<第186回国会 2014年3月18日 沖縄北方特別委員会>


北方四島医支援事業/隣接地域の医療機関の活用を検討/外務副大臣

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、予算の委嘱ということでありますけれども、北方問題について少し議論をさせていただきたいと思っております。
 それで、最初に、北方四島医療専門家受入れ事業というものについてです。
 この事業は、北方四島の住民に対して真に人道的に必要な支援を行うことで北方四島住民の我が国に対する信頼を高め、もって平和条約締結促進に向けた環境整備を行うことを目的にしているわけです。
 この事業は、四島から主に看護師を中心とする医療専門家の研修を市立根室病院と札幌病院で行ってきました。二〇一三年度は、研修内容が周産期医療であるために、根室病院は産科医がいないということもあり、それができない、だから分娩休止状態が続いているということで、この市立根室病院で研修事業というのは実施できなかったわけですね。二〇一四年からは事業が再開できるんじゃないかと、違うテーマになるのでということで期待していたんだけれども、国の一般競争入札の資格申請要件が厳しくなったために、根室市の入札資格がなくなりました。
 それで、総務省の全省庁統一資格の概要、この資格申請の要件についてというのがあるんですけれども、そこには、資格審査が受けられない、受理されない場合として公的添付書類の不備というふうになっているわけです。入札資格に登記簿と納税証明書が必要だというふうになっているんですね。
 今まで自治体が行っていたことができなくなるということなんですけれども、これ、おかしいと思いませんか、いかがですか。

○政府参考人(長谷川浩一君) 北方四島医師・看護師等研修事業では企画競争で実施団体を決定しておりまして、本件企画競争に参加する団体は、総務省が定める全省庁統一資格を有していなければなりません。
 平成二十五年、六年、七年度に有効な全省庁統一資格の申請については、議員御指摘のとおり、地方自治体からの申請は受理されないため、地方自治体は企画競争に参加できないことになっております。これは、平成二十四年度に総務省が改定した申請書記入要領において、地方自治体からの申請は公的添付書類不備により受け付けられないことが明確となった経緯があると承知しております。
 なお、企画競争への応募は、事業実施の公平性、公正性を確保する観点から、特定の主体が事業を落札することは想定しておらず、北方四島医師・看護師等研修事業についても同様であると認識しております。

○紙智子君 ちょっと分かったかなと思いますけどね。
 だから、北方四島の支援事業の一環としてやられていたわけだけれども、国の制度、仕組みが変わったと、そのことで一般競争入札で、今説明あったように企画競争を行うので、その資格がないところは、自治体はできないんだよ、したがって、これからは今までやったのはできないんだよという話ですよね。
 これ本当におかしいと思うんですよ。自治体は、例えば納税証明書も必要だけれども、自治体は納税なんてないわけですから、何でそんなのが必要なのかというのもあるんですけれども、全然理解できないわけですよ。
 それで、国が発注する物品の製造、販売を行う事業と北方交流事業とをどうして同列に扱うのか、全く理解できないんですけれども、いかがですか。

○政府参考人(長谷川浩一君) 繰り返しになりますけれども、平成二十四年度の総務省が改定した申請書記入要領において、地方自治体からの申請は公的添付書類不備により受け付けられないことが明確になった経緯があると認識しております。

