<第186回国会 2014年3月17日 農林水産委員会>


エゾジカ被害やトド被害の対策を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず、先日の所信に対する質問のときにやり残した問題がありまして、農業委員会の公選制の廃止論について最初にお聞きをしたいと思います。
 三月二日付けの日本経済新聞で、政府の規制改革会議などで議論をして六月にまとめる農政改革の柱の一つに農業委員会法改正案が提出されようとしています。いわゆる公選制の廃止という報道がありました。
 私は、そもそもこの農業委員会というのは農地の権利移動や転用などについて許認可の権限を持つ行政委員会でありまして、農地の番人と言われて重要な位置付けを持つ存在だというふうに認識をしてきました。委員の大半が農民の選挙で選ばれ、国や自治体の意見を反映させることが法律でも認められた、農民の代表の機関として大きな実績を積んできたというふうに思っています。それに対して、農業委員会は利害関係者の集まりだなどという攻撃がされて、その存在と役割を否定する改革論が唱えられています。
 農業委員会が日本農業を支えて、苦労している農家の利益を守って地域を守るために活動するというのは、これは当然のことだと思っていて、その本来の役割を果たすことで一体何が悪いのかなというふうに言いたくなるわけですけれども、農水大臣としてこの農業委員会攻撃に対して見過ごせるのかというか許せるのかなというふうに、まずそのことについてお聞きをしたいと思います。

○国務大臣(林芳正君) これは日経新聞の報道でございます。私もその報道は見ましたけれども、農業委員会の在り方についてはまだ規制改革会議で検討が行われている途中でございます。自民党においても、農業委員会・農業生産法人に関する検討PTが設置をされまして、西川衆議院議員が委員長、それから、ここにおられます野村委員長、山田俊男理事が常任幹事ということで御検討を始めていただくと、こういうことでございまして、今から検討が行われるということでございますから、報道にあるような方向性が定まっているというわけではないということを申し上げておきたいと思います。
 農業委員会の在り方は、農業の発展に、今委員からもお話がありましたが、資するということが旨でありますから、やはり農業者等の関係者の御意見を伺って検討していくと、これが第一であるというふうに考えております。

○紙智子君 当事者や関係者の意見をしっかり踏まえてということだというふうに今おっしゃいましたけれども、それであれば、やはり規制改革会議で企業を代表する委員の身勝手な改革論に対しては農水大臣としてはきちっと批判するところはするべきじゃないかなと思うんです。
 農水省の調査もやられているようで、いろいろアンケートも取られたようですけれども、それも見ましたけれども、やっぱり体制が弱まっていて本来果たすべき機能を果たせていないというところもありますし、一定のやっぱり改善が求められる側面もあるということは事実だと思うんですね。
 しかし、農業委員会がこれまでも農業者のための農地制度を守ってきたと、これは確かだというふうに思うんですね。私も何人かの方、知っていますけれども、ここの委員会でも、農業委員の方に来ていただいていろいろ努力を報告していただいたことありますけれども、やっぱり、地域を守って、いかに農地を農地として存続し地域を成り立たせていくかということでは、本当に頑張っておられる姿もあるわけです。
 ところが、それが、農業委員の活動があたかも農業を悪くしたかのように描いて変更するというようなことが言われているわけで、それに対しては、やっぱり偏見や誤解を招くような乱暴な議論については黙認せずに、むしろ農水大臣として農業委員会の役割、意義をしっかりアピールするべきではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。

○国務大臣(林芳正君) おっしゃるとおりだと思います。
 アンケート調査に触れていただきましたが、確かに委員がおっしゃるように、この農業委員会の活動状況に対する評価というのは、農業委員会の事務局は七割がよく活動しているということになっているんですが、それに対して、農業者は三割しかよく活動しているというふうなお答えがないと、こういうことでございます。いろんなところによって、やはり御意見のある方はいらっしゃいますので、やっぱり基本は現場の御意見を踏まえて、現場のために何がベストなのかということをしっかりと議論してもらうと、これが一番大事だと思っておりますので、そういう観点で対応していきたいと思っております。

