<第183回国会 2013年4月25日 農林水産委員会>


アフリカ食料支援のために、ネリカ米の普及に全力を挙げて取組むよう要求。TPP問題も追及。

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 まず法案から行きます。
 本法案はアフリカ諸国に対する食糧援助に関する問題ですけれども、以前から食糧支援の在り方について、これが単なる物資の支援よりも、当該対象国の農業生産の増産に向けて技術や生産基盤の強化の支援の方が望ましいし、アフリカ諸国もそれを望んでいるというふうに聞いていますけれども、まずその点で大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) 私、参議院でODA特委の委員長というのも、ちょっと短かったんですがさせていただきまして、そのときにもこういうことを聞きました。魚を与えるよりも魚を釣るやり方を教えてあげるんだというようなことであります。
 したがって、そういう基本的な考え方というのは大事ではないかと思っておりますが、委員がおっしゃったように、アフリカは経済成長も遂げるようになったんですが、やはり栄養不足人口、これがFAOの統計ですけど二億人以上まだいるということで、貧困とか飢餓あるいは疾病といった問題も抱えているわけでございまして、したがって、食糧支援で物資を提供するということだけではなくて、我々が持っております農業生産技術、これは高いものがありますので、これを生かして、アフリカ諸国自身によって農業生産の増大と生産性の向上をやはり図っていくように技術の移転、普及を行うこと、すなわち魚の釣り方を教えると、こういうことですが、が重要だと思っております。
 したがって、外務省やJICAというような関係機関と連携しながら、例えば西アフリカにおいては、農民等を対象とする稲作技術向上のための研修等の実施、それからまた干ばつリスクを回避できる米の新品種の開発、こういうものの支援を行っておるところでございまして、今後も積極的に展開していきたいと思っております。
○紙智子君 今ちょっと入りかけましたけれども、その中でネリカ米についてお聞きしたいんですが、ネリカ米は病気、乾燥に強いアフリカ稲と高収量のアジア稲を交雑させたアフリカ陸稲の新しい有望品種ということで、日本と国連開発計画等の支援の下で、西アフリカ稲開発協会によって開発されたものなわけですけれども、西アフリカで注目を集めて、今作付けが進んでいます。
 当初、二〇〇二年の四月に、ネリカ米の普及を強化するために、アフリカの新品種米ですね、推進計画が立ち上げられて、二〇〇六年までの目標を栽培面積で二十一万ヘクタール、栽培農民を百七十万にするというふうになっています。現在、この目標に対して実績がどうなっているのかということをお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(稲津久君) お答えさせていただきます。
 今、委員から御質問ありましたけれども、このネリカ米についてでございますが、アフリカにおける飢餓それから貧困に対処するために、アフリカでの栽培に適した多収量でかつ早稲品種、いわゆる早く成長する品種ということで開発されたのがネリカ米、この普及を強化することが極めて大事なことであるということで取り組んでまいりました。
 このため、二〇〇二年、アフリカ稲センターや国際機関等によりまして、ネリカ米の普及を強化するためのアフリカン・ライス・イニシアチブが立ち上げられまして、このネリカ米の栽培面積を、今議員御指摘のとおり、当時二万四千ヘクタールだったんですけれども、二〇〇六年までに二十一万ヘクタールまでに拡大するということが目標となりました。このことを取り組む中で、これは現時点でのデータですけれども、二〇〇九年のアフリカの稲センターの報告によりますと、ネリカ米の栽培面積は七十万ヘクタールになっているというところでございます。
○紙智子君 そうすると、百七十万人にすると言っていたことについては、どういうふうになっておりますか。
○大臣政務官(稲津久君) ちょっと行き違いがあったのか、事前のところのちょっとやり取りが不十分だったかもしれません。
 そこのところについては、今私どもの手元にデータがございませんので、後ほどまたお示しをさせていただきたいと思います。
○紙智子君 ネリカ米の作付けが進んでいるわけですけれども、アフリカでは二〇〇八年の五月からアフリカ稲作振興のための共同体、CARDですね、これが発足をして、サブサハラ・アフリカの米生産を向こう十年間で倍増することを目標にしているわけです。
 この点、今日外務省に来ていただいているんですけれども、外務省の現在の取組状況をできるだけ端的にお話しください。
○大臣政務官(若林健太君) お答えをさせていただきたいと思います。
 今、委員御指摘のように、CARDについてはTICADW、二〇〇八年五月に行われたこの会議の際に、サハラ以南のアフリカにおける米生産倍増のために我が国の発意によって立ち上げたものでございます。
 CARDに参加するアフリカ二十三か国は、稲作振興のための戦略を策定し、我が国を始めとするドナー各国や国際機関の支援も得つつ、かんがいの導入、拡大や、品種、栽培法の改良といった取組を現在実施をしております。その結果、米生産量は、二〇一一年時点で二〇〇八年の千四百万トンから二千百万トンまで米生産が増加するなど順調に推移をしておりまして、今後とも我が国はCARDの取組を積極的に推進してまいりたいというふうに思っております。
○紙智子君 外務省から今明らかにされましたけれども、CARDの事務局にJICAの職員が入っていて、この職員の人件費と活動費を外務省が負担をすることによって支援をしているということですよね。
 それで、農水省として、このCARDの活動に対する支援というのはどうなっているのか、この点ちょっとお聞かせ願います。
○大臣政務官(稲津久君) お答えいたします。
 まず、CARDの構成員である国連の世界食糧計画やアフリカの稲センターなど、国際機関へ資金の拠出を通じて、先ほど来お話ありますけれども、この稲作の生産基盤の復興、それから低湿地を対象とした水稲の営農手法の実証、品種開発、こういったことを我々で支援をしているところでございますが、今御指摘のこのアフリカのネリカ米もございましたが、米増産に関して農林水産省から直接専門家を派遣をしている、それから土壌肥沃度、それから土地、水資源の保全管理状況対策、こうした支援の調査事業も実施をしています。
