<第180回国会 2012年7月30日 社会保障と税の一体改革に関する特別委員会>


被災地における介護減免延長を/家事援助45分ルールの撤回を求める

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。
 東日本大震災の被災者を対象とした介護保険料と介護サービスの利用負担の減免がこの九月末で終了いたします。岩手、宮城の両県だけで約十四万人の対象となっています。被災地では、生活環境の変化などで新たに要介護認定を受ける高齢者が増えていて、この延長を望む声が強く出されています。
 宮城県議会などで意見書が出されているというふうに思いますが、小宮山大臣に、これにどうこたえておられるのか、お聞きいたします。
○国務大臣(小宮山洋子君) 先ほども答弁をさせていただきましたが、介護保険の保険料また利用者負担の減免については、東電の福島第一原発に伴って国が避難指示などを出している区域以外の被災者の方は、これは半年延長してきたものでございますので、今年の九月末までその費用の全額を国が財政支援することにしています。
 そして、十月以降は、これも御説明していますが、保険者の判断による利用者負担などの減免措置が行われて、その財政負担が著しい場合というのは、利用者負担総額の三%を減免に要した費用が超える場合など、財政負担が著しい場合に免除額の十分の八以内の額を財政支援をするという、この既存の介護保険制度の仕組みを活用して御支援をいただくように、自治体にも今そうした通知を出して周知を図っているところです。
○紙智子君 特別の財政支援はやめるということですよね。
 それで、今お話あった、厚生労働省から事務連絡を出されて今のことを徹底したということなんですけれども、しかし、被災の大きな自治体ほどやっぱりこの免除の費用負担が増えて免除を打ち切る自治体も出てくるんじゃないかと、こういう危険性があることが関係者の間で指摘をされているわけです。
 それから、利用者にとっても、例えば石巻市の七十三歳の介護四の女性は、津波で家が水没をして、五人家族だったんだけれども、家族がその後、息子さんとお孫さんは市内に移転を、移居すると。現在は、ですから夫と二人暮らしという中で、デイサービスを週三回、ヘルパーを週三日、現在デイサービスの昼食代については約八千から九千円支払をやって済んでいると、減免されていたんでね、ということなんですけれども、今回、十分の八ですか、ということになったとしても、やっぱり負担は大変つらいものがあるという現状ですし、仙台市の若林区の八十六歳の介護三の男性にしても、自宅が全壊ですよね、津波で全壊をすると。農業をやっている長男夫婦と同居しているんですけれども、息子夫婦が田畑で仕事をしている間というのは、認知症もあり、一人にしておけないということで、デイサービス週に五回、ショートステイも利用しているわけです。やっぱり、ここも現在、介護保険利用料についていえば、このデイサービスの昼食代で済んでいるわけなんですけれども、やっぱりこれがなくなったら大変負担が重いと。しかも、田畑が津波を受けて、実際に今やっているのが三分の一しかやれていないわけですよ。だから、収入も減っていますし、この先の見通しもまだ付いていないという状況の中で、やっぱりこの介護保険の免除は本当に必要だというふうにおっしゃっているわけです。
 被災者の生活がこうやってぎりぎりですからね、継続してほしいという声が切実なわけで、やっぱりこれ今までどおり続けられるようにするべきじゃないかと思いますけれども、いかがでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員から御紹介いただいたように、本当に被災者の皆様が大変な思いをされているということはよく承知をしています。ですから、阪神・淡路大震災のときは一年間のこの免除措置だったわけですけれども、今回はその被害が甚大であって、前年の所得が把握できないということもありまして、半年延長をいたしました。
 今回も、十月以降は現在の仕組みの中で活用してほしいと申し上げたんですが、保険料とか利用者負担の月額の上限は前年の所得に応じて設定をされていますので、そういう意味では被災をされた後のその所得で掛けているので、そこが無理がないようにということも配慮しながらやっていきたいというふうに考えています。
○紙智子君 阪神・淡路のときは一年延長したと、だから今回は一年半ということ、そうじゃなくて、やっぱりなりわいも含めて本当に全部が再建していかないといかないわけですから、やっぱり、回復できていない自治体と被災者にとっては、これ二割ぐらいの負担だというふうにいっても、とてもやっぱり重いものなわけですよ。まだ復興は道半ばなわけでね。
