<第179回国会 2011年12月16日 閉会中審査 農水委員会>


BSE規制緩和やめよと指摘

○紙智子君 日本共産党の紙智子でございます。私もTPP問題について質問いたします。
 政府は十三日に、首相官邸で環太平洋戦略的経済連携協定の交渉参加に向けた初の関係閣僚会合を開いて、ここで米国など関係国との協議に臨むための内閣官房に新たに三つの省庁横断チームを設置することを決めて、野田総理は、関係閣僚はこの体制を政府一体となって支えるために協力してほしいと指示をし、さらにTPPについて、きちんと情報提供を行い、十分な国民的議論を行った上で国益の視点に立って結論を得ると述べたことが報道されているわけです。
 このTPP関係閣僚会議に鹿野農水大臣も参加をされているのでお聞きするんですけれども、十分な国民的な議論を行うと、この十分に行うということなんですが、これは国会での議論なのか、それとも国民が直接参加できるシンポジウムなどなのか、この十分なというのはどの程度のことを指しているのか、説明いただきたいと思います。
○国務大臣(鹿野道彦君) 収集した情報につきましては、本委員会でも、当然速やかに国会に報告されるわけでございますし、またメディアのいろいろなる発信もございますし、またインターネットでの発信もございますし、また説明会等々も開催をするというようなことも考えているんではないかと、こういうふうなことで幅広く国民の各層に情報提供をしていくというふうなことが大事なことだと思っております。
○紙智子君 野田総理は、十分な国民的な議論を行った上で、あくまで国益の視点に立って結論を得るというふうに言っているわけですけれども、この十分な国民的な議論がなければ、これをされなければ結論は出ないということになるわけですけれども、そういう理解でよろしいでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 言わば、十分な情報の国民的議論というふうなところは、定義付けるということはなかなか困難でありますけれども、基本的には、とにかく情報を把握したものをできるだけ開示をしてそして国民に知っていただくというふうなこと、その方法、手法はいろいろ考えていかなきゃならない、こういうふうなことになるものと思っております。
○紙智子君 十分されないというふうに国民が感じているということになれば、これはなかなか結論出せないということですよね。
○国務大臣(鹿野道彦君) 国民が十分でないというふうなことを言われるというふうなことはどういう形でということであるか、なかなか申し上げにくいところもございますけれども、少なくとも国民から負託を受けている国会においては当然そこにきちっと情報が提示されるわけでありますし、それから何遍も申し上げますけれども、いわゆる今情報化の時代の中で、インターネットを活用している人が相当多いという中でインターネットを通じて知っていただく、あるいはまた新聞等々で知っていただく、あるいは都道府県を通じて周知をしていただく、そういうふうな協力を求めていく等々、あるいはまた説明会というものをやって、そしてそれを啓発、啓蒙していただいて、そして説明会を行っていく等々というようなことをやっていくことによって、各界各層にいろいろと周知をさせていただくことによっていろんな議論がなされていくんではないかなと、こんな一つの考え方で、認識でもございます。
○紙智子君 TPPについては、もう改めて言うまでもなく、農業者、漁業者、林業関係者、それから地域的に見ても北海道を始め四十四道府県、ここで反対の意見書が採択されていますし、さらに日本医師会、労働団体、消費者団体も反対を表明していると。
 ですから、一方通行じゃ駄目なんですよね。示したというだけじゃ駄目で、通り一遍のシンポジウムや説明会ではこれは国民的な議論にならないと。市町村単位までこれ国民的な議論ができるように担保すべきだというふうに思いますけれども、これについていかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) これは、北海道の人とかあるいはいろいろ各県の知事さんからも私も要望もいただきましたし、お考え方も聞いておりますが、一方においては、TPPに交渉参加した方がいいというふうな人たちも、世論調査でいきますと、その方が多い、そういうふうな人たちもいるわけですよ。だから、国論を二分しているわけです。それは当然、二分しているということならば、一番大事なことは、情報をきちっと提示させていただいて、そして国民的な議論をしていくということが大事なことだと、こういうふうなことだけは忘れてはならないことだと思っております。
○紙智子君 それで、情報をきちっと提供するという話なんですけれども、この情報提供についても、外務省がこの間、関係閣僚会議に提出した資料について出してほしいというふうに要求したわけですよ。ところが、もうほとんどゼロ回答に近い。ホームページに載っていますといって出してきたのは何かといったら、これ、ぺら一枚ですよ。これ閣僚会議に出して、これだけのものしか出していないのかというふうに思うわけですけれどもね。
 結局、国会議員に対してもこの程度の情報しか出さないで、それで情報提供をやったというふうに言えるのかと。これ、全然程遠い話で、まず実際どういうことが議論になっているのかということを知らせてほしいと要求している国会議員に対してさえもこれしか出さないというのは一体どういうことなのかというふうに思うわけですけれども、これ外務省、こんな程度なんですか。
