<第186回国会 2014年3月26日 沖縄北方特別委員会>


沖縄の振興を/北方問題・重い漁業協力金等の引き下げ・支援策を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、沖縄振興特別措置法についてお聞きをいたします。
 我が党は、アメリカ占領下で形成された広大な基地が今なお県民生活と沖縄の経済社会に重大な影響を与えている下で、県民生活を維持向上させるための政府の支援というのはやはり必要だというふうに考えていますので、問題点は指摘しつつも、この法案には賛成の立場であります。
 その上で、幾つかお聞きしたいと思います。
 金融特区が創設された二〇〇二年度から所得控除の認定を受けた企業は一社のみと、これ驚いたんですけれども、なぜ一社にとどまったんでしょうか。

○国務大臣(山本一太君) 紙委員御存じだと思いますが、従来の金融特区では、これまで十五社の企業進出、約五百人の雇用創出があって、一定の企業集積は進んでいるというふうに考えております。
 一方、おっしゃったとおり、所得控除の認定事業者が一社にとどまったということで、これについては、専ら対象事業を営むという要件が厳しくて柔軟な企業活動を行う上でのハードルになっていたとか、あるいは、進出の際には必ずしも多数の雇用者を見込むことが困難であるが、従業員数要件が厳しかった等が理由になっていたと考えております。
 特区の使い勝手を良くして特区を活性化していくという観点から内閣府においても企業ヒアリングを行い、先ほどいろいろ御指摘もありましたが、こうした分析を進めてまいりました。企業ヒアリングも踏まえて、今般、金融特区については経済活性化特区を創設して、対象産業を金融のみならず知事が設定する産業に多様化する、あるいは、同時に、所得控除について専ら要件の廃止、所得控除の人数要件の緩和、これ十人から五人、こういうことを措置し、さらには、特区に進出する企業の資金調達を容易にする観点から、江口委員の方からもあった話ですが、新たにエンジェル税制を創設することといたしました。
 こうして幅広い支援内容を充実いたしまして、これが効果的に活用されることにより企業の進出が進んでいくというふうに考えております。

○紙智子君 縛りがきつかったということも言われているんですけれども、というよりは、私は、沖縄の実情にやっぱり合っていなかったんじゃないのかというふうにも思います。やっぱり呼び込み方式ではうまくいかないということもあると思うんですね。金融特区は破綻したと言っても過言じゃないと思います。
 失敗をばねにもっと幅広くということなのかもしれませんけれども、やっぱり対象を広げる、金融特区制度を見直して経済金融活性化特区にするということですよね。対象の産業を金融に限定せず多様化していくんだということになっているわけですけれども、現在、各地で地域資源を宝と位置付けて、それでやっぱり地域経済の活性化に何とか役立てるようにしようということでいろいろ試みはされていると思うんです。例えば名護市なんかでは、本当に沖縄の宝ということで、パイナップルとかシークワーサーだとか、こういう一次産業の分野も付加価値を付けられるような加工場を造るとか、こういう地域の特色ある資源として活用して六次産業化をしていこうというような取組もあって、そういうことにも大いに活用できるということになるんでしょうか。

○政府参考人(井上源三君) 経済金融活性化特区の対象産業でございますけれども、これは、知事が計画を定めていただきまして、その対象とする産業を記載することとなっているものでございます。
 現在、沖縄県において、対象産業として、先ほども申し上げましたけれども、沖縄の北部地域の資源を活用した製造業などを検討しているというふうに聞いております。
 今委員の御指摘のように、北部地域、シークワーサー、パイナップルというようなことをお挙げになったわけでございますけれども、やっぱり沖縄独自、そしてヤンバル独自の農林水産物、多々あるというふうに理解しておりまして、そうした農林水産物の六次加工を推進するということもこの北部地域の資源を活用した製造業の中に含まれるものというふうに理解をいたしております。