 それで、平野復興大臣にお聞きしたいんですけれども、復興庁として、やっぱり従来どおりに、今支援は従来どおりになかなかいかないという話もあったんですけれども、何とかそこを、平野大臣も現地に行かれてよく御存じだと思いますけれども、何とかそこを従来どおりできるようにしていただけないかということなんですが、いかがでしょうか。
○国務大臣(平野達男君) 今回の東日本大震災の被災というのは阪神・淡路とよく対比されますけれども、類似点もございますが、違いもございます。阪神・淡路は何といっても、被害は大きかったんですが、多くの方々は働きながら復旧復興に取り組むことができた。東日本大震災に続く津波につきましては、働く場所の確保をやりながら復旧復興しなければならないという違い等々もございます。
 そういう中で、委員から御指摘があったように、特に被災者の財政負担ということについて、復興庁としてはしっかりとした、大きな関心を持ってこれを見ていかなければならないというふうに思っております。
 この問題につきましては、負担率が十分の八、十分の十、いろいろあるかと思いますが、要は、自治体の負担に、過大な負担にならないようにする、そのために地方財政措置があるというふうに私どもは認識をしております。いずれ、厚労省さん、総務省さん、場合によっては復興庁も入りまして、その間の状況については推移を注意深く見ていきたいというふうに思います。
○紙智子君 注意深く見ていくということなんですけれども、私は是非再延長するように求めておきたいと思います。
 次に、四月から介護ヘルパーの生活支援の基準時間を六十分から四十五分に短縮した問題についてお聞きします。
 北海道の民医連が、四十四事業所の利用者を対象に行った調査結果について発表しています。三月に比べますと、四月はサービスを七割の人が減らしていると。その特徴は、介護報酬改定による利用料の負担増や、訪問介護の生活支援時間、六十分から四十五分化になった影響による削減が挙げられています。
 この四十五分に削られた時間を取り戻そうとすると時間延長で利用料に響くために、調理を配食に替えたりおかずを減らしたりというようなこともやっています。それから、時間を短縮したことで利用者との会話の時間が取れないという声も出されています。ヘルパーさんは時間がないために利用者と会話もせずに買物に走ったり、帰って掃除、洗濯、食事ですね、利用者の方は話をしたいんだけれども声も掛けられないと、どちらもつらいという話なんですね。
 これについて、厚生労働大臣、どのように思われますか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 訪問介護の掃除、調理、洗濯、こういう生活援助サービスについての今回の報酬の見直しはあくまで介護報酬の評価を行うときの時間区分を見直すもので、四十五分以上の区分も設けていますので、本当に必要な人の場合は、ケアマネジメントでそういう形の設定をすればこれまでのように提供ができるようになっています。そのことがどうも現場になかなか届いていないという御指摘を受けていますので、全国課長会議やQアンドAなどで、適切なケアマネジメントに基づいて今のサービス、引き続いて行うことができますよということを説明をしてきまして、現状ではおおむねそれが周知をされてきたのではないかというふうに思っているところです。
 四十五分にそもそもしましたのは、いろいろ調査をすると四十五分以内に終わっている方もたくさんいらしたので、そういう方たちはこの四十五分で今までよりも安い料金で受けられるということもありまして今回こういう区分にしたところで、必要な方にはちゃんと長い時間受けられるということを更に丁寧に現場に説明をしていきたいと考えています。
○紙智子君 長い時間受けられるようになっているんだと、それ今徹底しているという話なんですけど、四十五分を二回やっていいですよという話ですよね。そうすると、利用者の方は利用料が上がるということになっているんじゃないでしょうかね。これ、実は事業者にとっても、利用者のニーズや状況によって、一概に十五分増えた分について減らすわけにいかないということで、事業者自身が持ち出しというのが現実にはあるんだという話が出ているわけですよ。
 それから、もう四十五分ということで徹底されていなかったためにゆとりのない支援が行われて、そのこと自体がやっぱり精神疾患の方ですとか認知症の利用者の方の状態を悪くさせるということにもつながるということで、やはり孤立化しやすい高齢者にとってはコミュニケーション自身が大切なケアだというふうに思うわけですね。やっぱり話したくて待っているわけですよ。もちろん、話してばかりもいられないわけですけれども。でも、やっぱり顔を見て体調はどうだというところから始まるんだと思いますし、そういう疎通がなければ、相手は人間なんですから。ですから、私は、この四十五分ルール、もっとやれるというんだったら元に戻して変えたらいいんじゃないかというふうに思いますけれども、いかがでしょう。
