<第184回国会 2013年11月15日 農林水産委員会>


震災復興問題で、あんぽ柿などの東電賠償問題を追及

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、東日本大震災からの復旧復興について質問いたします。
 それで、大臣は、被災地域の皆様と話し合いながら農林水産業の一日も早い復旧復興に全力で取り組んでまいりますと述べられています。まず、福島県の特産品であるあんぽ柿について質問いたします。
 あんぽ柿というのは、元は貧しい村だった伊達市の五十沢というところで、産業を興さなきゃいけないということで技術開発を重ねてでき上がった干し柿で、伊達地方の特産品です。あんぽ柿は原発事故の前までは全国で一位、二位の販売高を誇るブランド柿でした。その柿が事故後は出荷できなくなりました。
 一昨年前に私、現地に行って柿の木を見て大きな衝撃を受けたんですね。もう見渡す限りの柿の木です。本当に枝もたわわに見事な柿がなっていたんだけれども、その見渡す限りの柿が出荷できないというお話を聞いて、本当に衝撃を受けたわけですね。
 それで、なっている柿そのものはそんなに高い線量じゃないんだけれども、これを干すと、干し柿にすると十倍も濃縮されて放射能が高くなってしまって商品にできないと。一年目も二年目も出せなかったわけです。生産者の方がやっぱり手間暇掛けてやってきたのに、どれだけ悔しい思いをしたかというふうに思うわけです。
 福島県では、いよいよ三年目になるということで、ブランドを消してはならない、伝統ある干し柿を何とか再生、再生産したいという思いから、放射性物質を検査をして、基準値よりも低い地域を加工再開モデル地域に指定をして生産を始めていると。言わば、試験操業じゃなくて試験生産をしていると。
 そこで、農水大臣にお聞きしますけれども、こういうふうに本当に前に向かって何とかしようということで立ち上がっている生産者を支援すべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) あんぽ柿は私も好物でございまして、この間、先週末に日比谷公園で農業法人協会の方がフェスティバルをやられて、そこに少し出ておりましたけれども、やはりこれを食べると何となく秋が来たなと、こういう思いがするわけでございますが、今委員からお話があったように、干すから濃縮されるということで、非常にそこが難しいところがあるというのは承知の上でございますけれども、原発事故前は福島を代表するブランド品であったと、それが今、二年連続で加工自粛となっておりますのは大変残念なことだと、こういうふうに思っております。
 平成二十五年産のあんぽ柿の加工・出荷再開を目指しまして、本年一月に関係機関から成るあんぽ柿復興協議会、これを設置をいたしまして、実が小さい段階での検査等に基づいた安全な原料柿の生産が可能な加工再開モデル地区の設定、それから検査機による製品の全量検査体制の導入を支援する、これは国費八億八千七百万円を措置したところでございますが、こういうことをやってきたところでございます。
 今年の十二月上旬に三年ぶりの出荷の再開が可能となるように、今後とも万全の体制で支援を行ってまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 ところが、これ、今新たな壁にぶつかっているということがあります。
 同じ生産者でも、線量の値で加工を再開できる圃場とそれからできない圃場と、この両方を持っている方がいらっしゃるんですね。圃場が混在していると。それで、損害賠償がどうなるかといいますと、加工できない圃場は年内に全額賠償されるんですけれども、しかし、加工を再開できる圃場はこれ賠償金が年内に支払われる保証がないんですよ。賠償金をもらうには書類だとかいろいろ事務手続を含めて時間が掛かるということになっていて、生産者から見ると、それだったらいっそのこと生産しない方がましなんじゃないかという声も出ていると。
 そこで、経済産業省に次、聞くんですけれども、年内に賠償するようにこれ東京電力を指導すべきではないでしょうか、いかがでしょうか。
○政府参考人(後藤収君) お答え申し上げます。
 今お話がございましたあんぽ柿を含めた農産品の賠償につきましてでありますけれども、JAを中心といたします協議会から請求を受ける形になっておりまして、東京電力は、その請求を受けた後に、まずその半額の支払を行うということをやってございます。残りの賠償請求額につきましては、東京電力がその証憑を確認した上で額を確定してお支払いをするということでございますので、営農を再開した事業者につきましてはその再開後の損失額の確定というのが必要になるということでございますので、支払に時間を要しているのは事実でございます。
