<第186回国会 2014年4月3日 農林水産委員会>


水産加工業、漁船漁業への復興支援の拡充を/国が責任を持ち養蚕支援を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、東日本大震災からの復旧復興についてまずお聞きします。
 〔委員長退席、理事山田俊男君着席〕
 昨日もチリで地震があって、津波の被害ということでは非常に心配をしていたわけですけれども、まず水産加工業、流通についてです。
 漁業の再建は、漁業、養殖業と産地流通加工業を一体的に整備することが不可欠です。これはもうずっと言われてきたことでもあります。現地を歩きますと、流通加工業者は中小企業が多いと。
 零細企業というイメージもあるかもしれませんけれども、果たしている役割は本当に大きいということがよく分かるわけです。
 魚は水揚げした後、荷さばきという作業をやります。鮮度、品質、規格によって選別をすると。
 大きな魚であればひれを外したり内臓を取るとか、用途別に仕分をすると。これらを背景にして、流通業者や問屋さんやあるいは加工業者、出荷業者などの産業が発展しているわけです。
 加工業は、多品種の魚を処理をして特産品も作っていると。練り製品なんかは細工かまぼこというような技術もあるんですけれども、これが消えてしまうんじゃないかという話も聞きます。特別の技能や技術を持って伝統を守ってきた業者であるわけです。それから、季節的であって、地域的な特性もあるということも聞きました。
 二〇一三年度の水産白書に地震・津波による水産関係の被害状況というのが掲載されました。民間企業が所有する水産加工施設や製氷冷凍冷蔵施設等の被害は約一千六百億というふうになっています。これは水産加工団体などからの聞き取り調査ということなので、実際にはもっと多いというふうに言えると思うんですね。
 最新の水産庁の資料では、再開を希望する水産加工施設は八百十九施設、昨年末で七九%が業務を再開したというふうになっているんですけれども、この中には掲載されていないんですけれども、百三十三施設が廃業したということもあるわけです。東北経済産業局が行ったグループ補助金交付先アンケート調査というのがありますが、それによると、売上げが震災前の水準に回復した水産・食品加工業は一四%ということですね。
 そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、水産加工業、これやっぱり全体としてはまだ遅れているという認識をお持ちでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この被災三県における施設の復旧でございますが、全国水産加工業協同組合連合会の調査ですが、二十五年十二月現在で、岩手県で八三・八%、宮城県で七八・三%、福島県で七三・七%と、こういうふうになっております。女川や気仙沼などで用地造成の遅れによって整備が遅れている地域があるものの、東日本大震災復興交付金等を活用した施設整備の支援に取り組んでおります。
 一方で、被災地では販路の確保、これに苦慮している話が出ていることを私も実際に行っていろいろお聞きをしたりしております。したがって、この被災地の水産加工流通業の復興には、施設を復旧するということは当然なのでございますが、これに併せて販路の確保、拡大、一度失った棚がなかなか取り戻せない、こういう声をよく聞くわけでございまして、ここも併せて経営が継続できるようにしていくということが大事であると、こういうふうに思っております。
〔理事山田俊男君退席、委員長着席〕
 このために、東日本大震災復興交付金、これを活用しまして、被災した市町村が地域の水産物の販路拡大、販売促進、こういう取組を行う場合にこれを支援する。それから被災地域の漁業協同組合、それから水産加工業協同組合等が販売回復に必要な加工原料の確保、それから営業活動、こういうことに取り組む場合の支援、こういうものを実施しておるところでございまして、今後とも被災地の水産加工業の復旧復興に向けて適切に対応してまいりたいと思っております。

○紙智子君 東北経済局のアンケート調査は、業種別に見ると、回復していると回答した割合が最も低いのが水産加工業だというふうに指摘されているんですね。
 加工流通業の復旧復興を支援する水産庁の事業には、水産業共同利用施設復旧支援事業というのと水産業共同利用施設復旧整備事業ということであります。同じような名称なんですけれども、違いは支援というのと整備というのが違うんですけれども、あくまでもこれは共同利用が条件だと。
 民間業者や民間個社を支援する事業として経済産業省に中小企業等グループ補助金というのがありますけれども、この水産加工業でどの程度これ活用されているのかということについて御説明をお願いします。

