<第184回国会 2013年11月25日 決算委員会>


TPP問題で安倍総理を追及

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 この間の農政の在り方をTPPの関連で質問いたします。
 安倍総理は、今年三月十五日に国民の反対を押し切ってTPP交渉への参加を表明してから八か月が過ぎました。参加表明のときに国民に約束した一つは、国民への丁寧な情報提供ということであり、もう一つは、国民との約束は必ず守る、強い交渉力で守るべきは守ると。今日はこのことについて質問させていただきます。
 まず、情報提供の約束についてお聞きしますけれども、交渉に初めて参加をした七月のマレーシアの会合では、その入口で秘密保持契約に署名しました。交渉内容は秘密にする契約ですから、政府は交渉過程は一切公開できないということで、交渉にはどういう方針で臨んでいるのか、そして参加国からは何を要求されているのか、一切明らかにしていません。
 安倍総理は、TPP交渉に参加する前は、参加していないから情報がつかめない、したがって示せないと、参加したら、今度は守秘義務があるから示せないというふうにおっしゃっているわけです。これ、国民から見ますと、大事なことがさっぱり見えない、こんな納得のいかない話はないわけです。
 安倍総理は、国民への丁寧な情報提供というふうにおっしゃった。そのあなたの約束は果たされていないんではないですか。まず総理です、総理お答えください。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自民党の公約は、交渉力を駆使して、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることによって、国益にかなう最善の道を追求するというものでありまして、これをたがえることはございません。政府としては、与党の立場を体し、全力を挙げて交渉に今臨んでいるところでございます。
 国民への情報提供につきましては、対外交渉でございますのでお話しできることとできないことがありますが、これまでも私自身がTPP交渉に臨む安倍政権の基本的考え方について国会や記者会見等の場で御説明をし、また国民にTPP交渉への理解を深めていただけるように努力をしてまいりました。
 政府は、交渉会合の前後に与野党の会合で交渉の状況について御説明をしたり、関係団体や地方公共団体等に対して随時説明会を開くなど、できる限り情報提供をするように努力をしてまいりました。また、関係団体や国民から広く御意見をいただく機会も設けているところでございまして、今後とも、できる限り国民の皆様への情報提供に努めるとともに、国民の皆様の声を踏まえて、交渉を通じて国益を実現していく考えでございます。
 今、日本は交渉の中核的な役割を担っておりまして、バランスに配慮しながら、交渉の年内妥結に向けて引き続き積極的な役割を果たしていきたいと考えております。
○紙智子君 今総理は、状況については御説明しているとか、いろいろ説明した、説明したという話がありましたけれども、全然これ中身については言っていないわけですよ。
 私が八月に質問主意書で、TPP交渉に参加したマレーシア会合で農林水産分野の五項目を関税撤廃から除外する日本の方針を説明したんですかとただしましたけれども、これに対しては、お答えすることはできませんと、説明したとも説明しないとも言っていないわけですよ。
 結局、国民が最も知りたいこと、例えば重要五品目については関税がどうなっているのか、そういう肝心なことについては何一つ情報は出していないんじゃありませんか。総理が言っている国民への丁寧な情報提供というのはこの程度のものだということなんでしょうか。
○国務大臣(甘利明君) TPPに入る前に秘密保持契約を結ばなければ入れないというのは、御承知のとおりです。
 私も、担当大臣として、各国と同じテーブルの場で、あるいは非公式の場でいろいろとやり取りをしますけれども、各国とも、この秘密保持契約とそれから関係者への情報開示をどうすり合わせていくかというのは、みんな本当に悩んでいる話なんであります。そちらにいらっしゃると分からないと思いますが、こちらにいらっしゃると私の悩みもよく御理解いただけるかと思います。これは、その範囲内でできることをやるということでございます。