 ただ、しかしながら、今先生の御指摘のように、厳しい経営環境、特に年越しの資金も非常に重要な時期になってきておりますので、そういう意味で、生産の再開をされている農業者の方々に対して支払の迅速化を進めたいということで、私どもの方からも東京電力に対して適切な指導をしてまいりたいというふうに思います。
○紙智子君 年内に支払しなきゃいけないというのもあるんですよね。そこに手元にないと困るわけですよ。だから、是非年内に極力払うように改めて指導していただきたいということで、よろしいですね、一言で、いいと。
○政府参考人(後藤収君) 東京電力の方には指導してまいりたいと思います。
○紙智子君 加えて、モデル地区についてお聞きします。
 全額賠償は、経費を除いて七六%となっています。モデル地区は、逸失利益、つまり事故に遭わなければ得られた利益、その部分が補償されるわけです。しかし、東電任せにしているとこれ事務処理に時間が掛かるということで手間が掛かるので、生産者からは、国がまず七六%補償してその上で東電と精算してほしい、あるいは、七六%を超えた部分は生産者の手取りにして、そうすれば生産意欲にもつながるし、生産、販売で得た収入というのはインセンティブ料として賠償金から引かないでほしいという要望が出ています。
 経済産業省に聞きますけれども、この要望にもこたえるべきではないでしょうか。
○政府参考人(後藤収君) 基本的に賠償の仕組みは賠償の指針に基づいて進めさせていただいておりますので、まずは当面半分について即お支払いをして、残りは精算するという形になってございます。その比率を、今七六%でありますか、そのくらいまで上げるべきだという御指摘だと思いますが、その辺は周りの実態等を勘案しながら検討は引き続きやっていきたいと思います。
○紙智子君 やっぱりブランドのこの柿を消してはいけないという思いで再開している生産者であり、そこを支援していくということで国がやっぱり役割を果たすべきだと。段階を追ってきているわけですよね。だから、壁にぶつかったんであればその壁を乗り越えられるように、やっぱり東電を指導していきたいというふうに言っていただきたいというふうに思います。
 続いて、農産物の検査についてなんですけれども、生産者は取引先からの要請で土壌や米の検査を行っているわけです。これに対して東京電力は、出荷時に検査した農作物なので改めて土壌の検査をする必要はないから賠償金払わないと、あるいは、福島においては米の全量全袋検査をやっているので改めて出荷時の検査をする必要がないので、したがって賠償金は払わないというふうに言っているんです。つまり、二重検査の費用は賠償しないというふうに言っているわけですね。
 消費者や業者が表示を求めるというのはこれ当然なんですね、ある意味。本当に大丈夫なのかという不安がある中で、ちゃんとお墨付きをもらったものだったら受け取るよというふうになるわけで、これは当然なんだけれども、検査をしない商品は扱わないというふうに言われたら、これ販売を断念しなきゃいけなくなると。
 農水大臣、こういう事態というのはやむを得ないというふうにお考えでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 原発事故によります農林水産業者の損害については、東京電力によって適切かつ早急に賠償金が支払われると、これが重要だというふうに考えております。我が省として、これまでも関係都道県や団体で構成する原発事故連絡会議を開催するほか、個別の課題について東京電力に直接申入れを行うなど、東京電力に対して適切かつ早急な対応が行われるように求めてきたところでございます。
 今御指摘のあった賠償の取扱いについては個別事案でございまして、基本的には東京電力と当事者間の交渉に委ねられるものではありますけれども、福島県などから事情を聞きまして、現場の状況を把握の上で必要に応じて東京電力に適切な対応がなされるよう求めてまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 それで、経産省にもお聞きするんですけれども、外国の事業者から検査の要請がある場合、どういうふうに対応されていますか。
○政府参考人(後藤収君) 外国からの対応でございますけど、外国企業から求められた追加検査に係る費用につきましては、今の中間指針におきましても、海外に在住する外国人と日本人の間には情報の格差、輸入拒否に関する損害の発生を回避する必要性等に鑑みれば、我が国の輸出品について検査、原産地証明等各種証明書が求められる心理は一般的に合理的であるというふうに認められるというふうにされておりまして、それにのっとって賠償を行っております。
