<第186回国会 2014年3月26日 東日本大震災復興特別委員会>


被災者の自立再建支援を/雇用促進住宅の無償提供の打ち切りをやめるよう求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 震災から三年、今なお仮設住まいなど、多くの方が避難生活を送っています。多くの被災者にとって、津波で失った住宅の再建というのは厳しくありまして、今なかなか進んでいないと。狭くて不自由な仮設住宅で、ストレスがたまって我慢も限界に達しているということです。一方、高齢者にとっては、少ない年金で、夫婦二人で水道光熱費を除けば月に使えるお金は大体六万円前後だと、医療費の負担もあって、公営住宅に入っても家賃が払えないと。そういう中で、仮設住宅を出られないという声もあります。
 公営住宅への入居基準に、滞納していないことを条件にしている県もあります。被災者が仮設住宅を出られないと、その背景にはやはり資金がなく自立再建が困難になっているということがあります。被災者の持家の再建の支援を強化することが大変重要になっていると思います。
 そこで、防災集団移転を利用する方は、これ被災前の土地の評価額で売却したいけれども、今は七から八割で少な過ぎると言っているんですね。なぜこれ評価額が少ないのか、国土交通省、お答え願います。

○政府参考人(石井喜三郎君) お答え申し上げます。
 防災集団促進事業につきましては、被災した移転元の土地を買い取る場合には、これは公共事業でございますので、他と同様、土地の買取り契約時点における正常な取引価格で取得するということとなっております。この取得額、今、七、八割という御指摘がございましたが、事業主体である市町村が適切な不動産鑑定評価などを参考に決定することとしております。具体的には、移転元の土地に指定をされる災害危険区域の制限内容、それから、そこでは住むことはできませんが、復興計画等により商業地その他に使われる場合の、その跡地利用の見通し等も勘案しながら市町村が適切に決定するものということでございます。
 このようなことから、移転元の土地を被災前の価格で買い取ることは困難でございますが、被災者の負担ができるだけ軽減されるように、住宅用地の購入や住宅を建設する場合のローンの利子相当額あるいは引っ越し費用等への助成を行うとともに、自力による住宅用地の購入や住宅建設が難しい移転者につきましては、市町村の方から住宅用地を貸し付ける、あるいは災害公営住宅への入居を勧めるなど柔軟な対応をさせていただいているところでございます。
 国土交通省としては、このような措置を通じ、一日も早い復興が実現するよう今後とも地域の実情を踏まえたきめ細やかな支援に努めてまいりたいと存じております。

○紙智子君 建設費用が上がって自立再建を圧迫しているという現実があります。先日、岩手県の山田町でお話を聞いたんですけれども、自宅を再建しようとしても、地価が高騰している上、建設資材が不足していて、予定の工期内に完成しないと。人手も不足し、建設費用を坪六十万円で契約したんだけれども、完成したときには七十万円になった、今ではもう九十万円になっているところも出ているということなんです。自立再建しようと思っても、売却費用は少ない、購入資金もない、自立再建に踏み切れない状態があるわけです。
 アベノミクスの景気対策で公共事業を拡大しているということがありますけれども、被災地の事業が遅れているとマスコミなんかも指摘しているわけですね。被災地の復興を優先する対策を取るべきではないでしょうか。これは復興大臣にお聞きします。