○紙智子君 金融特区の反省から、今度は本当に県民また住民が望む地域振興に役立つ制度にしていただきたいなと思います。
 次に、北方問題に話題を変えたいと思います。
 北方関連の振興策は、性格の違いはあるんですけれども、私は、沖縄の振興策と比べても非常に遅れているんじゃないかというふうに感じています。そこで、今日は漁業協力金などについてお聞きしたいと思います。
 一九七七年に二百海里経済水域が設定されて、根室の漁船はソ連水域からじわじわと締め出されています。北方海域で操業する際に各種の協力金等と称するお金を支払わなきゃいけないと。一つは日ロのサケ・マス漁業交渉の漁業協力費、それから二つ目に日ロ漁業委員会交渉の日ロ地先沖合漁業交渉の入漁料、それから北方四島安全操業交渉の資源保護協力金、それから四つ目に日ロ合同委員会が協議する日ロサケ・マス漁業交渉の有償入漁料、五つ目に日ロ貝殻島昆布採取協定の採取料などというのもあるわけですけれども、各種協力金等を徴収する根拠、並びに使途について端的に説明してください。

○大臣政務官(横山信一君) お答えいたします。
 ただいま委員から御指摘がありましたように、日ロ間の漁業交渉には様々なものがございます。その交渉を大まかに分けますと、政府間協議、また政府と民間が交渉を行うもの、さらには民間が交渉を行うものというふうに分けることができるわけでございますが、政府間交渉におきましては漁業者が交渉に参加し、また民間交渉においては漁業者自身が交渉を行い、漁獲量等に見合う負担として妥当なものと漁業者が判断の上、一定の協力金等が定められているという現状でございます。
 なお、協力金等につきましては、現金で支払うものと調査研究用の機材を研究機関に現物で供与するものとがございます。現金で支払うものにつきましてはロシアの国庫歳入になると承知をしております。

○紙智子君 三月の二十四日から日ロサケ・マス漁業交渉が始まっているわけです。それで、関係者は漁業協力費の引下げを求めていると。これは当然だというふうに思うんですね。二〇一三年の協力金などを総計しますと、これ二〇一三年ということでやったんですけれども、二十八億九千四百六万円ということになります。
 昨年、根室で意見交換会やったんですけれども、そのときに、一隻の船で数十万、数百万の入漁料を払っている、採算倒れで操業する船がいなくなってしまうんじゃないかと懸念している、二百海里以前の漁業生産は二百四十億円あったが近年は九十九億円に激減している、根室の経済が成り立たなくなっているというふうに出されました。魚価も下がっていて、経費も非常に今かさばっていると。そういう実態について、ちょっと大臣にどういう認識なのかなということをお聞きしたいと思います。

○国務大臣(山本一太君) 北方領土の隣接地域一市四町、委員が一番御存じですが、領土問題が未解決であるということで望ましい地域社会としての発展が阻害されている面があるということでございまして、返還要求運動の原点の地という特殊な位置付けにあるということから、安定した地域社会として形成する必要があるということはもちろん認識をしております。
 特に、基幹産業である漁業は非常に重要だというふうに捉えておりまして、これについて、例えば隣接地域振興の一環として何かできるかというと、いろんな多分課題や議論、問題はあると思いますけれども、少なくともやはりこの漁業が基幹産業だということの認識は持っておりますので、必要に応じて水産庁と連携しつつ、北方対策担当大臣として、これは、これ以上はなかなか踏み込めないですが、関心を持ってしっかり見てまいりたいというふうに考えております。

○紙智子君 根室の漁業でいいますと、春はサケ・マスなんですね、それから秋はサンマ、冬はタラと、このサイクルで成り立っているわけですよね。ところが、近年温暖化の影響もあってそのサケ・マスがなかなか、北の方にはいるんですけれども、来ないわけですよね。それで、やっぱりもうロシアの海域に入って捕らないといけないし、だから料金を払わなきゃいけないし、大変だけれどもあえてそれをやらなきゃいけないという状況になっているわけです。
 日ロ間で一定の協力金等が必要だというのは分かるんだけれども、この費用が漁業経営と地域振興の重荷になっているというふうに思うんですけれども、この点、大臣、いかがですか。