 それで、ステークホルダー会議も頻繁に持っております。日本のステークホルダーに対する情報の開示が他国と劣っているとは、私が知る限り思いません。どこの国でどういう機微な情報が出てきたかということを御承知であれば教えていただきたいと思います。
○紙智子君 開き直るつもりですか。ひどい話ですよ。総理の国民に対する丁寧に情報を公開すると言った約束はどうなったんですか。肝心なことは何にも言っていないですよ。本当にひどい話だと思いますよ。
 それからもう一つ、国民との約束は守るとおっしゃってきました、総理は。それについてですけれども、安倍総理は二月の日米共同声明のときにこう言いました。オバマ大統領とお話をして、聖域なき関税撤廃が前提でないことが分かったので参加することにしましたと、米国と日本との間にはお互いにセンシティビティーなものがあることを確認しましたというふうにおっしゃって、あたかも米国がこの日本の重要品目に配慮してくれるかのような話をしました。そして、強い交渉力で守るべきものは必ず守ると話されたわけです。
 しかし、現実はどうなっているかというと、参加各国からは関税は一〇〇%撤廃なんだということが求められていて、今この時点で改めて米国からは関税の全面撤廃を迫られているんじゃありませんか。もはやこれは聖域が確保できない状況になっているんじゃありませんか。総理、いかがですか。総理です。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 交渉ですからね、相手は自分たちの国益を最大限にこれは大きくしていこうとするわけでありまして、まさに今それがぶつかっているところでございまして、大変厳しい交渉であるという現実は確かにございます。その中において我々は、国民の皆様に選挙を通じてお約束をしてきた、先ほど申し上げたとおりでありまして、攻めるべきはしっかりと攻めてまいりますが、守るべきものはしっかりと守って国益をしっかりと追求してまいりたいと、最善の道を求めていきたいと、こう考えている次第でございまして、まさに国民の皆様とのお約束をたがえることのないようにしっかりと交渉していく決意であります。
 その際、確かにお話しできないことも多々あるわけでございますが、お話しすべきこと、できることについては記者会見等を通じてなるべく分かりやすく国民の皆様にお話をしているところでございます。
○紙智子君 本当に守れるんですか。もうアメリカは完全撤廃だと言ってきているわけですよ。守れるんですか。
 西川公也自民党のTPP対策委員長は、十月八日のバリ島のこのTPPの会合のときに、重要五品目に立ち入って、加工品や調製品の関税撤廃に向けて検討を開始することを表明して、その作業に入ったわけです。この西川氏の言動に多くの人が激怒しているわけですよ。高知県では県議会で、自民党の議員を含めて、聖域を守れないTPP交渉から直ちに撤退することを強く要望すると、これ全会一致して意見書を採択しています。
 私ども日本共産党は、この重要五品目だけ守られればいいなんて思っていませんよ。そもそも自民党が選挙で公約したのは六項目あったはずですよ。食の安全、安心の問題や国民皆保険制度の問題やISD条項の問題も含めて六項目あったわけで、そのうちの一分野のこの農産品の重要五項目さえも今自らなし崩しにしようとしているわけですよ。
 これは明らかに公約違反じゃありませんか。自民党の総裁としてはっきりお答えください。総裁としてですから。安倍総理。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 自由民主党の公約は、交渉力を駆使して、守るべきものは守り、攻めるべきものは攻めることによって、国益にかなう最善の道を追求していく、これが公約でございます。そして、我々は、さらにJ―ファイルにのっとって、五品目がその中に書き込まれているわけでございますが、この五品目が書かれているJ―ファイルを踏まえてしっかりと交渉していきたいと、このように考えているところでございます。
○紙智子君 もう守れない状況になっているということを私はさっきから指摘しているわけですよ。
 それで、高知県の自民党は、重要五項目の五百八十六品目について関税撤廃の検討を表明した西川氏の発言を到底受け入れ難いと言っているんです。ある幹部は、西川発言のやり方では重要品目は守れないし、自民党は県民にうそをついたことになる、私は耐えられないと、ここまで発言しているんですよ。