○副大臣(山根隆治君) 今、鹿野大臣からお話もございましたように、情報提供につきましては、ホームページで掲載をさせていただいたり、あるいはマスメディアを通じて官房長官の方からお話をさせていただいたりしております。
 今、紙議員の方からこれだけなのかというふうなお話もございましたけれども、外国との関係、交渉事でもございますので、外国では一体どれぐらい情報提供がされ得るのかと、こういうことも注視もしておりますけれども、その中でやはりできる範囲の中で精いっぱい情報公開をしていこうと、こういうことで出させていただいていると、こういうことが実態でありますので、御理解いただければ有り難いと思います。
○紙智子君 だから、できる範囲でという話なんですけど、これ読んだって分からないですよ、中身は。項目だけなんですから。
 会合と交渉の全体像でいうと、投資、サービス、原産地規則だとか知的財産分野、開会されて、市場アクセスに関する二国間の協議も行われたと、二百人集まったと、これだけの話ですから。
 中身について全然分からないことを提供したと、これで情報は出したんだと、さあ議論してくださいなんて言われたって、中身が分からなかったら全然深められないじゃないですか。これ、対応を変えないと、もう私だけじゃなくてみんな、誰だって納得できないと思いますよ。我々国会議員でさえもそういう分からない状態の中で、なぜ国民が理解することできるかということなんですよ。これ、ちゃんと交渉の中身についてはもっと出していただきたいんですけれども、いかがですか。
○副大臣(山根隆治君) 今、交渉の中身というふうに言われましたけれども、まだ私たちも交渉というところの段階には至ってないということを是非御理解いただきたいと思うんですけれども。あるいはまた、いろいろな関係団体といいましょうか、十九ほどの団体の皆さんにもできる範囲での情報公開をさせていただいて、御説明も今日までもさせていただいていると、こういうことでございます。
 マレーシアの会議におきましては、ホスト国ということで、私どもの方だけではなくて関係省庁で情報収集ということもさせていただいているところでございますけれども、これはもう交渉ということよりも情報収集ということで動かせていただいておりまして、その中ででき得るものについては、公表できるものはできるだけ公表させていただこうということで、今回の場合にはこんなものじゃないかというお話でございましたけれども、紙議員の厳しい御指摘もありますので、今後もでき得る限りしっかりと情報公開できるものについては精いっぱい情報公開させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○紙智子君 言葉の上でしっかりと情報公開をしてと、国民的な議論をしてというふうに言葉だけ言ったって駄目なんですよ。もう本当にこういう具体的なところから分かるようなものを出していただかないと、協議段階においても何のためにじゃ協議しているのかということになるわけですから、これはきちっと出していただきたいということが一つと。
 それから、この間の野田総理の発言の中で最大の問題というのは、これ、国益の視点に立って結論を得ると言っているわけです。
 鹿野大臣にお聞きしたいんですけれども、この国益というのは大臣にとっては何を意味しますか、国益は。
○国務大臣(鹿野道彦君) 一言で国益ということはどういうことかということを定義付けることはなかなか困難なところもあると思います。それは、あらゆる分野をとらまえての国益ということになるわけでありますから、当然、場合によっては私は国益だと思っておっても紙先生は国益でないかもしれないというところがあるかもしれません。
 野田総理も国会答弁におきまして、例えば、関税を今二千億くらい経済連携をやっていないところに払っておりますと、そういうものがだんだん低くしていくということも、これも国益だろうと、こういう考え方も一つはあるわけです。また一面、日本の伝統文化というふうなものを、これをしっかりと守っていくということも国益だということにもなるかもしれませんし、そういうふうなことだと思っております。そしてまた、まさしく美しい農村、山村、漁村を守っていくというようなことも、総理の発言にもあるわけでありますけれども、そういうことも一つの国益であるというふうなことでありますが、総合的にまさしく国民のためになるというようなことの判断の中で国益というふうなことを意識をしてやっていくということではないかと思っております。
○紙智子君 私は農水大臣に農水大臣が考える国益を聞いたのであって、客観的に大体こういうふうに理解されるという話じゃなくて、鹿野農水大臣が国益をどう考えているのかということを聞いたわけですよ。
 それで、もうちょっと具体的に聞きますけれども、TPPは例外なき関税撤廃が原則だと。それで、お米も含めて関税が撤廃されていく、当然麦や大豆や甘味資源作物だとかでん粉の原料作物なんかも関税が撤廃される、畑作はそうすると壊滅する、畜産、酪農も甚大な影響を受けると、こういう事態というのは、これは国益を大きく侵害することになるというふうに私は思うんですけれども、これは鹿野農水大臣はそのように思いますか。
