<第184回国会 2013年12月3日 農林水産委員会>


農地中間管理機構法案について質問

○紙智子君 日本共産党の紙智子です。ちょっと風邪で低音になってしまいましたが。
 まず冒頭、この委員会の持ち方について一言申し上げたいと思います。
 それで、私、二〇〇一年に国会に来て、農水委員会にずっと今日まで所属してまいりましたけれども、今回のように、このように空席がある中で農水委員会続行して、続けるということというのは、多分初めてなんですね。それで、やっぱりこの運営自体も、本当に重要な、農業政策にかかわる、大きな影響を与えるような重大な法案を会期末ぎりぎりのところに来て、一気に、趣旨説明をやり、そしてその日のうちに質疑も入り、そしてあさってですか、参考人質疑もやると。参考人の皆さんには今日言って、あしたどうだという話にもなるわけで、大変失礼な話になっているわけですけれども。で、採決までと。こういうやっぱり乱暴なやり方というのは本当に、大変不本意であります。それで、やっぱりこういうことが今後もう二度とないようにしていただきたいことを、まず委員長に対しても申し上げておきたいと思います。
 その上に立ってなんですけれども、まず法案の審議に入る前に、ちょっと通告しておりませんでしたけれども、TPPの問題で林農水大臣にお聞きをしたいと思います。
 先ほども日比谷野外音楽堂でTPPの反対の集会が全国から集まられて、JAの皆さん中心になってやられておりました。それで、やはり守れなければ撤退なんだと、その決議をしっかりと実現するべきなんだということで集まっておられましたし、本当に真剣な、そういう発言も続いていたというふうに思います。
 それで、報道によりますと、十二月の一日にUSTRのフロマン代表が日本にやってきていて、TPPの日米の二国間交渉を行っていると。ここに林農水大臣も同席したということなので、大臣にもお聞きしたいと思うわけですけれども、この交渉で、日本政府はフロマン代表に対して重要五項目の加工品、調製品の即時関税撤廃を盛り込んだ案を提示したのかどうかと、これによって自由化率は九五%というのが新聞報道であるわけですけれども、それが本当に事実なのかどうか、まずその点について林大臣にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) ちょっと御通告もなかったものですからあれでございますが、どの新聞にそういう報道があったかもちょっと私、目を全て通しているわけではございませんが。いずれにしても、この十二月一日にフロマン代表と、それから甘利大臣、私、菅官房長官とお会いをして、極めて厳しい交渉ではありましたけれども、日本側の立場をフロマン代表に対して直接伝えることができたわけでございまして、大変有意義な会談だったというふうに思っております。
 会談の具体的な中身については、交渉そのものでございますのでコメントを控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、これはもう繰り返し申し上げておるところで、今委員からもお話があったように、この農林水産委員会での決議も踏まえて国益を守り抜くように全力を尽くす考えと、これは変わっておりません。
○紙智子君 新聞各紙の報道でも、米国政府は全ての品目の関税撤廃を日本政府に要求したというふうにされているわけです。それから、甘利担当大臣は、日本はこれ以上一センチも譲歩できないと発言したとされているわけです。このことも、大臣、同席されていて、そういうことだったんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 甘利大臣が、フロマン代表とのこの会合後、ぶら下がりをやっておられまして、そこで双方にとってぎりぎりのレッドラインは何か、特に日本側のレッドライン、譲れない線についてはこちらから極めて厳しい説明をしたと、とにかくこれ以上は一センチも譲れないという説明をした、こういうふうにおっしゃっておられるというふうに承知をしております。
 まさに、そういうぎりぎりの、先ほど私から申し上げたように、お話をさせていただいて、極めて厳しい交渉ではありましたけれども、そういう意味でフロマン代表に我々の立場をしっかりと伝えることができたと、こういうふうに考えております。