 総理は政府と自民党を使い分けているんですけれども、総理自身が自民党の総裁じゃないですか。はっきりとこれ公約違反を認めるべきだと思うんですよ。守るべきものは守る、繰り返しそうやっておっしゃっていますけれども、年内妥結を今優先する余り、こちらから譲るべきものは譲るというふうになっているんじゃないですか。これはもう大転換じゃありませんか。いかがですか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 西川委員長からは、検証作業後の党のお考えについては伺っております。いわゆる重要五品目を含め我が国のセンシティビティーをしっかりと守ってほしいということでありました。
 そして、繰り返しになりますが、我々は、守るべきものは守り、そして攻めるべきものは攻めて、国益を守る最善の道を求めていきたいと、このように考えているところでございますが、しかし同時に、今この交渉においては、ただ単に関税だけではなくて、貿易のルールあるいは知的財産、そして電子商取引や国有財産、環境もそうでありますが、という様々なルールについても議論をしているわけでございまして、そういう議論も含めてバランスのいいものを我々はつくっていきたいと考えているわけでございますが、この五品目は我々が守っていくべく努力をしていかなければいけないセンシティビティーであるのは間違いないわけでございますから、そしてまた、我々はJ―ファイルについてお示しをしているわけでございますから、それを踏まえて、交渉力を駆使してしっかりと国益を守っていきたいと考えているところでございます。
○紙智子君 守るべきものを守ると言いながら、実際には譲り始めているわけですよ。そのことを私は繰り返し指摘させていただいているわけですけれども、ちょっとこのパネルを見てください。(資料提示)これ、農林水産分野の重要品目と自由化率です。
 それで、政府が重要五項目の五百八十六品目全てを例外と、この緑の部分ですね、ここを全て例外扱いというふうにすると、自由化率は書いてありますように九三・五%ということです。
 しかし、TPPは一〇〇%でなきゃ駄目なんだ、あるいは最低でも九八%の自由化率でなきゃ駄目だという話も出されているという中で、結局、総理は、これ日米が年内妥結でこの関税交渉で足を引っ張るわけにはいかないんじゃないかというふうに立つものだから、この重要五項目に関税撤廃をする品目がないかどうか検討することにしたんじゃないですか。こういう提起を日本はやっておられるんでしょうか。いかがですか。

資料:農林水産分野の重要品目と自由化率
図1

※クリックすると拡大します
○国務大臣(甘利明君) いろいろ九八だとか九十幾つという数字をお示しになりましたけれども、それを私どもの方から具体的に提示をしているという情報は、私持っておりません。また、具体的なタリフラインがどうこうという話も、どことどうやり取りをしているのか、そういう情報も持っておりません。
 今は、それぞれ大臣会合に向けて各国間の交渉、その前提としてチーフネゴシエーター、CN会合がまだこの時間も行われているのかな、関係部署のネゴシエーター、交渉官と、それから全体を見る首席交渉官会議が行われているところであります。そこで、この関税も含めたおよそ全ての項目、ルールも含めた項目に関して各国の相違を、この間合いといいますか、これを縮めているところであります。
 そして、その作業の進み具合によって行われる、十二月に行われますTPP閣僚会議において、ここにおいては政治的なマターに絞り込みをしていくと、それに向けて今努力を詰めている、つまり、それ以外の問題について極力解決をしていこうという努力が今行われているところであります。
○紙智子君 情報は得ていないと言いましたけれども、それだったらどうして新聞報道なんかで出ているんですか。(発言する者あり)新聞が間違っているんですか。それはちょっと信じ難いですね。
 じゃ、ちょっと次行ってください。本当に何を聞いてもまともに答えないですよね。
 それで、次のやつ見てください。この重要五項目における、これ加工品と調製品の一部としてこれだけのものがあるということが報道されているわけですけれども、お米でいいますと例えば米粉とか米のミール、小麦だとビスケットとかマカロニとかスパゲッティ、それから乳製品だとアイスクリームとか、それから牛・豚肉だと骨付き肉とか、まあいろいろあります。砂糖もあります。