○紙智子君 今農水大臣も触れられた、行われた調査アンケートで、農業委員会の在り方に対する農業者の意見というので、おおむねよく活動しているという農業委員会事務局とか市町村、JAとか都道府県の出先の機関とか、こういうところはよく活動していると言っているんだけれども、確かに農業者のところは見えないという意見が多いというのが東京新聞でも書かれていますけれども。
 私、農業者がやっぱりよく見えないということは、それはあると思うんですね。実際に、やっぱり地域で自分の農業経営そのものだけでももう精いっぱいなわけですよ。そういう中で農業委員の人は自分の経営もやるけれども、同時に全体の立場にも立ってもやるんだということですから、農業委員やられている方は大変な忙しさの中で努力をされているわけですけれども、やっぱり一人一人が精いっぱいやっている農家から見ると、確かに見えづらいというのはあるんだと思うんです。
 だけど、このアンケートを見ても、おおむね機関だとか農業委員会事務局なんかはよく活動していると言っていて、その意見の中で、不満があるというところがあって、その不満の理由のところで一番最初に出てくるのが、農地の集積などの農家の働きかけが形式的だというのがあって、何でそういうふうになっているかというのが次にあって、それを見ていきますと、その一番多い理由のところが、農業委員会事務局の人が人手が不足しているというのが出てくるわけですよ。やっぱりこれ手が回っていないという。東京新聞がまとめて書いてあるのを見ると、全国で農地転用だけでも年間六万件以上の申請が出されていて、業務の処理で手いっぱいと人員不足を課題に挙げているというふうになっているわけですね。
 だから、やっぱりそういうところがもっとちゃんと手が入れられなきゃいけないんだけど、この間は何というかな、削減してくる方向に来たということがあって、やっぱり本来の役割を果たせていないというところに大きな問題があるんじゃないかということを感じているわけです。
 もう実際、私なんかも北海道で、何というか、砂利か何かの取る業者が来て、勝手に掘って、それで埋め戻ししないと。それで、そこの地域にいるからこそ気が付くから、農業委員の人がパトロールして、ここ本来、誰がやったのか、埋め戻さなきゃいけないじゃないか、それで責任者は誰なんだということで意見を提示してちゃんと元どおりにさせるということをやったりとかですね。産廃業者がある場所で不正に申請を上げて、ここでトマトを作るから土地を借りるんだといって入ってきたけれども、一向に作らないでごみを捨てていくということなんかを放置することできないわけだから、それで、そこにいるからこそ気が付いて意見を申し立てるということで、やっぱり非常に大事な役割、いなければ困る役割を果たしているというのがその実態だというふうに思うんですね。ですから、是非、そこのところはもっとアピールをする必要があるんじゃないかと思っていると。
 それで、昨年の臨時国会で成立をした農地中間管理機構では、農業委員会の農地に関する権限の一部を奪う改革が既に具体化をされました。公選制を基本とする農業委員会制度の解体というのは、これ戦後民主主義の措置に対する重大な攻撃だというふうに思っています。むしろ、やっぱり農地の番人、耕作農民の代表としての農業委員会の本来の役割が発揮できるようにすることこそが、今後、農水省としても政府としても欠かせないことじゃないかというふうに思うんですけれども、一言、大臣、お願いします。

○国務大臣(林芳正君) まずは、このアンケートよく読み込んでいただきまして、本当にありがとうございます。
 これを見て分かるように、いろんな立場の人がかなりいろんな質問について答えが違っているんですね。したがって、こういうことも参考にしながら、どの立場で見るとどういうふうに見えるかということも重々頭に置いて検討していかなきゃいけないと、こういうふうに思っております。
 農地中間管理機構のお話はここで委員から御質問をいただいてお答えをしたところでございますが、農地中間管理機構というのはいわゆる公的主体でございますので、民と民というか、公的主体じゃない人同士の間の権利の移転ということとは別の性格のものであるという整理をさせていただいて、農地法の基本原則と整合性を取ってやらせていただいたということをそのときも御答弁させていただいたと、こういうふうに思いますが、そういう考え方でしっかりやっていきたいと思っております。

