<第180回国会 2013年5月9日 農林水産委員会>


原発事故被害のシイタケ山の再生! 燃油高騰で特別対策を直ちに!


○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 今日は、まず福島原発事故で大きな被害を受けた原木シイタケの問題について質問をいたします。
 岩手県から鳥取県まで二十都府県で百八十九万本のシイタケ原木が不足しています。私は先日、シイタケの出荷量が全国五位の栃木県、栃木に行って話を聞きました。放射能汚染でもう現在もこの原木シイタケの出荷制限が続いています。栃木では、放射能汚染で使える原木は一部にとどまっていて、七十五万本を確保する必要があると。それで、汚染されていない原木を鹿児島県、宮崎、大分、愛媛などから調達をして何とか四十五万本まで確保できたということでした。調達したから生産できるかというと簡単ではなくて、東日本はコナラなんだそうですね。西日本はクヌギを使うということで、栽培技術を習得するということも必要なんだという話です。それから、ほだ木の長さが西日本と違うために、東日本の長さに合わせる必要があるということもお聞きしました。
 そこでまず、東日本を支援するために増産している西日本についてなんですけれども、西日本では山に道を入れて労働力を回して増産に取り組んでいると。林野庁はキノコ原木の増産対策というのをやっておられますよね。こういう対策はもちろん必要なんですけれども、原発事故がなければこれ必要なかったものです。この費用は当然東電に賠償を求めるんでしょうか。
○政府参考人(沼田正俊君) 委員御指摘のように、いわゆるシイタケの生産というのは農山村地域で非常に重要な課題でございますので、私どもとしてもこういったシイタケの原木の確保に努めさせていただいているところでございます。こういった意味で、今現在、キノコ原木の伐採なり搬出、運搬に必要な例えば作業道の整備でありますとか、あるいはキノコ原木を造材する場合の経費、そういったものを定額で支援させていただいているところでございます。
   〔委員長退席、理事郡司彰君着席〕
 こういった経費でございますけれども、こういった原木の確保に必要な経費でございますけれども、こういったものについては基本的にいわゆる賠償の対象となるというふうには考えておりますけれども、こういった場合のいわゆる原木の購入者の方々に対しても、シイタケの生産の継続を早急に支援する必要があるということで一部助成させていただいておりますけれども、基本的には賠償ということでお願いしたいというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 ちょっと、もう一回確認します。そうすると、賠償としてそれに掛かる経費は東電に求めるというふうに今おっしゃったんでしょうか。
○政府参考人(沼田正俊君) いわゆるキノコ原木の生産サイドの方は通常の生産活動において出されるものでございますし、また、そういったキノコ原木の取引に伴いますものということで収益は出てくるかと思っておりますが、損をすることはないと思っておりますので、そういった意味で西日本の方のそういった経費については対象にならないというふうに考えておりますが、ただ、東日本の方で原木を購入される方がいわゆる原木価格が高くなるということによって生じた掛かり増しの経費につきましては基本的には賠償の対象ということで考えているところでございますが、シイタケの生産の継続が、早急にそういったものについて支援する必要があるという考え方の下に私どもとしても二分の一の助成をさせていただいているというところでございます。
   〔理事郡司彰君退席、委員長着席〕
○紙智子君 原発事故によって必要となった、生産について言っても必要となった対策だったら、これはやっぱり税で全額する必要というのはないんじゃないか、やっぱりちゃんと賠償を求めていかなきゃいけないんじゃないかというふうに思うわけですね。
 それで、このキノコ原木の増産対策の補助率というのは、これは定額となっていますけれども、これは自己負担なしで行っているんでしょうか。
○政府参考人(沼田正俊君) キノコ原木のこういった伐採でありますとか搬出等におきます例えば作業道の整備に対しましては、一メートル当たり二千円の定額ということで用意させていただいております。また、キノコ原木を造材する場合に掛かる経費、これは一立方メートル当たり二千円というものを定額で支援させていただいているところでございますので、そういった場合、いわゆる原木の生産者の方がそういった費用の中でやっていただければ特段の新たな負担は生じないというふうに考えているところでございます。
○紙智子君 それで、栃木県の話に戻しますけれども、西日本からシイタケ原木を調達するには掛かり増し経費が発生すると。それで、生産拡大に伴う価格の高騰分、それから輸送費ですね、原木を傷つけないように運ぶために枠を作らなきゃいけない、それからトラックターミナルなどの場所代ですね、森林組合が調整、調達をこれは行っているわけですけれども、生産者の庭先まで運んでいるわけです。原木の価格ですけれども、通常は一本二百五十円から三百円ですか、コストが上乗せされると、そうすると四倍から五倍になるというふうに言われています。