○国務大臣(根本匠君) 復旧復興事業を強力に進めていく、これは何よりも大事なことであります。確かに、東京オリンピックの話が出て、復興のための、被災地に影響があるのではないかという懸念の声もありますが、とにかく我々はしっかりと今の復旧復興事業を推進していく。
 人手不足あるいは資材不足対策、これについては、住宅再建・まちづくりタスクフォースあるいは施工確保に関する連絡協議会などを通じて進めてまいりました。具体的には、人手不足については復興JVの導入や実勢価格を適切に反映した公共工事設計労務単価の引上げなどによって広く人材を集める。一方で、発注ロットの大型化や主任技術者の配置基準の緩和、あるいは、発注者が様々あるわけですが、発注見通しを統合して公表するなどによって人材をできる限り効率的に活用可能としております。
 資材不足につきましては、骨材の地域外からの調達や、あるいは公共事業で生コンプラントを設置する、あるいは地域ごと、資材ごとに関係者によるきめ細やかな需給見通しの情報共有をする、こういうことを実施して、各発注者において更に資材価格の調査を毎月行って価格を改定して、最新単価を予定価格に反映しております。
 国交省の取組については、入札不調に対応して、公共工事設計労務単価、これの更なる引上げをやりましたし、被災三県における現場労働者の確保などにも資するように間接工事費の割増し、復興係数というものを導入する、あるいは建設産業の若手技術者の確保のために施工管理技士の受験資格の緩和などを実施しております。
 これまでの手綱を緩めることなく、復興事業の隘路となる課題に対して機先を制する形で手を打つことが重要と認識しております。とにかく復興の加速化を図っていきたいと思いますし、復興の加速化、これは国家目標である東京オリンピック・パラリンピックの成功、これに不可欠なものと位置付けて復興の加速化に全力で取り組んでいきたいと思います。

○紙智子君 今、加速化というふうに言われたんですけれども、間に合っていなくて、自分の再建を諦めて復興住宅に応募するという方が増えているんですね。
 そこで、仮設住宅から引っ越しをする費用などについてお聞きをします。
 仮設住宅から引っ越しする際に掛かる引っ越し費用や新しい家の敷金への助成、これはあるでしょうか。防災集団移転事業を活用するケースと、それから自立再建をするケースと、それぞれについてお答えを願いたいと思います。復興大臣。

○国務大臣(根本匠君) 防集団地への移転については、仮設住宅から恒久的な住宅に移転する際の引っ越し代、これについては防災集団移転促進事業について助成が可能です。さらに、防災移転者以外の災害危険区域からの移転については、がけ地近接等危険住宅移転事業による助成が可能です。また、その他の自力再建される方あるいは災害公営住宅へ移転される方、これについては市町村の取崩し型復興基金の基金を活用した助成が可能であります。

○紙智子君 今、その他については市町村の取崩し型基金という話がありました。自治体が要するに判断をするということなわけですね。
 それで、宮城県では災害公営住宅の敷金の免除が今広がっているんですね。全額を免除するのが石巻市とか、それから気仙沼市、東松島市、名取市、南三陸町、岩沼市などです。家賃の数か月免除する自治体もあるんです。三か月たって、被災者は自治体によって差がある、あるところとないところとあると。そのことで、多額のお金が掛かる、差がある、これ自体がストレスになるというふうに言っているんですよ。
 国はやっぱりここのところを、この差がなくやっていく必要があるんじゃないかと、支援すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 住宅再建についての支援については取崩し型復興基金、これは平成二十三年度第二次補正予算において増額された特別交付税、これで千九百六十億円を措置しましたが、更に平成二十四年度補正予算において一千四十七億円、これは自治体から住宅再建についての要請がありましたから、一千四十七億円を増額措置しております。
 それから、災害公営住宅に入居する際の敷金、これについては公営住宅法の規定によって、特別の事情がある場合には、各自治体の判断で減免又は徴収猶予が可能となっております。これらの措置については各自治体の判断により行われるものでありますが、被災者の方の仮設住宅からの移転が円滑に進むように、引き続き制度の周知を図っていきたいと思います。

○紙智子君 今お聞きしたのは、要するに、差が出てくるわけですね、あるところとないところと。そこをやっぱり差をつくらないように国としての支援が必要じゃないかということをお聞きしたんですけれども、もう一度お願いします。