○政府参考人(矢島敬雅君) お答え申し上げます。
 水産加工業を含みます被災中小企業の事業継続、再開の支援といたしまして、被災されました中小企業が所有する施設設備の復旧経費を補助するグループ補助金におきまして、これまで累計で五百七十三グループに対して支援を行ってきております。このうち、水産加工を共同事業に含むグループでございますが、六十六グループとなっております。
 以上でございます。

○紙智子君 ですから、パーセントでいうと一一・五%ということで極めて少ないわけです。それから、グループを組めていない企業はやっぱりこれ使えないということなんですよね。予算が少ないという問題もあるわけです。
 それで、復興庁にお聞きしたいんですけれども、民間団体が活用できる事業として水産業共同利用施設復興整備事業というのがありますけれども、今度は復興整備というすごく似たような名前なんで分かりづらいんですけれども、この事業の概要とそれから補助対象、補助要件、基本補助率について御説明をお願いします。

○政府参考人(菱田一君) お答え申し上げます。
 復興交付金の水産業共同利用施設復興整備事業につきましては、本格的な水産業の復興に向け、被災した市町村が所有する水産業共同利用施設に加えまして、民間事業者の水産加工流通施設の整備に対して支援を行うものでありまして、東日本大震災により被災した施設及び漁港又はその背後集落の水産業に関連する施設の整備が対象となっております。
 民間事業者が事業主体となる水産加工流通施設の整備につきましては、市町村におきまして策定されます復興計画等に位置付けられた上で、公募により事業者の選定を行っていただくことが要件となっております。
 また、基本補助率につきましては二分の一でございますけれども、さらに補助率のかさ上げ措置等によりまして、事業主体となる水産加工業者等の負担割合は八分の一となっております。

○紙智子君 今お話あったように、基本補助率でいうと、国二分の一、それから市町村八分の三、それから民間団体八分の一ということでよろしいですよね、はい。
 それで、民間企業の活用状況についても説明をお願いいたします。

○政府参考人(本川一善君) この事業の被災各県の民間団体における活用実績でございますけれども、市町村が策定する振興計画に基づきますれば民間企業も活用できるという事業でございまして、岩手県では全六十四件のうち民間企業が六十二件でございます。それから、宮城県は全三十九件のうち民間企業が三十七件、それから福島県は全一件、民間企業はゼロでございます。茨城県は全三件で、民間企業はゼロでございます。全体で、岩手、宮城、福島、茨城県で全百七件のうち、民間企業に九十九件御活用をいただいているというような実態にございます。

○紙智子君 これ、事業費でいうと一千三百三十一億円、このうち国費が九百二十八億円ですよね。
 そして、市町村が計画をして事業を進めているということで共同と民間を事業ベースで区分けするということがなかなか難しいという回答だったですよね。それは今もそういうことですよね。

○国務大臣(林芳正君) この復興交付金事業である水産業の共同利用施設復興整備事業、これは水産庁で執行しておりますが、そこにおける水産加工業の活用実態、水産庁で市町村ごとの採択者数に至るまでは把握をしておるところでございます。
 今お尋ねになったことかどうかちょっとあれでございますが、中小企業庁のグループ化補助金は水産加工業以外の他業種も含めたグループに対して補助するものでございまして、グループの共同事業者の中に水産加工業者が含まれるか否かといった活用実態についても、中小企業庁では把握に一定の時間を要すると、こういうふうに聞いております。
 したがって、我々としては、これらのほかの役所の事業も活用した水産加工業者に対する政府全体の支援の実態を把握することは重要だと考えておりますので、今後、中小企業庁や復興庁と連携して実態把握をしてまいりたいと思っております。

○紙智子君 ちょっとこの間何回か聞いているんですけど、なかなか把握されていなくて、今これから把握するということでもあるので、そこはしっかり把握していただきたいと思います。
 それから、先日、岩手県に行って、それで市場で何人かのおかみさんから話を聞いたんですね。
 サケの薫製を作る技術を開発をして、新しい商品を販売しようということで努力をされていたわけです。しかし、形の上では一応品物並んでできているんだけれども、しかし実際にはなかなか売行きが上がっていかないという話がありました。やっぱり軌道になかなか乗らずに悩んでいる方も、業者も多いということでした。
 被災地で加工流通業を再開している方からは、先ほども話がありましたけど、販路の確保の問題や労働力の確保、運転資金の対策などが必要だということが言われていて、これについての現状と支援策について、御説明をお願いします。

