<第186回国会 2014年3月19日 沖縄北方特別委員会>


クリミア問題・軍事介入撤回を求める/北方四島の残置財産の解決を

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 ウクライナ情勢について岸田外務大臣にお聞きします。端的に聞きますので、端的にお答えください。
 それで、ウクライナ南部のクリミア自治共和国における住民投票の結果を受けて、自治共和国議会が同日、独立の決議とロシアへの編入を要請する決議を採択しました。また、領内にあるウクライナ国家資産をクリミアが国有化すると宣言しました。昨晩、十八日ですけれども、ロシアのプーチン大統領がこの問題について演説を行いましたが、その概要について端的に御説明ください。

○国務大臣(岸田文雄君) ウクライナ情勢につきましては、ロシアがこのクリミア自治共和国の独立を承認し、そして、十八日、このクリミアをロシアに編入する条約への署名がなされたと承知をしております。
 このことにつきましては、我が国としまして、ウクライナの主権ですとかウクライナの領土の一体性あるいは統一性を侵害するものであると認識をしております。これを非難するというのが我が国の立場であり、こうした力による現状変更については決して看過できないと認識をしております。

○紙智子君 プーチン大統領はクリミア自治共和国を編入するというふうに発表したわけですけれども、これ、国際法にもウクライナ憲法にも反する行為だと思います。
 岸田外務大臣に、今述べられたんですけれども、要するにこの軍事力を背景にした編入、併合に対して、これ、深刻な脅威だという認識はお持ちでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 今回のクリミア編入の動きにつきましては、国際憲章に反し、そしてウクライナの憲法にも反し、そしてこれは認めることができない、こうした問題であるということにつきましては、G7の共同声明、三月三日と十二日、二回にわたって共同声明を発出しておりますが、その中で明記しておりますし、我が国もこの共同声明に参画しておりますので、同じ認識であります。
 力を背景とする現状変更の試み、決して認めるわけにいかない、こういった考え方につきましては、三月十一日の日に私もロシア・ラブロフ外務大臣と電話会談を行わさせていただきましたが、その中でロシアに対してしっかりと伝えさせていただいております。

○紙智子君 ウクライナの主権を侵して、武力を背景にした領土の変更であって、これは国際の平和秩序への重大な攻撃だと。
 加えてお聞きしますけれども、解決に向けてはやはりこの軍事介入の撤回を求めるべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) このウクライナの今回の事態に関しましては平和裏に解決されるべきであると、そして、あらゆる当事者に対しまして自制と責任ある行動を求めているというのが我が国の立場であります。
 そして、先ほど紹介させていただきましたが、十一日の日ロ外相電話会談の中でも、ロシアに対しまして、まずウクライナ暫定政権と直接対話を行うべきであるということ、そしてクリミア及びウクライナ東部に対しまして国際監視団を受け入れるべきであるということ、こういったことを申し入れております。
 是非、こうした我が国の考え方、立場にロシアも応じ、そしてこの事態を平和裏に解決するべく、自制と責任ある行動を行うことを求めていきたいと考えております。

紙智子君 軍事力介入の撤回を求めるべきじゃないかというふうに言ったんですけれども、その点を。

○国務大臣(岸田文雄君) G7のこの共同声明の中にも明記しておりますが、ロシア連邦に対しまして、この行動を直ちに停止することを求める、こういったことを明記しております。ロシアに対して、この現状の行動を停止すること、G7諸国とともに求めております。

○紙智子君 我が国とロシアとの関係でいうと、領土問題を抱えているわけですよね。であればこそ、やっぱり原則的な立場を貫くということが大事ではないかと思います。
 この問題は、ウクライナ国内の当事者間の対話でやはり平和的に解決するように努力を望むわけですけれども、同時に、やはり国際社会と協力をしてこの平和的な解決を図るように求めたいと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) まず、我が国の立場ですが、このウクライナの問題に関しましては、国際社会とも連携しながら平和裏に事態を解決するべきであるという考えに立っております。よって、ウクライナのこの事態の背景には、ウクライナ自身の厳しい経済状況、財政危機が存在いたします。こういった事態に対して、ウクライナ暫定政権とIMFは今協議を行っておりますが、この協議の結果を受けて我が国もこうした財政危機に対する対応に貢献するということをもう既に表明しております。
 あわせて、ウクライナのこの事態については、対話とそしてウクライナ国内の透明性が促進されることが重要であるということで、OSCE、欧州安全保障協力機構のミッション派遣が今議論されていますが、その費用二十五万ユーロのうち十万ユーロは我が国が支出する、こうしたことも表明しております。
 こうした平和裏に解決されるべきだという取組を行ってきたわけでありますが、クリミア編入の動きについては認めることができないということで、ロシアに対してしっかりと働きかけを行い、そして、先ほども表明させていただきましたが、昨日、我が国としましては、ロシアの査証緩和に関する協議を停止する、あるいは三件の新たな国際約束の締結交渉開始を凍結する、こういった表明をしたところであります。
 我が国としましては、G7を始めとする関係各国としっかり連携しながら、力による現状変更は認めないということはしっかりと表明しながら、昨年来の日本とロシアとの関係、日ロ関係に基づいて、ロシアに対してしっかり物を言っていく、働きかけていく、そしてあわせて、この事態全体は国際的な枠組みに協力する形で平和裏に解決を求めていく、これが我が国の基本的な姿勢だと認識をしております。