○紙智子君 私は実質的には、現場ではやっぱりいろいろ計画を作る際にも、実際上よく分かっている農業委員の皆さんの意見を聴かないとやっていけないということが実際には現場にはあって、やっぱりこれ、中間管理機構のときに、今までは意見を聴くのは必須だったやつを外して、聴くことができるというふうにしたわけですけれども、これ自身はやっぱり元に戻すべきだというふうに思っているということを申し上げておきたいと思います。
 その上に立ってちょっと話、今日の質問の中身として、本来しようと思っていた中身についていたしますけれども、海獣被害、とりわけトド被害についてお聞きしたいと思います。
 今年の二月に北海道でトド被害の対策緊急集会が、主に日本海側の十九の漁協から百名以上の方が参加して行われました。ちょっとこの大規模にやられたというのは私も初めてだったんですけれども。それで、駆除頭数の拡大、強化網実証試験の継続などを要求しています。隣の小川委員も参加をされていたし、今いらっしゃらないけど横山政務官も参加されていました。(発言する者あり)あっ、ごめんなさい。そこにいた。
 それで、漁協からは、ニシン漁で一隻の船がトドのおとりになって走ると、海の上を。それで、そこを狙ってトドが行くところを合間を縫って二隻の船で魚を捕るというような、いろいろ学習能力が高いのでいろんなことを工夫しながら取り組んでいて、とにかく必死なわけです。で、トド被害に苦しむ訴えが続きました。以前私も石狩湾に行ったんですけど、トドは水揚げ量の三分の一以上も魚を食べると。それで、被害に遭うことが分かっていて漁に出られないという訴えを聞きました。海獣被害額は約二十四億円で、後継者もこのままだったら育たないと。漁業者にとっても漁村にとっても大変な問題だということなんですね。
 絶滅危惧種ということで捕獲頭数を設定をして駆除しているわけだけれども、この駆除数が少なくて漁業被害が収まっていないと。それで、環境省が平成二十四年に絶滅危惧U類から準絶滅危惧に変更しました。ランクダウンをしたわけで、それを受けて、水産庁の対応について、どうしているかということをお聞きしたいと思います。

○政府参考人(本川一善君) トドにつきましては、資源の減少を受けて平成六年より捕獲頭数の上限を設けて保護を図ってまいりました。この捕獲頭数の上限につきましては、私ども、有識者の意見を踏まえて毎年の目視調査などに基づき来遊個体数を推定いたしまして、PBR法と言われる非常に保護的な方法により設定をしております。
 保護的なと申しますのは、例えば個体数を推定して、それに一定の計算式の下で捕獲頭数を出すんでありますが、例えば幅で五千頭から八千頭というふうに目視をされておられる資源量の、その一番下の五千頭を使うといったようなことをやったり、あるいは保護されている状況に応じまして一定の係数、〇・一、〇・五、一・〇といったような係数を掛けるといったようなことで、非常に保護的な方法で設定をしておりまして、その結果といいますか、四千頭から八千頭推定されている個体数に対しまして二百五十七頭の捕獲枠ということになっております。
 御指摘のように、環境省のレッドリストにおいて絶滅危惧U種から準絶滅危惧種にダウンリスティングされたわけでございまして、平成二十四年ですね。他方、近年、漁業被害が大きくなっているということでございますので、今後は、トドの保全に加えまして、漁業被害の低減も重視をして捕獲頭数の上限が設定できるよう計算方法の見直しを行い、捕獲頭数が増加できるように見直してまいりたいと考えているところでございます。

○紙智子君 漁業被害を見るという立場でやっていくということだと思うんですね。
 それで、北海道ではニシン漁が盛んだったわけですけれども、大きく減少して、それで資源回復をするための稚魚放流事業がずっと行われてきました。漁業者は、稚魚を放流しても成長して帰ってきたニシンをトドに食べられてしまうと。漁網に掛かったニシンをまとめて捕食するということが言われているわけです。
 陸上の鹿などの被害を防止して個体数を管理するための技術が確立されているんですけれども、トドは海の中なんですけど、技術は確立されているんでしょうか。