○紙智子君 既に日本政府が、中身については今も語らなかったわけですけど、中身は国民に秘密にしたまま重要五項目の譲歩提案を示したということになったら、これは衆参農水委員会の、この農水委員会の決議、これに対して違反するということは明白になるわけです。
 これ以上一センチも譲歩できないというふうに言われたという報道があるわけですけれども、これ以上ということは、まあこれ以上の中身が一体何なのかということでもあるんですけれども、本当に、こういうこと自体含めて、TPPが全ての関税撤廃が原則であるということを元々知りながら、全ての参加国から関税撤廃を求められている中でTPPに参加し続けるということ自体が私は非常に問題だというふうに思うんです。やっぱり直ちに撤退するべきだということを繰り返しこの間申し上げていますけれども、指摘をして、法案の質問に入りたいと思います。
 それで、農地中間管理機構法案の背景なんですけれども、これは六月十四日に閣議決定をされた日本再興戦略があるということは言うまでもないと思います。この日本再興戦略の総論で、農業については、農地中間管理機構を整備、活用して、農地集約を加速した上で、リース方式により企業を含めた多様な担い手の農業参入を促進するとしています。成長への道筋に沿った主要施策例ということで、農林水産業を成長産業にするということで、成果目標で、今後十年間で全農地面積の八割が担い手によって利用され、産業界の努力も反映して担い手の米生産コストを現状全国平均比で四割削減し、法人経営体数を五万法人とするというふうにしているわけです。
 結局、この農地中間管理機構法案というのは、この日本再興戦略を推進するための重要な法案であるという理解でよろしいですね。
○国務大臣(林芳正君) もちろん、この六月に決まりました日本再興戦略にもこのことが明記をされております。ちなみに、そこには、本年秋までに具体化し、速やかに法制化を含む措置を実施と、こう書いてございますので、そのとおりでございますが、更に申し上げれば、我が国の農業構造を見ますと、既に担い手の利用面積が五割まで来ておるところでございます。これはかなりの変化だと思いますが、更に生産性を高めて成長産業としていくために集積、集約を加速をしていく必要があると、こういうふうに思っておりまして、そういう意味で、この農地流動化を進める画期的な手法として都道府県段階に公的な機関として農地中間管理機構を整備する法律案、これを出させていただいたところでございます。
 中身は、午前中の質疑でもありましたけれども、農地を機構が借り受けて、そして必要な場合にはこの機構が大区画化等の条件整備も行った上で、法人経営体や大規模家族経営などの担い手に対して、規模拡大や利用する農地の集約化に配慮して転貸するスキームを整備したいと、こういうふうに考えております。
○紙智子君 そこでお聞きいたしますけれども、この日本再興戦略で打ち出された全農地面積の八割を担い手に集約をしと、米の生産コストを四割削減する、法人経営体数を五万法人にするという根拠ですね、何を根拠にされているのかということを明らかにしていただきたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) まず、担い手の利用面積でございますが、先ほど申し上げましたように、平成七年にはこの担い手の占める割合は一七・一%でございましたが、その後五年ごとに二七・八、三八・五、四九・一と上がってきておるわけでございまして、まさに現在五割まで来ておるわけでございます。
 このトレンドに更に農地中間管理機構という強力なこの機構を利用することによって、このトレンドを更に上に引き上げて、八割まで引き上げていこうということでございまして、平成二十五年の農地面積四百五十四万ヘクタールを前提としますと、その八割、三百六十三万ヘクタールが担い手が利用すると、こういうことになるわけでございます。
 また、生産コストもそれに伴って集積をいたしますので、当然いろんなコストダウンが図れるということで、ちょっと詳細、今手元に持っておりませんが、この現状から四割削減をしていくということ、そしてさらに、そういうことが進むことも相まって、法人経営体数を現状から五万人までに引き上げると、こういう目標にさせていただいたところでございます。
○紙智子君 今言われた担い手という中には中小の農家というのは入らないわけですよね。ここで規定されているので言うと、法人経営と大規模家族経営、集落営農、企業と、そこを担い手として、今五割だけど八割までという話ですよね。