○紙智子君 私は、やっぱり政府は軍事介入は撤回するように求めるべきだというふうに思っています。同時に、国際社会が外交交渉において平和的に解決するということを強く求めておきたいと思います。
 では次に、旧島民の残置不動産について山本担当大臣にお聞きします。
 北方四島がロシアに占拠されているために、旧島民が有する土地の所有権の変更などの登記事務が行われず、不利益が生じていると。自分の土地がどうなっているのかも分からない状況なわけです。
 これは領土問題と併せて、日ロ間で未解決の問題だという認識でよろしいでしょうか。

○国務大臣(山本一太君) その御質問に答える前に、昨日、国交省の補助金に係る私と紙議員とのやり取りで、早速国交省の担当者を呼んで説明を受けました。
 細かいことを今ちょっと答弁している時間はないんですが、補助金についてはややちょっと誤解もあるので、これは改めてどこかで説明させたいと思いますが、いずれにせよ、この件は、北方隣接地域の意見も聞くなど、北方対策担当大臣として関心を持って見ていきたいと思います。
 そこで、残置財産の件ですけれども、当然これは北方四島に残してきた諸問題ということで、平和条約締結交渉時で明確にされるべきものだと認識しておりますので、領土の画定と併せて未解決の問題だというふうに認識をしています。

○紙智子君 ちょっと時間が押してきたので一つ飛ばしますけれども、要するに、北方領土における不動産の登記簿、土地台帳は現在釧路の地方局で保管されているわけですけれども、そこに立って法務省にお聞きしますけれども、関係者は、旧ソビエトに占拠されてから、登記事務ができないという説明も周知もされていないというふうに言っているわけですね。
 なぜ周知されなかったのかということについて、法務の方いらっしゃると思いますけれども、お願いします。

○政府参考人(小野瀬厚君) お答えいたします。
 北方領土地域につきましては、戦後、日本国の行政権の行使が事実上不可能な状況に置かれたために、不動産についての登記事務は行っておりません。しかしながら、北方領土地域に所在する土地又は建物の登記簿又は台帳上の所有名義人に関する相続関係を明確にしておくのが適当と考えられたために、昭和四十五年の五月一日から相続登記に準ずる事務処理を行うことといたしました。そのようなことから、それに先立ちます同年四月十一日に、特殊法人北方領土問題対策協会を通じ、旧島民の方々に対し、その旨の周知を図ったというものでございます。
 なお、現在では、釧路地方法務局のホームページにおきましても、相続登記に準ずる事務処理を行っている旨の周知を図っております。

○紙智子君 昭和四十五年ということですから、それでも戦後から二十年たっているわけで、やっぱり関係者は余りにも対応が遅いということを言っていますし、北方担当大臣にお聞きしますけれども、この領土問題が未解決でも、やはり住民の側は十分説明されていないということを思っているわけですから、しっかり説明すべきではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(山本一太君) 紙委員が前々回の委員会でもたしかこの問題を取り上げておられたと思いますが、元島民からのこの北方四島の残置財産に係る要望については承知をしております。
 これは、もう委員御存じのとおり、もう島民の方々の心情はよく察せられるところですが、他の戦後補償との均衡等から財産権の 不行使等に対して補償措置を行うのは非常に難しいということとか、あるいは残置財産の現状把握、その保全措置は現状においてはもう極めて困難であるとか、こういうこともありますので、先ほど申し上げましたけれども、平和条約締結交渉時において明確にされるべきものだというふうに考えておりますけれども、今後とも、元島民の方々の御意見、御要望はよく伺ってまいりたいと考えております。

○紙智子君 旧島民は、自分の財産や土地がどうなっているのかを知りたいと願っているわけですね。
 それで、我が党は去年根室で、領土問題と根室の地域経済を考える意見交換会で、元島民の方が、要するに何代にもわたって開拓してきた島に財産が残してある、それを全部放置して日本に追われてしまったと、満州や朝鮮は国策によって向こうに行って、結局敗戦によって日本に引き揚げてきた、北方領土は最初から日本の固有の領土だと、したがって、財産権についても、 我々は利活用ができない、保全すらできない、このことに対する対応をお願いしたいということを訴えられたわけですよね。
残置財産の問題というのは、やっぱり関係者の要望を聞いて、専門的、集中的にこれ議論すべきじゃないかというふうに思うんです。ロシアとの協議でもテーブルに上げるなど、政府としての戦略的な対応が必要じゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(岸田文雄君) 北方領土の残置財産の問題につきましては、元島民の皆様方等から要望が出ておること、これは承知しております。
 外務省の立場としましては、この残置財産の問題については、その根本問題であります北方四島の帰属問題自体が今未解決の状況であります。まずは、この問題を解決するべく外交交渉で全力で取り組んでいかなければならないと考えております。よって、根本問題であります四島の帰属問題が未解決でありますので、この残置問題についても処理は未定ということであります。
 いずれにしましても、この四島の帰属問題を解決して平和条約を締結するべく、全力で腰を据えて交渉に臨んでいきたいと考えております。

○紙智子君 憲法では、「財産権は、これを侵してはならない。」と定めているわけですけれども、それがやっぱり保障されていないという状態だと思うんですね。
 関係者の平均年齢でいうと、七十八・八歳ということで間もなく八十歳になろうとしているということがあって、亡くなっている方もいらっしゃるわけですけれども、やっぱりそういう意味では、関係者の要望を聞いて、平和条約待ちにならず政府としての戦略を持つと。やっぱりちゃんと協議をする、戦略を持つということを強く要望をいたしまして、質問を終わります。