 なお、このCARDの事務局に対して、実施機関の一つでございますJICAによりまして人員の派遣、事務局の運営などをしているところでございまして、農林水産省としてこのJICAのプロジェクトのところに職員の派遣をしているという状況でございます。
○紙智子君 農水省としても、今御紹介あったことなんですけれども、地味だけれども、例えば統計情報管理に対する支援なんかも、これも重要だと思います。
 ただ、農水省は、米の生産、流通、管理の、世界でいえばトップクラスのノウハウを持っているわけで、もちろん押し付けてはいけないというふうに思うんですけれども、CARDに対してやっぱり寄り添いながら農水省としてできる様々な支援のカードを示して、より分厚い支援を進めて、このネリカ米の一層の拡大を図れるように取り組まれてはどうかと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 私も、このネリカ米というのを最初に聞いたときには、ああ、そういう品種があるのかなと思ったら、ニュー・ライス・フォー・アフリカというのの略だそうだということで、その名のとおり新しいものを展開してアフリカにおける飢餓や貧困に対処するということは非常に大事なことでございます。やっぱりアフリカの栽培に適した多収量のわせの品種でございますので、うちの独法の国際農林水産業研究センター通じて、研究者の派遣、品種開発に関する技術協力も支援してきたところでございます。
 まさに、この米の生産について、二〇〇八年のTICADW、ここで倍増目標ということが、二〇〇八年の千四百万トンから二〇一八年に二千八百万トン、これを打ち出されておりますので、この目標が達成されますように、稲作振興のための先ほど御指摘いただきましたCARDへ資金援助、専門家の派遣、その中で、今おっしゃられたように、大事なことは、日本でこうやっているからこのとおりやりなさいよということではなくて、やはり新しい、アフリカの栽培に適したものをやるわけですから、その後のいろんな食べていただくところに至るまでのところもちゃんとアフリカの現状に合った方向で支援をしてまいりたいと、こういうふうに思っておるところでございます。
○紙智子君 ありがとうございます。
 それで、ちょっと最後もう少し時間残りましたので、TPPの問題についてお聞きしたいと思います。
 それで、四月十二日に行われた日米の事前協議、合意文書も出されておりますけれども、これ、USTRがアメリカに報告している中身の文書も出されておりますけれども、これを見ますと、アメリカから出されてきている要求についてはほとんど受け入れているわけですけれども、日本が、これまで安倍総理が守る守ると、聖域を何とか確保するんだと言っている部分について、この事前協議の段階では、結局文書上はお互いにそういうものがありますねということが確認されただけで、何ら踏み込んだものになっていないというふうに思うんですよ。
 なぜ、事前協議というのであれば、そのことを本当に強く押し出して確保できるようにということをやっていないのか、あるいは、林大臣自身が農水大臣としてそういうことをやられるように働きかけしていないのかというふうに思いながら見ているわけなんですけれども、この点、いかがでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) 今御指摘の文書は、多分USTRの方でアメリカの国内向けにプレゼンテーションやられたものだというふうに理解をしますが、あくまでこれは日米で合意したものというのは、先ほどちょっと申し上げたように共同書簡という形でございまして、それ以上でもそれ以下でもないということで、我々もそれに基づいて国内で説明をしているということでございます。
 この共同書簡というのは、それに先立つ日米の首脳会談、二月だったと思いますが、あのときにやった、日本がTPP交渉参加に関して、日本の参加に関して、この二国間のアメリカの方でまだ残っていると思う課題についてやるということが三パラに入っておりました。このことをやった結果がこういうことでありまして、先ほど平山議員とのやり取りでも申し上げたように、今から交渉は正式に入ってやっていくということでございまして、この事前の交渉で、何か向こうの関心事でないことについてこちらから申し上げるというそもそもの性格ではないということが一つでございます。
 そうでありながらも、きちっと二月の段階で入れさせていただきました一定の農産物に対するセンシティビティーということを改めて共同書簡においては確認をさせていただいたということで、これを踏まえてきちっと本交渉が始まれば、ここでも御決議をいただいておりますので、その決議を踏まえて取り組んでまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 今の答弁も、その事前協議の中身でアメリカの関心事について残っていたものをやったんだと言われるんだけれども、それ以外のものもありますよね。非関税障壁の問題については、これまでアメリカが言ってきたような三条件以外にももう様々な分野にわたっての非関税障壁の問題もやっているわけですから、その際に、向こうの関心にこたえるというだけじゃなくて、日本から強い姿勢で臨むというのは当たり前だと思うんですよ。それ、なぜやられていないのかということなんですが、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 様々な非関税障壁についてということが二月の共同声明にも書いてございました。それに従ってやっていたということが一つと、それから、そこに、向こうから言ってきておりませんが、こちらから農産物品についてはセンシティビティーがあるんだということを今回も入れさせていただいたというところでございます。
○紙智子君 この続きはまたやらせていただきますけれども、いずれにしても、本当に日本で取れるものを取るというふうに言いながらほとんど何も確保されていないという中では、私は、やっぱり初めからこれは乗ってはいけないことであって、やっぱりもう早々に撤退をするべきだということを申し上げまして、質問を終わります。