四月二十六日ですけれども、TBSの「あさチャン!」というので、甘利大臣がそこに出ていろいろやり取りをしているんですけれども、それを読むと、こう言っているんですよ。これはもちろん農水省の担当官から情報を得ながらですね、農水省はぎりぎりがこの辺の数字ですからこれができなければこういう代替措置をしなければならないという報告をされるんです、我々が勘でやっているわけじゃないんですと。
 つまり、これ、林大臣も承知の上でやっているということなんじゃないんですか。いかがですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 先ほど山田委員の御質問にお答えして、日豪の場合は私が最終的な責任者で農産物の交渉をやらせていただきましたが、TPPについては甘利大臣がやっておられると。ただ、それは閣僚会合でしっかりと一体となって取り組んでおりますし、その本部の直属のところにも、また日米の実務者協議にも我が省からも人が出ておるということを申し上げたとおりでございますので、しっかりと政府と一体となって交渉しておるということでございます。

○紙智子君 そういうことになると、結局、決議を踏まえてと、農業、打撃を、悪影響を受けないように決議を踏まえてと言われて行ったわけで、それなのに、あえて条件を示してこのぐらいだったら何とかなるみたいな話をされて、交渉推進のために力を貸しているということになるわけですよね。
 これは、国民の目線に立ってみたら、本当にごまかしも甚だしいし、これはもう公約に全く反していることを平気でやっているということになるわけですよ。そういうことが許されるというふうにお感じですか。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) これは、早期妥結を目指して交渉に臨むと。その場合に、先ほど来、内閣の官房の方からもお話がありますように、最終的に国会で批准をしていただかなければなりませんので、そこで決議を踏まえて全力で交渉に当たると。もうそのことに尽きるんではないかというふうに思っております。

○紙智子君 私は、全く今の大臣の答弁というのは本当に許されないというふうに思います。歴代の農水大臣でも、やっぱり農業を、我が国の農業を何とか守ろうと思ったときには閣内でも言うべき意見を言ってきたわけですよ。だけど、林大臣はそういうことをやっておられないですよね。
 やっぱりこのことがどういう影響をもたらすかということは明らかで、将来の日本の農業の展望といったときに、この今の農政改革の議論だってそうですけれども、TPPを前提にしてしまった場合にはこれはいろんなことが狂ってくるわけじゃないですか。破綻してしまいかねない、そういう中身だと思うんですよ。
 大きな打撃を受けるということが分かっている以上は、やっぱり国会決議ではっきり言ったように、もう守れないということになったときには脱退しかないということを言っているわけですから、それを本当に今判断すべきときに来ているんだということを改めて強く申し上げて、最後に一言、そのことについて答えていただきたいということで終わりたいと思います。

○委員長(野村哲郎君) 林農林大臣、時間が来ておりますので、手短にお願いします。

○国務大臣(農林水産大臣 林芳正君) 紙委員からいつもお叱りを受けるわけですが、御主張はいつも拝聴しておりますので、先ほどアメリカの主張が従来から変わらないと申し上げたように、紙委員の御主張もずっと変わらずに拝聴しているところでございますので、そういう意見も含めて、しっかりと拝聴して交渉に当たりたいと、こういうふうに思っております。