○政府参考人(本川一善君) 先ほど大臣からも御回答いただいたように、やはり施設の復旧はある程度進んできておりますが、先ほど来御指摘あるような販路の拡大、確保、こういった面で非常に苦慮されておるという実態にございます。それから、運転資金の確保、こういったことも経営継続の上で必要になっているというふうに認識をいたしております。
 このため、販路拡大につきましては、先ほど大臣から御答弁いただいたように、市町村が行う場合には復興交付金によって、それから漁協など協同組合が行う場合には私どもの補助金で販路回復、販売促進の取組を支援させていただいております。
 それから、運転資金につきましては、水産加工業者の方々が補助事業により取得した施設を担保として事業の運転資金の融資が受けられず苦慮しているといったようなことも受けまして、平成二十五年十二月二日には財産処分承認基準を改正をいたしまして、事業の運転資金についても補助施設を担保に入れて借り受けられるようにしたと。
 こういったようなことを通じまして、今後とも被災地の水産加工業の復興に向けて対応してまいりたいと考えておるところでございます。

○紙智子君 水産加工業は、住んでいる、住居の近くにあって女性の働く場所になっていたわけですけれども、しかし今は仮設住宅に住んでいる方が多いという中では、通わなくちゃいけないと、遠くまで。それで今までどおり働けなくなったという話もあるんですね。やっぱり、今後、そういう意味では職住接近という問題もどうするかということが課題になると思うんです。
 そこで、水産加工業の再建をどうしていくかということについてお聞きしたいんですけれども、漁港や漁場は公共事業としてのインフラ整備をされています。それから農地整備、田んぼの除塩作業なんかも公共インフラとして整備をされていると。一方、加工流通業の施設というのは、一部の地域を除いて産地整備への支援が弱いというふうに思うんですね。漁業や水産業が基幹産業である地域においては、加工流通業は地域経済を支えて雇用の場としても本当に大事な役割を果たしています。
 安倍政権として、これは震災復興について重視して取り組むんだというふうに言われているわけですけれども、今回、質問するまで、結局このグループ補助金が、加工流通業、復興庁の事業をどれだけ活用されているのかということについてはなかなか定かじゃないということがあって、お金の額はいろいろ出てくるんですけれども、お金の額だけでは実態が見えないわけですよね。ですから、私は、改めて政府として加工流通業の実態をちゃんとつかんで、公共インフラ相当に位置付けてきめ細やかな対策が必要だというふうに思うんですけれども、この点についての農水大臣の見解、お聞きしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) 今委員からお話がありましたように、まず施設を復旧して、そして今度はその販路の拡大によってそこが実際に使われて業として成り立っていくようにすると。その場合に、今お話があったように、前は近くに住んでおられた方が職住接近でやっておられたけれども、同じところに復旧復興すれば今度はそこにおられない方がどうやってそこに出勤されるかと、こういういろんな課題が出てくるわけでございます。
 したがって、三年たちましたので、この復旧復興、特に復興の方にだんだんだんだん、単なる復旧というのは旧に復するということですから、それを超えて新しい状況にどう対応していくかと。
 特に、今御指摘のあったように、この地域で水産加工業というのは結局漁業の出口として大変大事なところでございますので、しっかりと全省庁的に、どういうことが、結局現場ではどういう水準になっているかということを把握した上で、そこにとどまらずに、じゃ、どういう課題があるか、その課題についてどう対応していくかということをしっかりと検討して対応してまいりたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 よろしくお願いします。
 次に、漁船漁業の問題で一つお聞きしたいんですけれども、漁協が漁業者に船を貸し出すリース事業が行われているわけですけれども、この固定資産税の扱いがどうなっているかということについてお聞きしたいと思います。

