<第184回国会 2013年12月5日 農林水産委員会>


農地中間管理機構法案参考人質問

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 三人の参考人の皆さん、今日はありがとうございます。
 それで、私もあちこち回りますけれども、やっぱり飛び地になっているところを併せて作業しやすくしたりとか、そういう形で集積をするということは、これは必要なことではあるというふうに思うんです。ただ、今回の法案に対しては、率直に言いまして、非常に懸念を持って見ているわけなんです。
 それで、これまで農水省として、高齢化や後継者不足、それから耕作放棄地の増加などで地域農業の五年後、十年後の展望が開けない集落や地域が多くある中で、市町村などが地域の中心となる経営体やそこへの農地集積、地域農業の在り方を記載した、人・農地プランの策定を各市町村に進めるために予算措置をしてきたということがありました。
 今度の法案で、そういう地域でやってきたところに、外からというか、落下傘型の企業が農地のリース方式で入って、五万法人参入するというようなことが言われているわけですけれども、それによって地域との信頼関係で醸成されない状況になったとすると、これまで話し合って農村の農地の管理など、水路とかあるいはあぜの管理とかを行ってきた農村集落に大きな影響を与えることになるんじゃないのかという懸念を実は持っているわけです。
 その点に立って、まずちょっと熊本の副知事、小野参考人にお聞きしたいと思うんですけれども、今回の法案で都道府県に強い権限が付されるわけですけれども、都道府県に付される仕事というのは極めて大きいと。これまでは実質的に、人・農地プラン、そういう対策の、言わば専門組織としての農業委員会に担われていた業務も今度は誰が担うのかということになるわけですけれども、市町村の役割、誰が担うのかということと、それから市町村の役割がこれ軽視されているんじゃないかという指摘もあるんですが、その点についてどうか。
 先ほども農業委員会の役割が非常に大事だということも言われていましたし、これまでやってくる経過の中でいろいろかかわりあると思うんですけれども、実際に法律の上では、農業委員会に対しては、意見をこれまで聴くというのは必須になっていたんですけれども、それが聴くことができるという形で、まあ外してもいいという、言ってみればですね、そういう形に実際上はなっているということがありまして、その点について、やっぱり大きなこれ、これまでと違う影響が出てくるんじゃないかというふうに思うわけですけれども、この点についてどうかということが一点と。
 もう一点併せて聞きたいのは、市町村の期待としては、この法案で遊休農地対策、あるいは耕作放棄地対策が進展するんじゃないかという期待を持っていたと思うんです。しかし、この法案にかかわっていろいろ議論がいろんなところでされたんですけれども、産業競争力会議の中では、生産性の向上につながらない業務を機構は行うべきではなくて、機構が専ら耕作放棄地対策として用いられることのないように留意すると。耕作放棄地を借り入れる場合には、農地として再生した後、貸付けのあるところに限定するというふうに述べていて、今回の法案ではそういう議論も背景にあるのかと思うんですけれども、農地中間機構の目的からも、遊休農地対策や耕作放棄地対策が全く言及されていないという問題があるんですね。この点についてどう思われるかということをお聞きしたいと思います。
○参考人(小野泰輔君) 今回の法案で知事にかなり権限が許可されるというようなことはあると思いますけれども、市町村に対しても、それを軽視するんじゃないかという御懸念もあるかと思いますけれども、先ほどの、最初の御説明で申し上げましたとおり、私どもはあくまでコーディネート役であって、市町村に対して命令する立場ではないというふうに思っています。
 ですから、やはり農地をどういうふうに維持していくのか、将来の子孫に渡すのかというのは地域の人たちが主体的になって考えなければいけないことですし、そこに市町村も入る、そして各農業団体も入っていくということで、全てをコーディネートする、そして、そのコーディネートする主体は誰なのかというと、やはり知事が責任を持ってやろうと言うことが一番大事だというふうに思います。