○国務大臣(山本一太君) なかなか北方対策担当大臣の立場で今の質問に直接お答えするのは難しいんですけれども、紙委員のお話を聞いて、やはりこの基幹産業である農業について、非常に今いろんな課題があるということは改めて認識をさせていただきました。漁業です、済みません、漁業。

○紙智子君 政府の農林水産業・地域の活力創造本部が昨年決めています農林水産業・地域の活力創造プランってありますけれども、ここでは、目標は水産日本の復活と、かつて世界一を誇った日本の水産業を復活させるというふうに言っているわけですよね。水産日本の復活にふさわしい支援を検討すべきじゃないかと。
 それから、協力金の負担に苦しむ北方隣接地域の振興策として、協力金と同額の支援策やあるいは事務負担の軽減を行うなど、沖縄振興に見劣りしない振興策を検討すべきではないかというふうに思っていまして、これについては、農林水産省とそれから北方大臣と、お二人にお聞きをしたいと思います。

○国務大臣(山本一太君) 繰り返しになりますが、必要に応じて水産庁と連携しつつ、この問題についてはしっかり関心を払って見てまいりたいというふうに考えております。

○大臣政務官(横山信一君) 水産日本の復活というお話がございましたけれども、その主な内容は、水産物輸出、そしてまた魚介類の消費量を増加をさせるということでこの水産日本の復活ということを目指していくわけでございます。
 他方、この北方海域での漁業の負担に関してでございますが、これも先ほど申し上げましたとおり、漁業交渉の中で我が国の関係漁業者がその水準を妥当なものと判断した上で決められているという現状がございます。そのような中、サケ・マス漁業に関わる日ロ漁業合同委員会に基づき協力金等としてロシアに対し調査研究用の機材を現物で供与する費用の一部は、我が国サケ・マス漁業の安定的継続や漁業分野における日ロ間の密接な協力関係の維持を図る観点から、また北方四島操業枠組協定及び貝殻島昆布協定に基づき我が国漁業者が北方四島の領海を操業する場合に生ずる追加的経費は、北方領土問題が未解決であるという観点から、それぞれ国が特別に支援をしております。
 今後とも、ロシアとの漁業交渉におきまして、協力金等の引下げに向けて努力をするとともに、関係漁業者の円滑な操業が継続できるように努めてまいります。

○紙智子君 先ほども紹介させていただいたんですけれども、二〇一三年の協力金全部足すと約二十九億ですよ、二十九億。先ほどちょっとその懇談の中で出されたので言うと、近年九十九億円に激減しているということですから、この占める割合で見ると本当に大変なことだなというふうに思うんです。
 だから、確かに交渉の中で決めて、これ妥当な線というふうになっているけれども、実態は本当に大変だという中では、私は、やっぱり領土問題がもっと早くに解決していればこんなことにならなかったわけで、それがやっぱりずっと持続しているということを鑑みて、もうちょっと何とかこの支援を厚くするということできないものかということを常々強く思っておりまして、これに対して、あともうちょっと、一分ぐらいしかないんですけれども、一言もしあれば、大臣、お願いします。

○国務大臣(山本一太君) 北方領土隣接地域への支援については、もう紙委員がずっとこの委員会で一貫して問題意識を持っておられるということもよく分かっております。
 今日のお話も改めて聞いて、基幹産業である漁業への支援は大事だということは私も認識をいたしました。
 ただ、これをどういうふうに連携をしていくか等々ということはなかなか軽々には言えないところなので、この問題は、しかし関心を持ってしっかり注意を払って見てまいりたいということは申し上げておきたいと思います。

○紙智子君 終わります。