○国務大臣(根本匠君) 災害公営住宅に入居する際の敷金、それは自治体の判断で、公営住宅法の規定によって特別の事情がある場合には減免又は徴収猶予が可能でありますから、こういう制度が可能なんですよということの周知を我々図っていきたいと思っております。

○紙智子君 やはりそこのところをもう一歩進んでやっていただきたいというふうに思います。
 それと、岩手県の宮古市で懇談したときに、初めは、早くとにかく海に出て仕事をできるようにということが優先されていたわけです。しばらくして落ち着いてくると、今度は、仲間は家をなくしているし、家族もいない、今仮設住宅に住んでいると。そうすると、人間はやっぱり自分の城が決まらないともう本当に幾ら働いても安心できない、気持ちが休まらないという声も出されました。
 仮設住宅から自力再建するための国の支援を拡充するということが急がれているわけですけれども、被災者に接している地方自治体は、国の制度改正を待っていられないということで支援をもう始めているんですね。岩手県の宮古市では、国の生活支援金三百万円以外に、県と市で百万円、市単独で二百万円、それから地域産材を活用したら最大で百四十万円、バリアフリー化で百万円などの後押しをして、利子補給も行っていると。
 二〇〇七年に被災者生活再建支援法の改正のときに、四年後には見直しするというふうにしたんですけれども、東日本大震災が発生したために先送りになっています。アベノミクスで物価が上昇して、消費税は四月から増税されると。家を買う経費はどんどんかさむと。支援額三百万円を据置きで、これ被災者にとっては国の有り難みが実感できるかどうかということなんですね。
 被災者生活再建支援金をこれ三百万円から、ずっとこれ我々要望しているんですけれども、少なくとも五百万円に引き上げて、半壊などにも支援を拡充すべきではないでしょうか。いかがですか。

○大臣政務官(亀岡偉民君) 今委員の言われたように、被災者生活再建支援金の支給額の増額についてはいろいろ議論があったところでありますけれども、平成十六年、先ほど言われたように、従来の百万円から引上げを図りまして、被災直後の当座の生活資金に充てるための生活関係費として最大百万円、さらに住宅再建の初期費用として、ローン関係経費など居住関係経費として最大二百万、合計三百万にこれ引き上げたところでありまして、さらに平成十九年には、これ年収とか年齢要件を全部撤廃しまして、生活関係経費と基礎支援金、居住関係経費を加算支援金として、見舞金的な性格を有するものとして再構成したところであります。この法律は、与野党一致の議員立法により成立した経緯があります。
 お尋ねのこの支援限度額の引上げについては、このような立法の経緯、見舞金的な性格を有するものとして他の弔慰金等いろいろな制度がありますので、そのバランス、それから国、地方の財政負担など勘案する必要があり、慎重に検討すべきとして、いろいろ検討を重ねているところであります。

○紙智子君 その辺のところは、三年たったんだけれども、全然変わっていないなというふうに思うんですね。そういう対応でいいのかなというふうに言わざるを得ません。
 それから、ちょっと時間の関係もありますので一つ飛ばします。雇用促進住宅の問題で質問いたします。
 震災後、被災者に対して雇用促進住宅の無償提供が行われてきました。ところが、昨年、突然、雇用促進住宅の管理会社から無償提供を打ち切るという連絡が来たという声が出ています。この方は元々埼玉にお住まいの方で、埼玉、東京などから避難した被災者に対しての無償提供を打ち切るという話なんです。
 まず、震災後、無償提供した理由についてお聞かせください。

○政府参考人(宮野甚一君) お答えをいたします。
 雇用促進住宅につきましては、東日本大震災における甚大な被害を踏まえまして、雇用促進住宅を被災者へ無償提供するよう、所有する当時の独立行政法人雇用・能力開発機構に対し、平成二十三年三月十二日付けで要請をしたものであります。また、同年三月十九日には、福島第一原子力発電所周辺からの自主避難者を含む避難者に対しましても原発避難者として無償提供の対象としたところであります。