 それはなぜかといいますと、やはり農地を相対で貸し借りしようというと、貸す相手が本当に信用できるのかというようなことがどうしても心配になってしまいますので、そこに、非常に公的な側面が強い知事が責任を持ってやりますと言うことに大きな意味があるのかなというふうに思っています。ですから、新しい法案が成立した際には、やはり知事が頭ごなしにやってこれできるものじゃないと、やはり市町村そして地域の方々との丁寧な議論を通じて合意形成を図るという精神はしっかり認識を共有していただければというふうに思います。そして、遊休地、耕作放棄地のことに関してですけれども、やはり私は、農業というのは耕作放棄地を何が何でも再生させるとか、遊休地を何が何でも全部生かせばいいというものではないと思います。どれだけ農業の多面的な機能を強調しようと思っても、先ほど忠参考人の方からも生産コストの話がございましたけれども、やはり経営として成り立っていかなければいけないということで、遊休地そして耕作放棄地も、しっかりと新しい担い手が使っていただけるんであれば、そこが経営として成り立つような使い方ができるということが大前提だというふうに思っています。
 私ども、耕作放棄地をどんどん再生させようという動きも、菜の花プロジェクトとか、つまり営農としてではなくて、地域の景観を守るとか観光資源として使うというような施策はまた別のところでやっております。
 そういう意味では、この農地集積というのは、やはり集落をどういうふうに維持するのか、あるいは担い手が経営をずっと持続的にやっていくためにはどういう集積をすればいいのかということをやはりフォーカスすべきだというふうに思っておりまして、耕作放棄地の対策、それから遊休地の対策というのは、やはりほかの制度でしっかり補っていく必要があるかなというふうに認識しております。
○紙智子君 ありがとうございます。
 それでは次に、忠参考人にお聞きします。
 この委員会に以前にもおいでいただいて、ありがとうございます。あれからまたずっと頑張っておられるのだなというふうに感銘を受けて聞いておりました。
 それで、長年やっぱり地域に根差してやってこられたからこその実感でおっしゃっていると思うんですけれども、この資料の中でも書いてありましたけれども、農地の面積集約を進めるコーディネーターの設置が議論されているけれども、コーディネーターというのは、やっぱり地域が信頼をして選んだ人、地域の中で威厳を持つ、地域が納得できる人でないと農地のあっせんは難しいというふうにおっしゃっていますよね。それで、この点について、どうしてというか、具体的にそうでなかったらいけないんだということなのかということをもう少しお話しいただきたいということと。
 それから、引き続き経営を続けていく上で、現在も本当に御苦労されているんだと思うんですけれども、米価の更なる引下げ、あるいは経費は今更に上がっているわけですけれども、そういう中で今TPPの問題というのがこれも非常に重要な局面に来ているんですけれども、もしもそのTPPに入って関税がなくなって海外からの安価な米が流通するような事態になったときに受ける影響というのはどうなんだろうかなと。せっかく築き上げてきたものが壊れてしまわないだろうかという心配を実は私はしていますし、TPPは参加すべきでないという立場なんですけれども、そういう点での影響はどうなのかなということも含めてお聞きしたいと思います。
○参考人(忠聡君) ありがとうございます。
 あの当時と全然成長のない会社で、潰れていないのがいいかなとは思っていますが、ありがとうございます。
 まさに、コーディネーター役というのは大変重要だというふうに思います。ただ、これからの時代、いわゆる今までの果たしてきたコーディネーターとこれからのコーディネーターは、少しやっぱり違うのかなという気はいたします。
 さっき私、なかなか相談場所が見付からないというふうなお話をしましたが、やっぱり農地所有者も世代が替わっています。今の世代は、父親の手伝いをしながら農作業には従事したけれども、経営という経験はほとんどないんです。もっと違った農家さんは、自分の所有する田んぼそのものが、例えばもう貸してしまってどこにあるのか分からないというような農家さんもいっぱいいらっしゃいます。細々と続けてこられた農家さんがいよいよ、じゃ、どこへというふうになっても、なかなかそういう、何といいますか、どこに聞いたらいいのか、どこに相談していっていいのか分からないというところにあるわけでありまして、だから、本当の初歩的な、一〇〇%能力を備えた人でなくても、ここへ行けばいいんだよ、あそこへ行ってごらんというふうな、身近な存在の中にそういうアドバイスをされる方が私はいれば、その次その次というふうな形でだんだんと専門的に相談に応じるという、そういうシステムが地域には必要なのではないかなというふうに思います。
 ですから、一コーディネーターの質を高めるということとはまた別の意味での仕組み、システムというのが必要かなというふうに思います。