○国務大臣(鹿野道彦君) いわゆる生産額が、全部関税撤廃をした場合にはこれだけの産出額が減じますよというようなことは、これはやはりこのことだけを考えてみた場合は当然国益というふうなものを阻害するものだと、こういうふうな認識に立っていかなきゃならないと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 それじゃ、そういう国益を損なうという事態に対して、それを上回るような国益というのはあるんでしょうか。
○国務大臣(鹿野道彦君) どういう質問だか分かりませんけれども、意味が分かりませんが、各国それぞれの生き方があるんじゃないでしょうか。
 お隣の韓国の例を見てみますと、もう思い切って貿易国として生きていくんだと、こういうふうなことから、まあいわゆる貿易による一つの考え方を、工業製品等々というふうなもののその輸出というふうなものが最優先としてFTAが結ばれたんではないかと、こんなふうにも言われている。私は、その真意は分かりません。そういうようなそれぞれの国の生き方というふうなものがあるわけでありますから、当然この考え方の違いというものが出てくるものと私は思っておるわけであります。
○紙智子君 それぞれの国の生き方というふうに、農水大臣はすぐ後ろに引いて言われるんですよ。そうじゃなくて、日本が、そしてしかも農林水産省に責任を持つ農水大臣がやっぱりそういうことに対する考え方というのをちゃんと持っているのが本当だと思うんですよ。
 それで、結局、実際に日本の中で国益の中身、これはどうなのかということを言われたときに、中身については明らかにしないで、結局国益の視点に立って結論を得るということばかりを言っているということは、どれだけ日本の農林水産業と地域経済が破壊的な被害を受けたとしても、これ、日本は通商で成り立っている国ですと、それを推進するTPPに参加することが一番の国益なんだというふうにばあんと言われたら、もうそういうことで終わってしまうという話になるわけですよね。そうならないということを農水大臣としてはっきり明言できますか。
○国務大臣(鹿野道彦君) 紙先生からはいろいろと委員会を通して、また面会をさせていただく中でいろいろ御意見等もお伺いをさせていただいておりまして、いろんな意味で激励もいただいておるわけでございまして、今の紙先生のおっしゃられたことは私もこの胸に入れておかなきゃならないと、こういうふうに思っております。
○紙智子君 野田総理は、ですからそういうことを、先ほども外務省の方も国益を守る立場でと、そこを強調するわけですけれども、その中身をどういうものかということをはっきりさせていくということは、農水大臣の立場からいっても大事なことなわけですよ。まだ交渉に参加していないんだと、だからそれについては胸の中に収めておいて、外交交渉にはそれを言うことはできないという話さっきされていましたけれども、そうじゃないと思うんですよ。
 むしろ外国から見たら、私もいろんな派遣で外国に行った際にその話をいろいろするときがありましたけれども、日本政府が、日本が一体何を求めているのか、何を考えているのか分からない、理解に苦しむと、むしろそういう意見の方が多く聞かれるわけですよ。日本がこれから先どういう方向に向かいたいのかということを、食料の自給率については我が国は今当面五〇%は絶対に超えたいということで努力しているんだと、そういうことも含めてしっかりと示して、それでやっぱり交渉してこそ相手の国も、日本がどういうところに立っていて考え方を持っているかということで交渉に入るわけですから、そこをはっきり示すのが私は本当だと思いますよ。いかがですか。
○国務大臣(鹿野道彦君) いろいろ紙先生の御見識を披瀝していただきまして、ありがとうございます。私も、今、紙先生が言われたことをこの胸に入れておきたいと思っております。
○紙智子君 野田総理は結局、私は、非常に野田総理の取っている態度というのは極めて問題だと思っているんですけれども、これ日米首脳会談でさきに約束したことをその約束どおりに進めようというふうにしているようにしか見えないわけですよ。
 特に、以前から、例えばBSEの牛肉の問題についても輸入規制の緩和についても、今いかにも科学的な知見に立ってやろうとしているかのように見せていますけれども、実際には、これ米国からの対日要求というのが既に突き出されている中でそれを受け入れるという中身にほかならないと思うわけですよ。
 日本の国民はそのことは全く求めていないし、あれだけの大変な議論をしてもう国内の中で全頭検査という形で安全、安心を確保してやってきたということでいえば、それをやっぱり覆して今その米国の要求に屈していくということは絶対許されないということでは、私はそういう国民不在の形で受け入れてやっていくということについては断固反対ですし、これ撤回すべきだということを申し上げて、強く申し上げて、最後それに対する答弁を受けて、質問を終わりたいと思います。
○国務大臣(鹿野道彦君) BSEの牛肉問題につきましては、アメリカから言われたからということではなしに、私ども承知しておることは、いわゆる十年たった中で新たな評価というふうなものも必要ではないかと、そして科学的な知見に基づいて解決をしていくというふうなことは、これはもう絶対条件であるというふうなことは、私自身もそういう認識に立っておりますということを申させていただきたいと思います。
○紙智子君 終わります。