○政府参考人(本川一善君) 御指摘のとおり、海生哺乳類でございますので、海の中を自由に泳ぎ回るということであります。したがって、鹿やイノシシなどの対策で使われている侵入防止柵といったようなものをなかなか使うことにはまいらないということでございます。このため、これまで被害防止のために、追い払うということ、それから駆除をする、それから漁具被害が出たときにそれを軽減する、この三点について対策を講じてきております。
 具体的には、追い払いにつきましては、音や光による忌避手法の開発を行ってきておりまして、十分な効果が得られなかったために、今年度からは地域の漁業者が連携して一斉に花火弾などで威嚇して追い払う取組とか散弾銃を使った追い払いを進めているところであります。
 それから、駆除につきましては、今年度から離島と本島側で広域的かつ同時にハンターによる駆除を行うということで、トドに逃げ場所を与えない。従来は、本島側でハンターがやると離島の方に逃げると、離島に行くと今度は本島に逃げるといったような、非常に御指摘のように学習効果の高い動物でございますので、そこを一斉に駆除するというようなことをやろうとしておりますし、先ほど御指摘のあった捕獲頭数についても見直していきたいというふうに考えております。
 それから、三点目の漁具被害の軽減対策につきましては、今年度から強化刺し網、これの大規模実証試験を行っているところでございまして、漁業者の方から御希望のある刺し網全てを配付、差し上げることによって実証を行い、トドが網を破るといったようなことの被害が少なくなるように努めてまいりたいと考えております。

○紙智子君 漁業者が水産資源を管理しようと思っても、トドに食べられてしまうために管理できない実態だと、このままでは漁業経営が成り立たない、漁村の将来も危惧されているわけです。
 今ずっとお話しいただいたように、水産庁として、この駆除の拡充策や強化網の実証試験などで努力されているわけですけれども、やっぱり産業も地域も大きな打撃を受けている状態ですよね。所得の減少などトド被害に対する所得補償や漁業の多面的な機能を重視した所得補償を検討するべきではないかと、そういう要求も、要望も出されているんですけれども、いかがでしょうか。これ、大臣にお願いします。

○国務大臣(林芳正君) このトドによる被害、これは北海道の日本海側の漁業者の方が最も受けていらっしゃるわけでございます。昨年、大臣に就任してすぐの頃に、それこそ横山政務官がまだあそこにいらっしゃって質問を受けて、一度見に行きたいなと思っておりながらなかなか行けておられないわけですが。この漁業被害に加えて、トドによるですね、サケの来遊量の低下、それからスケトウダラやホッケの資源の悪化と、この辺がつながっているのかつながっていないのかということもあるわけですが、いろんな意味で大変厳しい状況にあると認識しております。
 したがって、今長官からありましたような、被害防止対策として捕獲等の対策を進めるとともに、捕獲頭数の見直しも行ってまいりたいと思います。さらに、北海道、地元漁連とも相談しながら、浜の活力再生プランによる漁業・漁村再生プロジェクト、それからもうかる漁業創設支援事業沿岸漁業版、水産多面的機能発揮対策、こういう施策を有機的に使って地域漁業の活性化に向けて努力をしていきたいと思っております。

○紙智子君 陸の被害と違って、海獣の被害を防止する技術というのはまだ確立されていないと。漁業共済、積立ぷらす、共済の枠組みなので、これを出るものにはならないわけですよね。北海道で緊急集会をやってまで訴えなきゃいけなかったということを踏まえて、是非対策を求めておきたいと思います。
 続きまして、鳥獣被害のうちの鹿対策についてもお聞きしたいと思います。
 鹿の被害は全国的に増えているんですけれども、北海道でも生息数は高くて、鳥獣被害で六十三・六億円のうちエゾシカによる被害は五十八・七億円なので、ほとんど鹿の被害です。エゾシカは天敵となるオオカミが絶滅をして暖冬で雪が少ないために自然死の率が減っていると。耕作放棄地の増加などが生息数が増加している要因だというふうに指摘されています。エゾシカの生息数を抑制する対策として個体数管理が行われているんですけれども、ハンターの減少や高齢化が課題になっていると。それから、被害防止策として侵入防止柵の改良などが行われているわけです。
 私、先日、十勝に行って話を聞いたときに、駆除後の支援が課題になっているということなんですね。つまり、エゾシカは鳥獣保護法で持って帰るか埋葬することになっているんですけれども、百キロ以上のすごく大きなものです、重いものです。ですから、不法投棄もあるということなんですね。それで、緊急捕獲活動への支援として、一頭当たり八千円、交通費等が支給されているわけですけれども、少なくてなかなか意欲にならないということなんです。
 被害を防ぐ防止策を強化するということと、駆除後の死骸の速やかな運搬への支援も強化する必要があるんじゃないかと。一頭当たり八千円という駆除への支援額を引き上げるということや、駆除後の速やかに処理する体制整備を強化すべきではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