○紙智子君 要するに、外国から要請があったら二重検査をやって、ちゃんとその分は賠償を払うという仕組みだと思うんですけど、それだったら、私はやっぱり国内でも個別の事情に関して丁寧に話を聞いて対応するのが本当じゃないかと思いますけど、いかがですか。
○政府参考人(後藤収君) 今のお話でございますけど、一律にその措置をとるというのは今の指針の状況では難しいと考えてございますけれども、個別の事情に勘案して、やはりその辺の状況はよく伺った上で、何が適切な措置かということは東京電力にも指導はしてまいりたいと思います。
○紙智子君 今のお話ですと、個別にちゃんと丁寧に聞き取ってということですよね。
 それじゃ、検査費用が、これ、いろいろ聞きますと、一検体当たり、一キロ当たりの検査料で五千円掛かるんだそうですね。だから、本当にたくさん数が増えると相当お金が掛かるということもあって、是非そこのところは実情をつかんで東電が賠償するように求めていただきたいと思います。
 次に、営農の問題、農地の規模拡大にかかわる問題なんですけれども、福島県で営農を断念した農家から経営を委託されて、結果として規模拡大した農家があるわけですね。言わば、休業して生産を委託しているケースなんです。それから、委託という形ではなく、農地を譲り受けた農家もいると。言わば、農業を止めて農地を譲るケースということなんですね。こういう形で規模を拡大して東電に賠償を求めても、東電は、原発事故前から規模拡大を計画されたケースは賠償するけれども、事故後は経営判断に基づくものなので賠償しないというふうに言っているんですよ。
 経済産業省にお聞きしますけれども、まず、営農を断念して農地を譲渡した場合、農地の受け手に賠償すべきじゃないかと。これ、いかがでしょうか。
○政府参考人(後藤収君) 営業損害のお尋ねだと思いますが、これは従前の耕作地に関する損害に対する賠償というのが原則だと考えております。そういう意味では、元々の所有者の方に対して賠償していくというのが基本ラインだというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 譲渡されている場合も、実際には掛かっている費用だとかということがあるわけですから、是非できることを検討していただきたいというふうに思います。
 それから、譲渡されたケースは譲渡された時期に遡って賠償すべきではないかというふうに思うわけですけれども、休業して生産を委託しているケース、農地を譲渡していないけれども生産、販売を委託しているケース。農家はどうして農地を引き受けるかというと、それは、農地を放置しておくとそこに虫が出たりするわけですよ。そうすると、自分のところだけやっているんでも駄目で、影響出てきますから、そういうのもあってやっぱり引き受けてやらざるを得ないということがあるわけですよね。果樹園なんかはもろにそうですよね、病気が出たらもうほかのところへうつっていきますから。だから、そういう、荒らしておけない、放置しておけないということがあって引き受けるわけです。ところが、東電は、事故後の規模拡大は経営判断だというふうに言って、そういう事情をやっぱり理解していないということがあるわけですね。
 ですから、経済産業省にもう一つ聞くんですけれども、やっぱりこういったこともちゃんと理解をしてもらって賠償するように東電を指導すべきではないでしょうか。
○政府参考人(後藤収君) 今の果樹園のように、管理されていない土地があって、そこから虫が発生して影響が出るというようなことが想定されるような場合ということだと思いますが、このような場合は、その具体的な個別事情をやはり丁寧に伺ってみて、その妥当性があるかどうかということもやはりちゃんと判断したいと思いますので、そういう意味では、東京電力をまたよく指導しながら検討してまいりたいと思います。
○紙智子君 よく事情をつかんで指導していただきたいというように思います。
 それから、最後になるんですけれども、漁業の問題でお聞きしたいと思います。
 それで、大臣は、被災地の復興とともに六次産業化も支援してまいりますということを所信で述べられています。被災地で、震災からの復興とともに六次産業化に取り組んでいる三陸漁業生産組合についてお聞きしたいと思うんですが、この組合というのは、震災後、漁師がいち早くもうかる漁業ということで新たに立ち上げた組織です。
 それで、ところが、初年度で税の申告のときに公益財団法人ヤマト福祉財団から受けた寄附が、寄附を受けているんですけれども、これは圧縮記帳が認められずに一千六百万円の法人税などが課税されたんですね。昨年の売上利益はどれだけかというと、二百万円しかないわけですよ。税金がずっと重いわけですね。それで、まさにそういう意味では、せっかく、もう全て流された後必死になって立ち上げてやってきたんだけれども、出ばなをくじかれた状態になっていると。