○国務大臣(林芳正君) 必ずしも規模に着目した概念ということにとどまっておるわけではなくて、例えば認定農家の中には小規模な方も含まれておるというふうに承知をしております。
○紙智子君 日本再興戦略ですね、三つのアクションプランというのを柱に据えているわけです。その一つが国際展開戦略と。そこでは、グローバルな経済活動のベースとなる経済連携を推進し、貿易のFTA比率を現在の一九%から、二〇一八年度までに七〇%に高めると。このために、特にTPP協定交渉に積極的に取り組むことにより、アジア太平洋地域の新たなルールを作り上げていくというふうにしています。
 結局、これ日本の農産物関税の撤廃や削減が不可避なこのTPPを始めとするFTA比率ですね、これを七〇%にしようということですから、日本農業に打撃を与えるということを前提としているんじゃないですか。それを受けて、農地面積の八割の集約と米生産のコストを四割削減など打ち出したということなんじゃないんですか。いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) TPP交渉については、冒頭申し上げましたように、この決議をいただいておりますので、それを踏まえてしっかりとやっていくということでございますので、必ずしもTPPが、今委員がおっしゃったように日本の農業に対してマイナスの影響を大きく与えると、こういうことがこの再興戦略に書かれているということではないというふうに考えております。
 その上で、このTPP交渉には二十一分野、すなわち知的財産ですとか労働ですとか、あらゆる経済活動について包括的なものがルール作りとして決められていくということでございますので、我が国がその持てる力を十分、国内のみならず世界中で発揮をしていくための大きな可能性がそこにあると、こういう前提で書かれているんではないかと。こういうふうに思っておりますので、そのことと、それからここで御議論をいただいております農地中間管理機構や経営所得安定対策の見直し、これは私はかねがね繰り返し申し上げておりますように、TPP交渉いかんにかかわらず、日本の今の農業の構造的な問題を解決していくためには待ったなしの施策であると、こういうふうに考えております。
○委員長(野村哲郎君) ちょっと待ってください。
 自民党の議員の皆さん、真剣な今議論をしているところを何ですか。しっかりしなさい。
○紙智子君 TPPが必ずしも農業に悪影響を与えないというふうに今おっしゃいましたけれども、私は違うと思いますよ。だって、農水省自身が試算をして、結局、農業に与える影響ということで出した中でも、対策を取らなければということを常に言われるんですけれども、実際には三兆円の政府の試算でも減収になるということを言っていますし、そして自給率そのものも大きく下がるということを言われているわけで、それは大きな影響がないなんということは言えないというふうに思いますよ。
 それから、自民党の石破幹事長が十一月の二日に、生産コストを下げると、関税を下げていっても国内の農業が打撃を受けない水準はある、七七八%が唯一絶対のものではないとして、生産コスト引下げに応じた関税引下げを表明しました。
 マスコミの報道でも、米の関税率の引下げは米国や豪州が要求していると、政府・自民党は米粉や飼料米の関税撤廃を検討しているが、米国は主食用米に対しても数年掛けてでも関税を完全撤廃してほしいと求めていた、日本は完全撤廃について国内農家への影響から混乱が大きいと拒否してきた、ただ、関税率を引き下げると、国産米の海外輸出の促進や国内農家の大規模化などをもたらすと判断、数年ごとに段階的に引き下げることで調整に入ったと。
 これは十一月五日付けの産経新聞に報道されているんですけれども、こういうふうにTPP対応の日本農業にしようというのがこの日本再興戦略に明記されている農業戦略なんじゃないんでしょうか。いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 産経新聞の報道とこの再興戦略とそういうふうにつながって考えられるのかなと思って今興味深く拝聴しておりましたが、一切そういうことはございませんで、先ほど申し上げたように、しっかりと決議を踏まえて守っていくと、守っていくという決議を踏まえてやっていくと、こういうことを繰り返し申し上げております。