○政府参考人(佐藤一雄君) 紙先生の御質問にお答えします。
 今、先生の方から御指摘ございました緊急捕獲でございますが、平成二十四年度の補正予算で計上したものでございまして、全国で三十万頭の追加的捕獲を目標として措置したものでございまして、捕獲活動に要した経費ということで、日当、捕獲資材費、移動や捕獲鳥獣の運搬に要する燃料代等として大体一頭当たり一万七千円というふうに見込んでおりまして、この半分を支払うということで八千円以内の支払を捕獲頭数に応じて行うこととしておるところでございます。
 今先生御指摘ございましたように、八千円以内の単価の引上げでございますが、実はこれにつきましてはこの二分の一相当を国が持つわけでございますが、それを上乗せをするところにつきましては特別交付税措置で措置しておるところでございまして、実態的にも、北海道でおきますと、百二十三の市町村がこの緊急活動経費を使っておるわけでございますが、九十一の市町村で上乗せを実施しておるところでございまして、参考までに申し上げますと、北海道の場合、国費による支払が一頭当たり七千四百円、これにつきまして市町村で上乗せが約六千円がなされていると、このような状況になっておりまして、こうしたものを活用しながらしっかりとこういうものに取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。

○紙智子君 今後も相当数の駆除が計画されていますので、しっかりした支援をお願いしたいと思います。
 それから、駆除後の有効活用についての支援も必要です。北海道では有効活用対策としてエゾシカを食肉にしたりペットフードの原料にして活用する取組、シカの日という設定をして行っています。しかし、捕獲したエゾシカの食肉処理施設への売却が一三・二%、ペットフード製造業者への売却割合は〇・三%ということで、本当に僅かです。今、駆除の対策が先行していますけれども、エゾシカを有効利用する取組、出口対策が遅れていると思うんですね。農水省として有効活用に力を入れるべきじゃないかということが一つ。
 ちょっと時間がなくなったのでもう一つ併せて質問するんですけれども、鹿肉を商品として流通させる場合に衛生管理をしっかり行わなきゃいけないと。それで、衛生管理の基準は都道府県が独自に作成しているガイドラインで対応しているんですけれども、鹿肉を有効利用するために国としてルールを策定すべきではないかと。これは厚生労働省に質問したいと思いますけれども、二つお願いいたします。

○政府参考人(佐藤一雄君) まず最初に、私の方から。
 今先生の方から御質問ございましたように、おっしゃるとおり、食肉としての利活用というのが大事かというふうに考えておりまして、これにつきましては、鳥獣被害防止総合対策交付金ということで、二十五年度の補正予算で三十億、二十六年度の当初予算案では九十五億計上しておりまして、これによりまして、捕獲鳥獣の処理加工施設の整備、それと商品の開発あるいは販売流通経路の確立などの販売面での強化を目指す取組や、鳥獣肉の衛生管理及び品質管理に関する研修会の開催等について支援しているところでございまして、こうした支援を活用していただきまして、例えば北海道の鷹栖町におきましては、捕獲されたエゾシカ、大体年間三百五十頭でございますが、これを食肉として有効活用しているといったような事例も出ておりまして、こうしたものにつきましてしっかり各種支援を講じてまいりたいというふうに考えているところでございます。

○政府参考人(新村和哉君) 食肉処理のガイドラインにつきまして私の方からお答え申し上げます。
 食用に供される肉につきましては、エゾシカなどの野生鳥獣でありましても、食品衛生法に基づき、食肉処理業として営業許可を受けた施設において処理を行う必要がございます。一方、野生鳥獣は飼育環境が管理されておりませんし、また、屠殺される場所が屋外であるということなど一般の家畜とは異なる独自の衛生管理が求められるということがございます。このため、北海道を始め野生鳥獣の利活用が盛んな一部の都道府県におきましては、野生鳥獣処理の衛生処理に関するガイドラインを作成していると承知しております。
 厚生労働省では、野生鳥獣の安全確保のため、現在、厚生労働科学研究におきまして、野生鳥獣の病原微生物による汚染実態調査等を実施しているところでございます。これらの研究成果などを踏まえまして、厚生労働省としてもガイドラインの作成など野生鳥獣肉の安全性確保対策を進めていきたいと考えております。

○委員長(野村哲郎君) 時間が来ております。

○紙智子君 はい。引き続き、是非省庁をまたがってというか連携しながら対策を取っていただきたいということを述べまして、質問を終わります。