 こういう形で、具体的にこの中からどれが抜けるかということを検討したのかどうか、いかがでしょうか。
資料:重要5項目における加工品・調整品の例
図2

※クリックすると拡大します
○国務大臣(林芳正君) 西川委員長の発言を引かれておっしゃっておられるのかもしれませんが、西川委員長の方では、抜くことを前提として作業をするわけではないと同じバリの記者会見においておっしゃっておられまして、この五品目以外にも大事なものもあるのでそれぞれを検証するということで、その検証を終えられて、この甘利大臣のところの本部の事務方にその結果が伝えられたと。その内容については、先ほど総理から御答弁があったとおりでございます。
○紙智子君 抜くことが前提でないというんだったら、そもそも検討しなくたっていいじゃないですか。検討するのは、なぜ検討するかといったら、抜くためじゃないんですか。
 私は、バリのときにそこに行っていました。それで、西川委員長はそのインタビューに答えて、とにかく年内妥結だと、スピードを上げてやらなきゃいけないから、だから検討するという話をしたわけですから、これは抜くためじゃないですか。そういうごまかしを言ってもらっては困るわけですよ。
 では、農水大臣にお聞きします。このパネル、もう一度見てほしいんですけれども、この重要五品目のうち、加工品、調製品の関税を撤廃した場合にどのような影響が出るのか、これ一般論で結構です、どのような影響が出るのかということを明らかにしてください。
○国務大臣(林芳正君) 先ほど私が申し上げたことは西川議員がおっしゃったことでございまして、重要五品目の五百八十六についてどんなことができるのか、できないのか、検証しなければならない、残る二百四十八についても重要なものはある。それから、記者が、五品目の切り崩しを行うということかと、こういう質問があった、それに対して、検証しなければいけない、ただし抜くことを前提にするのではないと、こういうふうに明言をされておられますので、そのまま引用をさせていただきました。
 今、一般論としてということで、加工品、調製品のお話がありました。たしか参議院の予算委員会だったと思いますが、山田俊男委員などからも同じ趣旨の御質問をいただいておりますので、そのときもお答えしたとおりでございますが、加工品、調製品の関税が仮に一般論として撤廃された場合、国内市場において国産品が安価な輸入品に代替されることが考えられると、こういうことでございます。
 その結果、たとえ加工品、調製品以外の品目の関税が維持されたとしても、原料としてのこれらの品目の需要が減少するため、その生産が減少し、国内農畜産業に影響が及ぶおそれがあると考えられると、こういうふうにお答えをしておりますので、そのとおりでございます。
○紙智子君 つまり、TPPで国内の農林水産物の生産は減少する、加工品、調製品の関税撤廃、関連産業でも大きな影響が出るということです。
 総理、このようなこの重要五品目の加工品、調製品の関税を撤廃するということは、これは衆参の農林水産委員会の決議、農林水産分野の五品目などについて、除外又は再協議の対象とし、十年を超える期間を掛けた段階的な関税撤廃も認めない、これら重要五品目などの聖域が確保できないと判断した場合は、脱退も辞さないものとすると、この決議に照らしても反するんじゃありませんか、総理。
○国務大臣(甘利明君) 自民党の公約、それに関連するJ―ファイル、そして国会決議、それぞれ私は担当大臣として重く受け止めつつ、ぎりぎりの今交渉をやっているところであります。
 もちろん、聞くばかりではございませんで、こちらからも攻めるべきは攻めているところでありまして、今その攻防戦がぎりぎりのところに来つつあるということだけ申し上げます。
○紙智子君 今おっしゃいましたけれども、やっぱりやっていることは決議に反する中身ですよ。日本政府は、これ米国の政府に対して関税撤廃リストを渡したということも報道されていますけれども、これ事実でしょうか。
○国務大臣(甘利明君) 日本からですか。
○紙智子君 はい。
○国務大臣(甘利明君) 詳細は言えませんけれども、そういうことはないと思います。