○紙智子君 だから、北方関連のそういうところでやる事業という認識が全然外れているわけですよね。それはもうすごく私問題だと思うんですよ。
 過去に、あれはたしか小池百合子担当大臣のときだったと思いますけれども、根室市立病院で、要するに医師確保が大変になって病院そのものが存続できるかどうかという事態になったんですよ。そのときに、厚生労働のサイドからいえば、確かにそこだけ特別視して、ほかも同じような状況ある中ではそこだけ特別はできないという、省庁別でいえばそういう感覚なんだけれども、しかし、この北方関係のことで考えれば、やっぱり領土返還運動の拠点の地であると、その拠点の地である根室市で病院がなくなるということは、地域住民がそこに居続けられないわけですよ、住めないわけですよね。そういうことでいいのかと。
 この沖北、北方の担当の委員会として言えば、やっぱりそういう根室が、根室とかその近隣の地域が果たしている役割、拠点としての役割ということで言えば、やっぱりちゃんと存続をして、引き続きその運動を続けられるようにするというのはこれ考えなきゃいけないわけで、そういう位置付けが必要なんじゃないのかということが議論になりましたよ。
 結局あのときは、省庁またがって、それこそ内閣府も厚生労働も外務省も含めて一体となって、やっぱり病院が存続できるということのための努力をしなくちゃいけないよねということが議論になった経緯があると思うんです。
 何とか確保して、ただ、産科は結局確保できないままということなんですけれども、そういう経緯があるということを考えれば、やっぱりどう北方のこの領土問題というのを位置付けるかということがすごく問われている問題だと思うんです。北方四島の住民支援事業において、医療支援というのは本当に重要な役割を果たしてきていると思うんですね。
 昨年、実は私ども日本共産党が領土問題と根室の地域経済を考える意見交換会というのを根室市でやりました。そのときに多くの貴重な意見が出されていて、非常に有意義な懇談になったんですけれども、その中で、ある方は、人道支援で一番喜ばれているのは実は医療支援なんですというふうに言われたんですね。その方は、北方四島の子供たちが根室の病院にかかって健康になって戻っていく、これはもう大変な喜びなんですと。
 ある子供は、知能が遅れているということで根室の病院に来ました。先生が診察すると、実は知能が遅れていたんじゃなくて耳が聞こえなかったということなんですね。それが分かったと。ロシアの補聴器でいうと非常に大きいらしくて、それで、子供が大きなのを付けているとばかにされるということで付けなかったわけですね。それで、本当はあれなんだけれども、聞こえないために意思の疎通ができないということもあったということだったんですけれども、根室で診てもらって、そして非常に高性能な補聴器を提供されたと。それで、その後はもう子供たちが、先生との対話でも非常にできるようになって、ばかにされることもないということで非常に喜ばれたということなんですけれども、結局、帰った後、その子は一生懸命勉強もして、それで学校の先生になりたいというふうに言っているらしいんですけれども、そういう取組を通じてやっぱり両国間の信頼が高まると。
 だから、北方のいろんな事業があるわけですけれども、中身がやっぱり大事なんだと思うんですね。お互いにどう信頼関係をつくっていって、民間の間でも話し合う環境をつくっていくと。私もビザなしで行ったことありますけれども、そのときに住民の皆さんと話したときに、やっぱり率直な話になって、いや、別に領土戻ってきたからといって出ていけなんということは言わない、共存共栄でやるという方向だってあるじゃないかという話にもなるわけですよね。
 だから、そういうのをやっぱりつくっていくというのはすごく大事なわけで、そういうことから見ても、やっぱりこの北方交流事業というのは領土問題であるということをしっかりと位置付けるべきだし、ほかの事業と同列に扱うというのはやっぱりおかしいと思うんですよ。その点、山本大臣にお聞きしたいと思うんですけれども。

○国務大臣(山本一太君) 紙委員も御存じだと思いますが、北方四島医療専門家受入れ事業の所管は外務省でございまして、委員御指摘の医療専門家受入れ事業については、これは事業目的、関係する規定等を勘案をして、外務省が適切に処理すべきものであると考えております。
 いずれにせよ、北方領土隣接地域一市四町は、領土問題が未解決であることにより、今、紙委員の方からもありましたが、望ましい地域社会としての発展が阻害されているという面もありますし、また、返還要求運動の原点の地という特殊な位置付けにあることから、安定した地域社会として形成する必要があると認識をしております。
 これは、もちろん判断をするのは外務省ということですが、私も北方対策を担当している大臣ですから、そういう観点からこの話については関心を持って見ていきたいというふうに考えております。

○紙智子君 根室市がどういう町なのかということを考えてほしいと思うんですね。やっぱり根室市は北方領土返還運動の原点の地ということで、終戦で根室市と北方領土が強制的に遮断されたために、根室市は経済的な基盤を失うことになったわけです。北方の隣接地域で始めた事業が国の基準の見直しを受けて形骸化するんじゃないかという不安や、国との信頼関係も損なうという声が出ているわけです。
 それで、今、北方大臣の答弁いただいたんですけれども、外務省に聞きたいんですけれども、隣接地域で始めた事業が目的に合った形で行われるようにこれは対応すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。岸副大臣でしょうか。