 林野庁はキノコ原木の購入支援ということで行っていると思うんですけれども、掛かり増し経費の半分を国が持つ、半分を東電に請求するというふうになっています。ところが、東電に請求しても、これ、すぐに賠償金が出ないケースが続出しているんですよね。結局、なぜ、農家にとってみれば、何で余計な作業を自分たちがやらなきゃいけないのかという声が出されているわけです。そういう声が出るのも当然だと思うんですね。請求してもすぐ出ないと、結局自分たちがその分まずは担わなきゃいけないということになるわけですよ。
 こういう声が出ていることに対してどのようにお考えですか。これ、ちょっと、じゃ大臣、いかがですか。
○大臣政務官(稲津久君) お答えさせていただきます。
 実は、私も四月の中旬に福島県のこの生産者団体から要請をいただきまして、様々意見交換をさせていただきました。その折にも、様々な御意見の中で、まず一つはこのキノコ原木の購入支援について、先ほどから御説明させていただいていますけれども、いわゆる生産継続、これをしていくために掛かり増しの経費の二分の一の助成をしているということ。
 それから、議員お尋ねのことなんですけれども、東電への賠償請求、これが一部遅れているのではないかという、そういったお話もありまして、ただ、このことについては、例えば請求様式の確定が平成二十四年の七月以降になったということ、それから、JAの協議会の請求というのが、請求者全員書類が整った段階で請求をするということになりまして請求までに時間を要したということもございます。
 農水省としてはこれまで、東京電力への直接の要請、それから生産者と東京電力の賠償交渉の場への担当官の派遣ですとか、それから生産者向けにこうした問題についてのQアンドAの作成を行いまして情報提供などに努めてきたところでございます。今後とも、生産者の皆様の損害が早期にかつ適切に賠償されるよう東京電力に強力に要請をしてまいりたいと、このように考えているところでございます。
○紙智子君 農家の皆さんは放射能の被害に苦しんで、生産を続けるかどうかということも迷っておられるわけですよね。
 半額は東電に賠償を求めればいいという話なんだけれども、東電は、取引が終わった後に請求書に基づいてやるというふうに言っているわけですよ。だから、もうとにかく出して、それでその費用も出して、後で請求書を出せというわけですよね。だけど、請求したその金額が全部賠償されるかというと、そうとも限らないんですよ、これは。それを見た上で出すものを判断するというふうに言っているわけですよ。だから、本当に負担感が高いんですね。
 農家が安心してやっぱり生産できるようにするためには、掛かった経費は一旦これ国が全額農家に渡して、東電との関係は国がその後対応していくということにするべきじゃないかと思うんですよ。そういうふうにすれば、農家も安心して生産が続けられると。
 大臣、補助事業だからということではなくて、やっぱり従来にない枠組みをつくるべきじゃないかと思いますけれども、いかがですか。
○国務大臣(林芳正君) 今、稲津政務官からお答えさせていただきましたけれども、これは、先ほど委員から御指摘があったように、本来、本来賠償されるべきものなわけでございまして、その掛かり増し経費はですね。したがって、ただ、今おっしゃられたように東電もいろいろ手続が面倒くさいとか遅れるとかということがあって、その本来賠償すべきところを二分の一はまず助成をしようと、こういうふうに考えて、まさに今おっしゃっていただいたように、これはなぜやるかといえば、シイタケ生産の継続と、これを支援する必要があるということでやってきたところでございます。
 したがって、こういう各種支援と併せて、先ほどからございましたように東京電力へ要請を行って、しっかりと生産者が、要するに生産を継続していこうというふうになってもらうことが大事でございますので、この今の仕組みをフル活用してしっかりと取り組んでまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 今の仕組みでフル活用というふうに言うと、結局は二分の一は国が出すけどあとはというふうになっちゃうんじゃないのかと。やっぱり生産者の苦境を本当に真剣に考えれば、やめるかどうかと悩んでいるわけですからね、続けてもらうためにはこれまでの従来の枠を超えた対策が必要だということで是非検討いただきたいんです。国が一旦やって、そして東電との関係で決着付けるということで是非やっていただきたい。
 それから、加えて、農家の経営を守るために必死になってこの原木を調達している森林組合の支援なんですよ。原木を調達したりトラックターミナルを借りたり、農家の庭先までこれを運んだりということで数億円掛かるというんですね。この掛かり増し経費を森林組合が調達していると。森林組合任せにせずにこれも支援すべきじゃないかと思うんですけれども、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(林芳正君) 原木林の再生ということで、昨年度から福島県と連携をいたしまして、伐採後、まず切るわけですね、そうすると生えてくると。で、この生えてくる、新しく生えてくる樹木への放射性物質の移行状況のモニタリング、こういうものを実施をして知見の集積を図るということで、どういう地域でどういう方法で再生したらいいかということをしっかりと対策を講じてまいらなければならないと、こういうふうに思っておりまして、そういういろんな施策を総合的にやはり展開をして、再生についてもしっかりと支援をしてまいりたいと思っております。