○紙智子君 この三月、あと一週間なんですけれども、この三月で無償提供を止める理由についてもお聞かせください。

○政府参考人(宮野甚一君) お答えをいたします。
 今、御答弁をいたしましたように、雇用促進住宅につきましては、自主避難の方を含めまして、東日本大震災に被災された方々に対しこれまで家賃等無償により最大限提供を行ってきたところでございます。
 岩手県、宮城県、福島県及び茨城県において応急仮設住宅の供与期限が一年延長されたこと等を踏まえまして、岩手県、宮城県、福島県、茨城県及び栃木県からの被災者の方については、雇用促進住宅の無償提供期間についても平成二十七年三月末まで延長を行ったところでございますけれども、それ以外の都県からの被災者の方については、平成二十六年三月末をもって無償提供を終了することとしたところでございます。
 なお、無償提供は終了いたしますけれども、希望する方に対しましては、雇用促進住宅に入居する一般の入居者の方と同様に、必要な手続を経た上で家賃等有償により引き続き雇用促進住宅への入居を可能としているところでございます。

○紙智子君 答えられていないと思うんですよね。これ、人道的な立場から無償提供をやってきたんだと思うんですけれども、実際には、これ、子ども・被災者支援法の方針を受けて、そこに合わせて切るということになったんじゃないんですか。私は非常に問題だと思っているんですよね。
 それで、管理会社からの連絡は、入居条件が書いてあるんですけれども、そこには、家賃、それから共益費の支払能力があること、それから、連帯保証人がいること、二か月分の敷金、二か月分の家賃と共益費用を年度内に支払うことを求めているわけです。家賃が支払えなければこの場合どうなるんでしょうか。

○政府参考人(宮野甚一君) 個別のケースにつきましては、それぞれ個別のケースごとに御相談をさせていただくということになろうかと考えておりますけれども、雇用促進住宅につきましては、本来の入居者の方である一般入居者の方についても家賃等を御負担をいただいているということでございます。そうした観点から、今回、一部の方については、入居者間での負担の公平性の観点からも一定の負担については御理解を願いたいというものでございます。

○紙智子君 結局、だから、平時と変わっていないわけですよ、そこの基準は。払えなければ結局出されることになっちゃうわけですよね。事実上のこれ追い出しですよ。やっぱり、被災してそこに入っているわけだから、そういう観点で取り組まなかったらいけないと思うんですね。福島原発事故を受けて東京、埼玉を離れて避難した方で、震災後のストレスが非常に深刻でまだ立ち直っていない方もいるわけですよ。その方に来る通知が退去命令だと、そして退去しないんだったら家賃を払えということも書いてあるわけですよ。
 私たち、議員立法で作った子ども・被災者支援法は、支援の対象を福島県に限定していないんですよ。やっぱりグレーゾーンでそうじゃないところも含めてちゃんと救えるようにしようという趣旨でやっているわけです。この議員立法の理念に全く反するやっぱり追い出しというのは絶対許せないと、これやめるべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(根本匠君) 雇用促進住宅については、東日本大震災に被災された方々に対し、これまで家賃など無償により最大限提供を行ってきたところであります。もう厚生省から話がありましたが、被災五県から避難されている方については引き続きどの県におられても無償提供を行うと承知をしております。それ以外の地域からの避難者につきましては、一般入居者からの意見も踏まえ、入居者間での負担の公平性の観点から、一般入居者と同様に家賃など有償による入居を可能とすることによって引き続き住宅支援を行っていきたいと思います。

○紙智子君 震災による大きな精神的なストレスもあってそういう事態になっているわけですから、やっぱり平時と同じような扱いをすべきでないと、生存権を脅かすやり方というのは絶対やめるべきだということを申し上げたいし、同時に、子ども・被災者支援法の理念をどんどん骨抜きにするようなやり方は絶対許さないということを申し上げまして、質問を終わります。