 それから、先ほど三兆円の試算のお話がございましたが、これは委員も触れていただきましたように、何の対策も打たないということと、それから全ての関税を即時撤廃するという大変極端な仮定に基づいて試算をしたものでございますので、実際には決議を踏まえてそういう極端な状況にならないように最大限の努力をしているというところでございます。
○紙智子君 対策を取ってもこれは下がりますよ、自給率は。
 それから、次に行きますけれども、農業委員会は、効率的な農地利用について農業者を代表して公正に審議する行政委員会で、農地の権利移動の許認可、土地転用申請書の受理や意見書の添付、農地の利用状況調査等の業務を執行しています。農業委員会の農地利用の集積の実績ということでいうと、二〇一一年で十二万六千六百七十九ヘクタールと。農地利用の集積円滑化団体は三万二千四十九ヘクタール。それから、農地保有合理化法人、ここは八千二十七ヘクタールということで、どこよりも大きく上回る実績を持っていると思います。
 この農業委員会が農地利用集積の中心的な役割を果たしてきたというのは間違いないと思うんですけれども、当然、この農地中間管理機構による農地集積に対する農業委員会の法的関与と正当な位置付けというのが不可欠だと思うんですが、その点で大臣のお考えはいかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) おっしゃるように、農業委員会、これは大変に大事な役割を果たしていただいていると、こういうふうに思います。
 今度この機構が農用地利用配分計画を定めるわけですが、法律上、機構が作成すべき農用地利用配分計画、この作成に当たっては、機構は市町村に必要な協力を求めると、こういうふうにしております。機構は、市町村に対して、さらに、農用地利用配分計画の原案作成を求めることができるというふうにさせていただいております。十九条の一項、二項でございます。さらに、十九条の三項で、これらの場合においては、市町村が必要があると認めるときには農業委員会の意見を聴くことを明記をさせていただいております。
 市町村に対して、市町村の中の独立行政委員会である農業委員会への意見聴取を義務付けなかったということは、地方分権の観点から、市町村内部の行為について国が義務付けるということは適当でないと、こう考えたわけでございまして、こういう規定ぶりになっておりますが、農地に関する地番や所有者、借受け者の氏名などの情報というのは農業委員会が御案内のように持っておりますので、機構が農用地利用の配分計画を作成するためにはこれらの情報がないと実際には作れないということでございますので、実際には必ず農業委員会の意見が聴かれるというふうに考えております。
○紙智子君 今、大臣おっしゃったんですけれども、規制改革会議は、農地利用配分計画の作成、都道府県知事の認可等の過程において、農業委員会の法的な関与は要しないこととすべきであるという議論をしています。今回の新制度において、農業委員会の法的な関与は求めないこととする一方、そもそも農地制度における農業委員会の果たすべき機能及び組織の在り方について早急に検討を開始すべきであるとして、この農業委員会の排除を求めるばかりか、農業委員会制度に対する攻撃さえしているわけです。
 さらに、産業競争力会議の農業分科会ですね、ここでは、農地集約の迅速化の観点から、機構を活用するスキームにおいて、農業委員会の許可を不要とするとともに、今後、農業委員会の在り方について検討が行われ結論が得られた場合には、それに従って必要な見直しを行うとして、この規制改革会議と同様な農業委員会排除を求めたわけです。
 これらの規制改革会議や産業競争力会議の意見を受けて、本法案は、農業委員会組織が求めたこの農地の借受けルールの策定、変更に当たっては都道府県農業会議の意見を聴く規定の導入を拒否をして、都道府県知事の判断で借受けルールの策定を認めて、中間機構が農地利用配分計画、市町村が農地利用配分計画の原案を策定する際は、農業農村現場の農地の権利移動の許可、決定の事務を担っている農業委員会の意見を聴くことを必須事項とするというふうに言っているんだけれども、これも認めず、法案の第十九条で、市町村は一又は二の協力を行う場合において必要があると認めるときは農業委員会の意見を聴くものとすることというふうにして、この必須事項から外したわけです。
 どうしてこの農業委員会の取扱いをこういうふうに必須から取り外したんですか。