○政府参考人(本川一善君) 共同利用漁船復旧支援事業は、今御指摘のように、東日本大震災によりまして漁船を失った漁業者に対しまして漁船を供給するという事業でございますけれども、漁協が漁船を取得して被災した漁業者の方にそれをリースをするという形で利用していただく仕組みとしております。この事業で取得した漁船の固定資産税につきましては、その漁船の所有者であります漁協が負担をするということになっておりますが、実際にはその相当額は利用契約に基づいて利用者が負担をしているという実態にあります。
 漁業者個々人が漁船を復旧した場合には震災特例がございまして、償却資産に係る特例として課税標準が船価の二分の一になり、さらに震災特例として更に二分の一になると。結果として、個人の方が前持っていた漁船を復旧した場合には固定資産税は課税標準の船価の四分の一となるといったような特例が講じられておりますけれども、漁協が取得するということになりますと、これは復旧ではなくなるという位置付けで固定資産税が掛かっているという実態でございます。
 ただ、これにつきましては、先ほど申し上げましたように、いわゆる使用料として実質的に漁業者の方にお負担をいただくといったようなことができることになっておりますし、それから、何よりもやはりこれ、市町村が条例を定めることにより減免をできるという仕組みになっておりまして、宮城県の市町村においては条例により漁協に減免措置を講じるといったような措置が講じられておりますので、そういう措置について我々も周知はしておりますけれども、再度、必要であればこのような市町村の減免の可能性もあるということを周知をさせていただきたいというふうに考えておるところでございます。

○紙智子君 ちょっと確認しますけれども、要するに固定資産税は漁業者には、個々人には掛からないですよね。要するに、漁協がリースをするということで漁協には掛かるけれども、個々人には掛からないということですよね。

○政府参考人(本川一善君) 漁協が固定資産税本体を払うということになりますが、リース料の中で、場合によっては漁協から個々人の漁業者に固定資産税相当額がリース料の中で付加されるというか、求めるといったようなことに実態はなっておるんではないかなというふうに思っております。

○紙智子君 その辺がちょっと問題で、現地ではだからすごい大変なわけですよ。漁業者自身、収入がそう入ってくるわけでもない中でこれは大変負担になるということでありますし、それから、漁協に掛かるものについても、先ほどお話あったように、市町村の判断で条例で減免されるということはそれは確認できると思うんですけれども、個人に掛かっていくというのは、これはちょっと何とかしなきゃいけないというふうに思うんですね。それはいかがですか。

○政府参考人(本川一善君) 個人で船を導入されて復旧を図られた方については、先ほども少し申し上げましたが、償却資産に係る特例として漁船の課税標準が船価の二分の一になる、さらに震災特例として課税標準は更に二分の一軽減され、結果として課税標準は船価の四分の一になると、個人の場合はですね。そのようなことが講じられておりますが、漁協が取得をするということになりますと復旧名目ではなくなりますので、この震災特例は適用にならないと。しかしながら、市町村が条例で減免をするということも可能でございますので、私どもこの問題を受けて宮城県などにはそのように周知をさせていただいて、宮城県の一部の市町村では市町村が条例を作って減免をしておる、そのような実態にございます。