○紙智子君 どうかということはよく分かりませんけれども、重要五品目の加工品、調製品、この関税を撤廃するということは、繰り返しになりますけれども、衆参の委員会決議や、これまで総理が守るべきは守ると言ってきた、このことに反するのはもう明らかだというふうに思います。
 それから、次、見ていただきたいんですが、これ私の出身地である北海道十勝のTPPの影響試算です。
 それで、生産額で合計しますとマイナス一千三百八十二億円、それから関連産業でマイナス一千二百九十八億円、それから地域経済でマイナス二千三百五十七億円、雇用は約四万人減ると、全体ではマイナス五千三十七億円減ると。これ地域経済が崩壊します。十勝管内の就業者数というのは十七万人いますから、四分の一に当たる四万人の雇用がその場を失うということになるわけです。
 十勝地方のある町長さんはこういうふうに言っておられます。我々の先人はこの厳寒の地域で百二十年から百三十年掛けて今の十勝をつくってきました。冬になれば零下三十度以下にもなると。でも、それが終わると春が来る。春が来るから頑張れる。しかし、TPPが来たら、その希望もそがれてこの地域は崩壊する。子供の未来もないと。
 総理はいつも御自身の山口の農家のことを言いますよね。美しいこの田園風景を守るんだというふうにおっしゃいます。だったら、北海道のこの美しい風景を崩壊させない、影響はないということをはっきり言い切れるでしょうか。
資料:TPPによる十勝への影響試算
図3

※クリックすると拡大します
○委員長(金子原二郎君) 甘利国務大臣。
○紙智子君 総理に聞きました。
○国務大臣(甘利明君) まあ総理も後でお答えになると思いますが。
 TPPの試算は、経済モデルを回して即時に全ての関税を撤廃した場合にこういう数字になるということがなされたわけです。それは、経済効果としてプラスの効果がこれだけありますということでありました。この北海道モデルはどこでどう試算されたか分かりませんけれども、恐らく一つ残らず関税が撤廃になって、なおかつ何の手当てもないということの試算をどこかでされたんだと思います。
 TPP交渉に関しては、申し上げましたように、党公約、それに関連するJ―ファイル、そして国会決議、それをしっかり受け止めながらぎりぎりの交渉をしているわけであります。できるだけプラスが高くなるように考えながら交渉しているところでありますし、マイナスが出るところについても当然国内対策と併せて進めていくことになるわけであります。全く裸で何もしないで全部なくなったことを前提にどこかが出された試算、それに基づく将来像を見て悲観をするという必要はないかと思います。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) ただいま委員がおっしゃったように、当然私は、山口県の農家の皆様と同様に、そして北海道の農家、そして田園風景を守っていく責任があるわけでございまして、前半の審議において林農林水産大臣がお答えをしたように、政府としては、農業の生産力を向上するため、言わば生産性をしっかりと上げていく、産業としての農業を更に生かしていく、活力を持った産業としていくと同時に、地域対策としてその多面的機能をしっかりと評価をしながらそうしたものも守っていくという車の両輪において、若い皆さんも農業という分野において自分たちの努力や情熱で新しい未来を、地平線を切り開いていくことができると、こう思ってもらえるような、そういう分野にしていきたいと、こう考えているわけでございますが、先ほど甘利大臣がお答えをしたように、対策を全く講じなければそういうことになっていくわけでございますが、しっかりと我々、今申し上げたような基本的な考え方の下、やるべき対策はしっかりとやっていく考えでございます。
○紙智子君 どういう試算かという話ししましたけど、私はやっぱり政府の試算だって本当に都合のいい机上の試算だと思いますよ。現場から見たら大変な深刻な状況ですよ、ビートが作れなくなったら全体の輪作体系が回らなくなるんですから。順々に連作障害出ないようにやってきたわけで、小麦が少しでも作れなくなったら、それでもう全体回っていかないんですから。そういうことが実感として感じられるからこそ、危機感を感じているわけですよ。