○国務大臣(林芳正君) 先に先ほどの質問でお答えをしてしまったわけでございますが、条文には、十九条一項、二項で、市町村に対して原案作成を求めることができると、さらに、十九条三項で、農業委員会の意見を聴くことを明記をして、必要があるときにはとしております。
 それはまさに、先ほどお答えしたように、この農業委員会というのは市町村の中の独立行政委員会でございますので、地方分権の観点で、国の方でこの市町村の意向にかかわらず意見を義務付けると、こういうことは適当でないと、こういうふうに考えたわけでございまして、十九条の三項はそういう規定ぶりになっておるところでございます。
○紙智子君 今までも、結局、市町村がいろんなことをやるにしても、農業委員会、一番現場のことを分かっている農業委員会のやっぱりその活動があって支えている部分というのが本当に大きいわけですよね。
 農林水産省として市町村に農業委員会の意見を聴くことを促すというふうにしているわけですけれども、これ法律上義務規定となっていない以上は、今後大きな問題を残すことになると思います。現に産業競争力会議は、農地の集約、大規模化の阻害要因になり得る制度、運用等が判明した場合は、直ちに見直しに着手するというふうにしているわけで、農業委員会の意見を聴いたために農地集約が遅れたという形で、農林水産省に対応を求めることも想像できるわけですよね。
 いずれにせよ、この農地集約事業という農地行政上最も重要な事業について農業委員会の意見聴取を必須事項にしなかったということは、私は今後に禍根を残すことになると思いますけれども、大臣、もう一度いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) これは繰り返しになりますが、この十九条三項は、先ほど申し上げましたように、地方分権の観点で義務付けることは適当でないと、こういう理由でこういう規定ぶりにしてありますが、これも先ほど申し上げたように、実際には農業委員会に地番、所有者、借受け者の氏名等がございますので、この農業委員会の意見というのを聴かずして、したがってこういう情報全くないままで作成、計画を作るというのは余り現実的な話としてはないんであろうと、こういうふうに思っております。
 一方で、農業委員会についてはいろんな御意見が、今委員から御指摘のあった規制改革委員会、産業競争力会議からもそういう紙が出ているのは承知しておりますが、農家の皆さん、現場からもいろんな御意見をいただいているところでありますので、しっかりとそういう意見を踏まえて、見直しが必要であれば対応していくことはやっていかなければならないと存じております。
○紙智子君 地方分権を理由にしてやっぱり外すというのは、これは本当にあってはいけないというふうに思います。
 今後十年間で全農地面積の八割を担い手にと。企業参入の加速化等による企業経営ノウハウの徹底した活用。企業の参入状況の検証等を踏まえ、農業生産法人の条件緩和など所有方式による企業の参入の更なる自由化について検討を行う。さらに、二〇〇九年に完全自由化されたリース方式による企業の農業参入を農地中間管理機構も活用しながら積極的に推進する。それから法人経営体数を二〇一〇年比約四倍の五万法人とすることを目標とすると。といった本格的な優良農地への企業参入を進める場合は、企業が農村に足場がないだけに、どうしても落下傘型の企業参入になりやすいわけですね。この法案が、新規参入者の希望者、農地の借受けを希望する者、この公募方式を採用したということも、結局、この落下傘型の企業参入を前提にしているからなんじゃないんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) これは山田俊男委員の冒頭の御質問にもお答えしたとおり、持続可能な家族経営や新規参入、企業参入、これは二者択一ではなくて、やはり担い手、農地の利用者の間と所有者の間に適切な農地の利用状態というのをつくっていこうということでございます。法人というふうに書いてございますので、委員はあるいは企業ということをイメージされておられるかもしれませんが、法人の中には、例えば集落営農をやっていただいておられる皆さんがこの集落のままで法人になられるとか、それからいわゆる農業生産法人と、こういうものも法人でございまして、こういうものを併せて我々は法人という言葉を使わせていただいております。