○紙智子君 宮城県ではという話をされていて、ほかの県の話も実は聞いているんですけど、そこがちょっとばらばらしていまして、やっぱり負担を掛けないようにということで是非御努力いただきたいと思います。
 それから、ちょっと時間が過ぎてきたので、一つ削って、もう一つ、漁業生産は回復しつつあると思うんですけれども、震災から三年たって、漁業者、漁協のニーズというか、変化してきているわけですよね、最初の段階からは。これから借金の返済が始まっていくということもあります。魚の水揚げが回復しないと返済することが困難ということでもあります。それから、復旧復旧というのは原形復旧なので、震災後に立ち上げた事業の支援が弱いという声も出されているんです。新たにやったところなんかはほとんど対象にならなかったりということもあります。漁業、水産業の復興というのは、漁業者や加工流通業者の自立再建が進んで所得が増えるということが、それがあってやっぱり回復ということになると思うし、水産資源の回復ということも大事だというふうに思います。
 復旧復興事業、五年をめどに行われていますけれども、三年たって、今、やはり国の支援が現場でどこまで活用されているのか、ニーズに合っているのか、新たな課題が何なのかということをつかんで対応していただきたいということを申し上げておきたいと思います。これは指摘にとどめたいと思います。
 次に、養蚕、蚕糸問題についてお聞きをしたいと思います。
 農林水産省が二〇〇八年に生糸輸入調整法を廃止しました。国としては大日本蚕糸会に三十五億円の基金を積んで、大日本蚕糸会が蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業ということでやることにしたと。この事業、六年間の事業なので、この三月で終了したんですよね。
 二〇〇八年当時、私、生糸輸入調整法を廃止して養蚕振興が本当に前に進むんだろうかということで質問しました。当時、若林大臣だったんですけど、若林農水大臣が、生糸輸入調整法を廃止するというのは、蚕糸業の経営安定の仕組みがもう有効に機能しなくなっているので、新しい蚕糸対策が必要だというふうに述べられたんですよ。大日本蚕糸会に三十五億円の基金を積んだので、養蚕農家が安定的に養蚕を続けられるよう、軌道に乗るまでの資金として三十五億円を措置したというふうに述べられたんですね。
 そこで、大臣にお聞きしたいんですけれども、三月末でこの事業が終わりましたけれども、養蚕農家が安定的に養蚕を続けられるようになっているのかどうかということなんですが、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この蚕糸業でございますが、かつて生糸の輸出を通じて我が国の経済発展を支えていただいた主要な産業でありまして、現在においても主産地である群馬県などの中山間地で米、野菜等との複合作物の一つになっているわけでございます。
 需要の方が、和装需要が低迷をする、それから安価な中国産絹製品の輸入が増える等々で、養蚕の農家数が平成元年には五万七千二百三十戸あったんですが、平成二十四年には五百六十七戸にまで減っておりまして、繭の生産量についても平成元年は二万六千八百十九トンであったものが平成二十四年には二百二トンということで、大変この数字を見ただけでも厳しい状況ということが分かるわけでございます。
 若林当時の大臣とやり取りをされたときの御披露がありましたけれども、十九年度に今の事業によって三十五億円の基金を造成しまして、養蚕農家、蚕糸業、川上の分野とそれから川下の絹織物業がやっぱり提携をして、グループによって国産生糸の希少性を生かした純国産絹製品のブランド化、それから純国産絹マークの普及促進等による消費拡大、こういう取組をこの基金の事業によって支援をしておりまして、全国で五十六の今提携グループが形成をされまして、特徴ある純国産絹製品作りに取り組んでいるところでございます。
 本事業の実施によりまして国産繭・生糸の特徴を生かした絹製品作りが進んできておりますが、景気の低迷、それから東日本大震災の影響もありまして、先ほど言った五十六のグループの中では大変苦戦しているグループも多いことでございまして、グループの自立をより確実なものとするために、この事業の実施期間、これを平成二十八年度まで延長をすることとしたところでございます。