 それから、TPP、これは私も大変心配をしておりまして、今回、今日ここへ出席させていただくということを家族、父親に伝えたら、是非そのことは言ってこいと逆に言われて来ました。このまま進みますと、やはり私ども今まで規模拡大をしてきた担い手が一番大きな影響を受けるのではないかなというふうに思います。それはなぜかといいますと、まさにそれで所得を得、生活をしているからであります。そうでない収入がある経営においては影響度合いは少ない、これは誰が考えても同じことが言えるのではないかなというふうに思います。
 六次産業化も進めております。先ほど申し上げましたように、加工事業にも取り組んでおりますが、これだけあちこちで六次産業化が取り組まれますと、やはりそこにもまた競争が出てきまして、そう簡単にもいかないんですけれども、ここはもっともっと工夫をして進める必要があるかなというふうに思いますけれども、大変心配をしております。
 以上です。
○紙智子君 奥村参考人にも同じことをお聞きしたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。
○参考人(奥村一則君) 地域の農地の利用するコーディネーター役というのは、やっぱり現役の実践者が中心になってすべきだと思います。OBとかいうとやっぱり時代がずれがあるものですから、やっぱり今現役でやっていらっしゃる方を中心にしたそういうコーディネーター役というものを地域にどうつくるか。ただ、問題は、そこでやっぱり営利活動をしておる人はなかなかやっぱり公正な見方ができないのかないう心配も危惧されるわけでありますけれども、でもやっぱり、そういう実践している人たちが中心になって、将来自分の子供たちが、どういう形態がいいかというようなことはやっぱり是非やっていくべきだと思います。
 というのは、これからの農業、地域農業というのは、私は、農業者同士の連携とか提携とか、こういうこともまず取り組まないと、その上で中間管理機構があるわけでありまして、そうすると、やっぱり過去の経験者よりも今経験している人たちが中心になって地域農業の在り方というものを指導したり、みんなで議論したりすることが大事だと思っております。
 それから、TPPについては、これは先ほど忠参考人さんもおっしゃいましたけど、これがもしこのまま何か関税撤廃みたいなことになれば、やっぱり真っ先に潰れるのは担い手だと思っております。ですから、それが早く、そういうことだといえば、我々ももしかしたら何年計画で廃業の準備、それか、これはちょっとこういうことを言ったら不謹慎かもしれない、せざるを得ないことになるかもしれません。そうしないと、やっぱり我々、五百四十戸のお客様の負託にこたえて今経営をやっておるわけでありますから、最低でも我々を信頼してくださったお客様に不義理を突然のようにしたくないものですから、そういうことも大変危惧しておりまして、是非、時代の流れでいろんなことになるのかもしれませんけど、それに対する、やっぱり真の担い手への配慮というものをどうすればいいかということを併せて検討していただきたいと思っております。
○紙智子君 あと一分だけあるので、もう一つだけ。
 機構による借り手の選定作業というのは応札者に特段の資格要件を掛けない競争入札となっているわけですけれども、このことが現地に混乱を与える可能性もあるというのが衆議院の参考人の質疑のときにも出されていて、その具体例として言っていたのが、仙台とか陸前高田の、まあ被災地ですよね、ここで整備した後の農地を誰がどう経営するかというのを協議していたんだけれども、予定をしていたんだけれども、整備した後の農地の所有者が農地を機構に貸し出した場合に、現場で予定していた担い手が借り手に選定されない可能性も出てくるんじゃないかと。だから、その基準というのは本当に大事なんじゃないかということが議論されたんですけど、この点について一言、最後、じゃ副知事にお聞きします。
○参考人(小野泰輔君) 委員おっしゃったとおり、そのルール作りは非常に大事だというふうに思っております。私どもも、どういう人に貸し出すのかというのは非常にこれは地域の農業にとって大事なので、そこのルール作りを県としてどういうふうに考えるかというところが大事だと思っています。
 そのときに、単にフリーハンドで誰でもいいというわけにはいかないと思うんですね。その中で、やはり実質的には農地をどういうふうに貸し出すかというのは話合いの上でもちろん行われますので、そういったものも加味して総合的にもうある程度考えていかなきゃいけない部分があるのかなというふうに思います。やはり、その地域でしっかりと協力体制ができる人なのか、信頼を勝ち取る可能性がある人なのかということをしっかりと見ていけるようなルールというものを策定する必要があると思っていまして、この辺は非常にこの制度がうまくいくかどうかということに大きくかかわっていると思います。誰でもいいというのはなかなかこれは難しいのかなと思います。