○紙智子君 農業委員会組織の意見では、公募に応じた農地の借入れ希望者、特に農外からの新規参入者、まあ企業等ですね、ここには農業経営基盤強化促進法に基づく市町村基本構想に即した認定農業者となることを促し、農地のある地域との信頼関係を醸成する仕組みを構築する必要があるというふうにしていましたけれども、農林水産省は本法案ではそれを採用しませんでしたが、なぜでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 冒頭引用されたものがちょっとどの御出典か必ずしも判明いたしませんでしたので、どの文書にそういうことが書かれていたということでございましょうか。
○紙智子君 農業委員会組織の意見として出されているものです。
○国務大臣(林芳正君) いろんな方がいろんな御意見をおっしゃっていると、こういうことだと思いますが、機構からの農地の貸付けについては、公平かつ適正な手続の下に行われることを保障するということと、それから貸付先の選定プロセスの透明化、これを図る必要があるということでございまして、十七条において区域ごとに定期的に借受け希望者を募集し、そのリストを作成の上、公表することとしておるところでございます。
 貸付先の決定ルールについても、各都道府県の農業事情を踏まえて機構が作成し知事の許可を受けるということでございますが、ここに、八条でございますけれども、地域の農業の健全な発展を旨として、公平、適正に貸し付けるものでなければならないものと、こういうふうにしております。
 さらに、農用地利用配分計画、先ほど御議論していただいたところでございますが、これを都道府県知事が認可をするわけです。この基準においても、地域における他の農業者との適切な役割分担の下に継続的かつ安定的に農業経営を行うことが見込まれること等が規定をされております。十八条でございます。
 したがって、この募集に応じた借受け希望者は必ず認定農業者にならなければならないということではありませんが、例えば地域の話合いに参加するなど、地域の一員として信頼関係を構築して安定的に農業を営むように誘導していく、このことは、今引いていただいた文書にもあるように、大変重要であるというふうに考えております。
○紙智子君 ちょっとよく分からなかったんですけれども、なぜ採用しなかったんですかというふうにお聞きしたんですよね。採用しなかった理由、意見を。
○国務大臣(林芳正君) 条文の御説明をさせていただいてかなり読ませていただきましたので、そこに書かれていることは趣旨としてここに反映をされているというふうに我々は認識をしております。
○紙智子君 ちょっとまた更にやりたいと思うんですけれども。
 ちょっと時間もありまして最後になりますけれども、農業委員会組織が危惧しているように、落下傘型の企業が農地のリース方式で五万法人も参入しますと、これは地域との信頼関係も醸成されずに、これまで話合いで農村の農地管理等、水路あるいはあぜ管理を行ってきた農村集落に大きな影響を与えることになるんじゃないでしょうか。実際にそういう外からいろいろ地域とはかかわりのないところがどんどんと入ってくるということになったら、幾ら地域で醸成をといってもなかなかそうならない、なりにくいんじゃないでしょうか。いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) これも先ほど申し上げましたように、必ず認定農業者にならなければならないということではございませんが、地域の話合いに参加するなど地域の一員として信頼関係を構築して安定的に農業を営む、こう申し上げたのは、まさに今委員がおっしゃっていただいたように、生産に付随してやっていかなければならないいろんなことを一緒にやっていくということがこの地域の一員として信頼関係を構築すると、こういうことにつながっていくと、こういうふうに考えております。
○紙智子君 衆議院の議論の中でも、例えば参考人の方のお話を聞いても、やはりいろいろ問題が残っていると、今回出された法案の中にですね。そういう実際に土地を本当に集積したり流動化していくということでいえば、地元の意向を踏まえて、本当に現場の協力が得られなければやっぱり成功していかないわけですから、そういう意味では、よりそういう問題点を本当によく見て解決を図るということをやっていかなきゃいけないということを申し上げて、残りは次のときにまた質問したいと思います。
 終わります。