○紙智子君 ちょっとこれから聞こうと思っていたところまでお答えいただいちゃったんですけれども、要するにグループはできたと。できたけれども、自立できているグループは本当にもう僅かということですよね。
 それで、繭代金については、その事業を開始したときは一キロ当たり三千五百円の繭代金を保証していたんだけれども、昨年度は千五百円しか保証されていないわけですよね。当時の説明では、事業が進めば、製品が高く売れて、生糸も上がって、繭代金が農家に出せるから、養蚕農家は従来以上の繭代を確保できるんだというふうに説明していたわけですけれども、この説明がもう全然違っちゃっているということだと思うんですよ。本当にそういう意味では厳しいという話、今されたんですけれども、ちょっとやっぱり成功したというふうには言えないと思うんですね。
 蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業が今年の三月で終わると。二〇〇八年に法律を廃止するときに、私、実は三十五億円というのは国が蚕糸の振興から撤退する手切れ金じゃないかというふうに質問をしたんです。若林大臣は、そんなことはありません、そんなこと考えていませんというふうに言われたんだけれども、しかし、現実は、これ、グループを取っても繭代金を取っても、養蚕農家の経営が安定しているとも言えないし、日本の伝統産業が発展しているとは思えないわけです。ある自治体の首長さんは、行政として大変心配していると、国会議員などにも要請しているが、厳しい状況に年々入っていっているというふうに言われているわけです。
 私、日本の伝統産業を見捨てていいのかと思うんですね。本当に僅かに残った、やっぱり大事なわけですけれども、少なくとも蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業の成果と課題についてやっぱりきちっと検証すべきではないかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) この支援の緊急対策事業の実施で、先ほど申し上げましたように、ちょっと先走って先までお話ししてしまったようでございますが、五十六の提携グループが形成をされまして、特徴を生かした純国産の絹製品作りが取り組まれております。
 例えば、繊維が本当に細い新品種を用いた高級生地、それから世界では類を見ない雄のみの蚕品種のプラチナボーイ、これ、雌に比べて収量が多く、繊維が細かくしなやかな特徴を持つそうでございますが、これを用いた男性用の着物、それから国産繭・生糸の特徴を生かした製品作り、こういう事例が出てきておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、景気低迷、それから東日本大震災発生後は高級品を中心とした買い控え、こういうものがやっぱりどうしても出てきております。それから、やっぱり風評被害により苦戦しているグループも多いと、こういう状況だというふうに承知をしておりまして、したがって、この蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業については、平成二十五年度までの事業ということにしておったわけですが、こうした状況を検証した結果、提携グループの自立をより確実なものにするための支援、これが必要という判断をいたしまして、その結果、今年の三月で終わったところを二十八年度まで延長をするということにしたところでございます。
 今後は、国が純国産絹製品の更なる高品質化のための技術実証、それから生産の基盤となる稚蚕の安定供給の確保を行うこと、それから大日本蚕糸会が提携グループが購入する繭の量に応じて支援を行う、こういう役割分担の下で事業を実施していきたいと、こういうふうに思っております。

○紙智子君 今、二十八年度まで延ばすというふうに言われたんですけれども、やっぱり検証をすべきだし、やっぱり課題ということではっきりさせる必要があると。それについてもちょっとまた後で御回答いただきたいんですけれども。
 実は、昨年来、一部の養蚕農家、連携グループの方々から、四月以降も緊急対策を、助成がないと事業の継続が不安だという声が出されて、群馬県内の自治体でも助成を求める議論が活発に行われて、大日本蚕糸会が独自に繭一キロ当たり千二百円を助成するということで、群馬県内も三百円上乗せすると。で、更に上乗せする自治体も生まれてきていると。
上毛新聞ですね、この新聞では、今年二月に、「養蚕農家に補助金 国に代わり県と蚕糸会 世界遺産登録後押し」という記事が載ったんですよ。
 そういうやっぱり自治体の努力、国がもう、国に代わってというふうに言われるということ自体もうとても恥ずかしいと思うんですけど、やっぱり国を挙げてというふうにしなきゃいけないんじゃないかと思うんですけれども、こういう自治体の努力をどう思われるかということ、それから、やっぱり日本の伝統産業、養蚕をしっかり守るというメッセージを出すべきじゃないかと、この三点、最後にお答えをいただきたいと思います。

○委員長(野村哲郎君) 林農林水産大臣、時間が来ておりますので、簡潔に御答弁ください。

○国務大臣(林芳正君) はい。三問いただきましたので、簡潔にしたいと思いますが。
 先ほど申し上げましたように、川上と川下の連携、これが大変大事であるわけでございまして、群馬県や蚕糸・絹業提携支援緊急対策事業の実施主体であるこの大日本蚕糸会の取組と連携をしながら、今後も意欲ある提携グループの活動を支援してまいりたいと思っております。
 冒頭申し上げましたように、絹の歴史は非常に古くて、各地で特色ある絹織物が伝承されておりまして、和の文化を象徴するものであると、こういうふうに思っておりますので、やはり絹の良さを消費者に知っていただくということで需要を開拓していくことが大事だと思っておりまして、まず足下からということで、農水省の玄関にも組立て茶室を作りまして、純国産絹製品等の展示もしておるところでございますし、文化遺産の登録、加えて二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックの開催されるという機運を捉えて、しっかりと対応してまいりたいと思います。

○紙智子君 終わります。