 あなた方は、TPPに参加して大丈夫だと、日本再興戦略というのを出して農業所得倍増というのを掲げていますけど、これも現場ではそんなのは夢物語だと言っていますよ。第一、米の直接支払の交付金を今の十アール当たり一万五千円から七千五百円に大幅に減らそうとしているじゃないですか。これでどうやって所得倍増なんかできるんですか。輸出と農地集約だけだというふうに言うけれども、どれだけの農家がそこに参加できるのか全く先が見えてないじゃないですか。結局は、大規模化して、企業のところはもうかるかもしれないけれども、本当に今、現に頑張って地域を支えている中小の農家の方々含めて、どうなるかということが分からないで、絵にかいたもちで国民をごまかしてTPP参加を強行するというのは許されないと思いますよ。
 とにかく、現場の状況というのは政府の言うことは信じられないというふうになっているわけですけれども、総理は三月十五日の記者会見で、自ら関税撤廃なら農業生産額が三兆円減るというふうに認めていたわけです。総理は二月の日米首脳会談でセンシティビティーなものをお互いに確認したんだと、例外なき関税撤廃が前提でないと言ってTPPに参加したけれども、その後は、さっきも言いましたけれども、米国からは今、全ての関税撤廃を迫られているわけです。
 TPPは、元々これ、例外なき関税撤廃が原則なわけですよ。加工品や調製品の関税の即時撤廃を打ち出したとしても、精米とか玄米も無傷では済まないわけです。例外を認めるといっても、十年から二十年経過措置とった後はいずれゼロになるわけですよ。それがTPPの原則なわけです。米に限らず、重要五品目全てに適用されるわけです。
 ですから、国民との公約を守るつもりだったら、これはもう今直ちに脱退する道しかないと思いますよ。直ちに脱退することが国益を守る道だと思いますけれども、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(安倍晋三君) 今年の二月のオバマ大統領との会談において、我々が昨年の衆議院選挙において公約をいたしました聖域なき関税撤廃を前提条件とする以上、交渉に参加をしないということでありましたが、例外なき、聖域なき関税撤廃ではないということが確認されたわけでありまして、農業とか一定のセンシティビティー、つまり農業とか、日本にとっては農業、そして米国にとっては工業製品ということが明らかになったわけでございまして、今それをまさに前提として我々はしっかりと交渉をしているわけでございますが、いずれにせよ、我々は選挙でお約束をした公約はたがえてはならないと、このように考えているところでございます。
○紙智子君 聖域なき関税撤廃が前提でないことが分かったっていまだにおっしゃっているんですか。実際にはもうどんどん崩されてきているじゃないですか。
 それで、交渉参加各国はそれぞれ国と国民にどういう影響があるのかということをよく吟味して、国益に沿わない場合は、マレーシアの前首相のマハティールさんがおっしゃっていたように、TPP交渉から抜けるということだってあるんだということが言われているわけですし、それからチリは、来月、十二月、大統領選挙ですけれども、そこで決まるわけですけれども、今TPP反対の大統領候補の優勢が伝えられているわけですよ。
 それから、この間リークされたネット上で流れているTPP交渉の知的財産権の条文案と見られる文書が、これ国際的に大きな波紋を呼んでいます。それがこれなんですけど、こういうものが今ネットにあるわけですよ。相当分厚いものですけど、これ知的財産の問題めぐってのみなんですけど、各項目ごとに、これは賛成、反対、どの国が反対しているか、賛成しているかって、全部出ていますよ。
 こういう各項目ごとにも対立があることを示していて、とてもじゃないけど、年内妥結といったって、そんな状況じゃないんじゃないかと。それなのに総理は、国民に秘密にしたまま、これ十二月までに妥結しようというんでしょうか。こんな異常な秘密交渉によって国民に取り返しの付かない不利益をもたらすような交渉はいち早く撤退すべきだと思います。
 私たち共産党は、まずこの秘密交渉と公約違反のTPP交渉から直ちに撤退することを強く求めると同時に、食料主権、経済主権の相互尊重に立った互恵平等の経済関係を発展させるために力を尽くしていく決意です。何よりも食料自給率を五〇%台に引き上げると、これを当面の目標に据えて、そのために価格保障、所得補償、後継者政策、生産者と消費者の連携始め農林漁業の振興に国を挙げて取り組む、その決意を申し上げまして、質問を終わります。