○副大臣(岸信夫君) 紙委員の御質問でございますけれども、北方四島の医師、看護師等の研修事業につきまして、我が方が実施しております医療分野における住民支援事業の効果を向上させる目的で行われる医療研修でございます。
 北方四島からは、毎年、この隣接地域の病院における研修のみならず、高い専門性を有した機関での研修実施の強い要望も出されてきました。平成二十五年度は、四島側の意向も踏まえつつ、周産期医療をテーマとしまして北海道日本赤十字看護大学で実施されたところ、参加者の満足度も高かったと、こういうふうに承知をしているところでございます。
 一方で、御指摘のとおり、北方領土返還の原点であります北方領土隣接地域の担う役割の重要性を外務省としても認識をいたしております。例えば、北方四島住民の患者受入れ事業においても、市立根室病院を始めとします北方領土隣接地域の医療機関が果たしている役割は大きいと考えております。
 外務省としても、引き続き、北方領土隣接地域とよく連携をしていくことが重要だと考えておるところです。四島の医師・看護師研修事業につきましても、これらの隣接地域の医療機関を活用する形での実施を検討してまいりたいと考えております。

○紙智子君 よろしくやっていただきたいと思います。
 それから、最後になりますけれども、第七期隣接地域振興計画についてなんです。
 昨年の五月十日のこの沖北特別委員会、ここでも質問をして聞いているんですけれども、この第七期北方領土隣接地域振興計画について、国が五つの重点施策を設けて集中的に予算を投下して行う、ハード事業とソフト事業をパッケージで行う事業というものです。ところが、この事業は、根室港や花咲港のような重要港湾の場合、これ国土交通省の関係の予算、ハード面しか使えないわけです。地元では使い勝手が悪いというふうに言っているんですけれども、これが例えば落石漁港や歯舞漁港、漁港になると農水省の予算ということで、例えばHACCPの衛生管理対策、そういう対応や加工、流通にも使える、ソフト面でも使えると。
 私、やっぱり、去年、この問題をめぐっては、ちゃんと柔軟に使えるようにするべきじゃないのかという質問をして、そのときに答弁では、地元の要望などを踏まえながら、弾力性、機動性を生かした事業の推進に努めてまいりたいと答弁があったんです。ところが、一年近くたって、どうなっているかというふうに地元に聞きますと、今も変わっていないというんですね。
 だから、やっぱり、本当に自由度の高い、本当にここに欲しい、ここに使いたいというところに使えるような使い勝手の良い支援策を是非考えていただきたいというふうに思うんですけれども、山本大臣、いかがでしょうか。

○国務大臣(山本一太君) 昨年五月だったと思いますが、紙議員との地域振興に係るやり取りはよく承知しておりまして、いろいろその後、関係部署から話も聞いたという記憶がありますが。
 これは昨年も同じ答えだったと思いますが、北方領土隣接地域、これ一市四町、領土問題が未解決だということで望ましい地域社会としての発展が阻害されている面もあるということで、先ほどちょっと、繰り返しになりますが、返還要求運動の原点の地ですから、これは特殊な位置付けだというふうに思っていまして、安定した地域社会として形成する必要があるというふうには認識をしております。
 事業、これ国交省所管ということもよく御存じだと思うんですが、財政状況が大変厳しいということで、魅力ある地域社会の形成を早期に効率的に図るためには、社会基盤整備などのハードの対策だけではなくて、その活用を図るためのソフト対策も含めて一体的な対策を重点的に講じる必要があると、こういうことを踏まえて今のような状況になっているということでございまして、今後とも、必要に応じて北方領土隣接地域の意見はよく聞いてまいりたいと思いますが、事業の中身については、その点、御理解をいただければというふうに考えております。

○紙智子君 是非、よく聞いて、やっぱりかみ合う形で進めていただきたいということを申し上げて、質問を終わります。