○国務大臣(小宮山洋子君) 今委員がおっしゃった、四十五分以上だったら倍の九十分になるということではなくて、ケアマネジメントで六十分もできるようになっていますので、それは今までと同じように必要な時間できるようになっています。そのことでいろいろ現場に混乱が起きたり誤解があったりしてはいけないので、それは利用料……
○紙智子君 ちょっと時間が。
○国務大臣(小宮山洋子君) はい。
 利用料、またお返事いたしますが、仕組みとしては、今までと同じように六十分必要な方は六十分できるようになっています。
○紙智子君 京都のヘルパー協会とか、大阪の社保協とか、東京でも民間で、実は同じことを調査して同じことが指摘されているわけなんです。ですから、是非これ、厚生労働省として調査をしていただけませんか。
○国務大臣(小宮山洋子君) それは、実態がどうなっているかはちゃんと調べたいと思います。
○紙智子君 そもそも、介護保険法には高齢者の尊厳を保持した支援が目的というふうにされていたわけです。ところが、今、これは何のための介護なんだろうかというような、本末転倒になっていると言わざるを得ない状況があるわけですね。
 それで、次にちょっと税と社会保障の一体改革の問題でお聞きするんですけれども、四十五分ルールなどの生活支援や家事援助の問題が解決するのかどうか、この一体改革でですね、将来はどうなるのかということも聞きたいと思うんです。
 平成二十三年十一月の社会保障と税の一体改革における介護分野の見直しに関するこれまでの論点整理の中では、要支援者に対する給付はリハビリに重点化し、予防効果のないものは給付の対象から外すべきという意見が多くあったとされています。そこで、お聞きするんですけれども、今後、家事援助に対する給付というのは削減する対象にしているんじゃないでしょうか。
○国務大臣(小宮山洋子君) 今回、社会保障と税の一体改革の中では、医療と介護サービスの提供体制の効率化、重点化ということで、在宅医療、在宅介護などを支援しようと思っていますけれども、今、この件のように利用者にとって本当に必要なサービスを一律に削減をするということではございません。
 先ほどの、よろしければ、前回と現在の料金のことをちょっとだけ申し上げたいと思うんですが、よろしいですか。
 六十分程度の生活援助の場合は、今まで二千二百九十円だったものが、今回、六十分から七十分だと二千三百五十円にはなりますが、二十分から四十五分の場合は千九百円程度と、そこは安くなるということです。それから、九十分程度の生活援助の場合は、以前が二千九百十円だったものが、今回は、おっしゃったように四十五分掛ける二ということで、こちらは三千八百円と高くなります。そういう意味で、長くなると高くなるけど、短い人は今までより安くできると、そういうことかというふうに思います。
○紙智子君 いずれにしても、現場では非常にそこのところが混乱しているということがありますので、よく調査をして対応していただきたいというふうに思います。
 それから、生活援助、家事援助、これについては、元々はホームヘルパーが二時間程度掛けて高齢者の生活を支える援助ということでやられてきたわけです。ところが、介護給付を削減するために、二〇〇六年に三十分ごとの報酬加算を廃止をして事実上九十分に制限をしたと。二〇〇九年には六十分未満に減らしてきたわけです。この四月には四十五分未満ということで、だんだん短縮してきているわけですね。
 厚生労働省の宮島老健局長は月刊福祉五月号で、介護サービスの生活援助の部分は将来合理化されていくんだと、介護職員は家事援助中心ではなくて身体介護にベースを置くんだと答えているわけです。これは削除されていくんじゃないかという危機感を覚えるわけで、これ、生活援助や家事援助を自治体任せにせずに、国が責任を後退させることはないということでお約束できますか。
○委員長(高橋千秋君) 小宮山国務大臣、時間が来ておりますので簡潔にお願いします。
○国務大臣(小宮山洋子君) はい。
 それは、全体で効率化はしなければいけませんが、先ほどお話ししたように、これは自立して生活をしていく人を支えるための大切なサービスだと思っていますので、一律に削減をするという考え方ではございません。
○紙智子君 国の責任を後退させないということでしっかりと取り組むように、これからも私たちも注意を向けていきたいと思います。
 終わります。