 漁師は金策に走っていて、何とか税の工面はしたようなんですけれども、運転資金がないと。そこで、復興庁と相談して政策金融公庫からの融資を勧められたわけです。融資を受けるには幾つかの手続が必要で時間が掛かるということで、結局この融資を断念せざるを得なかったと。漁業者は、今運転資金が必要なのに悠長なことは言っていられないということで、元々は家を再建するために準備したお金なんかもかき集めて金策に走っているということなんですね。
 それで、農水大臣にお聞きしますけれども、こういうふうに必死に何とか立ち上がろうということで漁業者と一緒につながってやってきている企業に対して、やっぱり何らかのことを考えてあげる必要があるんじゃないかと思うんですけれども、これについていかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) おっしゃっていただいたように、この復旧復興、まさに六次産業化することによって旧に復する復旧から復興につなげていこうと、これは大事な取組だと、こういうふうに思っておりますので、こういう被災漁業者の方が必要とする設備資金につきましては、日本政策金融公庫資金、また漁業近代化資金といった低利の制度資金をベースに、さらにこれに水産庁から利子助成を行うことによって貸付金利を実質無利子化する措置をやっておりますし、また運転資金というお話もありましたが、従来から制度資金の対象に運転資金はなっておりませんけれども、無担保・無保証人型の融資が実行されるように、水産庁から保証料助成など必要な措置を講じておるところでございまして、被災漁業者の方のニーズを踏まえて金融面からの支援を万全に期していきたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 それでは、今日は復興庁から小泉さんに来ていただいておりますので、一言お願いいたします。
○大臣政務官(小泉進次郎君) 御質問いただきましてありがとうございます。
 この件につきましては、紙先生御存じのとおり、十一月の一日に佐々木憲昭先生から衆議院の財金の方で御質問が麻生大臣にありました。
 この件ですが、今、復興庁としては、岩手の復興局が岩手県とそしてまた地元の漁協とも相談をさせていただいておりまして、今後、例えば経理指導の面、また様々な相談体制を含めてどのようなサポートができるか考えて対応してまいりたいと思います。
 また、これ以外についても六次産業化は大変大事ですので、大手企業と被災地の現地の企業たちのマッチングをやる「結の場」という事業もやっておりますし、様々な事業を含めて六次産業化、また、この農林水産委員会も私も度々、先日、山田先生にも御質問をいただきましたが、今回初めて、衆議院にはない唯一牛乳が出る委員会というのを初めて、勉強になりましたので、漁業、農業を含めて、復興庁、しっかりと取り組んでまいりたいと思います。
○紙智子君 いろいろ紹介させていただいて、実は制度があってもなかなか使えないと、やっぱり最初のころと違って段階を踏んで要求も変化、発展しているんですよね。それにやっぱりこたえていかなきゃいけないと。
 六次化を進めるために、例えば製氷施設などを整備したと。製氷施設に海水を運ぶパイプラインの設置を県と漁協と相談しているんですよ。ところが、急いでパイプラインを造っても、岸壁と道路が下がっていてかさ上げしなきゃいけないのでまた造り直す必要が出てくるということを言われて、しようがないからまず製氷施設だけ造ったんですね。そうしたら、その後からパイプラインを造ろうと思っても、これはセットでなきゃ駄目だという話になるわけですよ。
 今の制度の下ではなかなか対応できないということもある中で、せっかく意欲を持って、何もなくなったところからもう一から始めようということでこうやって頑張っている人たちに対して、やっぱり段階を踏んで、困難になっていること、壁になっていることをクリアしてあげるような、そういうことを従来の枠にとらわれず支援策を取っていただきたいというふうに思うんです。
 最後に、ちょっとそのことについて一言大臣から答弁を求めて終わりたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) まさに今委員がおっしゃったように、復旧から復興へかけていろんなケースが出てくると、こういうふうに思いますので、なるべく被災された方、そして意欲を持って立ち上がろうとされている方のサイドに立って、どういうふうにこの制度が使えるのかと、こういう視点で更に検討を重ねてまいりたいと思います。
○紙智子君 終わります。