○紙智子君 農家の原木を届けるまで先行投資が要るということで、森林組合の皆さんもいろいろ努力されているので、是非、よく要望を聞いていただきたいというふうに求めたいと思います。
 それから、シイタケ山をどう再生するかというのも大変重要な問題だと思うんですが、現在のままほうっておくと森林は荒廃してしまうと。早く循環林にする必要があるんですけれども、シイタケ山を再生するには十五年から二十年掛かるというふうに聞いています。その間、他県からシイタケ原木を調達しながら早く安全な原木林を再生する必要があるんですけれども、この放射能の被害で鹿とかイノシシが食用に使えないということもあって頭数が増えてきているわけですね。それでその苗木を食べてしまうと、こういう被害も増えているというふうに聞きます。
 大臣、この獣の被害対策を含めて、シイタケ山の再生をどう進めるのかということでの御認識と対策について、ちょっと見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) シイタケの方も、今お話があったように、原木林が再生するまでの間生産を継続すると、山の方のことで、供給の掘り起こしをするですとか、マッチングの推進をする、それから原木や洗浄機械の購入費用の支援ということで、このシイタケの原木の安全なものを確保するということの支援を実施してまいりたいと、こういうふうに思っております。
 また、鳥獣害といいますか、そういうものが出てきて食べてしまうというところに関してはなかなか、一般的な鳥獣害対策ですと、まあトラップを掛けてとか猟友会にお願いしてと、いろんなことがあって、これもなかなか苦労しているところもあるんですが、このエリア的に言ってなかなかそういうことができないところというのはなかなか悩ましいところでもございますので、ただ、せっかく頑張ってやったものがむしゃくしゃ食べられちゃったと、こういうことではやる気も萎えてきてしまいますので、何ができるか、これは我が省のみならずいろんな省庁とも知見を共有しながら考えてまいらなければならないと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 それじゃ、最後に、漁業の燃油高騰問題についてお聞きします。
 いわゆるアベノミクスで円安が進行して、燃油価格等の急激な上昇でもって漁業経営が危機に直面していると。漁業経営セーフティーネット構築事業では補填されてはいるんですが、この制度だけでは救済されない状況だと。それで、大臣は我が党の山下芳生議員が先日新たな対応を求めたのに対して、御指摘があったように、異常高騰の場合に異常高騰分について特別な対応を行うように検討を開始しているという御答弁がありましたけれども、既に一斉休漁が、先日、イカですか、行われていますけれども、特別な対策については、いつこれはお示しになるんでしょうか。
○国務大臣(林芳正君) この間、予算委員会だったと思いますが、山下先生とやり取りをさせていただきました。浜の方が大変に御苦労されておられるという思いを山下先生とも共有できたんではないかと、こういうふうに思っておりますが。
 今お話がありましたように、今の制度で、積み立ててそして補填をすると、こういう仕組みで、国費分の残高百億円になる見込みでございます、二十五年度の予算が入ったという前提でですね。したがって、一定の対応は可能であるというふうに思いますが、さらに予期し得ない異常高騰ということについてどういう対応を行うかということで、この間も少し申し上げましたけれども、この異常高騰分を、対応を六月中にも考えたいと、こういうふうに思っております。
 先ほど、一斉休漁のお話もありましたし、それから、五月の二十九日に燃油高騰対策の実現に向けた全国集会と、これを漁業者の団体の方がおやりになるということですから、こういうところでどういう御意見が出されるかということも踏まえながら、一定の方向を六月中には得ていきたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 全漁連や水産団体は、セーフティーネット構築事業の制度拡充、それから来年度予算での対応では今の異常高騰に対応できないというふうに言っているわけですね。迅速な対応が求められているわけです。これは、アベノミクスということで、経済政策によって急速にそういう事態が生まれたという問題でありながら、予算上はセーフティーネット構築事業があるということで素通りしていいのかということでもあるわけです。
 今日は予算の委嘱審査ということでありますから、是非迅速に対応することが求められていますし、今大臣もおっしゃいましたように五月二十九日に集会も開くということでもありますから、是非漁業者が安心できるメッセージを発していただきたいと。最後に一言、そのこと、決意をお聞きして終わりたいと思います。
○国務大臣(林芳正君) ありがとうございます。
 私も元々は下関の地元でございまして、浜という言葉をよく使うんですが、やっぱり浜の皆さんの勢いというか気持ちと、これが非常に大事でございますので、しっかりと浜の皆さんの元気が出るような対応を検討してまいりたいと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 終わります。